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【第1章】 捨てられ令嬢と氷の公爵
第6話 「氷の怪物」と初めてのデート
ジークハルト様からいただいた青いインクのおかげで、執務は驚くほど捗(はかど)った。
あまりに仕事が早く片付いてしまったある日の午後。
「……エリス。息抜きも仕事のうちだ」
ジークハルト様が、少しそわそわした様子で執務室にやってきた。
「城下への視察に行く。お前も同行しろ。……あくまで視察だ。現地の市場調査も、お前の改革には必要だろう?」
「はい! 喜んでお供します!」
建前が「視察」なのはバレバレだったけれど、私は嬉しくて二つ返事でうなずいた。
実家では「恥ずかしいから外に出るな」と言われ、屋敷に閉じ込められていた私にとって、街へのお出かけなんて夢のまた夢だったからだ。
◇
公爵家の紋章が入った黒塗りの馬車は、雪深い城下町へと滑り出した。
窓の外には、活気ある――いや、少し異様な光景が広がっていた。
「ひ、氷の公爵様のお通りだぞーっ!!」
「道を開けろ! 目を合わせると凍らされるぞ!」
馬車が見えた瞬間、通りを歩く人々が蜘蛛の子を散らすように道の脇へ逃げ、深々と頭を下げて震えているのだ。
まるで、魔王か何かが通るかのような恐れようだ。
隣に座るジークハルト様を見ると、彼は眉間に深いしわを寄せ、不機嫌そうに腕を組んでいた。
「……相変わらずだな。私が通るだけでこの騒ぎだ」
「ジークハルト様……」
「お前も、あまり窓から顔を出すな。私の傍にいると、同じように怪物扱いされるぞ」
彼は自虐的に鼻を鳴らした。
けれど、私には分かっていた。
彼が不機嫌なのは、民衆に恐れられているからではない。民衆が恐怖で逃げ惑うせいで、転んで怪我をする者がいないか心配しているのだ。
彼が「怪物」扱いされるのを甘んじて受け入れているのは、自分の強大すぎる魔力が、万が一にも暴走して民を傷つけないよう、自ら距離を置いているからだ。
(……全然、怪物なんかじゃないのに)
私は静かに憤った。
この人の不器用な優しさを知っているのは、世界で私だけなのかもしれない。そう思うと、悔しさと同時に、胸の奥がくすぐったくなるような独占欲が芽生えた。
「降りるぞ。……離れるなよ」
広場に馬車が止まると、ジークハルト様が先に降り、私に手を差し伸べた。
その手を取って降り立つと、周囲の空気が一瞬で凍りついたのが分かった。魔法のせいではない。民衆の緊張がピークに達したのだ。
シーンと静まり返る広場。
数百人の視線が、恐る恐る私たちに注がれている。
「(……うう、視線が痛い)」
私が緊張で身を強ばらせると、ジークハルト様がサッと私の肩を抱き寄せた。
「寒いか?」
「えっ、いえ、その……」
「人が多いな。ぶつからないよう、私のコートの中に入れ」
彼はそう言うと、自分が羽織っていた分厚い毛皮のコートの裾を広げ、私をすっぽりと包み込んだのだ。
背の高い彼の腕の中に完全に収まってしまい、周囲からは、まるで私が彼に守られている小動物のように見えているだろう。
「ジ、ジークハルト様!? これでは歩きにくいのでは……」
「問題ない。転ばないよう、しっかりつかまっていろ」
拒否権はなかった。
私たちはそのまま、ピッタリと密着した状態で市場を歩き始めた。
……温かい。
コートの中は彼の体温と、あの心地よいコロンの香りで満たされている。
周囲の民衆が「あ、あの氷の公爵が、女を抱いて歩いている……?」「誰だあの美女は?」「まさか公爵夫人か?」とざわめいているのが聞こえるが、今の私には彼の心臓の音の方が大きく聞こえた。
「おい」
ジークハルト様が、ある屋台の前で足を止めた。
店主の初老の男性が、「ひいぃっ!」と悲鳴を上げて腰を抜かしかけている。
「こ、こ、公爵様! い、命ばかりはお助けを……! 売り上げは全部差し上げますからぁ!」
「……違う。その赤い実だ。……甘いのか?」
ジークハルト様が指差したのは、屋台に並んだ真っ赤な果実だった。北国特産の、リンゴに似た果物だ。
「は、へ? あ、甘いです! 蜜がたっぷり入ってまして……」
「そうか。一つくれ」
彼は硬貨を置くと――それは屋台の商品全部を買い占めてもお釣りが来るほどの銀貨だった――真っ赤な実を一つ手に取り、無造作に服の袖で磨いてから、私に差し出した。
「エリス。以前、甘いものが好きだと言っていただろう」
「え……これを、私に?」
「視察のついでだ。……食え」
ぶっきらぼうな言い方。でも、耳が少し赤い。
彼はわざわざ、私が喜びそうなものを探してくれていたのだ。
「ありがとうございます!」
私はコートから顔を出し、その実を受け取って一口かじった。
シャリッとした食感とともに、濃厚な甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
「美味しい! とっても甘いです、ジークハルト様!」
「……そうか。なら良かった」
私が満面の笑みで伝えると、彼はホッとしたように口元を緩めた。
ほんの一瞬の、氷が解けるような微笑み。
その瞬間。
広場にいた全員が、ハッと息を呑んだ気配がした。
「……おい、見たか?」
「公爵様が、笑ったぞ……?」
「あんなに優しそうな顔、初めて見た……」
恐怖に怯えていた民衆の目が、驚愕と、そして好奇心へと変わっていく。
隣にいる私には分かる。
彼らが今目撃したのは、「怪物」ではなく、愛妻に甘い果物を買い与える、ただの「不器用な青年」の姿だ。
「行くぞ、エリス。あまり長居すると、お前が風邪を引く」
「はい、あなた」
私は自然とそう呼んで、彼の腕をぎゅっと抱きしめ返した。
彼が民衆にどう思われていようと構わない。
この温かさを知っているのは私だけでいい。
……いや、少しだけ。
私の自慢の旦那様の素敵さを、みんなに知らしめてやりたい気もするけれど。
私たちは再び密着したまま、ざわめきが止まない市場を後にした。
この日の「公爵の微笑み」事件は、瞬く間に城下町へ、そしてやがては遠い王都へと噂になって広がっていくことになる。
『氷の公爵が、美しい妻を溺愛してデレデレになっているらしい』と。
そしてその噂は、私を捨てたあの人々――実家の父や元婚約者の耳にも、届こうとしていた。
あまりに仕事が早く片付いてしまったある日の午後。
「……エリス。息抜きも仕事のうちだ」
ジークハルト様が、少しそわそわした様子で執務室にやってきた。
「城下への視察に行く。お前も同行しろ。……あくまで視察だ。現地の市場調査も、お前の改革には必要だろう?」
「はい! 喜んでお供します!」
建前が「視察」なのはバレバレだったけれど、私は嬉しくて二つ返事でうなずいた。
実家では「恥ずかしいから外に出るな」と言われ、屋敷に閉じ込められていた私にとって、街へのお出かけなんて夢のまた夢だったからだ。
◇
公爵家の紋章が入った黒塗りの馬車は、雪深い城下町へと滑り出した。
窓の外には、活気ある――いや、少し異様な光景が広がっていた。
「ひ、氷の公爵様のお通りだぞーっ!!」
「道を開けろ! 目を合わせると凍らされるぞ!」
馬車が見えた瞬間、通りを歩く人々が蜘蛛の子を散らすように道の脇へ逃げ、深々と頭を下げて震えているのだ。
まるで、魔王か何かが通るかのような恐れようだ。
隣に座るジークハルト様を見ると、彼は眉間に深いしわを寄せ、不機嫌そうに腕を組んでいた。
「……相変わらずだな。私が通るだけでこの騒ぎだ」
「ジークハルト様……」
「お前も、あまり窓から顔を出すな。私の傍にいると、同じように怪物扱いされるぞ」
彼は自虐的に鼻を鳴らした。
けれど、私には分かっていた。
彼が不機嫌なのは、民衆に恐れられているからではない。民衆が恐怖で逃げ惑うせいで、転んで怪我をする者がいないか心配しているのだ。
彼が「怪物」扱いされるのを甘んじて受け入れているのは、自分の強大すぎる魔力が、万が一にも暴走して民を傷つけないよう、自ら距離を置いているからだ。
(……全然、怪物なんかじゃないのに)
私は静かに憤った。
この人の不器用な優しさを知っているのは、世界で私だけなのかもしれない。そう思うと、悔しさと同時に、胸の奥がくすぐったくなるような独占欲が芽生えた。
「降りるぞ。……離れるなよ」
広場に馬車が止まると、ジークハルト様が先に降り、私に手を差し伸べた。
その手を取って降り立つと、周囲の空気が一瞬で凍りついたのが分かった。魔法のせいではない。民衆の緊張がピークに達したのだ。
シーンと静まり返る広場。
数百人の視線が、恐る恐る私たちに注がれている。
「(……うう、視線が痛い)」
私が緊張で身を強ばらせると、ジークハルト様がサッと私の肩を抱き寄せた。
「寒いか?」
「えっ、いえ、その……」
「人が多いな。ぶつからないよう、私のコートの中に入れ」
彼はそう言うと、自分が羽織っていた分厚い毛皮のコートの裾を広げ、私をすっぽりと包み込んだのだ。
背の高い彼の腕の中に完全に収まってしまい、周囲からは、まるで私が彼に守られている小動物のように見えているだろう。
「ジ、ジークハルト様!? これでは歩きにくいのでは……」
「問題ない。転ばないよう、しっかりつかまっていろ」
拒否権はなかった。
私たちはそのまま、ピッタリと密着した状態で市場を歩き始めた。
……温かい。
コートの中は彼の体温と、あの心地よいコロンの香りで満たされている。
周囲の民衆が「あ、あの氷の公爵が、女を抱いて歩いている……?」「誰だあの美女は?」「まさか公爵夫人か?」とざわめいているのが聞こえるが、今の私には彼の心臓の音の方が大きく聞こえた。
「おい」
ジークハルト様が、ある屋台の前で足を止めた。
店主の初老の男性が、「ひいぃっ!」と悲鳴を上げて腰を抜かしかけている。
「こ、こ、公爵様! い、命ばかりはお助けを……! 売り上げは全部差し上げますからぁ!」
「……違う。その赤い実だ。……甘いのか?」
ジークハルト様が指差したのは、屋台に並んだ真っ赤な果実だった。北国特産の、リンゴに似た果物だ。
「は、へ? あ、甘いです! 蜜がたっぷり入ってまして……」
「そうか。一つくれ」
彼は硬貨を置くと――それは屋台の商品全部を買い占めてもお釣りが来るほどの銀貨だった――真っ赤な実を一つ手に取り、無造作に服の袖で磨いてから、私に差し出した。
「エリス。以前、甘いものが好きだと言っていただろう」
「え……これを、私に?」
「視察のついでだ。……食え」
ぶっきらぼうな言い方。でも、耳が少し赤い。
彼はわざわざ、私が喜びそうなものを探してくれていたのだ。
「ありがとうございます!」
私はコートから顔を出し、その実を受け取って一口かじった。
シャリッとした食感とともに、濃厚な甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
「美味しい! とっても甘いです、ジークハルト様!」
「……そうか。なら良かった」
私が満面の笑みで伝えると、彼はホッとしたように口元を緩めた。
ほんの一瞬の、氷が解けるような微笑み。
その瞬間。
広場にいた全員が、ハッと息を呑んだ気配がした。
「……おい、見たか?」
「公爵様が、笑ったぞ……?」
「あんなに優しそうな顔、初めて見た……」
恐怖に怯えていた民衆の目が、驚愕と、そして好奇心へと変わっていく。
隣にいる私には分かる。
彼らが今目撃したのは、「怪物」ではなく、愛妻に甘い果物を買い与える、ただの「不器用な青年」の姿だ。
「行くぞ、エリス。あまり長居すると、お前が風邪を引く」
「はい、あなた」
私は自然とそう呼んで、彼の腕をぎゅっと抱きしめ返した。
彼が民衆にどう思われていようと構わない。
この温かさを知っているのは私だけでいい。
……いや、少しだけ。
私の自慢の旦那様の素敵さを、みんなに知らしめてやりたい気もするけれど。
私たちは再び密着したまま、ざわめきが止まない市場を後にした。
この日の「公爵の微笑み」事件は、瞬く間に城下町へ、そしてやがては遠い王都へと噂になって広がっていくことになる。
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