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春ー彼女が教会で騒ぐ話
バレンタインとチョコと綿あめお姫 3
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バレン=タイン祭は2日間行われる。
帝国では1日限りらしいが、綿あめがどうせだから2日間で、と言い出したために2日間になった。非常に雑である。
といっても娯楽も少ない北国の冬でのお祭りである、1日目はそこそこ人が集まった。2日目も、まあそこそこ人が集まるだろうぐらいには思っていたのだけれども……
「ねえ綿あめ、人数すごいいない?」
「んー、ざっと1000人、まではいかないかな。500人は余裕で超えてるんじゃない?」
「なんでそんなにいるの!? というかなんでわかるの!?」
「集団を見た感じで人数が分かる訓練受けてるので。軍事用の訓練なんですよね。敵の数分からないと困るでしょ」
「あんたほんとに多才ね」
無駄に高性能な綿あめである。その性能をもう少し対私に割り振ってほしい。デリカシーも何もかもないから困っている。
それにしても、そもそもこの街には3000人ぐらいしか人口いないのに、1000人もここに集まるのはさすがに集まり過ぎではないだろうか。いったいみんな何期待してきているのだろうか。スイーツか、スイーツなのか。すごくわかる。
バレン=タイン祭はプレゼント用にチョコレートがいっぱい売られている。プレゼント用じゃないチョコレートもいっぱい売られている。例えば屋台で売っていたチョコバナナがやばいおいしかった。バナナとチョコレートを合わせるというのはそこまで悪魔的な魅力を生じるのかと思うぐらいやばかった。1本は綿あめが買ってきてくれたので食べたのだがあれほどおいしいものはないと思った。バナナの甘さと、チョコレートのほろ苦い甘さが合わさって、まさに最強だった。屋台がすごい行列になっていたのも理解できる。すごく理解できる。2本目を買うために並ぼうかとさんざん悩んだが、主催者側が行列に並ぶのもあまり良くないかと思い断腸の思いであきらめたのだ。ちくせう。
「何考えてるの? 緊張してる?」
「チョコバナナ美味しかったなって」
「すごい食い気だった」
「後、あのチョコクッキーもおいしかったよね」
「子供でも作れる簡単レシピだけど、あれ美味しいんだよねぇ」
チョコクッキーとは、ココアパウダーをふんだんに使ったクッキーだ。子供たちと一緒に作り、今も子供たちが売りさばいている、教会の主力商品である。ココアバターを使っていないので厳密にはココアクッキーらしいが、ココアパウダーを全体量のうち半分使っているので、しっとりとろりとした食感になるのだ。あれもやばいおいしかった。1万枚、1000人前以上焼いたはずだが、昨日の分は結構早めに売り切れていた。今日の分も売り切れるだろう。ココアパウダーが材料なので、費用があまりかさまないのも魅力である。
「後あれ、フォンダンショコラ? 白銀堂の出してたあれもおいしかった、やばい」
「受付ちゃんの語彙力のほうがやばいよ」
「だっておいしすぎてやばい」
「本当に語彙が死んできてる!」
フォンダンショコラは、割ると中からとろけるチョコレートが出てくる、温かいケーキだった。恋人と分けて食べましょうという風になっていて、温かいのを二人で食べ合うことをしきりに宣伝しながら売っていたが、恋人のお祭りということで飛ぶように売れていた。私も綿あめの「デモンストレーションと試食だよ」という言葉に丸め込まれて出店の前で二人で食べることとなった。チョコレートケーキの恨みがあったので、一人で全部食べてやろうかと思ったが、さすがに大人げなさすぎるので9割で許してやったりもした。
フォンダンショコラのレシピも、この綿あめが白銀堂に教えたらしい。レシピ代として、今回祝福の儀で配る新作白チョコを材料費込みで寄付してもらったのだとか。
「よし、ひとまずチャチャっと歌って、そのあとチョコバナナとチョコケーキとココアを飲むのよ!」
「完全に食い気しかないねぇ…… まあ大人数の前で緊張しないのはいいことだけど」
「いやだって、私の歌なんて箸休め程度でしょ」
これだけの人が集まっているといっても、別に私の歌を聞きに来ているわけではない。恋人とイチャイチャしながら甘いものを食べたいだけの人たちばかりだろう。別に、多少へたくそな程度で笑う人がいるわけでもなし、何時間も歌うわけでもないわけで、茶々っと終わらせるに限るのだ。
「なんというか、自己分析が厳しいというか、適当というか」
「ほら、綿あめ、さっさと行くよ。歌は昨日と同じでいいんだよね?」
「あ、ちょっと変更。竜の二重唱がいいだろうって、神父さんから注文がついたからそれでいこう?」
「まあ神父さんがそういうならしょうがないね。でも私、竜神教の歌で二重唱なんて、『愛の二重唱』しかしらないよ」
「ちょうどいいと思うよ。恋愛のお祭りだしね」
「まあそうねー」
愛の二重唱とは、竜神様と竜后様のそれぞれの愛を語るという歌である。有名な場面を歌い上げるものなのでそれなりに人気があり、結婚式などでは定番ソングだったりする。信者なら大体みんな知っている曲である。
「じゃあ竜后様、よろしくね」
「はいはい、竜神様。お任せするから」
そうして私たちは舞台に立った。
10分ほどの歌だったが、大盛況だった。
途中で、綿あめが私の歌と共鳴するように歌いながら魔法を使ったので、この前の祝福の儀のように七色の光がピカピカときれいだった。七色の光は極光と呼ばれる光らしく、魔力もそんなに使わずに出せるらしいきれいな光のようだ。特に特殊な効果はないが、見に来ていた子供たちが大興奮だったので、下手ながらも歌った甲斐があったというものである。
この後行う祝福の儀も、大盛況であった。新作チョコの数の関係上2日合わせて定員50組100名までで、1日目の申し込みが20組だけだったので足りるかなと思っていたのだが、2日目だけで50組以上の申し込みがあったらしい。1組5万Gもお布施をとるのにみんなリッチである。それだけ新作チョコが食べたいのだろうか。私だったら食べたいからよくわかる。5万Gぐらいなら、生活費きりつめれば簡単に出せるし私なら迷わず申し込む。むしろ一人で行けば2つもらえるから一人で参加したいレベルである。
結局先着順で30組まで受け付けることとして、祝福の儀を行うことになった。
見物客が増え過ぎたので、場所は礼拝堂ではなく、舞台の上に礼拝台だけ持ってきて行うことになった。
「なんか、結構みすぼらしいね」
「突貫工事だからしょうがないよね」
突貫で作られた木製の舞台に、これまた今さっきベアさんが突貫で作った木製の礼拝台が置かれ、ろうそくが2本立っている。すごい雑な感じである。礼拝堂は、大きさは小さいながらも装飾などは豪華で荘厳な雰囲気があるのだが、現在舞台上にある礼拝台は適当感があふれている。
「まあいいや、寒いだろうし、ちゃっちゃとおわらせよ」
「受付ちゃんってまじめに見えて、案外雑だよね」
「綿あめには言われたくないわー」
「いやまあボクもかなり雑な性格だけどさ」
そんなことより早くチョコバナナが食べたいのだ。どうせ参加者だって新作のチョコが食べたいだけだし、早く終わらせればみんなチョコが早く食べられて、私もチョコバナナが食べられて、ウインウインの関係性なのだ。だから早く終わらせるべきそうすべき。
「ということで、綿あめ、派手な感じで頼むからよろしく」
「ん? なんのこと」
「あの極光とか言う光だよ。もうこの際前回の3倍ぐらい出して」
「あれ、別に私が出してるわけじゃないんだけどなぁ…… まあ頑張って多めに出るように頑張るよ」
ということで、祝福の儀は、光を前回の三倍ぐらい出してもらって、すごいド派手な中行われた。時間自体は全体で30分を切るぐらいの長さだったが、会場の盛り上がりはすごかった。
最終的に、お祭りにはかなりの人数が来ていたようだ。普通に大地母神の神官の人とかも見かけたし、町長さんも普通に来ていた。
売り上げもがっぽり入っただろうし、教会の運営もしばらくは安定するだろう。
ただ、一つ気になることがある。お祭り後、街の人から聖女だって言われることが時々あるのだ。
「え、受付ちゃん普通に極光出してたし、聖女の資格あるからでしょ」
「え?」
なんかいつの間にか聖女の称号を得たようです。
というかあの光、綿あめが出してたんじゃないの……?
帝国では1日限りらしいが、綿あめがどうせだから2日間で、と言い出したために2日間になった。非常に雑である。
といっても娯楽も少ない北国の冬でのお祭りである、1日目はそこそこ人が集まった。2日目も、まあそこそこ人が集まるだろうぐらいには思っていたのだけれども……
「ねえ綿あめ、人数すごいいない?」
「んー、ざっと1000人、まではいかないかな。500人は余裕で超えてるんじゃない?」
「なんでそんなにいるの!? というかなんでわかるの!?」
「集団を見た感じで人数が分かる訓練受けてるので。軍事用の訓練なんですよね。敵の数分からないと困るでしょ」
「あんたほんとに多才ね」
無駄に高性能な綿あめである。その性能をもう少し対私に割り振ってほしい。デリカシーも何もかもないから困っている。
それにしても、そもそもこの街には3000人ぐらいしか人口いないのに、1000人もここに集まるのはさすがに集まり過ぎではないだろうか。いったいみんな何期待してきているのだろうか。スイーツか、スイーツなのか。すごくわかる。
バレン=タイン祭はプレゼント用にチョコレートがいっぱい売られている。プレゼント用じゃないチョコレートもいっぱい売られている。例えば屋台で売っていたチョコバナナがやばいおいしかった。バナナとチョコレートを合わせるというのはそこまで悪魔的な魅力を生じるのかと思うぐらいやばかった。1本は綿あめが買ってきてくれたので食べたのだがあれほどおいしいものはないと思った。バナナの甘さと、チョコレートのほろ苦い甘さが合わさって、まさに最強だった。屋台がすごい行列になっていたのも理解できる。すごく理解できる。2本目を買うために並ぼうかとさんざん悩んだが、主催者側が行列に並ぶのもあまり良くないかと思い断腸の思いであきらめたのだ。ちくせう。
「何考えてるの? 緊張してる?」
「チョコバナナ美味しかったなって」
「すごい食い気だった」
「後、あのチョコクッキーもおいしかったよね」
「子供でも作れる簡単レシピだけど、あれ美味しいんだよねぇ」
チョコクッキーとは、ココアパウダーをふんだんに使ったクッキーだ。子供たちと一緒に作り、今も子供たちが売りさばいている、教会の主力商品である。ココアバターを使っていないので厳密にはココアクッキーらしいが、ココアパウダーを全体量のうち半分使っているので、しっとりとろりとした食感になるのだ。あれもやばいおいしかった。1万枚、1000人前以上焼いたはずだが、昨日の分は結構早めに売り切れていた。今日の分も売り切れるだろう。ココアパウダーが材料なので、費用があまりかさまないのも魅力である。
「後あれ、フォンダンショコラ? 白銀堂の出してたあれもおいしかった、やばい」
「受付ちゃんの語彙力のほうがやばいよ」
「だっておいしすぎてやばい」
「本当に語彙が死んできてる!」
フォンダンショコラは、割ると中からとろけるチョコレートが出てくる、温かいケーキだった。恋人と分けて食べましょうという風になっていて、温かいのを二人で食べ合うことをしきりに宣伝しながら売っていたが、恋人のお祭りということで飛ぶように売れていた。私も綿あめの「デモンストレーションと試食だよ」という言葉に丸め込まれて出店の前で二人で食べることとなった。チョコレートケーキの恨みがあったので、一人で全部食べてやろうかと思ったが、さすがに大人げなさすぎるので9割で許してやったりもした。
フォンダンショコラのレシピも、この綿あめが白銀堂に教えたらしい。レシピ代として、今回祝福の儀で配る新作白チョコを材料費込みで寄付してもらったのだとか。
「よし、ひとまずチャチャっと歌って、そのあとチョコバナナとチョコケーキとココアを飲むのよ!」
「完全に食い気しかないねぇ…… まあ大人数の前で緊張しないのはいいことだけど」
「いやだって、私の歌なんて箸休め程度でしょ」
これだけの人が集まっているといっても、別に私の歌を聞きに来ているわけではない。恋人とイチャイチャしながら甘いものを食べたいだけの人たちばかりだろう。別に、多少へたくそな程度で笑う人がいるわけでもなし、何時間も歌うわけでもないわけで、茶々っと終わらせるに限るのだ。
「なんというか、自己分析が厳しいというか、適当というか」
「ほら、綿あめ、さっさと行くよ。歌は昨日と同じでいいんだよね?」
「あ、ちょっと変更。竜の二重唱がいいだろうって、神父さんから注文がついたからそれでいこう?」
「まあ神父さんがそういうならしょうがないね。でも私、竜神教の歌で二重唱なんて、『愛の二重唱』しかしらないよ」
「ちょうどいいと思うよ。恋愛のお祭りだしね」
「まあそうねー」
愛の二重唱とは、竜神様と竜后様のそれぞれの愛を語るという歌である。有名な場面を歌い上げるものなのでそれなりに人気があり、結婚式などでは定番ソングだったりする。信者なら大体みんな知っている曲である。
「じゃあ竜后様、よろしくね」
「はいはい、竜神様。お任せするから」
そうして私たちは舞台に立った。
10分ほどの歌だったが、大盛況だった。
途中で、綿あめが私の歌と共鳴するように歌いながら魔法を使ったので、この前の祝福の儀のように七色の光がピカピカときれいだった。七色の光は極光と呼ばれる光らしく、魔力もそんなに使わずに出せるらしいきれいな光のようだ。特に特殊な効果はないが、見に来ていた子供たちが大興奮だったので、下手ながらも歌った甲斐があったというものである。
この後行う祝福の儀も、大盛況であった。新作チョコの数の関係上2日合わせて定員50組100名までで、1日目の申し込みが20組だけだったので足りるかなと思っていたのだが、2日目だけで50組以上の申し込みがあったらしい。1組5万Gもお布施をとるのにみんなリッチである。それだけ新作チョコが食べたいのだろうか。私だったら食べたいからよくわかる。5万Gぐらいなら、生活費きりつめれば簡単に出せるし私なら迷わず申し込む。むしろ一人で行けば2つもらえるから一人で参加したいレベルである。
結局先着順で30組まで受け付けることとして、祝福の儀を行うことになった。
見物客が増え過ぎたので、場所は礼拝堂ではなく、舞台の上に礼拝台だけ持ってきて行うことになった。
「なんか、結構みすぼらしいね」
「突貫工事だからしょうがないよね」
突貫で作られた木製の舞台に、これまた今さっきベアさんが突貫で作った木製の礼拝台が置かれ、ろうそくが2本立っている。すごい雑な感じである。礼拝堂は、大きさは小さいながらも装飾などは豪華で荘厳な雰囲気があるのだが、現在舞台上にある礼拝台は適当感があふれている。
「まあいいや、寒いだろうし、ちゃっちゃとおわらせよ」
「受付ちゃんってまじめに見えて、案外雑だよね」
「綿あめには言われたくないわー」
「いやまあボクもかなり雑な性格だけどさ」
そんなことより早くチョコバナナが食べたいのだ。どうせ参加者だって新作のチョコが食べたいだけだし、早く終わらせればみんなチョコが早く食べられて、私もチョコバナナが食べられて、ウインウインの関係性なのだ。だから早く終わらせるべきそうすべき。
「ということで、綿あめ、派手な感じで頼むからよろしく」
「ん? なんのこと」
「あの極光とか言う光だよ。もうこの際前回の3倍ぐらい出して」
「あれ、別に私が出してるわけじゃないんだけどなぁ…… まあ頑張って多めに出るように頑張るよ」
ということで、祝福の儀は、光を前回の三倍ぐらい出してもらって、すごいド派手な中行われた。時間自体は全体で30分を切るぐらいの長さだったが、会場の盛り上がりはすごかった。
最終的に、お祭りにはかなりの人数が来ていたようだ。普通に大地母神の神官の人とかも見かけたし、町長さんも普通に来ていた。
売り上げもがっぽり入っただろうし、教会の運営もしばらくは安定するだろう。
ただ、一つ気になることがある。お祭り後、街の人から聖女だって言われることが時々あるのだ。
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