11 / 36
春ー彼女が教会で騒ぐ話
犬耳ちゃんと首輪と駄犬お姫 1
しおりを挟む
「わんこ拾ったー 飼おー」
お姫の出勤は早い。日の出前には必ずギルドに来る。早く来て、勝手に暖炉に火を入れて、お湯を沸かして、自分の分と私の分のココアを入れて、そのあとは私と雑談したり、掃除とかの開店準備を手伝ってくれたり、大体朝のルーチンワークはそんな感じである。ギルドの扉のカギは私が開け閉めしていたが、一度お姫がギルド前でずっと前で待っていたことがあったため、今はお姫に鍵を渡している。なので、毎朝ギルドの扉を開けるのはお姫の仕事になし崩しでなってしまった。
なので私が起きて、部屋から出てくると、そこにお姫がいることはなにも不思議ではないのだが……
お姫はいつもの定位置である、暖炉前ソファではなく、受付前の椅子に座っていた。その膝の上には薄汚れた段ボールがあり、段ボールからは金色の獣耳が飛び出ている。なるほどなるほど
「元の場所戻してきなさい」
「ひどい!?」
思わずお母さんが小さな子供に言うようなことを言ってしまった。
「うちでは犬は飼わないことにしてるからダメ」
「そんな、私が世話するから!!」
「それ、絶対最後に私が世話する羽目になるパターンだよね」
典型的なやり取りをしながら考える。お姫はまじめで律儀な部分もあるが、基本的に移り気だ。冒険者としての長期外出の可能性も今後あるし、ペットを飼うとなったらいつもギルドにいる私の仕事になりかねない。
私自身、犬が嫌いかどうかといわれれば、実は大好きである。大きな犬に抱き着いてモフモフなでなでしながらくつろげたらどれだけ楽しいだろうと思ったことは一度や二度ではない。ただ、私自身は犬に嫌われる。すごく嫌われる。近づくとなでられる前にまずすごく吠えられる。ちょっと引くぐらい吠えられる。おとなしいと評判の近所のゴン(雑種の金色モフモフわんこだ)にもすごい吠えられた。飼い主にゴンの鳴き声初めて聞いたといわれた。すごく泣いた。
ちなみに猫も大好きだ。世の中には犬派、猫派というものがあるらしいが、私に言わせればそのような対立項を持ち出す時点で愛が足りていないとおもう。わんこもにゃんこもかわいい。これこそ世界の真理なのである。でも、わたしはわんこにもにゃんこにも嫌われる。解せぬ。
きっとギルドで飼い始めたら、世話は私がするがすごく吠えられて、お姫あたりが甘やかしておいしいところを持っていくに違いない。理不尽だ。これほどの理不尽はない。なのでペットは絶対にノーである。
「ということで返してきなさい」
「ルーは返されたら行くとこないのです、寒いのです」
「そうだよかわいそうだよ」
「ダメです、あと腹話術までできるとかお姫、本当に多芸ね」
「腹話術じゃないのですよ、ルーは喋れるのですよ」
「いやそういう細かい芸いいか、ら?」
段ボールを覗くと、金髪犬耳の少女が座っていた。
え、ナニコレ、どういうことなの。
「えっと、ひとまずこれで……」
「なんで手錠出したの受付ちゃん!? そういうプレイなの!?」
「いや、誘拐犯を捕まえなきゃなって。安心して、証言台にはちゃんと立ってあげるから」
「ボクは無実ですー!!!」
「犯人はいつもそういうわね」
くーん、くーんと謎の鳴き声をあげる駄犬お姫。でも誘拐は許しません。ガチャっという金属音が響き、手錠が駄犬の腕につけられた。
「それで、あなた、どうしたの段ボールに入って?」
「ルーはルーなのです!!!」
「ルーちゃんっていうのね。ココアのむ?」
「飲むのです!!」
元気に両手をあげてアピールするわんこルーちゃん。かわいい。ひとまず甘さマシマシのココアを入れてあげようと席を立つと、駄犬が声をかけた
「あ、コボルド族はココアダメだよ。たしか」
「え、そうなの? というかこの子、コボルドなの?」
「そうだよ、ねー、ルーちゃん」
「そうなのです」
どや顔して胸を張るルーちゃんかわいい。なでなでしたい。
「じゃあホットミルクにしようか」
「ルーは大人なのでここあが飲みたいのです!!!」
万歳して、耳をピーンとたてながら謎大人アピールをするルーちゃん。かわいい。思わずココアを出したくなるが、体に悪いという話だし、どうにか話をそらさないと。
話のもっていき方を若干失敗したなぁと思いながら、頑張って話を逸らす。
「ルーちゃん、甘いのと苦いの、どっちが好き?」
「甘いのです!! 苦いのは嫌いなのです!!」
「じゃあ甘いの持ってくるね」
「甘いのなのです!!!」
尻尾をパタパタと嬉しそうに降るルーちゃんを見ながら、私は流しのところへ向かうのだった。
お姫の出勤は早い。日の出前には必ずギルドに来る。早く来て、勝手に暖炉に火を入れて、お湯を沸かして、自分の分と私の分のココアを入れて、そのあとは私と雑談したり、掃除とかの開店準備を手伝ってくれたり、大体朝のルーチンワークはそんな感じである。ギルドの扉のカギは私が開け閉めしていたが、一度お姫がギルド前でずっと前で待っていたことがあったため、今はお姫に鍵を渡している。なので、毎朝ギルドの扉を開けるのはお姫の仕事になし崩しでなってしまった。
なので私が起きて、部屋から出てくると、そこにお姫がいることはなにも不思議ではないのだが……
お姫はいつもの定位置である、暖炉前ソファではなく、受付前の椅子に座っていた。その膝の上には薄汚れた段ボールがあり、段ボールからは金色の獣耳が飛び出ている。なるほどなるほど
「元の場所戻してきなさい」
「ひどい!?」
思わずお母さんが小さな子供に言うようなことを言ってしまった。
「うちでは犬は飼わないことにしてるからダメ」
「そんな、私が世話するから!!」
「それ、絶対最後に私が世話する羽目になるパターンだよね」
典型的なやり取りをしながら考える。お姫はまじめで律儀な部分もあるが、基本的に移り気だ。冒険者としての長期外出の可能性も今後あるし、ペットを飼うとなったらいつもギルドにいる私の仕事になりかねない。
私自身、犬が嫌いかどうかといわれれば、実は大好きである。大きな犬に抱き着いてモフモフなでなでしながらくつろげたらどれだけ楽しいだろうと思ったことは一度や二度ではない。ただ、私自身は犬に嫌われる。すごく嫌われる。近づくとなでられる前にまずすごく吠えられる。ちょっと引くぐらい吠えられる。おとなしいと評判の近所のゴン(雑種の金色モフモフわんこだ)にもすごい吠えられた。飼い主にゴンの鳴き声初めて聞いたといわれた。すごく泣いた。
ちなみに猫も大好きだ。世の中には犬派、猫派というものがあるらしいが、私に言わせればそのような対立項を持ち出す時点で愛が足りていないとおもう。わんこもにゃんこもかわいい。これこそ世界の真理なのである。でも、わたしはわんこにもにゃんこにも嫌われる。解せぬ。
きっとギルドで飼い始めたら、世話は私がするがすごく吠えられて、お姫あたりが甘やかしておいしいところを持っていくに違いない。理不尽だ。これほどの理不尽はない。なのでペットは絶対にノーである。
「ということで返してきなさい」
「ルーは返されたら行くとこないのです、寒いのです」
「そうだよかわいそうだよ」
「ダメです、あと腹話術までできるとかお姫、本当に多芸ね」
「腹話術じゃないのですよ、ルーは喋れるのですよ」
「いやそういう細かい芸いいか、ら?」
段ボールを覗くと、金髪犬耳の少女が座っていた。
え、ナニコレ、どういうことなの。
「えっと、ひとまずこれで……」
「なんで手錠出したの受付ちゃん!? そういうプレイなの!?」
「いや、誘拐犯を捕まえなきゃなって。安心して、証言台にはちゃんと立ってあげるから」
「ボクは無実ですー!!!」
「犯人はいつもそういうわね」
くーん、くーんと謎の鳴き声をあげる駄犬お姫。でも誘拐は許しません。ガチャっという金属音が響き、手錠が駄犬の腕につけられた。
「それで、あなた、どうしたの段ボールに入って?」
「ルーはルーなのです!!!」
「ルーちゃんっていうのね。ココアのむ?」
「飲むのです!!」
元気に両手をあげてアピールするわんこルーちゃん。かわいい。ひとまず甘さマシマシのココアを入れてあげようと席を立つと、駄犬が声をかけた
「あ、コボルド族はココアダメだよ。たしか」
「え、そうなの? というかこの子、コボルドなの?」
「そうだよ、ねー、ルーちゃん」
「そうなのです」
どや顔して胸を張るルーちゃんかわいい。なでなでしたい。
「じゃあホットミルクにしようか」
「ルーは大人なのでここあが飲みたいのです!!!」
万歳して、耳をピーンとたてながら謎大人アピールをするルーちゃん。かわいい。思わずココアを出したくなるが、体に悪いという話だし、どうにか話をそらさないと。
話のもっていき方を若干失敗したなぁと思いながら、頑張って話を逸らす。
「ルーちゃん、甘いのと苦いの、どっちが好き?」
「甘いのです!! 苦いのは嫌いなのです!!」
「じゃあ甘いの持ってくるね」
「甘いのなのです!!!」
尻尾をパタパタと嬉しそうに降るルーちゃんを見ながら、私は流しのところへ向かうのだった。
1
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる