アニラジロデオ ~夜中に声優ラジオなんて聴いてないでさっさと寝な!

坪庭 芝特訓

文字の大きさ
112 / 201
アニラジを聴いて笑ってる僕らは、誰かが起こした人身事故のニュースに泣いたりもする。(上り線)

9、積極的に探してはいなかったあの曲

しおりを挟む
「へえー、そうなんだ」

  平静さを保ちつつも熱っぽく柿内君に説明されたが、響季はそれに対し気のない返事を返す。
  とにかくすごい人達がおらが村に来るというのはわかった。
  彼女達が主題歌を担当したというゲームソフトもやったことはあったが、響季は長ったらしいオープニングは飛ばしてしまう派だった。
  おまけに昨今のアニソンアーティストと呼ばれる方々はあまりにも多過ぎる。
  アニソンというのはアニメと一緒に浸透するため、完全にそちら側の人間ではない響季にはカバーしきれていない。
  アニソンというジャンルもすでにそれ自体が広大過ぎる。陸海空全て制覇したような広大さだ。
  おまけにくれっしぇんどふるむ~んのように、意図的にお耳に入れなければ入ってこないこともある。
  柿内君の説明を聞いてもあまり自分には馴染みがない人達のように思っていたが、

 「でも響季、アルボン見てるだろ?」
 「見てるよ?」
 「だからそのエンディング曲の、」
 「えっ!?」

  最後まで親友の言葉を聴く前に、響季が考えを巡らす。
  アニメ アルコール・ド・ボンバーのエンディング曲。
  今は確かスマエレガールズなる謎のユニットが歌っていた。
  子供も大人も、おねーさんもおかーさんもおとーさんも楽しめるノリノリのディスコファンク。
  スマートバーテンダーズに属する女性二人のボーカルとピンクエレファント団に属する女性二人のボーカルが毎週入れ替わりで、同じメロディのアレンジ違いを違う歌詞で歌う歌だ。
  先週はスマートバーテンダーズ側だったから今週はピンクエレファント団側。
  いい歌だと思ってはいたが、なぜか誰が歌っているのかまでは響季は気にならなかった。アニメの主題歌やエンディングだけを歌うためにユニットが作られるなどよくあることだからだ。
  その中の人達がDOLCE GARDENだという。

 「えーっ!?あたしあの歌めっちゃ好きだよ!!」

  ホゥホゥとモンキーダンスを踊りながら響季が言う。
  ディスコ世代ではないのに、なぜかDNAに呼応するような心地良さがあった。

 「だからそれを歌ってる人達なんだって!」
 「うん。だから…、えーとこれでしょ?」

  だから知ってるだろうともどかしく伝えてくる柿内君に、響季がパソコンを操作して動画を検索する。
  アルコール・ド・ボンバー今期エンディング曲 《Shake BODY Who? FOO!!》それのフルバージョン。
  新曲だというのに誰かが違法にアップロードしたそれは、日本の子供向けアニメのエンディング曲なのにすでに世界中で何万回も再生されている。

 「ここのコーラスんとこいいよね。すんごいクールなのになんかフワフワする。低いのに甘くってさ」
 「そこはParfaitのパートだな。いつもはソプラノだからそういう歌い方するのは珍しいんだ」
 「そうなんだぁ」

  音と歌声がいっぱいで贅沢なディスコサウンドに身体がワクワクしだし、響季が自然とリズムを取り出す。隣で聴いている柿内君も同様に。
  それは今週も番組が終わってしまう、けれどまた来週には彼らに逢えるという余韻を、切なくも楽しく引き伸ばしてくれた。その心地よい切なさは再生数からして日本のみならず聴いた者全員のハートに響くのだろう。

 「ここの♪テテンテテン、テテンテテンッ、ドゥクトゥン、テテンテテンテファー!のとことか…、あれ?」

  サウンドに身を委ねていた響季が何かに気付く。
  動画が再生されている画面にいくつかの関連動画が並んでいた。

 「あ…」

  そこにある動画の曲名に、響季は見覚えがあった。そしてまさか、そんなという思いが湧き上がり、

 「あーっ!!!」
 「なんだよっ」

  突然の大声に柿内君が驚くが、

 「これっ!これっ!」

  それに構わず、響季がカチカチとマウスをクリックする。
  が、流れてきたイントロをすぐに止める。その手は震えていた。

 「どうしよう…」
 「なんだよ…」

  ただ事ではなさそうな雰囲気を柿内君が訊く。どうにも事態が飲み込めない。

 「これ……、あたしがずっと探してた曲」
 「えっ?」

  言われて柿内君が曲の説明を見ると、オレンジコーギー・ゴーホームという実写映画の挿入歌らしい。
  タイトルは聴いたことがあった。が、内容が思い出せない。
  なんだか評判自体はあまり良くなかった気がするのだが。

 「いや、昔さあ。あたしが小学生の時に…、うわあー、こんなことあるんだ」

  そう言いながら、響季は興奮が消化しきれず顔を手で覆う。
  まさに運命的な出会い。
  だがすべて手のひらで踊らされていたのだということへの喜びもあった。

 「いいだろう。ゆっくり話せ」

  背中をトントンと叩き、柿内君が話の続きを促す。
  口調と手だけは気遣っているようだが、口の端は微かに笑っていた。
  興奮で整理がつかないほどの親友の思い出話。
  それはなんだかとても面白そうだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

処理中です...