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アニラジを聴いて笑ってる僕らは、誰かが起こした人身事故のニュースに泣いたりもする。(上り線)

26、女性声優と女性アニソンアーティストの濃厚な絡み

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 Parfaitのソロパートに入ると、その天使のような澄みきった高音にマイクがキィンと耳障りな音を奏で、pinetの指示で曲がまたフェードアウトする。
  おっ?晴れてきたぁー、というCrispy-Naのノーテンキな声がマイクに乗った後、再度スタッフを交えての会議が始まった。
  音程チェックか、メンバー同士で耳を抑えたまま指で上を指したり下を指したりする。
  メンバーはそれに頷き合い、pinetが手で観覧スペースを、あるいは二階三階のショッピングフロアを示す。
  そこにも手すり越しにステージを覗きこむ観客がいた。
  高い場所からステージ全体を見ようとするファンか、あるいは先程の買い物客と同じように歌声だけで足を縫い付けられた一般客か。
  pinetの声など聞こえないのに、響季は目の前の観客だけでなく、あそこにいる客達にも歌声を届かせろという意味なのだろうと理解した。
  メンバー同士の打ち合わせが済むと、またpinetは音響スタッフのもとに走り寄り、他のメンバーは観客に向き直る。そして-



くりすぴ「はい。で、さっきの続きなんだけど」
 観客  「(笑)」
くりすぴ「どこまで話した?パン?」
ぱるふぇ「さぶぱん(棒」
ぐらっせ「違う違う!(笑)それだいぶ前っ!会場入りしたわもうっ!ミニカー展のっ!」
くりすぴ「あ、そっか」
 観客  「(笑)」


  またしても、一瞬前までの気迫などどこへやら。
  数分前と変わらぬ気のいいお姉さん口調で、また三人はお話の続きを再開した。
  ボケとツッコミと傍観のトライアングル。
  プロの仕事を息を詰めて見守っていた観客達は、瞬時にして緊張の糸を弛緩させる。
  その緩急は心地いいほどだった。



くりすぴ「はたらかないミニカー展ってわりには働いているミニカーが多くてね。なんでだろって思ってそれを近くにいた係員のお姉さんに訊いたのね」
ぐらっせ「とっ捕まえて?」
くりすぴ「そう」
ぐらっせ「クレーマーやんけ(笑)」
 観客  「(笑)」
くりすぴ「違うよ!ギモンに思ったから訊いてみたの!そしたらジオラマの中にいるミニカーは働いてないんで、みたいなこと言われて」
ぐらっせ「んん??」
くりすぴ「でしょ?でもまあそういうもんかぁって思って。そしたらいっぱいミニカーを買えるゾーンがあって。梯子がね、掛けてあって棚に。あのー…、なんていうの?おっきい図書館とかにあるようなさぁ。それ乗って移動できるやつ」
ぱるふぇ「みぎへひだりへ(棒」
くりすぴ「そう、西へ東へ」
ぐらっせ「あー、はいはい。なんとなくわかる」
くりすぴ「その梯子見たらテンション上がっちゃって。出初式ごっこみたいのやっちゃって」
ぐらっせ「エっ!?」
 観客  「(笑)」
くりすぴ「梯子掴んでぶらーんって外側にぶら下がって。ピャー!ぱるたん写真撮ってェー!みたいな」
ぐらっせ「ええー…。っていうかピャーって」
 観客  「(笑)」
くりすぴ「そしたら係のお姉さんに梯子で遊ばないでください!!って怒られちゃって」
 観客  「(笑)」
ぐらっせ「もういい大人ですよぉ?」
くりすぴ「でも怒られちゃって」
ぐらっせ「ぱるすけも?」
ぱるふぇ「怒られた。ギロって目ぇされた(棒」
 観客  「(笑)」
くりすぴ「まあでもその後は、例の、アレですよ。ミニカー大人買いしまくってね。大人だから!(ドヤッ」
 観客  「おおーっ(笑)」
ぱるふぇ「カゴにガッサーって(棒」
くりすぴ「でも周りのお父さんとかもそんな感じだったし。で、ガサーって買ってたら、なんか棚以外の一画にね……、え?」
ぱいんと「リハしまーす」
くりすぴ「ええーっ!?」
 観客  「えーっ?」
ぱいんと「えー?じゃない!」
 観客  「(笑)」
くりすぴ「じゃあ、はい。またあとでねみんな」
 観客  「(笑)」


  Crispy-Naが怒られつつ、またリハーサルが再開した。
  漫才のようなトークからの本物の歌声。
  響季は衝撃に耐えられるようにぐっと足に力を込めるが、こんどは景気のいい管楽器盛りだくさんの ビッグバンド風の音楽が流れてきた。
  身体が勝手にスイングしてしまいそうなゴキゲンなサウンド。
  どこか懐かしさ漂うその音楽に、足を止める人達が何人もいた。
  それがアニソンだなんて気づく人はそう居ないだろう。
  GURASSEのスモーキーな低音を軸に展開していくその曲も、何小節か歌うとまたフェードアウトしていった。
  そしてまた歌声に吸い寄せられ、縫い付けられた人達がそこに留まりトークを耳にする。



くりすぴ「んもーっ。なかなか話進まないよ!」
ぐらっせ「要点だけ話しなさいよっ。大事なトコだけをさ。話長いんさぁ、アンタ」
 観客  「(笑)」
くりすぴ「長いんさぁ(笑)方言出た方言。だからえーとなんだっけ、そうっ!ミニカー売り場の一画にね、そこだけちょっと違うカーが売ってて」
ぐらっせ「カーが(笑)」
くりすぴ「Carが(笑)それに近づいて見てみたら、あのみんな、深夜のラッピングバスって知ってるかな。声優の保呂草恵さんと、榛葉さゆきさんがやってらしてるラジオ番組なんですけど」



  その言葉に響季が息を呑む。
  知ってるも何もない。
  聴いていて、メールを送ったことも読まれたこともある番組だ。
  いや、その番組から出ているミニカー目当てでイベントには行ったようなものだ。
  観覧スペースの前の方で、お調子者のファンが知ってるーと手を上げて言う。



くりすぴ「あ、知ってる?それのミニカーが売っててね。えっと、コレなんですけど。みんな見えるかな」
 観客  「おおーっ」
 観客  「(ざわざわ、ざわざわ)」
くりすぴ「ああ、後ろの方の人見えないか。ゴメンね(笑)」
 観客  「(笑)」
くりすぴ「あのさっきのリハで歌ったんですけど、リンダフォーミュラってアニメの。わたし達はそれのアニメ版主題歌と、あとゲームの主題歌で関わらせていただいたんですけどね。榛葉さゆきさんはそれのヒロインのリンダフォーミュラをやってらして」
ぱるふぇ「そうだね」
くりすぴ「で、どうやらラジオ番組の企画で作ったらしいんですけど。えーっ!?と思って。こんなの作ってらしたんだーっ、はあーっ、これも何かのご縁だわーと思って。これはもう買わねヴァと買わせて頂いたんですけど」
ぐらっせ「買わねヴァと(笑)」
 観客  「(笑)」
くりすぴ「今、ヴァーってなっちゃった(笑)」
ぐらっせ「下唇ヴァーって噛んじゃったねぇ」
ぱるふぇ「ハハハハ(笑)」
くりすぴ「ああっ!見てぱるちゃんに笑顔が!あの滅多に笑わないぱるちゃんに笑顔がっ!」
 観客  「(笑)」
ぐらっせ「えっ?ヴァーで笑うの?ぱるの笑いのツボ、謎っ!」



  笑った笑った!笑顔の少ない末っ子が笑った!とお姉さん二人がキャッキャ騒ぐステージを見ながらも、響季の中に妙な嬉しさがあった。
  あの日、自分も買ったあの山積みのミニカーを買ってくれた人がいたのだ。
  声優ラジオがノリで作り過ぎてしまったミニカーを。
  こんなすごい人達が、面白おかしい人達が作品という糸を大事にしてお買い上げいただいてくれていたのだと。




さゆきとめぐみの深夜のラッピングバス
 パーソナリティ 榛葉 さゆき/保呂草 恵


ネット販売分のミニバスがなぜ即売れしたのかについての推理とご報告


 榛葉 「あ、そうだ。番組で作って売れ残ったミニバスの、それのネット販売分のバスが即在庫切れしたって前に言ったじゃないですか」
 保呂草「あー、ありがたいことですと」
 榛葉 「そんで番組で、わあー、やっぱリスナーさんって全国にいるんだなーって。イベントで買えなかった人待ち望んでたんだなーって言ってたじゃないですか。それについてメールが来てまして」
 保呂草「はい」
 榛葉 「こちら ラッピンネーム ジャッキンさん 『ほろろん、さゆきん、こんばんクラクションプップー』」
 保呂草「プップー」
 榛葉 「『先日DOLCE GARDENさんのライブに行ったのですが、MCでメンバーのCrispy-Naさんがはたらかないミニカー展に行き、我が番組のラッピングミニバスをお買い上げされたとおっしゃってました』」
 保呂草「はい」
 榛葉 「『元々Crispy-Naさんはミニカーなどが大好きで、たまたまこの番組のミニバスが売ってるのを見て、以前主題歌を歌ったアニメに榛葉さんが出てらしたのでそこから縁を感じ、お買い上げいただいたそうです。あのガッチガチの山積み過剰在庫ピラミッドの一画を、あのディーヴァ様がお崩し遊ばれたのです!』」
 保呂草「もう、申し訳ないですほんとに」
 榛葉 「ホントです。そしてとてもありがたいです。えー、『リスナーとしてもとてもありがたいことで』ああ、メールにも書いてあった」
 保呂草「(笑)」
 榛葉 「『また、ネットで即在庫切れしたバスですが、ひょっとしたらライブに来た人達が同じのが欲しいと買ったのではないでしょうか。ネットなどでも【番組サイトで売ってたから同じの買ったよ】【よくわかんないけど出来がいい】【番組聞いたこと無いけどくりすさんが買ってたから同じの欲しくて買った】 というのをよく見ました』という、名探偵メールを頂いたんですがね。あの、コレ。この推理」
 保呂草「えー、……正解です(キリっ」
 榛葉 「(笑)」
 保呂草「このメールにあるライブの日とぉぉぉ、ネット販売開始日がぁああー、んーふーふーふーふー、どぉーにも近くてですねぇぇぇ」
 榛葉 「何畑任三郎だよ(笑)」
 保呂草「ジャッキンさんこれ、この推理、(ダンッ!)正解ですたぶん」
 榛葉 「おっ、机叩いた(笑)」
 保呂草「異議なしです。もうそうとしか考えられん」
 榛葉 「考えられん(笑)」
 保呂草「おそらくうちの数少ない全国のリスナーさん、ではなくっ、DOLCE GARDENさんのもんのすごい数のファンの方々にかなり在庫処理の、後押しやら追い風吹かせてもらったのだと思いますコレ」
 榛葉 「でも正直、若干恥ずかしいですよね。すごいリスナーさんの数いるって思ってたから(笑)」
 保呂草「それはね(笑)でもなんかもう、申し訳ない気持ちでいっぱいなんですけど、単純に役者としては嬉しいよね」
 榛葉 「それはもうそうです!あ、在庫処理じゃなくて(笑)」
 保呂草「じゃなくて(笑)こう、こちらから主題歌歌ってくださったって勝手に縁感じるのはともかくね、アーティストの方から、向こうから役者側に縁を感じてくださるのは」
 榛葉 「嬉しいですホントに。あたしなんか、季節の果物でも贈っておきます。個人的に」
 保呂草「贈っときんさい贈っときんさい。お菓子の詰め合わせとかも贈っときんさい」
 榛葉 「あ、でも以前イベントでご一緒した時に甘いものはそんなにいいって言ってた」
 保呂草「えっ!?そうなの?ドルチェって入ってるのに」
 榛葉 「名前がそうだから差し入れとかで逆に来すぎちゃうんだって」
 保呂草「あー、そっか。じゃあメールに書いてあるから、Crispy-Naさんにはミニカーを」
 榛葉 「ミニ痛車かな(笑)」
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