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アニラジを聴いて笑ってる僕らは、誰かが起こした人身事故のニュースに泣いたりもする。(上り線)
27、こどもさんが我を楽しませよとこちらを見ている
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楽しくもあっという間な、色んな意味でプロ根性も見せつけられたリハも終わると、
くりすぴ「ではこの後ライブがまるまるん、あ、はじまるんでっ」
観客 「(笑)」
ぐらっせ「まるまる(笑)」
ぱるふぇ「まるまる(棒」
ぱいんと「まるまるん」
くりすぴ「もーっ!はじまるんでっ!(笑)待っててください!」
噛んだのをいじりつついじられつつ、四人はステージから降り、脇に設置されたテントへと一度戻っていく。
全面が布で覆われ、中は見えない。
まるでスーパーのヒーローショーの控室のようだ。
本物の歌声を聴かせるディーヴァ達に与えられたにしては随分粗末な控室だが、一般的な彼女達の世間の評価がそれなのだろう。
響季にはそれがなんだか悔しかったが、
「本番であとどれだけ惹きつけられるかな」
零児が周囲を見回しながら呟く。
その声はどこか楽しそうだった。
アニメファンとは違う人種の人達が歌声に引き寄せられ、集まり始めている。その歌がアニソンとは知らずに。
もっとたくさんの人達を巻き込んでもっと面白くなれと言ってるようだった。
本番になってもDOLCE GARDENはリハと同じように歌で魅了し、トークでズッコけさせた。
その愉快な緩急に、更に観客が集まってくる。
そして、リハでも歌われなかったあの歌が遂に披露された。
ぐらっせ「それではぁー、残念ながら次で最後の曲となりました」
観客 「ええーっ!?」
ぐらっせ「アリガト、いい反応アリガト(笑)」
観客 「(笑)」
ぐらっせ「(笑)えー、でもねこの曲はあのー、私達の曲ではなくてですね。今回はあのー、カバーということで」
GURASSEのどこか歯切れの悪い言い方に、響季の中のいよいよあの曲かという想いが確信に変わる。
いや、見に来た大半がそうだろう。
大きいお友達「おおー(笑)」
大きいお友達「ざわざわ(笑)」
ぐらっせ 「あのみんな、薄笑いやめて(笑)事情知らないちびっ子とかいますから」
大きいお友達「(笑)」
注意されながらも大きいお友達寄りの響季はムズムズしだす。
逆にお父さんに肩車されたようなお子様達はきょとんとしていた。
くりすぴ「それでは、スタッフさん、カモーン!」
Crispy-Naのその声に、ステージ上に上がってきたスタッフ達がCrispy-NaとParfaitにそれぞれチェリーを浮かべたクールな色のカクテルグラスの腕章を、GURASSEとpinetにはピンクエレファント団の腕章を渡す。そしてそれぞれが腕につけ、
くりすぴ「というわけでっ!何を隠そうわたしがっ、スマートバーテンダーズのCrispy-Naとっ!」
ぱるふぇ「Parfait(棒」
ぐらっせ「そして私がピンクエレファント団のGURASSEと!」
ぱいんと「pinetです」
SE(ちゅどーんっ!!)
観客「おおおーっ!!」
びしいっと腕章を見せながら各々が決めポーズをすると、スタッフの粋な計らいでご丁寧に爆発音のような効果音が付いた。
観客の殆どがその設定を楽しみ、歓声を送るが、子供達は置いてけぼりだ。
設定や事情がわからず、そうだったの?という顔でオロオロしだす。
その顔を見てすかさずメンバーが説明を入れる。
くりすぴ「や、あの、でもねホラ、これは今日だけでして」
ぐらっせ「そうっ。そうなんですっ。本日この場でお歌を歌うに辺り、今日一日だけスマートバーテンダーズとピンクエレファント団のメンバーになっていいよって」
くりすぴ「わたし達はね、マスタークロードに言われて(笑)」
ぐらっせ「そうそう(笑)私達はブラッディマザー様に言われて」
Crispy-NaとGURASSEが、それぞれスマートバーテンダーズのリーダーとピンクエレファント団のボスに直々に許可を得て、今日だけメンバーにさせてもらったんだよー、よいこのみんなー、という設定を、なぜか半笑いで必死に説明する。
大きなお友達達も半笑いだが、子供たちはそーなんだー、と純真無垢な瞳でそれを聴く。
こうして、子供達はまたしても幸せな魔法にかかっていった。
くりすぴ「それではですねぇ、あっ!もう時間押してるって!」
観客 「(笑)」
くりすぴ「だーあああっ、えー、じゃあ、えー、それでは聴いてくださいっ!アルコール・ド・ボンバー エンディングテーマ、スマエレガールズ 《Shake BODY Who? FOOOO!!》 DOLCE GARDENバージョン!!」
巻きで曲説明を終えると、早々にステージにイントロが流れだす。
生で聞きたかったあの曲に、会場中の大きいお友達がうおわぁっ!と盛り上がる。
いまいち事情がわかってなかった子供達も、耳馴染みのありすぎるイントロにキラキラと目を輝かせる。
「ハーイ?リトル紳士淑女の皆さん?」
「飲み過ぎ注意でグイッとフィーバー。オーケー、レッツパーリーナーイ!」
GURASSEとParfaitによる、ハスキーで小気味いい、子供にもわかりやすいクッソダサいDJ煽り。
それをバックに、ディーバ達が往年のディスコステップを踏みながらアルコール・ド・ボンバー エンディングテーマ《Shake BODY Who? FOOOO!!》を歌い出す。
打ち込み系ディスコファンクなその曲は、管楽器とベースが心地よく、おまけに本日は贅沢な生コーラスも聞けた。
イイモノチームが歌っている時はワルモノチームがコーラス側に回り、ワルモノチームが歌っている時はイイモノチームがコーラス側に回るという構成。
曲に合わせた怪しげかつクールなコーラスに乗せ、まずはスマートバーテンダーズに属する二人がお酒の楽しみ方を歌詞でレクチャーする。
ねえあたし何か食べたいわ。
あなたと愛を語らい、仲間と一緒に。
お一人様も時にはいいわね。
グラスの音が心地いいの。
でも深くは追わないで。早めにバイバイね。
そんな感じの歌詞を、セクシーで微炭酸なCrispy-Naの声と、女の子が好むカクテルのようなParfaitの甘い声がファンキーなメロディに乗せて歌い上げる。
直前まであんなにわちゃわちゃしていたのに歌声はしっかりと安定し、カバーだというのにまるで自分達のもののように歌いこなす。
あまり子供向けなアニソンらしくない歌詞と、およそアニソン歌手らしくない歌声に大人達が盛り上がっていく。
更にはテレビ版ではカットされる、飲酒運転を注意する歌詞もきちんと歌われた。
二番になるとそれまでコーラスに回っていたピンクエレファント側が、こちらはあまり良ろしくないアルコールの楽しみ方をレクチャーする。
さあ日々のストレスをアルコールで洗い流そう。
僕たちは塩すらいらないのさ。
酒を飲めば僕らはひととき王になれる。
愚痴をぶちまけ、隣のやつを殴ってやれ。
大声を出して叫べ。どうせ君の望まない世界さ。
そんな感じの歌詞を、度数が強いのにそうとは気づかず体に染み込むようなGURASSEの心地いい低音と、酩酊状態にも似た人を狂わすpinetの声が歌い上げる。
彼女達は歌を通して大切なことを教えてくれていた。
いや、それはこの曲に限らず、この世に生まれた数多くのアニメソングに言えることだった。
きらびやかで華やかで、少しだけチープなディスコサウンド。
それに絡まるゴージャスな歌声は目の前の観客だけでなく、モールにご来店いただいている客全員に響き渡るように広がっていった。
盛り上がる観客達を見て、なにあの人達誰?誰が来てるの?誰が歌ってるの?と一般客達がステージを指さす。
興味をもった人達によって、係員が用意したDOLCE GARDENのニューアルバムのチラシが面白いくらいにどんどん捌けていく。
通りがかった人達がケータイで目の前で起きている光景を撮影し、ネットにばら撒く。
警備に努めていた係員が仕事を忘れ、ステージに見入る。
周囲にあるオシャレなショップから、オシャレだけど暇をしていた店員が、何だこの曲は、この盛り上がりはと飛び出してくる。
アニメなんて見そうもない女子高生達が誰あの金髪の男の子!かわいー!とはしゃぐ。
歌に身を委ねながら、響季は四方八方で行われているそれらを五感で感じ取る。
楽しさと、よくわからない嬉しさが身体の中に溢れ出していく。
彼らは今歌われている曲がアニメソングだということなど知らないのだろう。
それでも耳を捉えるだけの魅力がそこにはあった。
地方のショッピングモールが一時ダンスフロアとなる。
ファンキーなそのサウンドは、この国に長きに渡って停滞し、低く垂れ込めている時代の暗雲を吹き飛ばすだけの力があった。
自分達だけではどうすることも出来ないそれを、一瞬とはいえ追い払ってくれるだけの力が。
見えないミラーボールがキラキラ回転し、身体の内側から多幸感が溢れだし、自然とクラップしたくなるだけの力が。
曲が終わると、手拍子が大きな拍手に変わり、DOLCE GARDENを暖かく包み込んだ。
世界を魅了するディーヴァ達の地方営業はこうして終わった。
くりすぴ「ではこの後ライブがまるまるん、あ、はじまるんでっ」
観客 「(笑)」
ぐらっせ「まるまる(笑)」
ぱるふぇ「まるまる(棒」
ぱいんと「まるまるん」
くりすぴ「もーっ!はじまるんでっ!(笑)待っててください!」
噛んだのをいじりつついじられつつ、四人はステージから降り、脇に設置されたテントへと一度戻っていく。
全面が布で覆われ、中は見えない。
まるでスーパーのヒーローショーの控室のようだ。
本物の歌声を聴かせるディーヴァ達に与えられたにしては随分粗末な控室だが、一般的な彼女達の世間の評価がそれなのだろう。
響季にはそれがなんだか悔しかったが、
「本番であとどれだけ惹きつけられるかな」
零児が周囲を見回しながら呟く。
その声はどこか楽しそうだった。
アニメファンとは違う人種の人達が歌声に引き寄せられ、集まり始めている。その歌がアニソンとは知らずに。
もっとたくさんの人達を巻き込んでもっと面白くなれと言ってるようだった。
本番になってもDOLCE GARDENはリハと同じように歌で魅了し、トークでズッコけさせた。
その愉快な緩急に、更に観客が集まってくる。
そして、リハでも歌われなかったあの歌が遂に披露された。
ぐらっせ「それではぁー、残念ながら次で最後の曲となりました」
観客 「ええーっ!?」
ぐらっせ「アリガト、いい反応アリガト(笑)」
観客 「(笑)」
ぐらっせ「(笑)えー、でもねこの曲はあのー、私達の曲ではなくてですね。今回はあのー、カバーということで」
GURASSEのどこか歯切れの悪い言い方に、響季の中のいよいよあの曲かという想いが確信に変わる。
いや、見に来た大半がそうだろう。
大きいお友達「おおー(笑)」
大きいお友達「ざわざわ(笑)」
ぐらっせ 「あのみんな、薄笑いやめて(笑)事情知らないちびっ子とかいますから」
大きいお友達「(笑)」
注意されながらも大きいお友達寄りの響季はムズムズしだす。
逆にお父さんに肩車されたようなお子様達はきょとんとしていた。
くりすぴ「それでは、スタッフさん、カモーン!」
Crispy-Naのその声に、ステージ上に上がってきたスタッフ達がCrispy-NaとParfaitにそれぞれチェリーを浮かべたクールな色のカクテルグラスの腕章を、GURASSEとpinetにはピンクエレファント団の腕章を渡す。そしてそれぞれが腕につけ、
くりすぴ「というわけでっ!何を隠そうわたしがっ、スマートバーテンダーズのCrispy-Naとっ!」
ぱるふぇ「Parfait(棒」
ぐらっせ「そして私がピンクエレファント団のGURASSEと!」
ぱいんと「pinetです」
SE(ちゅどーんっ!!)
観客「おおおーっ!!」
びしいっと腕章を見せながら各々が決めポーズをすると、スタッフの粋な計らいでご丁寧に爆発音のような効果音が付いた。
観客の殆どがその設定を楽しみ、歓声を送るが、子供達は置いてけぼりだ。
設定や事情がわからず、そうだったの?という顔でオロオロしだす。
その顔を見てすかさずメンバーが説明を入れる。
くりすぴ「や、あの、でもねホラ、これは今日だけでして」
ぐらっせ「そうっ。そうなんですっ。本日この場でお歌を歌うに辺り、今日一日だけスマートバーテンダーズとピンクエレファント団のメンバーになっていいよって」
くりすぴ「わたし達はね、マスタークロードに言われて(笑)」
ぐらっせ「そうそう(笑)私達はブラッディマザー様に言われて」
Crispy-NaとGURASSEが、それぞれスマートバーテンダーズのリーダーとピンクエレファント団のボスに直々に許可を得て、今日だけメンバーにさせてもらったんだよー、よいこのみんなー、という設定を、なぜか半笑いで必死に説明する。
大きなお友達達も半笑いだが、子供たちはそーなんだー、と純真無垢な瞳でそれを聴く。
こうして、子供達はまたしても幸せな魔法にかかっていった。
くりすぴ「それではですねぇ、あっ!もう時間押してるって!」
観客 「(笑)」
くりすぴ「だーあああっ、えー、じゃあ、えー、それでは聴いてくださいっ!アルコール・ド・ボンバー エンディングテーマ、スマエレガールズ 《Shake BODY Who? FOOOO!!》 DOLCE GARDENバージョン!!」
巻きで曲説明を終えると、早々にステージにイントロが流れだす。
生で聞きたかったあの曲に、会場中の大きいお友達がうおわぁっ!と盛り上がる。
いまいち事情がわかってなかった子供達も、耳馴染みのありすぎるイントロにキラキラと目を輝かせる。
「ハーイ?リトル紳士淑女の皆さん?」
「飲み過ぎ注意でグイッとフィーバー。オーケー、レッツパーリーナーイ!」
GURASSEとParfaitによる、ハスキーで小気味いい、子供にもわかりやすいクッソダサいDJ煽り。
それをバックに、ディーバ達が往年のディスコステップを踏みながらアルコール・ド・ボンバー エンディングテーマ《Shake BODY Who? FOOOO!!》を歌い出す。
打ち込み系ディスコファンクなその曲は、管楽器とベースが心地よく、おまけに本日は贅沢な生コーラスも聞けた。
イイモノチームが歌っている時はワルモノチームがコーラス側に回り、ワルモノチームが歌っている時はイイモノチームがコーラス側に回るという構成。
曲に合わせた怪しげかつクールなコーラスに乗せ、まずはスマートバーテンダーズに属する二人がお酒の楽しみ方を歌詞でレクチャーする。
ねえあたし何か食べたいわ。
あなたと愛を語らい、仲間と一緒に。
お一人様も時にはいいわね。
グラスの音が心地いいの。
でも深くは追わないで。早めにバイバイね。
そんな感じの歌詞を、セクシーで微炭酸なCrispy-Naの声と、女の子が好むカクテルのようなParfaitの甘い声がファンキーなメロディに乗せて歌い上げる。
直前まであんなにわちゃわちゃしていたのに歌声はしっかりと安定し、カバーだというのにまるで自分達のもののように歌いこなす。
あまり子供向けなアニソンらしくない歌詞と、およそアニソン歌手らしくない歌声に大人達が盛り上がっていく。
更にはテレビ版ではカットされる、飲酒運転を注意する歌詞もきちんと歌われた。
二番になるとそれまでコーラスに回っていたピンクエレファント側が、こちらはあまり良ろしくないアルコールの楽しみ方をレクチャーする。
さあ日々のストレスをアルコールで洗い流そう。
僕たちは塩すらいらないのさ。
酒を飲めば僕らはひととき王になれる。
愚痴をぶちまけ、隣のやつを殴ってやれ。
大声を出して叫べ。どうせ君の望まない世界さ。
そんな感じの歌詞を、度数が強いのにそうとは気づかず体に染み込むようなGURASSEの心地いい低音と、酩酊状態にも似た人を狂わすpinetの声が歌い上げる。
彼女達は歌を通して大切なことを教えてくれていた。
いや、それはこの曲に限らず、この世に生まれた数多くのアニメソングに言えることだった。
きらびやかで華やかで、少しだけチープなディスコサウンド。
それに絡まるゴージャスな歌声は目の前の観客だけでなく、モールにご来店いただいている客全員に響き渡るように広がっていった。
盛り上がる観客達を見て、なにあの人達誰?誰が来てるの?誰が歌ってるの?と一般客達がステージを指さす。
興味をもった人達によって、係員が用意したDOLCE GARDENのニューアルバムのチラシが面白いくらいにどんどん捌けていく。
通りがかった人達がケータイで目の前で起きている光景を撮影し、ネットにばら撒く。
警備に努めていた係員が仕事を忘れ、ステージに見入る。
周囲にあるオシャレなショップから、オシャレだけど暇をしていた店員が、何だこの曲は、この盛り上がりはと飛び出してくる。
アニメなんて見そうもない女子高生達が誰あの金髪の男の子!かわいー!とはしゃぐ。
歌に身を委ねながら、響季は四方八方で行われているそれらを五感で感じ取る。
楽しさと、よくわからない嬉しさが身体の中に溢れ出していく。
彼らは今歌われている曲がアニメソングだということなど知らないのだろう。
それでも耳を捉えるだけの魅力がそこにはあった。
地方のショッピングモールが一時ダンスフロアとなる。
ファンキーなそのサウンドは、この国に長きに渡って停滞し、低く垂れ込めている時代の暗雲を吹き飛ばすだけの力があった。
自分達だけではどうすることも出来ないそれを、一瞬とはいえ追い払ってくれるだけの力が。
見えないミラーボールがキラキラ回転し、身体の内側から多幸感が溢れだし、自然とクラップしたくなるだけの力が。
曲が終わると、手拍子が大きな拍手に変わり、DOLCE GARDENを暖かく包み込んだ。
世界を魅了するディーヴァ達の地方営業はこうして終わった。
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