昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

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第二景

5、芸能の神様は見ていてくれない

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 そして二人が大好きな、安っぽくも華やかなフィナーレが終わると、踊り子さん達はなぜか退場せずその場に留まる。
 先程のフィナーレのとは違う、楽しげな音楽も流れてきた。
 舞台両端にいた踊り子さん達だけがそれぞれ下手上手の舞台袖に捌け、

「それではこれからじゃんけん大会となりまーす」

 そんな従業員のアナウンスが聞こえてきた。
 引っ込んだ踊り子さん達がサイン色紙とそこそこ大きな箱型のものを持ってくる。

「ご参加される方は手を上へー。ちなみに勝った方のみで、あいこも負けとさせていただきます」

 なんだなんだと詩帆が状況を飲み込めないでいると、

「えっ?」

 シャオちゃんが突然手首を掴み、腕を挙げさせた。

「それではー。じゃんー、けんー、ポンッ」

 やけに牧歌的なじゃんけんの掛け声に、反射的に詩帆は挙げさせられた手をチョキにする。

「はい、チョキの方のみでーす」

 結果勝ってしまった。

「アォッ」

 対して隣からは悔しそうな声が聞こえた。シャオちゃんは負けてしまったらしい。
 詩帆はすぐに負けるだろうと思っていたが、

「続いてー、じゃんー、けんー、ポンッ。はい、グーの方のみでーす。じゃんー、けんー、ポンッ」

 あれよあれよと勝ち抜いてしまった。
 負けた客がどんどん手を下ろし、詩帆と男性客二人になった。
 景品を見ると踊り子さん達のサイン色紙プラス合同ポラロイド写真と、もう一つはエロDVDボックスのようだった。
 どちらも当たってもかなり困る代物だった。

「残ったのはお二人ということで。ではお二人でじゃんけんしていただいて」

 従業員のアナウンスに、離れた席でお互いじゃんけんをし、

「では、勝った方にはポラ写真を」

 詩帆は負けてしまった。勝った男性客は、お、やったあという顔をするが、

「ええっ?」

 詩帆は困った声をあげる、ということはと。

「負けてしまった方にはDVDボックスを」

 踊り子さんがアハハハーっととてもいい笑顔で、若い女性客には厄介な代物を舞台上から差し出す。
 客からも笑いが起きた。
 ハハハハと詩帆も力なく笑う。
 まあ、いいかと。




 その後。

「急ごう」

 これはまあ見なくてもいいだろう、さっきも見たしという捨てステージを決め、二人は劇場を抜け出すと、ウォーキングゲームの続きを行った。
 向かうのは最終チェックポイントの神社だ。大体施設の近くに行けばチェックしたと見なされるのだが、

「ンンン、きわどいッ」

 シャオちゃんがスマホを手に唸る。GPSのぐらつきでなかなかチェックされない。
 どうやらかなり本堂近くまで行かないといけないようだ。
 二人で階段を登り、玉砂利が敷かれた境内をジャッジャと進む。

「まだ?」
「もう、チョイ」

 そして賽銭箱が見えてきたところで、

「ア、おっけ」
「よし」

 シャオちゃんの声に、もう用はないとばかりに踵を返すと、一人の女性とすれ違った。
 一瞬だったが見覚えがあった。こんな田舎で。
 気の強そうな顔と茶色く染めて真ん中から分けた髪。
 もう少し背があったらちょうどいいのにな、というその女性は。

「あ、あれ?」

 思わず振り返ると女性も振り返った。

「アレレ、踊り子サン?」

 素っ頓狂な声でシャオちゃんが言う。

「ああ、うちのお客さん?」

 確かに先程までステージに立っていたバレエの踊り子さんだった。
 バレエに頼り過ぎの。

「お参り、デスカ?」

 シャオちゃんが訊いてみる。ナンダロウ、神社巡りが趣味なのカシラ、変わってるナという思いを込めて。

「うん。ここ、芸能の神様のとこだから。あの小屋来る時は毎回寄るようにしてんだ」
「ソナンデスカ」
「なんだ、知らないで来たの?」

 笑い混じりに踊り子さんが訊いてくる。

「ワタシたちは、あの、ゲームで」
「へえー。なんか捕まえる系のやつ?モンスターとか」
「ンー、ウォーキングの」

 ややこしいからシャオちゃんがかいつまんで説明すると、


「なーんか健康的だね。ストリップ見に来てウォーキングなんて」

 アハハ、こりゃいいやと踊り子さんが快活に笑う。
 その笑顔を見ながら詩帆が彼女のステージを思い出す。
 それなりに真剣に見ているお客さんが多かった。撮影希望のお客さんも。
 だからこそ伸びないのだ。
 そこそこ人気があり、バレエから培ったスキルがあるからこそ、そこから枝葉が伸びていかない。
 神頼みなんてしてる場合ではないと、誰か教えてあげてと思った。
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