昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

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第二景

10、続いてはお天気でーす

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 香盤が進み、またチームショーとなった。
 が、先程とは少し違った。

『続いてはお天気でーす。おにごろうまるさーん、クソヤシャヒメー』

 まだ真っ暗な場内で。突然そんな呼び込み音声が聴こえてきた。
 どんな名前のお天気キャスターだ、あとどんな名前のマスコットキャラだと詩帆が少しニヤける。
 場内が明るくなると、髪をポニーテルにし、前髪は少しウェーブをつけ、80年代風のちょっとモコついたダサいトレーナーを着たお姉さんが立っていた。

『はあーい、みなさんこんばんわー』
『コぉんばぁンワぁー!』

 お姉さんの声に応えるように子供達の声が、というか明らかに大人数人がふざけて子供の声を出したような声が聞こえてきた。
 舞台には手書きのおひさまぺかぺかのクソテキトーな日本地図が置かれている。

「あれがクソヤシャ」
「ぐフっ」

 日本地図の端っこに巻きグソを頭に載せた謎のキャラクターが描かれていた。
 シャオちゃんが見つけたそれに詩帆が思わず吹き出すが、同時にお姉さんがさっきのアナウンサーと違うことに気付く。
 そうか、お互い役が入れ替わってるのかと予想する。
 不審者役ををやっていた踊り子さんが今はお天気お姉さんになり、女性アナウンサー役をやっていた踊り子さんがおそらくこの後出てくるのだろう。
 あんなかわいいお姉さんがあの不審者役を熱演してたと考えると少し萌えた。
 しかし、あれ?なんだかさっきと雰囲気が違うぞといった空気を感じ取る。

『今夜は西に低気圧が覆われ、明日にはヘクトパスカルが雷の予想を三時間ごとにご覧ください。お昼ごろになると次第に暖かな大雪の恐れありです。雨や雷雨になりそうです。明日は夜にかけては一方で活発な空気が北日本です。このあとそれでは全国の雨予報です。北陸には雷や雨や雷雨の恐れありです。続いて週間天気予報です。お出かけの際はくれぐれも明日はにわか雨、朝は明日の冷え込みが予想されます。
沖縄には冷え込みが収まり、』

 音声を適当にチャカチャカ繋いだヘンテコ天気予報に合わせて、お姉さんがパシパシと日本地図を指し棒で指す。
 それっぽい動きと明らかに間違ってる予報に客席から笑いが溢れる。
 しかし、

『太平洋側には、キャッ!』

 突如お天気お姉さんが驚いたように両手で口元を覆うと、しゅた、っと立ち幅跳びのような動きで舞台袖から不審者が飛び出てきた。
 おっ、ようやくか、といった雰囲気で客席が見守る。
 衣装は先程と同じものだが、顔は目出し帽一個になっていた。
 一度客席に顔を向け、白目を剥いて、うー、ぷるぷるぷる、っと顔を左右に振る。
 単純な顔芸にホッホッホと客席から笑い声が漏れる。

『ちょっと!収録中ですよ!スタッフさん、誰かこの人、キャー!何よその指の動きー!いやらしいいいい!』

 不審者は手の指を全部うねうね動かしながら胸の前でクロスさせたり、うねうね動かしながらコマネチの動きをしてみせた。

『やめてやめて!来ないで!』

 それにお姉さんは指し棒をフェンシングのように扱い、突っついて応戦する。
 それを不審者はサッサと華麗な横移動で避け、客席から笑いを誘うが、一転してナイフを取り出した。
 その先を舌でぺろ、ぺろぉーっと舐めてみせ、お姉さんも表情を強張らせる。
 更に不審者はナイフを縦に持つと、その先を指でゆっくり押す。
 刃がしゅこーっと柄の中に沈んでいった。
 どう見ても嘘んこナイフだった。
 ん?えっ?とお姉さんがそれを二度見し、コントチックな名演技に客席から明るい笑い声があがった。
 不審者はナイフの刃の方を自分に向け、股間にあてがうと、すばやくしゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅここここっと前後させてみせた。
 性的な一人遊戯を彷彿とさせる動きに、客席からアッハッハとまた笑い声があがった。
 こんな閉じた空間の明るいド下ネタに、みんな遠慮なく笑っていた。
 手ではなく腰の方をカクカク動かして柄に自分のモノを収めようとしたり、しゅこしゅこしながらその場をウロウロしたり、もう片方の腕を広げ、どぉーでしょう皆さん、フーっと煽るような動きをしたりと色々バリエーションもみせる。
 それに対しお姉さんが、やめ、やめなさいっ、その卑猥な動きをやめなさいっ、と指し棒で指しつつ動きだけで注意すると、

『キャー!』

 不審者はゾンビのように両手を突き出して迫ってきた。
 そこからは二人の追いかけっこが始まった。

『キャー!来ないでよー!来ないでったらー!待ちなさーい!待ちなさいコラー!キャー!来ないでったらー!』

 天気図を中心に、グルグル回りながら追いかけられてると思ったら追いかけ、また追いかけられ。
 お互い天気図の後ろに隠れ、お姉さんが上手側から顔を出しておでこに手でひさしを作り、キョロキョロと相手を探すと、不審者は下手側から顔を出して客席に両手バイバイ。
 お姉さんがおしりだけ出すと不審者はくるぶしを出してピンと伸びたふくらはぎを見せたりと大騒ぎだ。
 まるでマンガのようなドタバタ劇に客席から遠慮のない大爆笑が起きる。

『はあっ、はあっ!もういい加減に、えっ!?』

 だがしばらくするとお姉さんが舞台中央で膝に手をついて息をするような芝居をし、先程と同じくBGMが緊迫感ある音楽に変わる。
 が、先程とは違った。
 よく聴くとそれは、映画館の上映前に犯罪行為について説明する時に流れてくる曲だった。
 当然不審者は見事なロボットダンスをナレーションに合わせて披露する。
 ちょっとコミカルな動きも加えたそのダンスは見事なものだったが、お姉さんもそれを取り締まるおまわりさん役でダンスに参加する。
 そんなやり取りに客席から楽しげな笑いが起きる。

『はあっはあっ、だから、もういい加減に、えっ?』

 そしてまた疲れ切った様子でお姉さんが息をすると、不審者はその両肩に手を置き、

『チョコバナナ』
『アっ!』
『クリーム餡蜜』
『はゥんっ!』
『…苺ミルフィーユ』
『い、いやあああっ!!』
 
 その意味通り耳元で甘い単語を囁かれ、身体をビクンビクンさせると、お姉さんはなし崩し的に心を許してしまった。
 お天気お姉さんといってもミスキャンパスとかそこら辺なので股はゆるいのだろう。
 ビクンビクンさせた身体を不審者が抱きとめ、優しく優しく舞台に横たわらせる。
 大丈夫?床痛くなあい?大丈夫?という声に出さない、動きだけでみせる気遣いが優しくて面白い。

 そこからの二人の絡みは見事だった。
 BGMがインドっぽいゆったりしたものに変わり、様々な愛の体位を見せてくれた。
 添い寝するように身体を重ねると、不審者が見えない柔らかなナイフで優しく股間を突き上げ、お姉さんがそれに、あ、ゥンと表情で応える。
 トレーナーの裾から手を滑り込ませ、優しく優しく揉みほぐす。
 寝たままのお姉さんの足首を持ち、ぱっかーんと優しく開脚させるとそこに不審者が身体を滑り込ませ、互いの股間を合わせる。
 不審者が頬を優しく手で覆えば、お姉さんがその手に自分の手を優しく重ね二人が見つめ合う。
 48手には届かないが、それに見合うほどの型を次々披露した。
 アクロバットなものあり、密着度が高いものあり。
 目出し帽から覗く不審者の目が優しい。
 帽子から出ている口元も慈愛に満ちた笑みを形作っていた。
 同じ二人で同じような題材で、こうも違うものを見せてくるか、と詩帆は腕組みしながらウムウムと頷いた。

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