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第四回公演
13、ボクの名推理を聞かせよう
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「あとこれ」
ようやく起きた遥心に、詩帆は集めまくった情報を見せる。
『チームショーの件で打ち合わせ。相変わらず写真NG、シャイっこぽんた氏に逃げられるの巻。なんとか口説いて親指だけ出ていただく』
SNSに親指にペンで描かれた慎ましやかな顔が、同じく親指顔に寄りそっている写真が上げられていた。
ぽんた氏とやらはシャイらしいが親指はにっこり顔だ。
「これ、蘭ちゃん?」
友人の親指の形なんて覚えてない。
爪の形ならあるいはと思うがそれも怪しいが、
「……あれ、この人っ?」
詩帆のケータイを奪うようにして見る。
そのSNSのアカウントには藤谷遊麻とあった。
確か、自分が初めて見たストリップでトリをやった人ではなかっただろうかと遥心が脳内を検索する。
「知ってる?」
「見たことある、ような…」
すごいステージだったはずなのに、見たのは一度だけだ。更に月日も経ち、わからなくなっている。
「あとこの人」
詩帆が更に掘り進めた情報を見せる。
「…ん?この人」
「そう」
こちらはアカウント名に島道マキアとあった。
確か詩帆と行った劇場で、同人誌を描いてロビーで売ってた踊り子さんだ。
そちらに方面に詳しく、コスプレ等もし、同人誌を描くほど絵がうまいので是非逢ってみたいと思ったのだが。
遥心が島道マキアちゃんが上げた自分の画像を食い入るように見る。
日に焼けた肌はロコガールのような健康的な魅力を放ち、口はパッカーと開け、白く並びの良い歯を覗かせている。
目は野性的かつ好奇心旺盛な光がある。
これは、と遥心が確信する。この子は、と。
「…かわいい」
「ねっ」
「これは推せる」
「ねっ!」
遥心の推せる発言に詩帆が同意する。
絵がうまくて同人誌を描いてる野心家で、見た目はロコガール。
唯一ステージは見てないが、これは推せると。
「で、この人が」
更に詩帆が探しあてた情報を見せる。
「この、ぽんた氏?って人のおうちに寄ってるんだけど」
「えっ!?」
『呑んだ帰りにぽぽんたくんちにオジャマー。明日から甲府でーす』
という呟きとともに、マキアちゃんがピースしながら湯呑みで何か飲んでいる画像を上げていたが、
「この壁ッ」
その画像を見た遥心がケータイ画面を指差す。
黄ばんだ壁と食器棚。見覚えがあった。
「蘭ちゃんの家だっ!」
それは蘭ちゃんの実家だった。正確には叔父さんの家だ。
一度しか行ってないが覚えている。
マキアちゃんが掲げた湯呑みは、見覚えはないが実家の品のように使い込んだものだ。
蘭ちゃんの叔父さんの家は繁華街から近く、ストリップ劇場もいくつかあった。
そこでの仕事終わりに呑んで、そのまま同業者の気楽な実家に泊まったのか。
遥心と詩帆が顔を見合わせる。
間違いない、と。
踊り子の付き人になると言って姿をくらませた友人は、踊り子になっていた。
「どうする?」
「どうする、って…」
詩帆が訊くが、遥心はまだ戸惑っていた。
「次、この、ぽんた氏?が出てる劇場行くの?」
「ええっと」
一応詩帆が探したが、本人のアカウント等はなかった。どこか劇場の専属踊り子などでもないようだ。
「フリーでやってるの?」
「そうみたい。それで」
詩帆が見つけ出したアカウントを見せる。
本人ではないが、彼女に通じる一人の踊り子を見つけた。
職業は踊り子ではあるが、あまりそうは見えないたぬき顔でメガネを掛けた可愛らしい女性。
好きなものは戦隊、特撮モノ。
友人の趣味と同じだ。
この人の付き人を経て踊り子になったのか。
あるいは趣味があって意気投合して連絡先としてもらったのか。
「この人。この人が」
詩帆が女性の画像を指差す。
プロフィールのところに紅たんぽぽの貸出総合窓口、と書いている。ご要望の方はこちらまでと。
ぽんた氏、ポンちゃん、ポンさん、ポポン氏、ぽぽんた君の名前は紅たんぽぽというらしい。
「蘭、だから、たんぽぽ?」
自分が花の名前だから、芸名も。
だが遥心は信じられなかった。
彼女の、そんな安易なネーミングセンスを。
しかし、それが自分を知る者へのヒントだとしたら。
かつて自分達が劇場を介しての手紙に忍ばせたヒントのように。
まるで、迎えに来て、見つけてと言われてるような気がした。
「この人にコンタクト取れば」
「いや、いやあー、ちょっと待ってちょっと待って」
たぬき顔の女性を見ながら遥心が腕組みする。
ちょっとばかし展開が早いと。
ホシはもう手の届くところにいた。これだけ手がかりがあれば、すぐにでも捕まえられる。
おまけに全国を飛び回っている。それはこちらもだ。
最初の計画通り、偶然を装い逢えそうだ。
そして、向こうは踊り子となっている。ならば、
「ちょっと、さ」
「うん」
遥心がどこか言いにくそうに、一度鼻の頭を指で掻き、
「……見てみたくない?」
「裸?」
「そうではなくて」
遥心がツっこむが詩帆もわかっている。
裸ではない、ショーが見たいのだ。
仲のいい友人が、どんなパフォーマンスをしてるのか。客として見てみたい。
二人が見つめ合う。
小さな好奇心の火をちろちろ燃やしたまま。
お互い、同じことを思っていた。
詩帆が無言のまま画面をスクロールすると、紅たんぽぽのプロフィールが出てきた。
そこにはアニパロチームショー専門踊り子とあった。
やりたいショーがあるけど相方がいなくて実現できないとお嘆きの踊り子さん。ぜひご連絡ください。
作品は古くてもマニアックでも可能な限り対応します。
こちらの脳内にキャラクターや設定を叩き込むための資料などはそちらで用意していただくこともあります。
そんな説明文とともに添付されているのは。
線の細いやや中性的な子が、ごちゃついた楽屋らしき場所でこちらに背を向け、体育座りをしている画像。
剥き出しの背中にはお気軽にご相談くださいという張り紙。
文字の周りには様々なアニメキャラが独特なタッチで描かれていた。
どうあっても顔出しはしないらしい。
更に現時点での出演予定も書かれていた。売れっ子なのか、かなり先まで埋まっているが、
「ここ」
詩帆が画面を指差す。
指差した劇場は、ちょうど取材予定を入れてる劇場跡地に近い。
二人が再度顔を見合わせる。
会うなら、ここでかと。
ようやく起きた遥心に、詩帆は集めまくった情報を見せる。
『チームショーの件で打ち合わせ。相変わらず写真NG、シャイっこぽんた氏に逃げられるの巻。なんとか口説いて親指だけ出ていただく』
SNSに親指にペンで描かれた慎ましやかな顔が、同じく親指顔に寄りそっている写真が上げられていた。
ぽんた氏とやらはシャイらしいが親指はにっこり顔だ。
「これ、蘭ちゃん?」
友人の親指の形なんて覚えてない。
爪の形ならあるいはと思うがそれも怪しいが、
「……あれ、この人っ?」
詩帆のケータイを奪うようにして見る。
そのSNSのアカウントには藤谷遊麻とあった。
確か、自分が初めて見たストリップでトリをやった人ではなかっただろうかと遥心が脳内を検索する。
「知ってる?」
「見たことある、ような…」
すごいステージだったはずなのに、見たのは一度だけだ。更に月日も経ち、わからなくなっている。
「あとこの人」
詩帆が更に掘り進めた情報を見せる。
「…ん?この人」
「そう」
こちらはアカウント名に島道マキアとあった。
確か詩帆と行った劇場で、同人誌を描いてロビーで売ってた踊り子さんだ。
そちらに方面に詳しく、コスプレ等もし、同人誌を描くほど絵がうまいので是非逢ってみたいと思ったのだが。
遥心が島道マキアちゃんが上げた自分の画像を食い入るように見る。
日に焼けた肌はロコガールのような健康的な魅力を放ち、口はパッカーと開け、白く並びの良い歯を覗かせている。
目は野性的かつ好奇心旺盛な光がある。
これは、と遥心が確信する。この子は、と。
「…かわいい」
「ねっ」
「これは推せる」
「ねっ!」
遥心の推せる発言に詩帆が同意する。
絵がうまくて同人誌を描いてる野心家で、見た目はロコガール。
唯一ステージは見てないが、これは推せると。
「で、この人が」
更に詩帆が探しあてた情報を見せる。
「この、ぽんた氏?って人のおうちに寄ってるんだけど」
「えっ!?」
『呑んだ帰りにぽぽんたくんちにオジャマー。明日から甲府でーす』
という呟きとともに、マキアちゃんがピースしながら湯呑みで何か飲んでいる画像を上げていたが、
「この壁ッ」
その画像を見た遥心がケータイ画面を指差す。
黄ばんだ壁と食器棚。見覚えがあった。
「蘭ちゃんの家だっ!」
それは蘭ちゃんの実家だった。正確には叔父さんの家だ。
一度しか行ってないが覚えている。
マキアちゃんが掲げた湯呑みは、見覚えはないが実家の品のように使い込んだものだ。
蘭ちゃんの叔父さんの家は繁華街から近く、ストリップ劇場もいくつかあった。
そこでの仕事終わりに呑んで、そのまま同業者の気楽な実家に泊まったのか。
遥心と詩帆が顔を見合わせる。
間違いない、と。
踊り子の付き人になると言って姿をくらませた友人は、踊り子になっていた。
「どうする?」
「どうする、って…」
詩帆が訊くが、遥心はまだ戸惑っていた。
「次、この、ぽんた氏?が出てる劇場行くの?」
「ええっと」
一応詩帆が探したが、本人のアカウント等はなかった。どこか劇場の専属踊り子などでもないようだ。
「フリーでやってるの?」
「そうみたい。それで」
詩帆が見つけ出したアカウントを見せる。
本人ではないが、彼女に通じる一人の踊り子を見つけた。
職業は踊り子ではあるが、あまりそうは見えないたぬき顔でメガネを掛けた可愛らしい女性。
好きなものは戦隊、特撮モノ。
友人の趣味と同じだ。
この人の付き人を経て踊り子になったのか。
あるいは趣味があって意気投合して連絡先としてもらったのか。
「この人。この人が」
詩帆が女性の画像を指差す。
プロフィールのところに紅たんぽぽの貸出総合窓口、と書いている。ご要望の方はこちらまでと。
ぽんた氏、ポンちゃん、ポンさん、ポポン氏、ぽぽんた君の名前は紅たんぽぽというらしい。
「蘭、だから、たんぽぽ?」
自分が花の名前だから、芸名も。
だが遥心は信じられなかった。
彼女の、そんな安易なネーミングセンスを。
しかし、それが自分を知る者へのヒントだとしたら。
かつて自分達が劇場を介しての手紙に忍ばせたヒントのように。
まるで、迎えに来て、見つけてと言われてるような気がした。
「この人にコンタクト取れば」
「いや、いやあー、ちょっと待ってちょっと待って」
たぬき顔の女性を見ながら遥心が腕組みする。
ちょっとばかし展開が早いと。
ホシはもう手の届くところにいた。これだけ手がかりがあれば、すぐにでも捕まえられる。
おまけに全国を飛び回っている。それはこちらもだ。
最初の計画通り、偶然を装い逢えそうだ。
そして、向こうは踊り子となっている。ならば、
「ちょっと、さ」
「うん」
遥心がどこか言いにくそうに、一度鼻の頭を指で掻き、
「……見てみたくない?」
「裸?」
「そうではなくて」
遥心がツっこむが詩帆もわかっている。
裸ではない、ショーが見たいのだ。
仲のいい友人が、どんなパフォーマンスをしてるのか。客として見てみたい。
二人が見つめ合う。
小さな好奇心の火をちろちろ燃やしたまま。
お互い、同じことを思っていた。
詩帆が無言のまま画面をスクロールすると、紅たんぽぽのプロフィールが出てきた。
そこにはアニパロチームショー専門踊り子とあった。
やりたいショーがあるけど相方がいなくて実現できないとお嘆きの踊り子さん。ぜひご連絡ください。
作品は古くてもマニアックでも可能な限り対応します。
こちらの脳内にキャラクターや設定を叩き込むための資料などはそちらで用意していただくこともあります。
そんな説明文とともに添付されているのは。
線の細いやや中性的な子が、ごちゃついた楽屋らしき場所でこちらに背を向け、体育座りをしている画像。
剥き出しの背中にはお気軽にご相談くださいという張り紙。
文字の周りには様々なアニメキャラが独特なタッチで描かれていた。
どうあっても顔出しはしないらしい。
更に現時点での出演予定も書かれていた。売れっ子なのか、かなり先まで埋まっているが、
「ここ」
詩帆が画面を指差す。
指差した劇場は、ちょうど取材予定を入れてる劇場跡地に近い。
二人が再度顔を見合わせる。
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