昭和90年代のストリップ劇場は、2000年代アニソンかかりまくり。

坪庭 芝特訓

文字の大きさ
113 / 139
昭和90年代のストリップ劇場は2010年代アニソンかかりまくり

2、踊り子たちの要塞に、遊び人と僧侶がやって来た

しおりを挟む
 電車を乗り継ぎ、二人はストリップ劇場 清簾劇場にやって来た。
 比較的近くで、スタンプラリーもやってるとなるとここがヒットした。

「やってるやってる」
「ヤッテルヤッテルー」

 劇場前に『スタンプラリー開催中。詳しくは従業員まで』という張り紙を見つけ、詩帆とシャオちゃんが嬉しそうな声を上げる。

「お、いらっしゃーい。女性のお客さん、2500円です」

 出迎えた従業員に言われた分の紙幣を出し、チケットの半券を貰うと、

「あ、これデスネ」

 噂のスタンプラリーがあった。
 直方体の台の上に事務用のインクと大振りのスタンプが用意されている。
 すぐ近くの壁には台紙が束でぶら下がっていたので、それを一枚づつ取る。
 紙はペラく、表紙にはシャラシャラした布を纏い、シャラシャラした布をなびかせ、顔も下半分を同じシャラシャラした布で隠した、おそらくフリー素材らしき踊り子のイラスト。
 踊り子と聞いて大多数の人が最初にイメージするイラストだ。
 字体や印刷のかすれ具合など、なんとなく遠足のしおりのような作りだが中を見てみると、
 
「へえー」
「オモシロイ」

 詩帆とシャオちゃんが思わず声を上げる。
 簡単な日本列島が描かれた上に、劇場名らしきものが書かれた四角いマスがいくつもあった。
 その周りには電車や飛行機、バイクや車などの移動手段がご提案されている。
 これらを駆使してぜひ全国の劇場を廻ってコンプリートしてくれ、ということか。
 だが劇場がエリアごとに区分けされ、それに応じての景品も貰えると書いてあった。
 要は全劇場分を押さなくても出来る範囲で頑張ればいいらしい。

「では」

 とりあえず詩帆が先に押してみると、台紙には「きょす」と言う文字が押された。よが小文字というギャル文字文化を用いたスタンプだ。
 そして文字の周りを小さい踊り子さんが三人、セクシーなポーズをとって囲んでいる。
 緻密なデザインはよく見ると市販のものではない。
 手彫りの消しゴムスタンプだった。

「スゴイねこれ」
「ホオー」

 押されたスタンプのデザインを見て、シャオちゃんもスゴイデスネと感心する。

「誰が作ったんだろ」

 詩帆が言うが、なんとなく答えはわかる気がした。すると、

「そういうの得意な嬢が彫ってくれたんだよ。スタンプラリーやるっつったら」

 ロビーにいたおいちゃん客が二人の会話を聞き、教えてくれた。
 どこの劇場にもいる教えたがりおいちゃんだ。

「そうなんですか」
「一個一個彫って、劇場に送ったらしいよ」

 それが、詩帆には容易に想像出来た。久しぶりに休みをもらって帰った家か、あるいは乱雑な楽屋でちまちまとスタンプを彫っている姿を。
 きっとものすごく楽しそうなワクワクした顔で彫っていそうな。
 少しでもこの業界を盛り上げようと。そのお手伝いをしようと。
 これは押したくなる。
 もしかして劇場を廻ってるうちに逢えたりしないだろうか。
 そんなことを考え、詩帆がワクワクするが、

「HAーHA―HA!ユアエントリーオーケーイ!」

 シャオちゃんはせっかくだから捺印の勢いがスゴイ入国管理風にダムダム!とインクを付け、 バァーン!とスタンプを押す。しかし、

「シャオちゃん違うよ!きよすは清簾のとこに押すんだよ!」
「エッ?Oh…」

 押す場所は前もって指定されているのに、シャオちゃんはそれを見もせず適当に押してしまった。
 シッケイシッケイと頭に手をやり、もう一枚台紙を貰って改めてスタンプを押した。


 場内に入ると客は少なかったが、少ない客は舞台周りに密集していた。
 二人はとりあえず広々とした後方の席に陣取る。
 丁度今はトップバッターの踊り子さんの撮影ショーのようだが、

「ヨン、バンメ?」

 壁に拡大コピーされて貼られた香盤表を見つつ、シャオちゃんが小声で言う。
 それに、詩帆がそうだねと頷く。
 今回の観劇はSNSを入念にチェックし、当たりハズレの踊り子さんを見極めた。
 二人にとって当たりとは、当然アニソンで踊る踊り子さんだ。
 SNSで好きなものや趣味趣向はわかる。あるいは芸名でも。
 清簾は最低でも一人、コイツぁ臭えぞと自分達と同じニオイを放つ踊り子さんがいた。
 問題は腐女子様かそうでないかだ。
 前者ならシャオちゃんは楽しめるが、詩帆はあまり楽しめない。
 といっても知らない作品のアニソンでも聞けるものはたくさんあるし、あとから答え合わせをするのも楽しいのだが。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...