傷者部

ジャンマル

文字の大きさ
1 / 69

傷者の君へ

しおりを挟む
「奈央!好きだ!」
「え、えっと……時間を頂戴!」

 そうして彼女は引っ越した。このことが原因なのかは分からないが、引っ越す際に彼女は連絡先も何もかも消してから引っ越した。……それが大体一昨年の冬だ。中学二年最後の冬。
 彼女とはずっと幼なじみとして仲良くやってきたつもりではあったけどやはり関係を一歩先の関係にするのは相当悩んだんだと思う。振られた、と自分では理解しているけどその後の引っ越しは完全に何も知らなかったからそれこそ俺のせいだと責任を感じてしまい、必要以上にそこを気にするようになってしまった。

 そこからだと思う。周りの人間とあまり関わろうとしなくなったのは。関われば関わるほど得るものがあれば失うものもあるんじゃないかってちょっとビビってたのもある。まあそんな感じの後悔をして高校にあがった頃には既に高校デビューに乗り遅れ。クラスでは浮いてるし、友達も多いって訳でもなかった。
 もちろん、人と関わりたくないから部活なんてものも入らなかったし、完全に心のシャッターを閉じた状態でもう卒業まで迎えてしまおう。そんな気持ちですらいた。そのはずなんだが……

 俺は今、部室にいる。部活には入らないもんだとずっと思っていた俺が。部室に。

「……さて、時間だな」
「えっと?」
「説明しなかったか?時間だ」
「短いよ!具体的に何するのさ!?」

 緒方由紀。俺をこの怪しい部活に誘ってきた張本人であり、必要以上に言葉を発しないし、クール……ではあると思うけど。とにかく謎が多いミステリアス女子。そんな感じの人だ。
 先程教室をチラチラ覗いていたこの人は、授業が終わると途端に俺が教室から出ようとした所を腕を捕まれここに連れてこられた。その間説明も何も無いし、しばらく教室で椅子に縛られ何も動けない状態で放置された。
 そして1時間ほど経過したタイミングでおもむろに「時間だ」と意味深な言葉を発しつつ立ち上がって目の前に立った。

「ここは傷者部だ。部活、と言えば時間というのも分かるだろ?」

 時計は既に今日の授業が全て終わる時間帯を針が示していた。お陰様で6時間目はバックれることとなり、見つかり次第先生の有難いお話が始まるんだろうなと覚悟しなくてもせざるを得ない状態にさせられる。オマケに謝罪も部活の説明も何も無い。必要以上な事は全て察しろ。そう言わんばかりの態度だった。

「傷者の君を傷者部は歓迎しよう」
「えっと……それで、この部活って?」
「君のような可哀想な傷者が集まる部活だよ。それ以上でもそれ以下でもない」

 と、やはり説明が足りてない説明をされた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...