引きこもりの僕が勇者にされた理由ーnextー

ジャンマル

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伊勢谷ルート

世界線の先へ

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 目的は決まった。千葉を目指し、協力者を見つけ出す。そして――そこから始まるんだ。僕の望んだ世界への実現が。
「……日記、持って行こう」
 旅は長くなる。だから、肌身離さずこの日記を持ち歩くことにした。特に理由はないが、いつか、また美雨さんとめぐりあえるように。
 千葉までは、どう行こう。車? はは。免許持ってないし……どうしたものか。
 ああ。そう言えば、バスがあったな。そうだ、バスで行こう。と、そんな中、電話が鳴る。……非通知。怖いが、とりあえず出てみる。
「もしもし……」
『そちらに車を向かわせた』
 え……? 車をこっちに? 誰だ、あんたは誰なんだ……
 まさか、向こうから接触してくれるのか?
 取りあえず、外に向かった――

「お待ちしておりました」
 待っていたのは、リムジンと、黒服の執事だった。
「えっと、これはいったい……」
「あなた様が、施設を作るという噂を我が主が聞いたものですから」
 主? 誰だ? でも、わかることはある。その人は、金持ちだということだ。
「あの、主って一体」
「行けばわかりますよ。何しろ、あなた様に助けられたんですから」
 いつの話だ? 心当たりがなかった。千葉ではないものの、千葉に近い場所にあるという。
 車の中には、若い女性がいた。どこか、見覚えがあるような……
 それにしても、どこから噂をかぎつけたのやら。そう言えば、三国さんに言わずに来ちゃったな。まあ、いいか……
 女性に話しかけられる。その意味は、よく分からなかったが。
「あなたは、世界の分岐を選べますか?」
「え?」
 そう言っていた。質問の意図はわからないが。でも、分岐という言葉にはいい思い出がないことは確かだ。また、箱の事で何か起こるのか?
 その質問の後、車内は沈黙が続いた……

 沈黙を破ったのは、運転手、もとい、執事だった。
「もうすぐ着きますよ」
 もうすぐ着く。そう言えば、話が続き、沈黙も続いたから、外とかあまり見なかったよな。窓の外を見渡し、現在地がどこかわかるような、標識を探す。
 しかし、次第に僕は思い出す。この道は、一度通ったことがある。
「もしかして、助けたいって言ってるのは、社長ですか?」
「はい。あ、でも、社長の部屋に連れていくまでここがどこか言わない約束なんです。ここで喋ったのは黙っててくださいね?」
 そう言う事だったか。確かに、あの時、「いつか例は絶対にする」そう言ってくれてたよな。
「噂というより、今回の件はたまたまあなたのところのメンバーさんが教えてくれたんですけどね」
 三国さんか? そう言えば、どこに任務に行ったのかは聞いてなかったや。
 そうか。ここでの任務だったのか。
「いやあ、あの時にあなたが助けてくれなかったら、今頃ECO社は潰れてましたよ」
「あはは……たまたま、たまたまですよ」
 そうだ。たまたま、あの時の任務がこういった結果でお礼をされるのだってたまたまだ。
「さて、そろそろつきますよ。でも、その前に」
 執事の男は、一緒に乗っていた女性の方を向くと、ここでよろしいですか? と、車を降りる彼女を見つめていた。
「あの、あの人は?」
「あの人は、ハイネさんです」
 ハイネって、あのハイネ=ブルッフェンか? 世界有数の歌手の?
「あの人が劇団に用があるから乗せてってくれって頼まれたものですから」
 劇団? そう聞いて、外を見渡す。
『シェイクスピア記念劇場』
 シェイクスピアと言えば、「ロメオとジュリー」や、「ハムレット」等、数々の「戯曲」と呼ばれる悲劇を手掛けた天才作家だ。しかし、何故?
「理由はよくわからないんですがね」
 そうですか……そう言うと、再び車は走り出す。
「伊勢谷さん、こんな言葉知っていますか?」
 突然、言われたものだから、反応できなかった。
「『偶然すらも引き寄せてしまう運のいい猫』って」
 ……? それって、確かシェイクスピアの話の「切り裂き魔」の中に登場するジャックが、偶然自分を見た猫に言った言葉だっけ?
「それって、切り裂き魔の中の一説ですよね?」
「ええ。私が思うに、あなたはまさしくその猫だと思うのです」
 そんな事言われても、父さんが僕に世界線を回ってきた中でやっと見つかった世界線だ。とか言ってたし。偶然じゃない気も……
「今の言葉はどうとらえてもらっても結構です。でも、これだけは覚えていてください。猫は、必ず飼い主の元に返ってくるって」
 ? よく、わからなかった。猫なんて飼ってないし、飼う予定もないし。一体どういう?
「さあ、つきました」
 ついたといわれ、外を見渡す。確かに、あの時から結構変わっているが、ECO社だ。
「さあ、ここからはあの女性に案内してもらってください」
 と、指をさされ、待っていたのは、少し薄暗い雰囲気を持っている女性だった。なんだ? この嫌な感じは。
「ああ、彼女はボッチになりたくてあんな感じなだけですので。気にせずに」
 いや、それもどうかと思う。
 取りあえず、言われた通り女性に案内してもらう――

 見覚えのあるドア。社長室前のドアだ。
「……後はあなたが」
 そう、小さい声で秘書子(?)は、言って、仕事にもど……あれ、戻ったのか? 戻ったんだろう。
「さあ、社長が待っているな」
 コンコン。と、ドアをノックする。
 どうぞー。と、聞こえてきた後、ドアノブを回し、社長室に入る。
「やあ! 久しぶりだね。伊勢谷君」
 覚えている。確かに、あの時助けたECO社の社長さんだ。
「久しぶりです。社長」
 そう言うと、まあ座ってくれ。と、部屋の真ん中に設置されている、ソファに座らせられた。
「さて、伊勢谷君。確か、施設を作りたいと思っているんだっけ?」
「ええ。貧しい子供たちを援助する施設……そんな施設です」
「いいじゃないか。それで、その施設開設、うちでやらせてくれないか?」
 まあ、こうなるのは予想できてた。それに、ECO社はあの後、ゲーム会社として残りつつも、住宅の建設や、日曜グッズの開発など。色々なメディアに積極的に取り組む会社に切り替わったと聞いてはいた。まさか、こんな形でお礼をされるとは。
「もちろん。やってくださるのなら、大歓迎です」
 そういうと、社長は嬉しそうに、早速なんだけども――
 と、施設をどういったものにするのか。の話が始まった。でも、作業が進んでいくうちに、どうしても、ハイネさんに言われた言葉を思い出してしまう。
 分岐。それは確かに存在する。それは、自分が経験したことだし、よくわかっている。もちろん、だからこそ、僕の行動は慎重になってしまっていた。間違えた行動をしても、正しい行動をしても、そこから分岐が始まってしまう。それを知ってしまっているから。
「どうしたんです? 浮かない顔をして」
「あ、いえ。少し気になることがあって」
「そうですか。でも、あまり、無理をなさらずに」
 そう言われ、少し肩の力が抜けた気がする。今はこちらの作業に集中しよう。子供たちが、未来をなくさないように――

 その後、施設建設への作業はどんどん進んでいった。施設のデザインなど、難関な場所もあったが、それも乗り越えて。そして、施設の建設をECO社に託し、僕は千葉を目指すことにする。運のいいことに、千葉までは車を出してくれるといってくれた。帰りはどうするんですか? と聞かれたが、帰るつもりはない。全国を回って子供たちを助けて歩く。と、伝えてきた。
 もちろん、車はさっき案内してくれた執事さんの車だ。
 居心地が良かったからか、ためらいもなく乗った。
「さて、千葉までとは言いましたが、どこまで行きましょうか?」
 僕は、父さんの手紙に書かれていた住所を見せる。「かしこまりました」と、車を出発させる。もうすぐ、協力者が。
 車の中で、あまり会話はなかったが、僕は車の中で、再びハイネさんの言葉について考え込んでしまっていた。心配してくれているのか、ちょくちょくサービスエリアで止まって、リラックスしてください。と、そこの一押しの食べ物などを渡された。この執事、すごい。こんな執事が欲しかった人生だった……

 だが、東京のとあるサービスエリアに止まった時に、彼から再び質問をされる。
「そう言えば、ジャンヌダルク。知ってます?」
「ええ……知ってるもなにも、嫌な思い出しかないですけどね」
「……ジャンヌの遺産ですか」
 何故、そこまで知っている。僕は、少し彼を疑い始めた。遺産の事は、一部の人間しか知らないはずだ。だからこそ、色々な組織内で取り合いが発生する。まさか、この男もどこかの組織の……?
「どうしても思い出せない人がいるんですよね。その人は、いつもいつも、いいところで騙すような、そんな人物だった……気がします」
 少し、心当たりがあった。でも、僕にしかその記憶はない。
「もしかして、あなた政府の人間だった……とか?」
「よくわかりましたね。政府直属の特殊部隊の一員だったんです」
 ……なら、やはりケビンの事だろう。
「三国エルザ。知ってますよね? 元気にしてますか?」
 ああ。そう言えば、三国さんもケビンの部隊の一員だったな。
「ええ。今は、彼女にすべて任せてしまっていますけどね」
「そうですか……よかった」
 そう言うと彼と、三国さんがまだ部隊の人間だった時の写真を見せてくれた。その写真は、真ん中に『誰かが居たような』場所があった。おそらく、ここには元々ケビンが移っていたんだろう。
「ここに、誰か大事な人が居たような気がするんです」
 その人は僕が消しました。なんて、言えるはずもない。言ったら、確実に敵をとられそうだし。
「もしかして、エルザは知ってたりするかなー。と思ったんですけどね」
「はは……多分、彼女もあなたと同じことを思ってるんじゃないですか?」
 ケビンの事は、そっとしておくことにした。この世界線にはもうない人間の記憶が戻ったりなんてしたら、何が起こるか。
「おっと、すみません。私情を話してしまって」
「別に構いませんよ」
 彼の話は、興味を持てた。僕が今までしてきたことと、密接な関係があったから。
「そうそう、東京のこの辺りなんですけどね? この辺に、シェイクスピアは住んでたらしいですよ」
 住んでた? 彼は、外国の作家じゃないか?
「シェイクスピアって言うのは、彼の名前を外国に行った際に英語読みにして、一部を合わせたものらしいんです」
「そうなんですか?」
 そんな感じの、歴史の話についても話してくれたりと。彼の話は僕の肩の重りを和らげてくれている気がした。
「さて、あと数時間の辛抱です」
 色々話してるうちに、千葉にはついていた。しかし、目的地へはもうしばらくかかるらしい。
「あともうちょっとですが、もう少しだけ私の話に付き合てくださいね」
 そう言って、僕は彼の面白い話をずっと聞いていた――

 目的地につく。ここからはあなた自信で。そう言って、彼と別れた。
 父さんの手紙の地図を便りに、僕は歩き始めた。
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