俺の兄貴、俺の弟...

日向 ずい

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俺は...絶体絶命ですよね...?(都和目線です。)

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 俺は、いつものように会社で仕事をこなしていた。
 俺は、トイレに行って飲み物を買ってこようと隣の席にいる上城に「...ちょっとトイレに行って飲み物買ってくるから、誰か来たら用件だけ聞いといてくれないか...??」
 俺が、こういうと上城は俺をじっと見て
「...今日の昼飯...オムライス...『あー!分かった...オムライス奢ってやるから。頼む...。』...はい!分かりました!!行ってらっしゃい!!」
 ...上城も...最近ますます悪い大人になったな...。
 なんて考えて俺は、オフィスを出てトイレに行き、帰りに自販機で飲み物を選んでいる時...
「...あれ??...成瀬さん??...どうしたんですか??」
 なんて言って近づいてくるこの子は...久我 小春(くが こはる)と呼ばれる...女性社員だったはず...うわー、運悪すぎるよ...俺...。仕方ない...ここは、会社モードで...。
こう思った俺は、ニッコリと作り笑いをして
「あっ、この間はどうも...えっと、ちょっとトイレに行きたくなったのでそのついでに自販機で飲み物を買っていこうと思いまして...。」
と言ったら
「...もしかして、憶えてくれているんですか??...なんだか、とても嬉しいです!(笑)」
なんて言ってきたので、俺は内心...いや、それは覚えていると思いますよ...あれだけ...グイグイと積極的に来る人なかなかいないと思いますしね...。(笑)と言って、苦笑いしていた。
 ここで何も言わないのも、あんまり良くないと思ったため仕方なく俺は、久我さんに聞いたんだ。
「...えぇ、まぁ、社内では美人で有名だと同僚から聞いたもので...(笑)...それで、久我さんの方は...やはり私と同じでひと休憩ってところですかね...?」
 って言ったら久我さんは、照れたように俯くと
「...えっ!??...まっ...まぁ...そんなところですかね...(笑)」
なんて言ってなんだか少しぎこちない気がするのは、気のせいではないだろう...。
 俺は、テキトーに飲み物を買って早くここを去ろうとしていた...。
 だが、次の瞬間、久我さんの言った一言で...俺は、面倒なことに付き合わされることとなった...。
「...あの~、成瀬さん...?...今日の夜、時間ないですか??...ちょっと仕事のことで聞きたいことがあって...。」
 俺は、自販機のボタンを押そうとしていたところで...固まってしまった。
「...えっ...と、それは...会社では...済ませられないことですか...??」
って言って、久我さんを見て聞くと久我さんは、小さくコクっと頷くと俺に近づいてきて、俺に聞こえる声で
「...成瀬さんにしか...話せないことなので...お願いします...。」
と一際(ひときわ)甘い声で囁かれたため、俺は、一気に不快感に襲われた...。
 身体には、酷い冷や汗が流れていて、今すぐに逃げ出したくてたまらなくなった...うっ...気持ち悪い...。
 俺は、この状況から早く抜け出したくて咄嗟に「...あぁ、分かった...。」と言って引き受けてしまった...。
 あっ...!と思った時には、もう遅かった...。
 久我さんは、目を潤ませて
「...ありがとうございます!!では、今日、仕事が終わったら会社の外の大きな木のところで待ち合わせで...お願いします!!...では、また後で。(笑)」
 こう言って俺をじっと見つめたあとで、仕事に戻っていった...。
 俺は...本当に面倒なこと...引き受けてしまった...どうしよう...うっ...気持ち悪っ...。
  久我から怪しいお願いを聞き入れてしまい...頭を抱えてうなだれる都和なのであった...。

 仕事が終わり俺は、約束の場所に立っていた。
 暫くすると...久我さんが走ってきた...。
 久我さんは、俺を見つけると頬を緩ませて
「...成瀬さん!!...お待たせしました!!では、行きましょうか...!(笑)」
と言っておもむろに俺の腕を引っ張って歩き出した...。
 ...仕方ないから...会社モードで対処しよう...。

俺たちは、会社から少し歩いた居酒屋に入った。
「...それで...俺に聞きたいことって...何かな??」
 俺は、向かいに座る久我さんに、飲み物を頼んで唐突に聞いた。
 ...一刻も早くこの状況から解放されたかったから...用件を早急に済ませて帰って、この乱れた気持ちを尊に癒してもらおう...。
 俺は、内心こう考えて久我さんを見た。
すると久我さんは、困った顔で俺を見て
「...とりあえず、まずは飲みましょうよ!!...ね??」
 こう言って、話を誤魔化してきた...。
 ...俺は、この時察したんだ...やっぱり聞きたいことは、元からなかったんだ...ハァ...どうしよう...とりあえず一刻も早く帰りたい...。
 俺は、こう思い、久我さんに話を合わせてタイミングを狙って途中で用事があると言って帰ろうと考え、久我さんに
「...あぁー、そうですね...。(笑)」
と言って営業スマイルを返した。
 そんな俺に、久我さんも笑いかけてきた。
 そんなこんなで、お酒を飲み、だが俺はお酒を飲みすぎて1回尊に取り返しのつかないことをしてしまったこともあり、お酒を人前ではあまり飲まないようにしている。
 ほんの1時間ほど経った頃、俺は腕時計で時間を確認すると、久我さんを見て
「...すみません...今日、これから用事があるので、もうそろそろお暇(いとま)したいのですが...。」
こう言うと、久我さんは、お酒のせいか潤んだ瞳で俺を見ると
「...えっ...でも、まだ私聞きたいこと聞いてなかった...。...どうしても今日聞いておきたいことだったのに...成瀬さん...その用事は、絶対に今日じゃないと...ダメですか...??(泣)」
 なんて言って俺の隣に来ると腕を掴んで、帰るな...と目で促してきた...はっきりいって怖かった...ここで帰ったら何されるかわからないと直感的に思ってしまい、俺は仕方なく...立とうとして半分あげていた腰をゆっくり床につけると
「...すみません...では、あともう少しだけ...。」
 こう言った俺を久我さんは、そう来なくっちゃ!という顔で見つめてきて、俺の隣に落ち着くと、腕を絡ませてきた...。
 ...仕事と割り切っていなかったら、俺は崩壊していたと思う...とても嫌で...気持ちも悪かったが...あと少しあと少しと必死に自分を説得すると...久我さんに笑顔を見せて必死に話を合わせた...。

それからどれだけ経っただろう...その後も何回か帰るタイミングを図って久我さんに声をかけたが...上手い事言って全く帰らせてくれなかった...。

 ...そして今、俺のすぐ横には酔いつぶれた久我さんが机に突っ伏しており...俺は、本当に帰ることが出来なくなってしまった...。
 仕方なく久我さんに
「...久我さん...お店もう終わりですよ...ほら、大丈夫ですか...?...ハァ、仕方ないな...。」
俺は、全く反応のない久我さんに諦めてため息をつくと、居酒屋の店員さんにタクシーをお願いした。
 暫くしてタクシーが来ると、会計を済ませて俺は久我さんの肩を担いで店の外に出た。外に出ると、タクシーに久我さんを乗せて、久我さんに
「...久我さん!!...起きてください!!...お家は、何処ですか??...久我さん!?」
俺が、必死に久我さんを起こそうと声をかけたが、久我さんは...全く起きる気配がなかった...。
 俺は...仕方なくタクシーに乗り込むと運転手に近くの泊まれる所へ...と頼んだ。

 その様子を、帰りが遅いと心配して街中を探しに来ていた尊に見られていたとも気付かずに...。

 俺は、タクシー代を払うと久我さんを担ぎホテルへと入っていった。
 ホテルの一室に入ると久我さんを椅子に座らせて俺は、部屋を出ようとした...が、眠っていたはずの久我さんが、俺の腕を掴んで引き止めてきた。
 俺が、「えっ...」と小さく零すと、久我さんは
「...どこに行くの??...都和さん...もう逃げられないわよ...だって...。」
 目の前の俺をじっと見つめて気味の悪い笑みを浮かべた久我さんに違和感を覚えた瞬間...いきなり首に鋭い痛みを感じたかと思ったら...意識を失って床に倒れ込んでしまった...。
 倒れた都和の背後には、一人の男が立っており、そいつは久我を見ると
「...久我ちゃん...これで本当に僕ら一緒になれるんだよね...??」
と言って久我の方に近寄ると久我は
「...えぇ、ありがとね...。」
と言い、男に部屋を出るように促した。
 男は、素直に部屋を出ていった...。
「...馬鹿ね...私が、あなたを好きになんてなるはずないじゃない...。(笑)」
と言ってさっきの男が出ていったドアの方をじっと見つめていた。
 次に地面に倒れている俺をじっと見つめて、久我さんは
「...どこにも行かせないし...絶対に私のものにしてみせるから...ねぇ...都和さん...?」
 俺は、完全に油断していたんだ...本当に浅はかだった...今後悔しても...もう遅いけど...。

 その頃、尊は、思い出の公園に来ていた。
「...うっ...やっぱり...にーちゃんには、女の人が...いたんだ...。...俺が...子供だったから...子供だったから...きっと飽きられちゃったんだ...昨日の約束も...きっと嘘だったんだ...。...兄貴なんて...兄貴なんて大嫌いだ!!!(泣)」
 尊は、薄暗い公園の中で静かに泣いていた...。
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