ファンタジア！！

第4章「乙四の開幕と奏也の危機。」

「七緒と七緒の兄さんとの話し合い。」

 七緒は目の前にいる、母親のお姉ちゃんの息子である亀山 宗哉（かめやま しゅうや）に対して、盛大に喧嘩を売ったのだった。

 そんな七緒の様子に、亀山さんは大きな声で七緒を叱りつけたのだった。

「七緒！？？？お前はいつから目上の人に対して、そんな言葉を使うようになったんだ。いつもいつも会う度に言っているだろう？？？...なんで、お前はいつも生意気でシャイボーイ一匹狼に憧れてる中二病寄りの、でもちょっとだけおじいさん要素を兼ね備えているかもしれない一面を持ち合わせているように見せているのだが、実際は全くの脳なしでいつもいとこである俺たちを困らせるよな事をしでかしている、いたずらっ子のイタズラボーイになんぞなってはいけないと...！！！！（はぁ...疲れた...酸素ほしっ。）」

「いや、なんだよ！！！今の宗が言っている言葉の真意がよく分からないんだけど！！！それ、絶対9割の人は理解してくれないし...理解どころか、このややこしい言葉の言い回しのせいで、読者がいなくなったらどうしてくれるんだよ！！！！！この馬鹿しゅうアイスめが！！！」

「あー！！！！言ったな！！！この野郎！！！！俺が、どれだけ太陽の光に強いと思っているんだ！！！！俺の光合成率をなめるなよ！！！！還元率は、みんなビックリ100％だぞ！！！...って、そんなこと言ったら、お前のつまらんギャグのせいで、読者が凍死したらどう責任取るつもりだよ！！！！訴えられてみろ！！この小説書いてる人に、俺ら抹殺されるかもしれないんだぞ！！！！そうなったら、俺が必死に集めた歴代のちょーレア物の、爪楊枝コレクションも木っ端微塵...無くなるって事だろう？？？？そんな事になったら、お前のこと呪ってやるからな！！！」

「宗...いい加減にしろよ！！！！俺たちは、スマートでかっこいいイケメンのファンタジアっていうアイドルになる設定が、しっかりと組み込まれているんだから、こんな10割方ギャグ漫画にありそうなネタふっかけてきて、俺たちの印象がアイドルからお笑いドルになっちゃったら、どう責任取ってくれるんだよ！！！！俺は絶対に、熱湯風呂に落とされる仕事だけは...やりたくないからな！！！！」

 この変な茶番劇がいつまで続くのか心配になった俺は、痺れを切らして目の前で何故か変顔対決をしながら、言い合いをする七緒と亀山さんにこう声を掛けた。

 そんな俺と同じく、隣に控えていた優が続けて口を開いたのだった。

「ちょっと！！！変顔対決するのか、ギャグセンスが微妙な言い合いをするのか、それともこの話を...ファンタジアの過去話を、お笑いドルズに変更して続けるのか...でもきっと、この話を書いているめんどくさがり屋で頭のねじが外れまくっている作者には、どの意見も嫌がられるだろうがな。今、こうして俺たちが話し合っているのだって、作者さんは携帯がパソコンをペンペン...カチカチと叩いているわけだし...あんまりこれで尺とると、俺たちの過去話がなくなって、俺たちの思い出までもが消えてしまうかもしれないけど...。それが嫌なのであれば、早急にこの状況を説明するに限ると思いますけどね？？？ねぇ、虎雅さん？？？？そう思いますよね？？？」

 俺の横で目を点にしていた虎雅さんは、俺の言葉で我に返ると、咳払いも早々に七緒と亀山さんにこう言った。

「コホンっ！！...とにかく、どうして奏也がピンチの時に、お前はいとこである亀山さんがいる空港の案内室へと、足を運んでいたのか。理由を聞かせてもらおうか？？？七緒くん？？？」

「（うぎゃ！！リーダーが君付けしてる...！！！これオコだよっ！！最怒だよ...！！）...はっ、はい！！！！虎雅さん！！！すべて、綺麗さっぱりお話しさせていただきます！！！！！」

 虎雅さんの、明らかに怒っている様子に、さっきまで余裕をかましていた七緒は、冷や汗をかきながら、目の前にいる虎雅さんを、これ以上刺激しないように最新の注意を払い、こうなった経緯を説明しようとしたが...。

「実は...『七緒は悪くないですよ？？？七緒は、月並みが、今日ここで演奏会が出来るように、俺の元に頼み込みに来ただけですよ！！！』...わっ！！！この馬鹿しゅう！！！！お前は、何言ってるんだよ！！！それは内緒にしてって、言っただろうが！！！！あー、結局全部しゃべらないといけなくなっただろうが...。実はな、昨日皆が話し合いをしている時に、きっと月並みの皆なら後先考えずに行動を取っちゃうと思ったから、宗に話をして、今日...月並みがここで演奏会をする許可を取ろうと思って...。で、今に至るって訳...。まぁ、なんの相談もなしに...その上、黙ってて悪かったと思っている...ゴメン。」

 七緒の言葉に、虎雅さんは大きく目を見開いたかと思ったら、七緒の目の前まで歩みを進め、勢いよく頭を下げたのだった。

「七緒...ごめんな。そんなことだとは知らなくて、勝手にべらべらと言いたいことを...本当に申し訳なかった。」

「...そんな、虎雅さん！！！俺は、言われて当然ですから...頭上げてください！！（虎雅さん、後々怖いしなぁ...。）」

 こう言った七緒と虎雅さんの様子に、亀山さんは、抱えていた書類を机の上に置き、話の話題を変えたのだった。

「...あの～、月並みのみなさん？？？今回の演奏会は、この書類を出していただければ、特に罰則もなしに事を済ませることが出来るので、出来ればこの書類を書いてから...そのぉ...ねぇ...。」

 亀山さんの言葉に、虎雅さんは照れたように頬を赤く染め、目の前の亀山さんから受け取った書類に、各自署名するように促したのだった。

 そうして空港での演奏会は、幸い七緒の配慮により、大事には至らず無事に案内所から解放されたのだった。

 空港の待合室では、俺の両親が椅子に座って俺たちのことを待っていた。

 俺の様子をみた途端、目の色を変えた両親が走り寄ってきた。

 きっと...ひどいこと言われる...。

 俺は、母親の顔色を見ながら、内心こんなことを...母親は、俺を過去に一度も認めてくれたことは無かったから、こう考えることも、妥当なんだけどな。

 緊張感を抱えている俺の目の前まで来ると、母親は俺の顔をじっと見つめて、静かに息を吸うとこう言った。

「奏也？？？あなたの声は...ロック向きね？？？『...えっ。』...私は、何か重大な勘違いしていたのかもしれないわ。あなたの、あんなに楽しそうな顔...あなたを生んでから、一度も見たことはなかったわ！！もし良ければだけど、あなたの夢、私にも応援させてちょうだい？？？...駄目かしら？？？（笑）」

 母親の言葉に、俺は目をキラキラさせて明るい声色こう言った。

「もちろんだよ、母さん。俺を誰だと思っているの？？？俺は...紛れもなくあなたの息子でしょ？？？（笑）違うの？？？それとも、橋の下で拾ってきたとか...？？」

 俺のこの言葉に、母親は嬉しそうな顔をして、俺のことを優しい香りで包み込むように抱きしめてくれた。

 この時...俺は初めて、親の愛情というものを知ったのだった。

 初めて親から受ける愛情は...少し照れくさいけれど、世界で一番ステキなものだと、俺は母親に抱きしめられながら、静かにこう思うのだった。