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第4章「乙四の開幕と奏也の危機。」
「運命の賭け。」
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父親の言葉に対して、母親は苦い表情をしたが、周りの視線に気がついたことで渋々了承してくれた。
俺は、父親の顔を一瞬だけ見て微笑むと、月並みの皆にこう声を掛けた。
「みんな...その、お願いがあるんだ。俺と...月並みとして、最初で最後になるかもしれない演奏会をやってくれないか???」
俺の言葉に、虎雅さんが黙ったまま俺に近づいてきて、俺の前まで来ると静かにこう言った。
「何馬鹿なこと言ってるんだよ。『えっ...ごめん。そうだよな...みんな『お前は...正真正銘の馬鹿なのか!!?お前は、月並みのメンバーなんだから、お願いしなくてもいいだろうが...それともなんだ???お前は、月並みのメンバーにはやっぱり成りたくないって事なのか???」
この瞬間、虎雅さんの言っていることが理解でき、俺は虎雅さんの優しさに涙が自然と出てきて、勢いよく月並みのみんなに頭下げた。
「やっぱり俺は、一生月並みのメンバーとして音楽をやっていきたいです。これからもよろしくお願いします。」
俺はこう言うと、皆が楽器を抱えて準備をしている中央に立ち、勢いよく息を吸うと、皆がさっき弾いていた曲を歌い出した。
俺の様子に、母親は初めこそ納得のいかない顔をしていたが、曲のサビに入る頃には、じっと俺たちの様子を見つめてくれていた。
そうして俺たちの演奏会は無事終わった。
でも、ただひとつ、俺が納得いかなかったのは.........俺のことをいつも守ってくれていた七緒が...この場にはいなかった事であった。
俺は、七緒がなぜ居ないのか気になっていたが、そんな俺の疑問を吹き飛ばすように、俺たちの歌を聴いた男が、俺たちに向かって罵声を浴びせてきた。
「うるせーな!!!下手な演奏をこんな公共の場所でやるんじゃねぇよ!!!常識わきまえてから来いよな!!!この下手くそ!!」
この男の言葉を開始の合図ととった周りの大人達も、次々と非難の声を俺たちに向けてきた。
「ほんとに...どうせ誰にも許可取ってないんだろ???お前らの事を訴えることだって出来るんだぞ???」
「あー、お前らのせいで俺の鼓膜が破れたんだけど、どう責任取ってくれるんだよ???慰謝料払えよ!!」
俺は目の前で声を荒げている人たちに、何も言えず、どう対処しようかと慌てていたとき、空港の案内放送が聞こえてきた。
「只今、とう空港で音楽を披露されていた月並みの皆さんは、至急案内カウンターまでお越し下さい。お話ししたいことがございます。」
この放送と同時に、周りにいた難癖をつけてきた人たちは、喧嘩を売るような表情を俺たちに向けて、去り際に一言『ほら見ろよ、警察沙汰だな。(笑)』と言って、俺の顔につばを吐きかけたのだった。
俺は、怒りもフツフツと湧いていたのだが、何よりも月並みが馬鹿にされたのが悲しくて、マイクをぐっと握りしめていた。
言われた通り、案内カウンターに向かうとそこにいたのは、さっきまで探していた七緒だった。
七緒は、俺たちの顔を見ると一言『遅くなってごめん、少しやらないといけないことがあって。』と言って、その後は何も言わずに、顔を地面に向けていた。
そんな七緒の様子に月並みは何も声を掛けることが出来ず、じっとうなだれる七緒をただ見つめていた。
すると、目の前にあるstaff onlyの扉が開き、中から何か書類の束を抱えた男の人が姿を現した。
「お待たせ致しました鶴来七緒様。...あー、この方達が例の...。」
「あっ、ありがとうございます。はい、出来れば月並みのメンバー全員分...『分かりました。ではそのように。』...お願いします。」
七緒が男にこう告げると、男は納得したように、また奥の部屋へと戻っていった。
七緒の行動の真意が分からず、俺は目の前で普通の顔をしている七緒に、声を掛けようとしたが、そのタイミングは虎雅さんによって奪われてしまうこととなった。
「...おい、七緒。お前なんで空港の演奏会に来なかったくせに、こっちの案内所でそんな余裕そうな顔で、座ってられるんだよ!!!!お前とずっと一緒にいた奏也が、両親のせいで海外に飛ばされるかもしれないっていう時に、どうしてそんなに平常心を保っていられるんだよ!!!!お前は、奏也と別れてもいいって言うのか??月並みとしてこれから頑張っていこうって言っていたのだって、お前にとっては何の決意でもなかったってことなのか???おい、なんか答えたらどうなんだ!!」
「ちょっと虎雅っ!!!ここで殴り合いは駄目だよ!!!!ほら、分かったら七緒の首から手を放せ!」
虎雅さんは、目の前で余裕そうな顔をしていた七緒の腕を引き、椅子から立ち上がらせると、洋服の襟を勢いよく掴み、次の瞬間空いた方の手で七緒の頬めがけてビンタをかまそうとした。
だが、その状況にまずいと思った翔真さんは、虎雅さんの振り上げていた手首を掴むとその動きを制した。
そんな絶命のタイミングに、さっき書類を抱えて俺らの前に現れた男の人が、再度staff onlyから現れた。
その人は、俺たちの様子を目に留めた瞬間、焦った顔でこう言ってきた。
「大変お待たせ致しました。鶴来七緒様...さきほどのお手続き...って、一体何をやっているんですか!???...いや、理由は何でもいい。とりあえず一旦落ち着いて!!何があったのかは後で聞きますから!!!あー、この際なんで言っておくけど...七緒!お前は一体何をしでかしたんだ!!!他人様を怒らせたらいけないだろう???『はぁ!??なに???俺が悪いわけ???兄さんって、何でも俺のせいにするよね???ほんと、そういう所昔から変わってない...。あー!腹立つ!!』...お前に言われたくねぇーよ!!」
目の前にいる男の人の言葉に、頭が追いつかず、その場にいた全員が七緒と男の関係に対して、頭上に?マークが浮かんでいた。
そんな俺たちの沈黙を破ったのは、七緒だった。
「...悪い。みんなには言ってなかったけど、この人は...俺の母親のお姉ちゃんの息子なんだ...。つまり、俺のいとこってわけで、一応親戚でもある...。『おい、その一応って何だよ。俺と親戚じゃ不満なのかよ!?』...あぁ??んな事言ってないだろ!??...大人のくせして喧嘩ふっかけんなよな!!!」
この言葉に、周囲にいた仲間全員が目を点にしていた。
俺は、父親の顔を一瞬だけ見て微笑むと、月並みの皆にこう声を掛けた。
「みんな...その、お願いがあるんだ。俺と...月並みとして、最初で最後になるかもしれない演奏会をやってくれないか???」
俺の言葉に、虎雅さんが黙ったまま俺に近づいてきて、俺の前まで来ると静かにこう言った。
「何馬鹿なこと言ってるんだよ。『えっ...ごめん。そうだよな...みんな『お前は...正真正銘の馬鹿なのか!!?お前は、月並みのメンバーなんだから、お願いしなくてもいいだろうが...それともなんだ???お前は、月並みのメンバーにはやっぱり成りたくないって事なのか???」
この瞬間、虎雅さんの言っていることが理解でき、俺は虎雅さんの優しさに涙が自然と出てきて、勢いよく月並みのみんなに頭下げた。
「やっぱり俺は、一生月並みのメンバーとして音楽をやっていきたいです。これからもよろしくお願いします。」
俺はこう言うと、皆が楽器を抱えて準備をしている中央に立ち、勢いよく息を吸うと、皆がさっき弾いていた曲を歌い出した。
俺の様子に、母親は初めこそ納得のいかない顔をしていたが、曲のサビに入る頃には、じっと俺たちの様子を見つめてくれていた。
そうして俺たちの演奏会は無事終わった。
でも、ただひとつ、俺が納得いかなかったのは.........俺のことをいつも守ってくれていた七緒が...この場にはいなかった事であった。
俺は、七緒がなぜ居ないのか気になっていたが、そんな俺の疑問を吹き飛ばすように、俺たちの歌を聴いた男が、俺たちに向かって罵声を浴びせてきた。
「うるせーな!!!下手な演奏をこんな公共の場所でやるんじゃねぇよ!!!常識わきまえてから来いよな!!!この下手くそ!!」
この男の言葉を開始の合図ととった周りの大人達も、次々と非難の声を俺たちに向けてきた。
「ほんとに...どうせ誰にも許可取ってないんだろ???お前らの事を訴えることだって出来るんだぞ???」
「あー、お前らのせいで俺の鼓膜が破れたんだけど、どう責任取ってくれるんだよ???慰謝料払えよ!!」
俺は目の前で声を荒げている人たちに、何も言えず、どう対処しようかと慌てていたとき、空港の案内放送が聞こえてきた。
「只今、とう空港で音楽を披露されていた月並みの皆さんは、至急案内カウンターまでお越し下さい。お話ししたいことがございます。」
この放送と同時に、周りにいた難癖をつけてきた人たちは、喧嘩を売るような表情を俺たちに向けて、去り際に一言『ほら見ろよ、警察沙汰だな。(笑)』と言って、俺の顔につばを吐きかけたのだった。
俺は、怒りもフツフツと湧いていたのだが、何よりも月並みが馬鹿にされたのが悲しくて、マイクをぐっと握りしめていた。
言われた通り、案内カウンターに向かうとそこにいたのは、さっきまで探していた七緒だった。
七緒は、俺たちの顔を見ると一言『遅くなってごめん、少しやらないといけないことがあって。』と言って、その後は何も言わずに、顔を地面に向けていた。
そんな七緒の様子に月並みは何も声を掛けることが出来ず、じっとうなだれる七緒をただ見つめていた。
すると、目の前にあるstaff onlyの扉が開き、中から何か書類の束を抱えた男の人が姿を現した。
「お待たせ致しました鶴来七緒様。...あー、この方達が例の...。」
「あっ、ありがとうございます。はい、出来れば月並みのメンバー全員分...『分かりました。ではそのように。』...お願いします。」
七緒が男にこう告げると、男は納得したように、また奥の部屋へと戻っていった。
七緒の行動の真意が分からず、俺は目の前で普通の顔をしている七緒に、声を掛けようとしたが、そのタイミングは虎雅さんによって奪われてしまうこととなった。
「...おい、七緒。お前なんで空港の演奏会に来なかったくせに、こっちの案内所でそんな余裕そうな顔で、座ってられるんだよ!!!!お前とずっと一緒にいた奏也が、両親のせいで海外に飛ばされるかもしれないっていう時に、どうしてそんなに平常心を保っていられるんだよ!!!!お前は、奏也と別れてもいいって言うのか??月並みとしてこれから頑張っていこうって言っていたのだって、お前にとっては何の決意でもなかったってことなのか???おい、なんか答えたらどうなんだ!!」
「ちょっと虎雅っ!!!ここで殴り合いは駄目だよ!!!!ほら、分かったら七緒の首から手を放せ!」
虎雅さんは、目の前で余裕そうな顔をしていた七緒の腕を引き、椅子から立ち上がらせると、洋服の襟を勢いよく掴み、次の瞬間空いた方の手で七緒の頬めがけてビンタをかまそうとした。
だが、その状況にまずいと思った翔真さんは、虎雅さんの振り上げていた手首を掴むとその動きを制した。
そんな絶命のタイミングに、さっき書類を抱えて俺らの前に現れた男の人が、再度staff onlyから現れた。
その人は、俺たちの様子を目に留めた瞬間、焦った顔でこう言ってきた。
「大変お待たせ致しました。鶴来七緒様...さきほどのお手続き...って、一体何をやっているんですか!???...いや、理由は何でもいい。とりあえず一旦落ち着いて!!何があったのかは後で聞きますから!!!あー、この際なんで言っておくけど...七緒!お前は一体何をしでかしたんだ!!!他人様を怒らせたらいけないだろう???『はぁ!??なに???俺が悪いわけ???兄さんって、何でも俺のせいにするよね???ほんと、そういう所昔から変わってない...。あー!腹立つ!!』...お前に言われたくねぇーよ!!」
目の前にいる男の人の言葉に、頭が追いつかず、その場にいた全員が七緒と男の関係に対して、頭上に?マークが浮かんでいた。
そんな俺たちの沈黙を破ったのは、七緒だった。
「...悪い。みんなには言ってなかったけど、この人は...俺の母親のお姉ちゃんの息子なんだ...。つまり、俺のいとこってわけで、一応親戚でもある...。『おい、その一応って何だよ。俺と親戚じゃ不満なのかよ!?』...あぁ??んな事言ってないだろ!??...大人のくせして喧嘩ふっかけんなよな!!!」
この言葉に、周囲にいた仲間全員が目を点にしていた。
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