ファンタジア!!

日向 ずい

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「活動開始!!...サークルの謹慎も解禁だー!」

「三津さんと交換条件。」

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 俺は、三津さんに連れられて、人気の無い路地裏の通りを歩いていた。

 三津さんが、さっき言っていた言葉を思い出すと、やはり三津さんのオモチャにされることが、優を救うための交換条件なのではないのかと、本気で思えた。

 そのせいもあってか、俺の一歩前を歩く三津さんを追いかける足が、時折止まりそうになった。

 だが、三津さんと約束したことは絶対...。

 それが旧ファミリーのボスである、三津さんの性格だから...裏切ることは、イコール死を意味する。

 さすがに俺だって、そのくらいのことは容易に理解できた。

 俺は、震える足を必死で動かし、目の前を歩く長身の三津さんを追いかけた。

 早く、この地獄のような時間が終わってくれればいいとさえ思っていた。

 そうして暫く歩いた後...前を歩く三津さんが不意に足を止めた。

「おい、着いたぞ???雅(みやび)...お前の覚悟を、早速見せてもらおうか???」

 俺は、三津さんの言葉に背筋に嫌な汗が伝うのが分かったが、ここまで来ては、もう腹をくくらなくては...。

 とこう考え、俺は三津さんを真っ直ぐ捉え、こう言い放った。

「...はい、もう腹はくくってます。今夜は三津さんを楽しませられるように、精一杯頑張ります。」

「...あぁ、雅は初初しいからな。(笑)...せいぜい可愛く...頑張れよ???」

 「...っ。」

 三津さんは、俺を振り返りこう言うと、薄暗い路地の中にある、いかがわしい雰囲気の漂うお店へと足を進めていった。

 俺は、深い呼吸を一つすると覚悟を決めて、三津さんの後を追い、店へと足を踏み入れた。

 店の中は少し埃っぽかったが、そんな事が気にならないくらい俺は、三津さんの事が怖く見えていた。

 暫く狭い通路を歩くと、大きな扉の前に出た。

 俺は、何も言わない三津さんをじっと黙って見つめていると、三津さんは、いきなり背後に立っている俺を振り返ると明るい口調でこう言った。

「なぁに、そんなに緊張することはないさ。...ここの部屋は防音だし、人払いもしっかり出来ているから、思う存分楽しめる。だから、そんなに怯えた顔をしなくても大丈夫だ。ほら、じゃあ早速部屋に入ろうか??」

 三津さんは、こう言うととびきり甘い大人の笑みを俺に見せつけ、おもむろに俺の肩を抱くと、部屋へと入ったのだった。

 正直、死ぬほど怖かった。

 三津さんに、これから犯されると思うと...今すぐにでも逃げ出したかった。

 でも、優を助けるには三津さんの力がどうしても必要なんだ。

 だから俺は...決心するしかない。

 例え、俺が死のうとも『月並み』のみんなは絶対に守らなければならない。

 それが、俺というリーダーの責任であり、覚悟であると思うから。って、何カッコつけてんだか...いや、そもそも自分でツッコミ入れてどうするんだよ俺...。

 俺はこう考えると、伏せていた目をばっと前に向けた。

 すると...部屋には大きなベッドとおしゃれな机に椅子...それから、これまた驚いたが...ワインセラーが部屋の片隅に一つおいてあった。

 想像以上に...金持ちの世界じゃん。

 俺、こんなの映画とかでしか見た事ない。ほんとに大丈夫か...今になって、あれこれ不安になってきた。

  あ~、トイレ行きてぇ...緊張による失禁とか、真面目に洒落にならん...!!!

 俺は、緊張を紛らわすために、スーツの上着をけだるげに脱ぎ、ソファへと腰を下ろし、ネクタイを緩めていた三津さんにこう声を掛けた。

「三津さん...その...お風呂とかは、どうしますか??(汗)(...やばっ、入室第一声がこれかよ!!!...しっかりしろよ、俺!!!)」

「ん???あ~、そうだな。入ろうかな...雅、先に入ってくるか???それとも、俺が先でもいいのか???...もしくは。」

 三津さんはここまで言うと、ソファからサッと立ち上がり、未だに部屋の入り口から動けないでいた俺のもとまで歩みを進めてきた。

 そうして、強引に俺をドアまで追い詰めると、俺の耳元に唇を寄せ、とびきり甘い声でこう囁いた。

「...いっそのこと、一緒に入っちゃう???...その方が、緊張も解けるし、雅もこの後、やりやすくなるだろう??って、お前なぁ...そんなに目をぎゅっと瞑って...本当にお前は、見てて飽きないし、かわいいな。(笑)...チュ。」

 「...っ!!!(うぎゃぁ!!!!...早くも俺襲われかけてるよ!!!!これヤバイよ...!!!!背筋ゾクゾクだわ...。)」

 三津さんは、俺を動揺させるのが上手だ。

 俺は、色っぽい瞳で俺の事を見つめてくる三津さんに対して頬を染め上げ、じっと見つめていた。

 すると三津さんは、俺の反応を楽しむかのように空いた片方の手で俺の顎を掴み、親指で俺の唇をそっとなぞりながら、さらに距離を縮めてきた。

 俺は堪らなくなり、目をぎゅっと瞑ると、耳元にふっと三津さんが笑う吐息がかかり、くすぐったさにビクッと肩が震えてしまった。

 その反応と同じタイミングで、俺の鼻に柔らかいぬくもりが降ってきた。

 直感で、キスされたのだと分かった。

 理解の追いつかない俺を放ったらかしにして、三津さんは、けらっと笑うと俺からパッと離れて、先にお風呂へと行ってしまった。

 去り際に三津さんは...「なんて...冗談だ。俺はねぇ、風呂は一人で入りたい太刀なんだ。...と言うことで、先に入ってくるから、てきとーにくつろいでて...。」

 なんて言ってた。

 俺は、シャワーの音が聞こえだしてから、野良猫のように恐る恐る部屋の奥へと足を踏み入れたのだった。

 再度部屋の中をよくみてみると、部屋には俺の大好きなビンテージのギターがおいてあった。

 俺はその瞬間、三津さんがこの部屋にいること...なんなら、シャワーを浴びていることさえ忘れて、ビンテージのギターを手に取ると、ジャンジャカ弾きだしたのだ。

 俺が夢中でギターを弾いていると、いつお戻りになられたのか、髪の毛から水滴を垂らした三津さんが、腰にタオルを巻いた状態で、俺の背後に立っていた。

 背後に三津さんがいるとも知らずに俺は、無我夢中でギターを弾き続けていた。

 そんな俺に、三津さんは優しい顔をして、背後からギュッと俺の事を抱きしめたのだった。

「...みやび???...俺のギター、気に入ってくれたの???...うれしいなぁ~~。みやびは、本当にギターが上手いな。なんだか懐かしいよ。あぁ...そう言えば、雅がギターを始めたのって、俺がまだ世間知らずのガキで、当時のボスが初めて俺に買ってくれた、ギターの練習をしていた時からだったんだよなぁ。...俺が頑張って、公園とかいって練習していたときに、俺よりも小さかった雅が、俺のギター聴いて一言『へたくそ。』って言ったんだよ。言っとくけど...あれ、まだ軽く根に持ってるからな。...それでさ、意地悪だった俺が、わざと雅にギター貸してやると、弾き方も分からないのに、必死で弾こうとしてて...。なんだか、そんな一生懸命な雅見てたら、いとおしく思えてきて...。あの時初めて、雅と寝たんだよな。脱、童貞卒業...みたいな??(笑)『...三津さん、その話はもういいですから...。』...おっと、ごめんね。ついつい懐かしくてさ。でも、俺の初めてあげた相手がお前なんだから、ちょっとぐらいは感謝して欲しいかな。って、そんなに怖い顔すんなよ...悪かったって。......とまぁ...それ以来、俺がギターを持って公園に行くと、決まって雅が滑り台の上から俺の事を見つめてたんだよな。よくもまぁ、飽きもせずに...。それである日、俺がいつもの様にギターを担いで公園に入った時、雅が待ってましたとばかりに走りよってきて、その両手には鍵盤ハーモニカが...どうしたのかな??って思ってたら、雅がいきなり大きな声で『俺と一緒にセッ〇スしよう!!』って...はははっ!!!!(笑)ダメだ!!!今思い出しても、爆食ものだな...!!!『...。(ぎゃー!!!!!あろう事か、記憶してらっしゃった...!!!!俺の消したい過去の言動第一位だよ...!!!頼むから忘れてて欲しかった...。うー、恥ずかしぃ。)』」

 三津さんの恥ずかしい昔話を聞きながら、俺の顔が真っ赤に染まっていることを三津さんに知られたくなかったため、俺は必死にギターを弾いていたが、三津さんが俺の耳元で笑ったため、俺はつい『...んっ!...っ。』と声を漏らしてしまった。

 当然、背後から俺の事を抱きしめていた三津さんに、聞こえない訳もなく...それを盛大に三津さんに聞かれてしまった。

 俺の様子に、何かのスイッチが入ってしまったのか...三津さんは、俺の耳元でわざと甘く低い声で、こう囁いてきた。

「...おい、みやび。なぁに、感じてんの??...そんな可愛い声漏らして、もしかしなくても誘ってんの???...ん??どうなの???みやび???」

「んっ!!...誘ってない...です...その...ただ、三津さんの吐息が......俺の耳を...かすめて...っ。」

 俺がこういうと三津さんは、俺の耳を甘噛みしながら、誘うようにこう言った。

「みやび...いつからそんな色っぽい男の娘になったんだ???...なぁ、そんなに上手に鳴く方法...一体何処で修得してきたんだよ??...まさか、俺以外の男と寝たことあるのか??...もしそうなら、今日の一夜で俺が一番いいって思わせてあげるから。(笑)...ほら、みやび??こっち見て??」

 俺は真っ赤になった顔を隠したくて、必死に俯いていた。

 そんな俺の様子を楽しむように、三津さんは俺のほっぺたに、幾つもキスを落としてきた。
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