ファンタジア!!

日向 ずい

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第7章「紫翠との熾烈な戦い。」

「紫翠との戦い。」

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 俺は雅(みやび)(※三津特有の虎雅の呼び名。)を部屋に寝かしつけた後、コツコツと靴音を響かせ、暗い路地裏を歩きながら部下に電話を掛けた。

「あっ、俺だ。至急裏路地に...例のイヌの小屋だ...あぁ、車を一台回せ。久しぶりに、ユダが現れた。...あぁ、本当に珍しくな。(笑)...頼むぞ。」

 俺が、裏切り者の事をユダって言ったのは、分かるだろ??

 何も無意味にカッコつけて言ってるわけじゃない。

 いいか??

 俺は...旧ファミリーのボスなんだ。

 まぁ...今は、引退したようなもんだが。

 でも、たまぁに、可愛い息子達の顔を見に行くことはあるけどな。(笑)

とりあえず、今は緊急事態だし...雅が身体張って、俺に決意を見せてきたしな。

 俺が、ひと肌もふた肌も脱いで、真っ裸になる覚悟をしなくてどうする???

 俺の可愛い可愛い雅のためにも、俺がここで直接手を下す必要があるってもんだ。

 俺が電話してすぐに、白いロールスのお化けと、俺たちの間で言われている車が止まった。

 俺は、待ってましたとばかりに、その車へとさっと乗り込むと、運転席に座っている黒人の男に、イタリア語でこう声を掛けた。

「Voglio che tu vada nel luogo dell'esempio.(例の場所に行ってほしい。)」

「Sì, capisco.(はい、分かりました。)」

 俺の言葉に小さく頷くと、運転席の男は、俺の命令した場所へと車を走らせたのだった。

 暫くして車が止まったのは、とある廃墟と化した建物の前だった。

 俺はそこで車を降り、目の前の廃墟に何のためらいもなく足を踏み入れた。

 中は、薄暗く少しカビの臭いがしたが、この場所は訳あって、こうでないといけない場所であるために、仕方ないと腹をくくり、足をどんどん先へと進める事にした。

 階段を降り、暫く歩いたその先には、小さく明かりが灯っており、俺はその明かりを目指して、迷わず進んでいった。

 明かりが灯っている場所には、背の高い男が立っており、俺が小さく

 「Sono venuto al festival dei gatti(猫の舞踏会に来た。)」

 と声を掛けると、小さく会釈をして、光が漏れている部屋の扉を空けて、俺を部屋の中に通してくれた。

 もう分かっただろう???

 ここがどういう場所で、俺がここに来た理由が...。

 え???まさか...分からないのか???

 仕方ないな...いいか???

 俺たちファミリーには、アジトというものがないんだ。

 そんなものを作ってしまえば、今頃みんなもれなく塀の中で、仲良く健康体になってるってものさ。

 俺たちは、時に人を殺したり、銃やナイフを使ったりもする。

 だから当然、警察に必ずと言っていいほど目をつけられるんだ。

 警察に足がつかないためにも、俺たちはアジトをもっちゃいけない。

 というわけで、俺たちが普段作戦会議や、仲間に会わなければならない時は、こうやって...闇取引が行われている建物の中で、会話を交わすんだ。

 これが賢い俺たちのやり方だ。

 言っておくが、聞いたからには絶対に黙秘を貫けよ??...命が惜しければな。(笑)

 俺は、外観からは想像できない、キラキラとしている室内を、ゆっくりとした足取りで歩くと、目の前の大きなソファに腰をかけて、呑気にたばこを吸っている小太りの男にこう声を掛けた。

「comandante.(指揮官。)」

「tre(サン。(三津の偽名))」

「È passato molto tempo.Andava bene?(お久しぶりです。元気にしておられましたか?)」

「Sì, va bene.Anche io sto bene.(あぁ、俺は元気だよ。お前も元気そうだな。)」

「...Cambia in giapponese.(日本語で話します。)」

「コンシリエール...すみません。いきなり電話をかけてしまいまして....。」

「いや、構わんよ???...それよりも、本当なのか???珍しく...ユダが出たというのは。」

「はい、事実です。...名は、ビオラ(紫翠の偽名)と名乗る奴です。...奴は今、日本で、自分の実の息子を本当の名を使って探し回っています。表社会の会社に幾つもの電話を掛け...『...Fottuto stronzo...!!!!Pulcini fottuti!!(クソ野郎が...!!!!クソネズミ!!)Ti ucciderò!(殺してやる!(怒)』...Mi sento allo stesso modo.(私も、同感です。)」

 おれは、目の前のコンシリエールに、紫翠の裏切りについて説明すると、先ほどまで、にこにことしていたコンシリエールの目が怒りに満ちて、コンシリエールの母国語である、イタリア語で暴言を吐き出したのだ。

 俺は、感情が高ぶったコンシリエールに対して、その怒りをあまり刺激しないよう、冷静さを装って、コンシリエールと同じ気持ちであると、コンシリエールと同じイタリア語で言葉を返した。

 コンシリエールの怒りを買えば...俺の体は、3秒後には......穴だらけだ...。

 怖いもの知らずだが...これは笑えない。

 コンシリエールが、闇のトップになれた理由が痛いほどわかるよ。(笑)

 そうして話し合いが終わり、コンシリエールと別れた俺は、来たときと同じように部下に連絡を入れ、雅の眠る小さな隠れ家に戻るのだった。
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