ファンタジア!!

日向 ずい

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第7章「紫翠との熾烈な戦い。」

「優秀な部下はひと味違うねぇ〜。」

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 俺は紫翠と共に中央広場まで急いで戻っていた。

 「なぁ、サン...お前、足早くないか!???」

「はぁ...???なんだよ、バイオレット。もうバテたのか???...言っておくが、俺たち、あの入れ歯カチカチイケイケじいさんの所から出て、まだ100メートルも走ってないんだぞ???...それに早くしないと、あの爺さんがせっかく準備してくれた最高の舞台が、台無しになるだろ???...ほら、分かったら死ぬ気で走れ!!最後ぐらい組織に恩を返しておいてもバチは当たらないだろ??」

 俺のこの言葉に、俺の背後でバテている紫翠は、俺にガンを飛ばすと額からダラダラと汗を流しながら、俺の事を追いかけてきた。

 俺は追いかけてくる紫翠に、内心こう思っていた。

 まぁ、これも作戦のうちなんだけど...。

 だって...こいつ、単純バカじゃん??

 その馬鹿の発揮どころが今ってわけよ!!!

 俺って、頭いい~!!...的な!??

 って、やべっ、こんな悠長なこと考えている場合じゃなかった。

 早く広場に戻らないとな...。

 俺は紫翠のことを内心馬鹿にしつつ、後ろでゼイハァ、ゼイハァ言っている紫翠は放っておいて、さっきよりもさらにスピードを上げて、広場を目指したのだった。

 そんなこんなで、広場まで着いた俺は、爺さんに指定した時間30秒前ということを腕時計で確認すると、急いで俺の部下に分かるようあるサインを示した。

 その瞬間、それまで会場を纏っていた陽気な雰囲気は何処へ行ったのか??

 俺の部下達が一斉に、だが観客の誰一人として、その異様な雰囲気に気づかないよう、細心の注意を払って行動を起こしだした。

 そうその行動とは......。

「...えー、二曲目が終わりましたが、ここで一度ある方から祝辞を頂きましたので、代弁させて頂きたいと思います。.....皆様、今夜の収穫祭はいかがでしたでしょうか???楽しめましたでしょうか??私は、その会場にはいけませんが.........っ、おい!!!おまえ...!!!何をする!!!まだ、祝辞を読んでいるところだろう!!おい...。グワァッ...うっ、ぐっ...バタンッ...。『何だ!???何が起こったんだ!???』」

 ピアノ演奏が、二曲目の終わりを告げたとき...俺の合図に従い動いていた部下の一人が、ステージで司会者が祝辞を読み始めたのを見計らいステージにこっそりと上がったのだった。

 そして次の瞬間、司会者を背後から羽交い締めにすると、部下は慣れた手つきで司会者の首に一発、衝撃を食らわせた。

 それとほぼ同時に、入れ歯カチカチ爺さんのおかげで、ステージから広場の照明が全て消え失せ、辺りは一瞬で真っ暗闇に包まれた。

 照明が消えたことにより、ステージで行われた一部始終を観客に見られることはなかったが、突然の暗闇にそれまでうっとりと音楽に浸っていた観客は、騒然としだした。

 そんな会場の雰囲気に、倒れた司会者からサラッとマイクを奪い取ると、俺の部下は、真っ黒い布で頭から顔までを覆った扮装で、観客に向けてこう言った。

「えーー、すみません。機械トラブルのようで...前まではこんなことが無かったのですが...ただいま、職員が確認をしに行っておりますので、ご鑑賞のお客様には大変申し訳ないのですが、電気の回線が復旧するまで、どうかそのままでお待ち頂いてもよろしいでしょうか???大変申し訳ありません。...なお、機械トラブル復旧の際には、大きな音が鳴りますので、どちらさまも耳を自らの両手で覆い、電気が付くまでお待ち頂けるようご理解ご協力のほど、よろしくお願い致します。」

 俺の部下の呼びかけに対してまわりの観客は、ぶーぶー文句を言いながら、渋々自らの耳を両手で押さえ、外音をシャットアウトした。

 だが、今の放送により、事の状況を理解したレミホラントの店主は、布の裏から大声でこう怒鳴り散らした。

「おい、司会者!!!どういうことだ!!!!俺は言っただろう!!!!この演奏会は、決して失敗してはならないと!!!それをお前は...!!!!舞台裏に来い。話がある!!」

 店主のこの一言に俺と紫翠は、にやっと気味の悪い笑みを浮かべ、店主のいる舞台裏へと足を進めるのだった。

 さっき言わなかったが、何故こんなにも作戦が上手くいってると思う???

 それはな...これだよ!!

 こいつのおかげ!!!

 そう、俺が耳に挿しているイヤフォン型の超小型マイク!!!

 これ、めーっちゃ凄いんだぜ???

 なんて言ったって、1メートル先のターゲットの声だけを、ピンポイントで拾えるんだよ。

 これのお陰で、俺の信頼下にある部下の数人は、俺の行動や居場所を俺の会話と周りの会話により、容易に判断することが出来るって訳!!!

ねっ!まじヤバたんでしょ!!!

 でもこの機械高額だから、コンシリエールには、内緒...!!

 って、こんなことが言いたいわけじゃなくて....その、話を元に戻すと、つまりは俺の行動を知っていた優秀な部下が、先手を出してくれたってわけ!

 ということで、俺は紫翠と共に奴が待つ真っ暗闇のステージへと足を進めたのだった。

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