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阿久津ルート(主に秋良目線。)

阿久津さんが...おかしい...。

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 阿久津さんから話を聞いてから、もうすぐで2ヶ月になろうとしていた。
 大学では、相変わらず入学式からの付き合いである男友達と他愛もない話で盛り上がっていた。
「秋良は、やっぱり面白いな!!(笑)」
なんて友達に言われて俺は咄嗟に
「...いやいや、そんな事ないって(笑)」
と言って否定して会話していたが内心は
『...うーん、面白いかどうかなんてわからないし...と言うより本当に楽しいと思ってくれているのだろうか...?』
と不安に思っていた。
 そんな俺は、気にした様子もなくニコニコと笑って話をする男友達に愛想笑いを振りまいていた...。

 「ただいま!!」
俺が家に帰るとリビングから加来さんがエプロン姿で出てきた。
「あっ、おかえり、秋良!大学は、もう慣れた??」
と言ってエプロンで濡れた手を拭いている姿は...本物の主婦みたいで思わず吹き出してしまった(笑)
 そんな俺の様子に加来さんは、首を傾げたが、何も無かったかのように
「...??...秋良??...まぁ、いいや。もうすぐご飯だから早くお風呂に入っておいで。」
と言って俺に笑いかけてきた。
 俺は、加来さんに大学の授業でわからない科目があったため咄嗟に
「...あの、加来さん...授業で分からないところがあったので、勉強教えて欲しいんですけど...ダメですか??」
と言ったら加来さんは、一瞬驚いた顔をしたがすぐに元の笑顔に戻り
「...あぁ、別に構わないけど...あんまり期待しないでね...(笑)...ご飯食べ終わって一息ついたらリビングに集合でいいかな??」
と言って聞いてきたから俺は
「...はい!!ありがとうございます!!お願いします!!!」
と言って加来さんに笑いかけた。

その後、俺は無事に加来さんから勉強を聞くことが出来て、大満足で自室に帰ろうとしていた時、阿久津さんが俺に声をかけてきた。
「...ちょっといいか...。」
と言っていつもよりも少し元気がないように思う...。
 俺は、心配になって
「...はい、阿久津さん...あの...何かありましたか...??」
と言って聞いたが、何も返ってこず...阿久津さんの部屋に招かれた。
 阿久津は、部屋に入るなり俺をじっと見つめて
「...秋良は...本当に昨日言ってくれた言葉...嘘じゃないんだよな......嘘...だよな...。だって、俺みたいな落ちこぼれなんて...相手に『...あの!阿久津さん...??その...何かありましたか??』...。」
 俺は、阿久津さんが勝手に喋って話を進めていて...しかも何か勘違いしているようだったから咄嗟に口を挟んで阿久津さんに何があったのか聞いてみた。
 すると阿久津さんは、目に涙を溜めて
「...やっぱり...俺は、誰にも心を許せない...だって...だって秋良は、大学でも楽しそうに...さっきだって鈴斗さんとも楽しそうにしていたし...俺と話す時は...『...えっと...阿久津さん?それは...勘違いです...俺は、確かに大学の友達とも仲良くしてますし、加来さんには、勉強を教えて貰ってました...でも、阿久津さんが嫌いだからじゃないです...(汗)』。」
 俺は、阿久津さんが何を言っているのか分からなかったが、明らかに誤解していることが分かったため瞬時に否定した。
すると阿久津さんは、驚いた顔をして
「...じゃあ...俺は、お前に...気を許しても......いいの...??...こんなダメな人間なのに......。」
と言った。俺は、阿久津さんを、無意識のうちに抱きしめていた。そんな俺の行動にびっくりした阿久津さんは、
「...えっ......秋良!??......その...『...阿~久~津さん...。俺...阿久津さんのこと...ダメなんて思ってないですよ...。むしろ...本当のお兄ちゃんみたいで...俺...阿久津さんのこと......大好きです...!!』。」
と言って阿久津さんに俺だけは、信じて欲しくて抱きしめていた腕に力を込めた。すると阿久津さんは、
「...秋良......俺......俺な...本当は、嫉妬してたんだ...。...秋良が、他の奴らと楽しそうにしているの見て...秋良...その...秋良のことを...。」
と言って急に黙り込んでしまった阿久津さんに俺は、どうしたのか心配になり
「...俺のことを......??...何ですか...俺のことを...って一体...ねぇ、阿久津さん...??(汗)」
 そういった俺に阿久津さんは、向かいにいる俺の胸を軽く押して俺と軽く距離をとった。そして自分の両手で、俺の両肩を掴むと真っ直ぐに俺の目を見つめて
「...その...俺...お前のことを......誰にも...渡したくないって...俺だけのものにしたいって...思ったんだ............あっ!!...ごっ...ごめん......迷惑だよな...その...『...迷惑なんかじゃ...ないですよ......、俺も...阿久津さんを...独り占めしたいって...思ってます......だから...その...俺と......』。」
俺の口から勝手に言葉が零れた...自分でも、何を言っているのか...理解出来なかったが...言ってから気がついた...あっ、俺って阿久津さんのこと好きだったんだって...。
 俺が口を挟むと阿久津さんは、呆気に取られた顔をしていた。俺と阿久津さんは、互いにじっと見つめあったまま...どちらからともなく...顔を近づけ、キスをした。
 ほんの数秒だけ重なっていた唇を離した時に、阿久津さんの少し赤く染まった顔を見つめて
「...阿久津さん...俺...阿久津さんのこと......本当に好きです...俺と......付き合ってくれませんか......??」
俺は、また無意識にこんなことを言ってしまった...(笑)それと同時に俺は、阿久津さんの事が、本当に好きなんだと再認識した。
 すると一瞬目を見開いた阿久津さんが、少し微笑んで
「...秋良...俺も...お前のこと......大好きだ...、俺と...付き合うと...独占欲強いから...苦労するかもしれないけど...。(汗)」
と言った阿久津さんに俺は
「...それは......俺の方ですよ...。(笑)」
と言ってお互いに見つめ合うと俺たちは、いつの間にか、微笑みあっていた。
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