ゆきだるまでなにがわるい! -異世界転移したらゆきだるまで絶望したけど、なんか俺世界最強のチートゆきだるまらしいから世界変えるわ-

たこやきニキ

文字の大きさ
1 / 3

異世界転移したら……雪だるま!?

しおりを挟む
 個体名:桑原銀河くわはらぎんが
 種族:特殊型アイススノーマン

 ――異世界召喚を開始します――

 ・
 ・
 ・
 ・



 ※※※※※※


 ――ヒュオオオオオオオオオォォォ……


「うーん……うーん……」

「おい、お前さん……おーい」

 あれ、何か聞こえるな……
 確か、学校帰りに急に意識が無くなって、それから――

「うーん……う……っ!?」

 眼前に気配を感じ、俺は目を覚ました。
 ここは――

「雪……?」

 目を覚ました俺の眼前に映し出されていたのは、吹き荒れる吹雪、一点の濁りも存在しない純白の雪原、それらに情緒を与えるように雄々しく聳え立つ、雪を被った樹木の数々。
 その理解しがたい状況に、俺は瞠目せざるを得ない。

「目を覚ましたか……お主、まだ若いアイススノーマンじゃろ」

「ん……?」

 俺が意味不明な状況に怖気立っていると、目の前から掠れた男の声がした。
 もしかして、俺は遭難でもしたのか……?
 だとしたら一刻も早く――

「――ぎゃああああああああああああっ!?」

「――ぎゃああああああああああああっ!?」

「いや、何でお前まで驚いてんだよっ!! 俺だけでいいだろ!!!」

 え、何だこれ?
 目の前に存在する奇妙な生き物に、俺はただ凝然と目を見開くしかなかった。

 白い玉が垂れ下がっている赤白のナイトキャップ。
 白目は存在せず、黒瞳こくとうだけの目。
 暖かそうな深緑のマフラー。
 人参か何か、尖ったもので作られた尖がり鼻。
 腹部には黒の点が縦に二つ、ちょんちょんと取り付けられている。


 雪だ。雪だるまだ。
 雪だるまが喋っとる。
 掠れた男の声で、雪だるまが喋っとる。

「意味わかんねぇ……何だ、あんた生きてんのか? しかも雪だるまに髭生えてるし」

「失礼なっ!! 生きとるわい!! そんな老いたように見えるか、悪かったな!!」

 枝で作られた手をシャカシャカさせながら憤慨する怪奇に、俺は理解が追い付かなかった。

「まて、待て待て待て……まず、俺は大学から帰宅途中だったハズだ……そんで、バスに乗る手前で意識が無くなって……それで、気づいたら雪原へ……」

 自分に起きた出来事の記憶を反芻しても、何が何やら。
 むしろ反芻したことで余計に分からなくなった。

「それにしてもまぁ……」

 再び辺りを見渡す。
 ――なんとも風光明媚な景色だ。
 この世の純白を結集したかのような雪原。
 一切の汚れが無かった。

「いつみても綺麗じゃよな」

「ああ、心が汚れきった俺の心に沁みるぜ……全ての憂いことを優しく包んでくれるような、慈愛に満ちた景色だ……」

「おお、お前さんは雪の優しさが分かるか…そうじゃよ、雪は素晴らしいんじゃ。どれ、雪合戦でもするか」

「ハハ、そりゃいい。雪合戦なんて久方振りだ……って、雪だるまテメェ!?」

 ――危ない危ない。
 雪原に心惹かれて、眼前の怪奇に自然に溶け込んでしまうところだった。

「何じゃ!? いきなり怒鳴ったりしおって、お前さん情緒不安定かっ!?」

「雪だるまが喋るとか新感覚ホラーすぎるだろっ!!! 何当たり前みたいに一緒にしみじみしてんだよ!! ここが異世界じゃあるまいし……あれ」

 俺は、先程から頭の片隅にある可能性を、完全に一蹴してしまえないということに気づいた。
 ここが異世界じゃないと言い切れるのか?
 そもそもなぜ俺は雪原に?
 あり得ないだろ。あり得ないことが今俺の身に降り掛かっている。

「ん……? もしかして、ここって異世界だったりする……? なぁ雪だるまのじいさん。俺、ここで何してたか分かるか?」

「それは知らんが、ワシが雪原の警備をしとったら、アイススノーマンのお前さんが眠っておったから声を掛けたんじゃ。ここらはエルゲイル辺境伯の根城から近いから、こんな所で午睡しとったら危ないと思っての」

「エルゲイル辺境伯……」

 耳馴染みのない名前と、辺境伯というファンタジー感満載の言葉に、俺は自分の身に起きたことを悟った。

「ふむ、どうやら俺は異世界転移したみたいだな。信じられないけど、現に今信じられないことが起きてるし……このパターンはいわゆるって奴だろ。……って、雪だるまテメェ!?」

「またか!? 今度は何じゃ!?」

「今、のお前さんって言ったか!? どういうことだよ!?」

「どうも何も、お主はアイススノーマン族じゃろうが」

「違うわ!! 俺は桑原銀河くわはらぎんがだ!!」

「違わんじゃろ!! ギンガ、お主はどう考えても三百六十度、アイススノーマン族じゃ!!」

 この馬鹿雪だるま、何言ってやがる?
 アイススノーマンってのはつまり雪だるまのことだろ?
 俺は桑原銀河くわはらぎんが
 二十歳の引きこもり族の人間だ。

「俺は人間だぞ……あ」

 ふと、俺はあることに気づいた。
 いや、気づいてしまった。
 何故、雪だるまのじいさんと目の高さが合ってるんだ。
 百七十七センチの雪だるまとかあり得ないだろ。怖いわ。
 しかも、周りの樹木がバカデカい。

「は……嘘、だ」

 俺は情けない声音でそう呟くしかなかった。
 こんな雪だらけの中にいて、寒くないのは何故だ。
 事実を否定しようとすればするほど、否定を上回る肯定が次々見つかる。

「身に覚えが無いなら、ウチの村に来なさい。姿見で自分の姿を見ればわかるだろう。実は、ワシは村の村長なんだ。案内してやろう」

「村長だるまだったのか。ああ……すまねぇ。ここはそうさせてくれ」

 そもそもここが異世界なら、俺に身寄りなど無い。
 ここは村長だるまの力を貸してもらう他無いようだ。

 こうして、奇怪な村長だるまに連れられ、俺は案内された村へ向かうことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...