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奪われた大地
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降り注ぐ豪雨が地表を侵食していく。突如として現れた異形の化物が地上を襲う。雨に混じり飛び交う鮮血。ぶ厚い雲で覆われた世界に天から一筋の光が届くことすら無い。
あちらこちらであがる悲鳴は人々に更なる恐怖を植え付ける。
短く区切った声とそれに続いて放たれる長い声。人には理解不能であるが、化物の意思疎通らしい。
どこから現れたか分からない化物は世界中に同時に現れ、人を喰らい地を占領していく。血にまみれた土地が化物の占領の証のように人々は血のない場所へと逃亡していく。
倒れたものを救うものは誰もいない。
自分の命は自分で守れ。それがたとえ、子であろうと親であろうと……。
そして化物は地の中からも現れ始めた。土竜のように手に鉤爪を持ち、地中をかきわけ地表へと姿を現す。
地盤の硬い岩盤ですら切り分ける鉤爪で人々を襲う。逃げ惑う人々を地中から追い回し、逃げ先で姿を現し切り裂く。
新たに領土を手に入れる化物。
日本の自衛隊や海外の軍隊は用意できるだけの武器を持ち、化物に刃向かう。
ある者は刃物で。ある者は弾丸で。しかし、化物の圧倒的な力の前では無力同然だった。
放たれるロケットランチャーが直撃しても、一秒程の硬直を見せてから激しい咆哮を上げる。それは鼓膜を細かく振動させ、幾回か震えた鼓膜を破っていった。
更にその振動は鼓膜だけでなく、建ち並ぶ家々や木々を削いでいく。
海外の軍は戦車までをも引きづり出すも、レンガやブロックなどで形成された全長四メール程ある後にゴーレムと呼ばれる化物に踏み潰される。ゴーレムは戦車の砲撃などもろともせず、直進し続け何台もの戦車を破壊し、世界が保有するすべての戦車が戦闘不能となった。
地に逃げ場はないと考えた人々は港に駆け寄り、船に乗り込む。
豪雨で荒れ狂う海に乗り出す船は激しい揺れがする。人々の中には船酔いにあい、嘔吐をする者もいた。
だが、そこにも逃げ場はなかった。
以上に大きいイカがそこにはいた。
舵を取る誰かが言った。
「く、クラーケンだ!」
船乗りには有名な海の化物。船など軽く飲み込んでしまいそうな大きな口に全てを見透かしてしまいそうな大きな目。そして、何よりも恐怖に値するものは10本ある足だ。ひと薙ぎで台風のごとく風を起こしそうなそれがうねうねと存在している。
言葉を出せない者たちを嘲笑うかのようにクラーケンは足の1本をうねらせ、船に巻き付かせる。
バキッ、という不穏な音が船全体に轟く。そして瞬間、船に海水が入り込み出した。
甲板からあがる悲鳴でクラーケンの表情が悦に変わる。
どんどん侵入してくる海水に船はなすすべもなくしずんでく沈んでいく。乗っている人の中には何を考えてか海に飛び込む人が現れだした。
クラーケンがそれを見逃すことなく、飛び込んだ人たちをその大きな口で海水ごと飲み込んだ。
跡形もなく飲み込まれた人たちを見て、更に悲鳴があがる。
そしてそれらは海までも支配した。
人々は陸海を奪われた。残す領土は空のみ。
当時、酸性雨に高化学反応を見せるゲラモニウムと呼ばれる金属元素が様々な実験の結果に生まれ、それを研究するために酸性雨の降らない高度1000メートルに作られた天空都市イスカーンが建設された。
空に浮かぶ都市の建設は重力や宙にとどまることが可能なうえ、その上に建物を建てても大丈夫な強度が必要などで問題点が山ほどあった。
だが、ゲラモニウムがすべてを可能にした。研究の結果、酸性には高い化学反応を見せ一定の数値を超えて反応すると大爆発が起きる。過去それでカルフォルニアにある研究所が木端微塵になったことがある。
一方で酸性でない、中性の水に混ぜることでとんでもない軽さと強度をみせたのだった。100キログラムあったものが水道水をろ過したものと合わせるだけで重さが1000分の1の1グラムにまで減量したのだ。
そこで学者たちは雲の上の雲に含まれる水蒸気がほぼ中性であるということを利用して飛行機で雲の上の雲がある高度1000メートルまで上がり、ゲラモニウムを雲の中に入れ込み、反応させた。すると、雲の中で反応したそれは落下することなく、雲と雲とを隙間なく合体させ、さながら空中に浮かぶ土地が出来上がったのだった。
最後の手段としてそれを利用しようと考えたものたちは二手に分かれた。
一つは飛行機から上へあがるコース。飛行機を操縦できるものが少なく、1度に乗れる人数も少ない。さらにこの日は天気が荒れ、操縦は困難極まる。
人々の諦めの意を表す言葉がちらほら漏れている。
運良く発進させられたとしても高度200メートルまでは頭は獅子、体は山羊、尾は竜、さらに羽まで持っているキマイラが旋回しており、何機もの飛行機が破壊された。
もう一手は空震エレベーターだ。2年ほど前に完成した空気を震わせ、その震えを電力に変換し高度1000メートルまで引き上げるエレベーター。ちなみにこの技術は後に宇宙エレベーターに応用するつもりらしい。
人々はそれに乗り、天空都市へと向かった。音速に近いスピードで移動し、音もほとんど立たないので化物に気づかれずに上まで登れた。
こうして人々は陸海を捨て、空へと逃げた。
世界陸地面積は埋め立て地や天空都市などを含め16000万平方キロメートルを超え、人口は200億を超えていた。だがしかし、後に『終焉の悲劇』と呼ばれる2025年6月8日未明に世界陸地面積は10000万平方キロメートルになり、元のロシア連邦より縮小し、人口も1千万と数千人となった。
そして少年は産まれた。天空都市イスカーンに移住してから9年。『悪魔の子どもたち』の1人として……。
空に蔓延するゲラモニウムの副産物ゲラソニンは雲の中に存在するエアロゾル微粒子に反応して発生する元素である。それがヒトを形成するヒトゲノムに干渉し姿形はヒトであっても脚力や腕力、その他にIQ知数など現存するヒトには到底できないことやありえないことが子どもの時点でできる子どもが誕生した。それらの総称が『悪魔の子供』。
そのうちの1人として少年フユは誕生した。
これは奪われた世界を取り戻すお話。人が人であるための話……。
あちらこちらであがる悲鳴は人々に更なる恐怖を植え付ける。
短く区切った声とそれに続いて放たれる長い声。人には理解不能であるが、化物の意思疎通らしい。
どこから現れたか分からない化物は世界中に同時に現れ、人を喰らい地を占領していく。血にまみれた土地が化物の占領の証のように人々は血のない場所へと逃亡していく。
倒れたものを救うものは誰もいない。
自分の命は自分で守れ。それがたとえ、子であろうと親であろうと……。
そして化物は地の中からも現れ始めた。土竜のように手に鉤爪を持ち、地中をかきわけ地表へと姿を現す。
地盤の硬い岩盤ですら切り分ける鉤爪で人々を襲う。逃げ惑う人々を地中から追い回し、逃げ先で姿を現し切り裂く。
新たに領土を手に入れる化物。
日本の自衛隊や海外の軍隊は用意できるだけの武器を持ち、化物に刃向かう。
ある者は刃物で。ある者は弾丸で。しかし、化物の圧倒的な力の前では無力同然だった。
放たれるロケットランチャーが直撃しても、一秒程の硬直を見せてから激しい咆哮を上げる。それは鼓膜を細かく振動させ、幾回か震えた鼓膜を破っていった。
更にその振動は鼓膜だけでなく、建ち並ぶ家々や木々を削いでいく。
海外の軍は戦車までをも引きづり出すも、レンガやブロックなどで形成された全長四メール程ある後にゴーレムと呼ばれる化物に踏み潰される。ゴーレムは戦車の砲撃などもろともせず、直進し続け何台もの戦車を破壊し、世界が保有するすべての戦車が戦闘不能となった。
地に逃げ場はないと考えた人々は港に駆け寄り、船に乗り込む。
豪雨で荒れ狂う海に乗り出す船は激しい揺れがする。人々の中には船酔いにあい、嘔吐をする者もいた。
だが、そこにも逃げ場はなかった。
以上に大きいイカがそこにはいた。
舵を取る誰かが言った。
「く、クラーケンだ!」
船乗りには有名な海の化物。船など軽く飲み込んでしまいそうな大きな口に全てを見透かしてしまいそうな大きな目。そして、何よりも恐怖に値するものは10本ある足だ。ひと薙ぎで台風のごとく風を起こしそうなそれがうねうねと存在している。
言葉を出せない者たちを嘲笑うかのようにクラーケンは足の1本をうねらせ、船に巻き付かせる。
バキッ、という不穏な音が船全体に轟く。そして瞬間、船に海水が入り込み出した。
甲板からあがる悲鳴でクラーケンの表情が悦に変わる。
どんどん侵入してくる海水に船はなすすべもなくしずんでく沈んでいく。乗っている人の中には何を考えてか海に飛び込む人が現れだした。
クラーケンがそれを見逃すことなく、飛び込んだ人たちをその大きな口で海水ごと飲み込んだ。
跡形もなく飲み込まれた人たちを見て、更に悲鳴があがる。
そしてそれらは海までも支配した。
人々は陸海を奪われた。残す領土は空のみ。
当時、酸性雨に高化学反応を見せるゲラモニウムと呼ばれる金属元素が様々な実験の結果に生まれ、それを研究するために酸性雨の降らない高度1000メートルに作られた天空都市イスカーンが建設された。
空に浮かぶ都市の建設は重力や宙にとどまることが可能なうえ、その上に建物を建てても大丈夫な強度が必要などで問題点が山ほどあった。
だが、ゲラモニウムがすべてを可能にした。研究の結果、酸性には高い化学反応を見せ一定の数値を超えて反応すると大爆発が起きる。過去それでカルフォルニアにある研究所が木端微塵になったことがある。
一方で酸性でない、中性の水に混ぜることでとんでもない軽さと強度をみせたのだった。100キログラムあったものが水道水をろ過したものと合わせるだけで重さが1000分の1の1グラムにまで減量したのだ。
そこで学者たちは雲の上の雲に含まれる水蒸気がほぼ中性であるということを利用して飛行機で雲の上の雲がある高度1000メートルまで上がり、ゲラモニウムを雲の中に入れ込み、反応させた。すると、雲の中で反応したそれは落下することなく、雲と雲とを隙間なく合体させ、さながら空中に浮かぶ土地が出来上がったのだった。
最後の手段としてそれを利用しようと考えたものたちは二手に分かれた。
一つは飛行機から上へあがるコース。飛行機を操縦できるものが少なく、1度に乗れる人数も少ない。さらにこの日は天気が荒れ、操縦は困難極まる。
人々の諦めの意を表す言葉がちらほら漏れている。
運良く発進させられたとしても高度200メートルまでは頭は獅子、体は山羊、尾は竜、さらに羽まで持っているキマイラが旋回しており、何機もの飛行機が破壊された。
もう一手は空震エレベーターだ。2年ほど前に完成した空気を震わせ、その震えを電力に変換し高度1000メートルまで引き上げるエレベーター。ちなみにこの技術は後に宇宙エレベーターに応用するつもりらしい。
人々はそれに乗り、天空都市へと向かった。音速に近いスピードで移動し、音もほとんど立たないので化物に気づかれずに上まで登れた。
こうして人々は陸海を捨て、空へと逃げた。
世界陸地面積は埋め立て地や天空都市などを含め16000万平方キロメートルを超え、人口は200億を超えていた。だがしかし、後に『終焉の悲劇』と呼ばれる2025年6月8日未明に世界陸地面積は10000万平方キロメートルになり、元のロシア連邦より縮小し、人口も1千万と数千人となった。
そして少年は産まれた。天空都市イスカーンに移住してから9年。『悪魔の子どもたち』の1人として……。
空に蔓延するゲラモニウムの副産物ゲラソニンは雲の中に存在するエアロゾル微粒子に反応して発生する元素である。それがヒトを形成するヒトゲノムに干渉し姿形はヒトであっても脚力や腕力、その他にIQ知数など現存するヒトには到底できないことやありえないことが子どもの時点でできる子どもが誕生した。それらの総称が『悪魔の子供』。
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