異世界冒険記 勇者になんてなりたくなかった

リョウ

文字の大きさ
69 / 78
第3章 エルフとの会談

VSアバイゾ 8

しおりを挟む

 コータの声に呼応するかのように、コータの眼前にある巨大な魔法陣に強い光が走った。
 光は刹那に消え去り、真っ赤に燃え上がる炎に変化をする。
 メラメラと火花を散らしながら燃ゆる炎を纏うかのように、蒼色の暴風が吹き荒れる。

「これだけあれば十分だ。喰らえッ!」 

 コータの魔法陣とほぼ同等の大きさまで成長したアバイゾの魔法陣に光がともる。
 同時に、そこから闇の一閃が迸った。
 螺旋状に回転しながらコータに向かって、柱の如く太さの闇の一撃が走る。
 血の滲んだ大地を大きく抉り、粉塵を舞いあげながらコータへと突き進んでいく。

「弾き返せ」

 轟音と共に迫り来る闇の一閃に、コータはその声で応じた。
 炎と暴風が混じり合い、紫色を帯びた風が吹き荒れている。超高温の紫色の風は、1つの意志を持っているかの如くうねりを上げながら闇の一閃へと向かった。

 闇の一閃と紫色の暴風が衝突する。その瞬間、立って居られない程の衝撃波が周辺に広がる。

「うぅ……」

 あまりの衝撃波にコータは思わず目を伏せてしまう。

『目を開けて。しっかりと意識しないと押し戻されるわ』

 体内からピクシャが声を上げてくる。

『そうよ。折角の力なんだから、勝ちなさいよ』

 少し涙色が残った声音でミリが告げる。

「あぁ」

 コータは短く返事をしてから、紫色の暴風が闇の一閃を覆い、飲み込む様をイメージする。
 それと同時に紫色の暴風の威力が増す。闇の一閃が暴風の圧に押され、どんどんと後退しアバイゾに寄っていく。

「ま、まじかよッ!」

 魔族七天将に与えられし能力ちからを行使して尚、押されている状況にアバイゾは驚愕の表情を浮かべる。
 そう言っている間にも押し込まれる闇の一閃に、アバイゾは更なる魔力を込める。
 体内の魔力をかき集めるようにして放出する。

 腕が膨張し褐色の肌に蒼色が滲み始める。誰が見ても普通の状態では無いことがわかるアバイゾの姿。
 それでもアバイゾは、闇の一閃に魔力を供給し続ける。
 強い轟音が震撼し、大地の抉り方が激しくなる。それに伴い、押していた紫色の暴風が押し返され始める。
 闇の一閃が迫るにつれ、コータの表情が歪む。全身の毛が逆立ち、暑くもないのに汗が噴き出し、大地を踏みしめる足がジリジリと後方へ押される。

『もっともっとイメージを強くして』

 少しでも力を弱めれば一瞬で闇に呑み込まれるだろう。そんな場面で、ピクシャはコータの中から声を飛ばす。
 言葉には出さず、コータは頷くだけで応えると紫色の暴風の威力が増すイメージをする。
 同時に舞う暴風に迫力が増し、闇の一閃に亀裂を入れていく。鋭利な刃物の如くになった紫色の暴風は、闇の一閃を切り落としながら、刹那でアバイゾの眼前に迫った。

「このアバイゾ様が、貴様ら雑種に負けるわけ無いだろォォォォッ!!」

 血走った、今にも眼球が飛び出しそうな様でアバイゾは雄叫びをあげる。瞬間、切り落とされつつあった闇の一閃に力が蘇り、迫り来る紫色の暴風を押し返す。
 闇の一閃が紫色の暴風を呑みこみ、今度はコータに迫っていく。

「ウオォォ!」

 刹那で眼前にまで迫ってきた闇の一閃に、コータは咆哮を上げ魔力供給量を増やす。
 今度は紫色の暴風に威力が増す。だが、大量の魔力供給に体がついていかなくなったのか。コータの全身の毛細血管が切れ、血が噴き出す。

「うぐっ」

 思わず喘ぎ声をこぼしたコータは、体の体勢を崩してしまう。その極小の隙で、闇の一閃がコータを呑みこんだ。

「うぉぉぉ」

 慌てた剣を抜き、コータは闇の一閃を月の宝刀で受け止める。
 ギシギシと月の宝刀が軋む音がする。しかし、闇の一閃は勢いを弱めるどころか更に強くして月の宝刀を折ろうとしている。

「魔族七天将を舐めるなッ!!」

 闇の一閃を受け止めようと試みるコータを見て、アバイゾはどこか嬉しそうな色を滲ませた声で吠え、更に魔力供給を強くした。
 同時に、月の宝刀にかかる負担が一気に増した。どうにか堪えようと、奥歯を噛み締め闇の一閃を防ぎ切ろうと努力する。
 力と力がぶつかり合い、決死の覚悟で受け止めていた。
 だが、それもほんの一瞬。
 闇の一閃は、みるみるうちに威力を落とした。

「ど、どういうことだ?」

 負けることを嫌っていたアバイゾが、攻撃の手を緩めるなんてありえないことだろう。そう思ったが、闇の一閃は姿を消した。
 そのありえないであろうと思っていた状況に、コータが声を洩らす。

「グァァ……」

 今にも死んでしまいそうな、言葉にすらなっていない声音がコータの耳朶をうつ。
 闇の一閃を受け止めていたこともあり、コータの手は痺れ、立っているだけでもしんどい。
 その体に鞭を打ち、顔を上げる。すると、眼前には全身から血を噴き出し倒れ込んでいるアバイゾの姿があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

.
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...