悪役令息(仮)の弟、破滅回避のためどうにか頑張っています

岩永みやび

文字の大きさ
37 / 180

37 大人の対応

しおりを挟む
 リオラお兄様には、まだ恋人できていないらしい。やっぱりライアン一筋なのかな。

 しかし、恋人のご紹介でないとすれば一体誰をご紹介するというのか。ぼけっと立ち尽くすぼくに、リオラお兄様が優しい目を向けてくる。

 ロルフと一緒にお兄様の言葉を待つ。

 咳払いをしたお兄様は「アルも友達がほしいだろ?」と唐突に投げかけてくる。

「いいえ。お構いなく」

 嫌な予感がしたぼくは、素早く首を左右に振って遠慮しておく。原作小説でのアルのお友達はノエルである。先日顔を合わせたノエルは、とんでもない意地悪お兄さんであった。あれの相手をさせられるなんてごめんである。

「ぼくはひとりでも大丈夫。ロルフと遊びます」

 ね? と事情を知っているロルフを振り返れば、「はい! アル様には俺がいますもんね」と元気に答えてくれる。さすがロルフ。頼りになるな。

 そうしてロルフとにこにこしていれば、リオラお兄様が困ったように小首を傾げる。どうやらリオラお兄様の中では、ぼくにお友達を紹介するということで決まっているらしい。そこに諦めるという選択肢はないのか?

 しかし、ノエルは表向き変な噂はないらしいから。先日の件も、ライアンとリッキーには、ぼくを閉じ込めた犯人はノエルだと伝えているのだが、ふたりがリオラお兄様にその件を報告したのかは定かではない。だからリオラお兄様の耳には、ノエルの悪行がまったく入っていない可能性もあるし、聞いた上でそこまで大事だと考えていない可能性もある。

 これはどっちだろうか。だがライアンは騎士団の副団長で責任感は強い方だ。逐一リオラお兄様に報告している可能性の方が高い。

 であれば、リオラお兄様はノエルの悪行を知った上で、彼をぼくの友達にしようとしているのか。まぁ、ぼくは五歳だし。お兄様的にはぼくが大袈裟に騒ぎ立てていると判断してもおかしくはない。

「ぼく、ノエルお兄さん嫌いです」

 とりあえず、ぼくのお気持ちだけ表明しておこうと思う。ノエルとは仲良くできないと伝えれば、リオラお兄様は目を見開いた。

「あれ? 友達がノエルのことだってよくわかったね」

 しまった。
 ぼくには原作の知識があるから当然のようにご紹介される友達はノエルのことだと判断したが、何も知らないアルとしてこの発言はまずい。

 なんとか誤魔化さねば。

「えっと。この間、ノエルお兄さんに会いました。それで、なんかそんな感じのことを聞きました」

 先日のノエルは、おそらくリオラお兄様に呼び出されてオルコット公爵家を訪れていたのだろう。そこでぼくのお友達になってあげてほしいとお願いされたに違いない。だからノエルから聞かされたことにすれば、そこまでおかしくはないはず。

 頑張って誤魔化すぼくに、お兄様は「そうか。そういえばノエルにもう会ったんだってね」と微笑んでくる。「はい! 会いました!」と元気に答えておく。なんとか誤魔化せたようで安心。

 眉尻を下げるお兄様は、「ノエルのことが嫌いになったのかい? 彼、突然公爵家に呼び出されて緊張していたみたいだから」と困ったように頬を掻く。

 ライアンがどのように報告したのかはわからないが、どうやらリオラお兄様も先日の事件は一応知っているらしい。その上で、ノエルをぼくの友達にしたいというのであれば、この間の件はそんなにたいした事ではないという扱いになっている気がする。まぁ、事実としてぼくに怪我があったわけでもないし。たまたまとはいえ、ライアンたちによってすぐに助け出されている。

 しかし、先日のノエルのあれは緊張云々の話ではない。あれは確実にぼくに対する悪意があった。ノエルは外面がよろしいらしく、リオラお兄様も彼の外面に騙されているらしい。ノエルがそんな酷いことをするわけがないという空気をひしひしと感じる。

 原作でもノエルはぼくのお友達だったしな。ここは変更できない流れなのかもしれない。それにリオラお兄様は、案外頑固だ。ライアンのことを諦めずにずっと追っていたお兄様である。意見をコロコロ変えるような性格ではない。

 仕方がない。ここはぼくが折れてやろう。あまりしつこく粘ると、リオラお兄様がストレスたまって爆発するかも。

「ぼくはノエルお兄さんのこと嫌いですけど。仕方がない。お兄様がどうしてもって言うので、一回くらいは遊んであげます」

 ぼくは偉いとお兄様を見上げれば、「え? あ、うん。ありがとう」と困惑気味のお礼が返ってきた。

 ここは、ぼくが大人の対応をすれば済む話だ。とりあえず、いざという時にノエルに投げつけるための泥団子でも作っておこうと思う。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

神の寵愛を受ける僕に勝てるとでも?

雨霧れいん
BL
生まれるのがもっともっと今より昔なら、”信仰”することが”異端”でない時代なら世界ならよかったと、ずっと思って生きていた。あの日までは 溺愛神様×王様系聖職者 【 登場人物 】 ファノーネ・ジヴェア →キラを溺愛し続ける最高神 キラ・マリアドール(水無瀬キラ)→転生してから寵愛を自覚した自分の道を行く王様系聖職者

処理中です...