悪役令息(仮)の弟、破滅回避のためどうにか頑張っています

岩永みやび

文字の大きさ
159 / 178
6歳

159 友達

しおりを挟む
 ふわふわくまさんを隣に座らせて、にこにこ笑顔になるぼく。

「ノアお兄さん優しいでーす。ぼく嬉しいです」
「わかったから。何度も言わなくていいよ」

 照れたように視線を逸らすノアに、ノエルもマックスも微笑ましい目を向けている。ノアはぼくに意地悪したこともあるけど、それはノエルの評判を落とすためにやったこと。態度は素っ気ないけど根は優しいのだとわかる。

「くまさん。今日からぼくのお友達です」
「よかったですね、アル様!」
「はーい」

 ぼく以上に喜んでいるロルフは「へへ、アル様がかわいい」と締まりのない表情でへらへらしている。楽しそうでなによりだ。ロルフもくまさん好きなのだろうか。

 そうして無事に終わったお誕生日パーティー。

 シャルお兄さんもご招待したはずなのだが、最後までその姿は確認できなかった。その代わりにご招待した覚えのないガストン団長がしれっと混じっていたけど。どうやらライアンが連れて来たらしい。別にいいけどね。賑やかな方が楽しいから。

 ノエルとノアはそろそろ帰らなければならない時間だ。でも次はいつ遊べるのだろうか。ぼくの遊び相手としてオルコット公爵家に通っていたノエルであるが、おうちのゴタゴタが理由で最近は遊びに来ていなかった。

 しかしノアの一件も一応解決したわけで。
 そろそろぼくとも遊んでほしい。そわそわとノエルを見上げて「また遊びに来てくれますか?」と訊いてみる。

 目を細めるノエルは「もちろん。また明日来ますね」と嬉しいことを言ってくれた。

「ノアお兄さんも一緒に来てくださぁい!」
「なんで僕が」
「ぼくと遊んでください」
「嫌だ」
「がーん!」

 酷すぎる。
 そんな直球でお断りしなくてもいいのに。へにゃっと眉尻を下げるぼくに、ノエルが慌てて「すみません、アル様」と謝ってくる。ノエルが謝る必要はないのに。

「どうしてそんなこと言うの?」

 だめだよとお兄さんらしく注意するノエルであるが、肝心のノアはそっぽを向いている。けれどもちらちらとぼくに視線を注いでくるノアは、「アルくんとは遊んであげるけど」ともごもご呟く。相変わらずの上から目線である。

「こいつと一緒は嫌だ」

 ノアがこいつと指差したのは、ノエルである。そんな邪険に扱わなくても。君のお兄さんでしょ。

 これにノエルがちょっぴり困った顔をみせた。

 ぼくとしては三人で仲良く遊びたいんだけど。でもノアの気持ちもわからなくはないから無理強いはできない。うーんと困った末に、ノエルが「じゃあしばらくは交代で通う?」とノアに提案した。これにノアが小さく頷く。

「アル様もそれでいいですか?」
「……うん。いいでーす」

 まぁ、いきなり兄弟仲良くは無理か。
 そのうちね、そのうち仲良くなれればいいと思う。

「じゃあまた来てください。ぼく待ってます」

 絶対だよと念押ししてから、マックスと共に帰宅する双子を見送った。

 ノアにもらったくまさんをぎゅっと抱っこして、パタパタ走る。ロルフがいつも以上に「かわいい……!」となにやら悶絶しているが無視しておいた。

「お兄様ぁ! 見てください。ノアお兄さんがくれました。くまさんです」

 まだ会場に残っていたリオラお兄様に突進すれば、「うん。見てたよ。よかったね」と笑顔を見せてくれる。

 どうやらぼくがずっとくまさんを抱えていたのを見ていたらしい。にっこにこのぼくは、お兄様とお話し中だったライアンにも自慢する。

「くまさんです。ノアお兄さんにもらいました」
「かわいいですね」
「はぁい!」

 そのままくまさんを抱えて、ライアンの隣にいたガストン団長を見上げる。

「……ガストン団長のことご招待してません」

 ぼそっと呟けば、団長がむせた。
 普段からキリッとしたお顔の団長である。そういう仕草は珍しい。相変わらずの目力で、団長は「あ、いえ。押しかけてしまい申し訳ありません」と小さく頭を下げてくる。

「いいですよ。お祝いするのは、誰でも歓迎でーす。でもシャルお兄さん来てないね? せっかくご招待したのに」
「っ!」

 きょろきょろするぼくに、なぜかガストン団長が息を呑む。ライアンとリオラお兄様が、団長に憐れむような目を向けた。

「ガストン団長。シャルお兄さんどこに行ったか知りませんか?」

 シャルお兄さんは騎士団にお勤めである。団長であれば、彼の仕事のスケジュールなども把握しているのではないかとの期待を込めて、団長を見上げる。

 鋭い目の団長は、けれども困ったように固まっている。

「団長?」

 くいと彼の袖を引けば、団長が弾かれたように肩を揺らした。ぼくの前に片膝をつく団長は、「あ、いえ」と口ごもった末に「ちょっと。私にもわかりませんね」と小さく頭を下げた。

 どうやら団長といえども、騎士たちの動向をすべて把握しているわけではないらしい。そりゃそうか。

「うむ。気にしないで。シャルお兄さん、今日は忙しかったのかもしれないです」
「そ、そうですね」

 いつもはキリッと無表情の団長が、なんだか動揺したように視線を彷徨わせているのがちょっと気になるけど。

「いい加減諦めたらどうですか」

 ロルフがガストン団長に向かって意味不明な言葉を吐いている。リオラお兄様とライアンも呆れ顔で団長を見ていた。なんだか団長がちょっぴり憐れ。励ますように、団長のことをぽんぽん叩いておいた。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!

迷路を跳ぶ狐
BL
 社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。  だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。  それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。  けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。  一体なんの話だよ!!  否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。  ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。  寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……  全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。  食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていた矢先、森の中で王都の魔法使いが襲われているのを見つけてしまう。 *残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。

キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

やり直せるなら、貴方達とは関わらない。

いろまにもめと
BL
俺はレオベルト・エンフィア。 エンフィア侯爵家の長男であり、前世持ちだ。 俺は幼馴染のアラン・メロヴィングに惚れ込み、恋人でもないのにアランは俺の嫁だと言ってまわるというはずかしい事をし、最終的にアランと恋に落ちた王太子によって、アランに付きまとっていた俺は処刑された。 処刑の直前、俺は前世を思い出した。日本という国の一般サラリーマンだった頃を。そして、ここは前世有名だったBLゲームの世界と一致する事を。 こんな時に思い出しても遅せぇわ!と思い、どうかもう一度やり直せたら、貴族なんだから可愛い嫁さんと裕福にのんびり暮らしたい…! そう思った俺の願いは届いたのだ。 5歳の時の俺に戻ってきた…! 今度は絶対関わらない!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...