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6歳
162 悪役ルート
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「リオラお兄様はジョナスのこと好きですか?」
「え? いや別に」
「なんと!」
夕食の時間。
唐突にリオラお兄様の恋人さんを見つけてあげるという使命を思い出したぼくは、美味しいお肉をもぐもぐしながらお兄様のことを探っていた。
ジョナスはすごくいい人である。中性的な顔立ちでほんわか優しい。いつも香水をつけているのかいい匂いがする。理想の優しいお兄さんだ。
ジョナスの方が歳上だけど、リオラお兄様の恋人候補に相応しい人材だろう。そう思って現在のリオラお兄様とジョナスの関係性を探ってみることにしたのだが、悲しいことにお兄様はジョナスに対して欠けらも興味を持っていないとわかり驚いてしまった。
思わず大声を出したぼくに、お兄様がちょっぴり目を見開いている。いけないいけない。ここは冷静に話を進めないと。
こほこほ咳払いをして誤魔化せば、お兄様が「アル? どうしたの? お肉詰まらせた?」と立ち上がってしまう。ぼくはもう六歳だぞ。そんなうっかりさんではない。
「ぼくは大丈夫です」
「そう?」
お水飲んだらと勧められて、よくわからないがごくごく飲んでおく。美味しい。
「ぼくはジョナスのこと好き。優しいから」
「……うん。最近よく懐いているね」
懐いているわけではない。
優しいお顔でにっこり笑ってくれるから、つい引き寄せられてしまうだけである。
「リオラお兄様もジョナス好き」
断言しておけば、お兄様が「好きではないよ」と酷い発言をした。それではジョナスがあまりにも可哀想だ。原作でモブだからって、そう雑に扱う必要ないと思う。慌ててジョナスの魅力を説明してみる。特に口元のほくろが素敵なのだと力説すれば、お兄様が「う、うーん。よくわからないや」と諦めてしまう。諦めてどうするのだ。
「ロルフもジョナスのこと好きって言ってました。ジョナスはすごく人気者。モテモテです」
「なにかの間違いじゃない?」
「間違いじゃないでーす! 優しくてモテモテ!」
「はぁ、そうなんだ」
なんだか疑いの目を向けてくるリオラお兄様は、ジョナスのことが嫌いなのだろうか。あんなに素敵でセクシーなお兄さんなのに。彼がたまにやる頬にあたった横髪を耳にかき上げる仕草とか最高なのに。
しかしリオラお兄様はまだ十六歳。大人なジョナスの魅力に気がつかなくても無理はない。その点ぼくは前世の記憶ある賢い六歳なので、いち早くジョナスの魅力に気が付いてしまったのだ。
そういえばリオラお兄様は今年で十七歳になる。ぼくの誕生日パーティーも盛大にやってもらったので、お兄様のお誕生日はぼくがお祝いしようと思う。忘れないように覚えておかないと。
お皿の上で存在を主張しているお野菜を睨みつける。料理長め。ぼくが何度もお願いしているのに、どうしていつもお野菜を混入させるのだろうか。忘れっぽいにも程があると思う。また後で「お野菜いりません」と言いに行こう。
「あのね、アル」
小首を傾げたお兄様に呼ばれて、顔を上げる。お野菜のことは一旦忘れよう。なんかそのうちお皿の上から消えないかなとちょっと期待して。
「人を見かけで判断してはいけないよ」
「はーい」
ぼくそんなことした覚えはないけどね。ガストン団長は怖いお顔だけど、まぁまぁ優しい。でもお母様はガストン団長のこと苦手って言っていた。顔が怖いから。ガッツリ見た目で判断している。
むうんと考え込んでいれば、お兄様が「優しそうな顔でもね、優しいとは限らないから」と妙なことを言う。
「ガストン団長のお顔は怖いです。優しくない」
「え? 何で突然団長の話になるの?」
見た目で判断してはいけないと言われて真っ先に思い浮かぶのがお顔の怖い団長さんだ。けれどもリオラお兄様は違ったらしい。「団長はどうでもいいよ」と酷いことを言う。
「ジョナスの話だよ。確かに見かけは優しそうだけど。あれはそんなに優しい人間じゃないからね?」
「……?」
そんなわけない。ジョナスは優しい。ものすごく。ぼくが抱っこを強請れば、嫌な顔ひとつせずに抱えてくれる。困ったぼくを助けてくれたこともある。見た目通りの優しいお兄さんなのだ。
なんでお兄様はそんなこと言うのだろうかと考えて、はっとする。
固まるぼくは、手にしていたフォークを落としてしまった。ガチャンと大きな音がしてお兄様が少しだけ驚いたように肩を揺らした。
え? あれ?
もしかしてリオラお兄様、リッキーじゃなくてジョナスに嫌がらせしてる……?
だってあんなに優しいお兄さんを悪者のように扱うお兄様は正直変だ。でもそれがリオラお兄様によるジョナスへの嫌がらせだと考えれば辻褄が合ってしまう。
てっきりリオラお兄様は悪役令息にならない方向へと動いているのかと思っていたのだが。ターゲットが変わっただけで、お兄様の悪役ルートは抜け出せていない?
バクバクと心臓が音を立てる。
え、だって。原作では悪役としてリッキーに嫌がらせしたお兄様は騎士たちの反感を買って破滅へと追いやられる。ジョナスも騎士である。
でもどうして?
どうしてリオラお兄様がジョナスに嫌がらせする展開になるのだ。原作ではライアンの恋人であるリッキーに嫉妬したというわかりやすい理由があった。でもジョナスは? ジョナスはライアンの恋人ではない。
「アル? おーい。どうしたの?」
固まるぼくに、リオラお兄様がしきりに声をかけてくる。でもそれどころではない。
再び目の前に現れた破滅という道を前に、ぼくはどうしようもなく眉間にぎゅっと力を入れた。
「え? いや別に」
「なんと!」
夕食の時間。
唐突にリオラお兄様の恋人さんを見つけてあげるという使命を思い出したぼくは、美味しいお肉をもぐもぐしながらお兄様のことを探っていた。
ジョナスはすごくいい人である。中性的な顔立ちでほんわか優しい。いつも香水をつけているのかいい匂いがする。理想の優しいお兄さんだ。
ジョナスの方が歳上だけど、リオラお兄様の恋人候補に相応しい人材だろう。そう思って現在のリオラお兄様とジョナスの関係性を探ってみることにしたのだが、悲しいことにお兄様はジョナスに対して欠けらも興味を持っていないとわかり驚いてしまった。
思わず大声を出したぼくに、お兄様がちょっぴり目を見開いている。いけないいけない。ここは冷静に話を進めないと。
こほこほ咳払いをして誤魔化せば、お兄様が「アル? どうしたの? お肉詰まらせた?」と立ち上がってしまう。ぼくはもう六歳だぞ。そんなうっかりさんではない。
「ぼくは大丈夫です」
「そう?」
お水飲んだらと勧められて、よくわからないがごくごく飲んでおく。美味しい。
「ぼくはジョナスのこと好き。優しいから」
「……うん。最近よく懐いているね」
懐いているわけではない。
優しいお顔でにっこり笑ってくれるから、つい引き寄せられてしまうだけである。
「リオラお兄様もジョナス好き」
断言しておけば、お兄様が「好きではないよ」と酷い発言をした。それではジョナスがあまりにも可哀想だ。原作でモブだからって、そう雑に扱う必要ないと思う。慌ててジョナスの魅力を説明してみる。特に口元のほくろが素敵なのだと力説すれば、お兄様が「う、うーん。よくわからないや」と諦めてしまう。諦めてどうするのだ。
「ロルフもジョナスのこと好きって言ってました。ジョナスはすごく人気者。モテモテです」
「なにかの間違いじゃない?」
「間違いじゃないでーす! 優しくてモテモテ!」
「はぁ、そうなんだ」
なんだか疑いの目を向けてくるリオラお兄様は、ジョナスのことが嫌いなのだろうか。あんなに素敵でセクシーなお兄さんなのに。彼がたまにやる頬にあたった横髪を耳にかき上げる仕草とか最高なのに。
しかしリオラお兄様はまだ十六歳。大人なジョナスの魅力に気がつかなくても無理はない。その点ぼくは前世の記憶ある賢い六歳なので、いち早くジョナスの魅力に気が付いてしまったのだ。
そういえばリオラお兄様は今年で十七歳になる。ぼくの誕生日パーティーも盛大にやってもらったので、お兄様のお誕生日はぼくがお祝いしようと思う。忘れないように覚えておかないと。
お皿の上で存在を主張しているお野菜を睨みつける。料理長め。ぼくが何度もお願いしているのに、どうしていつもお野菜を混入させるのだろうか。忘れっぽいにも程があると思う。また後で「お野菜いりません」と言いに行こう。
「あのね、アル」
小首を傾げたお兄様に呼ばれて、顔を上げる。お野菜のことは一旦忘れよう。なんかそのうちお皿の上から消えないかなとちょっと期待して。
「人を見かけで判断してはいけないよ」
「はーい」
ぼくそんなことした覚えはないけどね。ガストン団長は怖いお顔だけど、まぁまぁ優しい。でもお母様はガストン団長のこと苦手って言っていた。顔が怖いから。ガッツリ見た目で判断している。
むうんと考え込んでいれば、お兄様が「優しそうな顔でもね、優しいとは限らないから」と妙なことを言う。
「ガストン団長のお顔は怖いです。優しくない」
「え? 何で突然団長の話になるの?」
見た目で判断してはいけないと言われて真っ先に思い浮かぶのがお顔の怖い団長さんだ。けれどもリオラお兄様は違ったらしい。「団長はどうでもいいよ」と酷いことを言う。
「ジョナスの話だよ。確かに見かけは優しそうだけど。あれはそんなに優しい人間じゃないからね?」
「……?」
そんなわけない。ジョナスは優しい。ものすごく。ぼくが抱っこを強請れば、嫌な顔ひとつせずに抱えてくれる。困ったぼくを助けてくれたこともある。見た目通りの優しいお兄さんなのだ。
なんでお兄様はそんなこと言うのだろうかと考えて、はっとする。
固まるぼくは、手にしていたフォークを落としてしまった。ガチャンと大きな音がしてお兄様が少しだけ驚いたように肩を揺らした。
え? あれ?
もしかしてリオラお兄様、リッキーじゃなくてジョナスに嫌がらせしてる……?
だってあんなに優しいお兄さんを悪者のように扱うお兄様は正直変だ。でもそれがリオラお兄様によるジョナスへの嫌がらせだと考えれば辻褄が合ってしまう。
てっきりリオラお兄様は悪役令息にならない方向へと動いているのかと思っていたのだが。ターゲットが変わっただけで、お兄様の悪役ルートは抜け出せていない?
バクバクと心臓が音を立てる。
え、だって。原作では悪役としてリッキーに嫌がらせしたお兄様は騎士たちの反感を買って破滅へと追いやられる。ジョナスも騎士である。
でもどうして?
どうしてリオラお兄様がジョナスに嫌がらせする展開になるのだ。原作ではライアンの恋人であるリッキーに嫉妬したというわかりやすい理由があった。でもジョナスは? ジョナスはライアンの恋人ではない。
「アル? おーい。どうしたの?」
固まるぼくに、リオラお兄様がしきりに声をかけてくる。でもそれどころではない。
再び目の前に現れた破滅という道を前に、ぼくはどうしようもなく眉間にぎゅっと力を入れた。
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