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番外編
可愛い4(sideラーシュ)
寝るってどこまでだろうか。
先にイツキくんを風呂に入れて、その後に僕も入る。髪を拭いてリビングに戻れば、ソファで寝転ぶイツキくんがいた。
また髪が濡れている。
風呂場に引き返してタオルを掴む。イツキくんは色々と雑なところがある。髪が結構濡れているように見えるのだが、イツキくんは気にならないのだろうか。
「イツキくん。髪はちゃんと拭こうね」
「うん」
頷くだけで起き上がりもしないイツキくんに近寄って、きちんとソファに座らせる。
そのまま髪を拭いてやれば、イツキくんが眠そうに目を細めた。
……もしかしてこのまま寝るつもりだろうか。
先程の「一緒に寝る?」発言はなかったことになっているのか?
改めて問いたい気持ちもあるが、僕に余裕がないことを示すようで躊躇ってしまう。
イツキくんに、余裕のない男だと思われたくはない。
「もう寝るの? 寝るなら自分の部屋でね」
ぽんぽんとイツキくんの頭を軽く撫でると、不思議そうな目が返ってきた。
「一緒に寝ないの?」
え、寝ていいの?
途端に頬が緩むのを、懸命に堪えた。
「ラーシュさんの部屋で寝ていい?」
「いいよ」
しかも僕の部屋。いいよ全然。むしろ僕の方からそう提案したかった。
先に僕の部屋へとイツキくんを促して、明日の準備をする。あれこれやらなければならないことを済ませて、一度落ち着くために深呼吸をする。
そうして「イツキくん? 入るよ」と声をかけてから部屋のドアを開けた。
僕のベッドを陣取ったイツキくんは、すやすやと寝息を立てていた。
「……え?」
え、は?
目を見開いて、イツキくんに近寄る。
僕がそばに寄っても、イツキくんは起きる気配がない。すごく普通に寝ている。
え、なんで?
雰囲気的に今日は手を出してもいい感じじゃなかったのか?
寝るって、え、普通に? 添い寝ってこと?
静かに困惑する僕は、とりあえずイツキくんをベッドの端に移動させる。なぜかベッドのど真ん中を陣取っていたイツキくんは、僕が寝るスペースを考慮してくれなかったらしい。
「イツキくん? 寝てるの?」
僕もベッドにあがって、隣に寝そべる。穏やかな表情で寝ているイツキくんは、安心しきった顔だ。可愛い。
しばらくイツキくんの寝顔を眺めていたのだが、我慢できなくなってその柔らかそうな頬にそっと触れてみた。
むっと眉間に皺を寄せるイツキくんが可愛くて、思わず笑みがこぼれる。
そんなことをしているうちに、僕も寝てしまったらしい。突然肩を揺さぶられて、ハッと意識が浮上した。
「……え?」
目を開けると、すぐ近くにイツキくんの顔があった。まだ外は暗い。どうやら僕が寝入ってからそんなに時間は経過していないらしい。
「どうしたの?」
僕はなぜ起こされたのだろうか。上半身を起こせば、隣にぺたんと座ったイツキくんが「なんで寝てるの?」と訝し気に訊いてきた。
なんでと言われても。
普通に就寝時間だよ。
「俺、ラーシュさんが来るの待ってたのに」
「イツキくん……」
いや寝てたよね?
僕が触っても起きなかったよね?
僕は一体どうして責められているのだろうか。
静かに困惑していると、イツキくんが「起こしてよ」と不満気に言った。
あ、起こしてよかったんだ。
でも気の抜けた表情で寝ていたイツキくんを見ると、起こすのが可哀想だと思ってしまったのだ。
「起こしてよかったの? ごめんね」
「……寝ちゃった、俺」
「うん。寝てたね」
しょんぼりするイツキくんが可愛くて、にこりと微笑む。
イツキくんの頭を撫でると、彼はパタッとベッドに倒れてしまう。その倒れ方があまりにも急だったので、ちょっと驚いた。
「ラーシュさん。もう寝よう」
「……」
僕は寝てたんだけどな。
え、僕はなんで起こされたのだろうか。
面食らうも、イツキくんがベッドをペシペシ叩いて早く寝ろと促してくるのでそれに従った。
横になった途端、イツキくんが転がってくる。
そのままピタリと引っ付かれて、僕の眠気が吹き飛んだ。
「……イツキくん。そんなに引っ付かないでほしいな」
「なんで?」
僕が眠れないからだよ。
しかしそれを口にするのはなんとも格好が悪い。
そのうちイツキくんは、僕の隣でもぞもぞと身じろぎする。かと思えば、急にベッドの上を転がって僕から離れていった。
え、なにこれ。
僕は何か試されているのだろうか。
「ラーシュさん」
「うん。どうしたの?」
小声で僕を呼ぶイツキくんが、腕を伸ばして僕の手に触れた。
「キスしないの?」
控えめに言われて、もう我慢する理由はなくなった。
イツキくんのそばに寄って、唇を合わせる。
途端にイツキくんの身体が強張った。
ベッドに仰向けで倒れるイツキくんに覆い被さる。やめてと言われたらやめようと考えて、イツキくんに触れる。
次第に息が荒くなるイツキくんは可愛い。
今日は珍しくやめてと言う気配がないので、僕のほうも徐々に止まらなくなってくる。
イツキくんの下半身に触れると、イツキくんがきゅっと眉間に力を入れた。
「ラーシュさん、明日仕事じゃないの」
「今更そんなこと言われてもね」
誘ってきたのはイツキくんだ。
僕なら一晩くらい寝なくても支障はないから本当に気にしないでほしい。
先にイツキくんを風呂に入れて、その後に僕も入る。髪を拭いてリビングに戻れば、ソファで寝転ぶイツキくんがいた。
また髪が濡れている。
風呂場に引き返してタオルを掴む。イツキくんは色々と雑なところがある。髪が結構濡れているように見えるのだが、イツキくんは気にならないのだろうか。
「イツキくん。髪はちゃんと拭こうね」
「うん」
頷くだけで起き上がりもしないイツキくんに近寄って、きちんとソファに座らせる。
そのまま髪を拭いてやれば、イツキくんが眠そうに目を細めた。
……もしかしてこのまま寝るつもりだろうか。
先程の「一緒に寝る?」発言はなかったことになっているのか?
改めて問いたい気持ちもあるが、僕に余裕がないことを示すようで躊躇ってしまう。
イツキくんに、余裕のない男だと思われたくはない。
「もう寝るの? 寝るなら自分の部屋でね」
ぽんぽんとイツキくんの頭を軽く撫でると、不思議そうな目が返ってきた。
「一緒に寝ないの?」
え、寝ていいの?
途端に頬が緩むのを、懸命に堪えた。
「ラーシュさんの部屋で寝ていい?」
「いいよ」
しかも僕の部屋。いいよ全然。むしろ僕の方からそう提案したかった。
先に僕の部屋へとイツキくんを促して、明日の準備をする。あれこれやらなければならないことを済ませて、一度落ち着くために深呼吸をする。
そうして「イツキくん? 入るよ」と声をかけてから部屋のドアを開けた。
僕のベッドを陣取ったイツキくんは、すやすやと寝息を立てていた。
「……え?」
え、は?
目を見開いて、イツキくんに近寄る。
僕がそばに寄っても、イツキくんは起きる気配がない。すごく普通に寝ている。
え、なんで?
雰囲気的に今日は手を出してもいい感じじゃなかったのか?
寝るって、え、普通に? 添い寝ってこと?
静かに困惑する僕は、とりあえずイツキくんをベッドの端に移動させる。なぜかベッドのど真ん中を陣取っていたイツキくんは、僕が寝るスペースを考慮してくれなかったらしい。
「イツキくん? 寝てるの?」
僕もベッドにあがって、隣に寝そべる。穏やかな表情で寝ているイツキくんは、安心しきった顔だ。可愛い。
しばらくイツキくんの寝顔を眺めていたのだが、我慢できなくなってその柔らかそうな頬にそっと触れてみた。
むっと眉間に皺を寄せるイツキくんが可愛くて、思わず笑みがこぼれる。
そんなことをしているうちに、僕も寝てしまったらしい。突然肩を揺さぶられて、ハッと意識が浮上した。
「……え?」
目を開けると、すぐ近くにイツキくんの顔があった。まだ外は暗い。どうやら僕が寝入ってからそんなに時間は経過していないらしい。
「どうしたの?」
僕はなぜ起こされたのだろうか。上半身を起こせば、隣にぺたんと座ったイツキくんが「なんで寝てるの?」と訝し気に訊いてきた。
なんでと言われても。
普通に就寝時間だよ。
「俺、ラーシュさんが来るの待ってたのに」
「イツキくん……」
いや寝てたよね?
僕が触っても起きなかったよね?
僕は一体どうして責められているのだろうか。
静かに困惑していると、イツキくんが「起こしてよ」と不満気に言った。
あ、起こしてよかったんだ。
でも気の抜けた表情で寝ていたイツキくんを見ると、起こすのが可哀想だと思ってしまったのだ。
「起こしてよかったの? ごめんね」
「……寝ちゃった、俺」
「うん。寝てたね」
しょんぼりするイツキくんが可愛くて、にこりと微笑む。
イツキくんの頭を撫でると、彼はパタッとベッドに倒れてしまう。その倒れ方があまりにも急だったので、ちょっと驚いた。
「ラーシュさん。もう寝よう」
「……」
僕は寝てたんだけどな。
え、僕はなんで起こされたのだろうか。
面食らうも、イツキくんがベッドをペシペシ叩いて早く寝ろと促してくるのでそれに従った。
横になった途端、イツキくんが転がってくる。
そのままピタリと引っ付かれて、僕の眠気が吹き飛んだ。
「……イツキくん。そんなに引っ付かないでほしいな」
「なんで?」
僕が眠れないからだよ。
しかしそれを口にするのはなんとも格好が悪い。
そのうちイツキくんは、僕の隣でもぞもぞと身じろぎする。かと思えば、急にベッドの上を転がって僕から離れていった。
え、なにこれ。
僕は何か試されているのだろうか。
「ラーシュさん」
「うん。どうしたの?」
小声で僕を呼ぶイツキくんが、腕を伸ばして僕の手に触れた。
「キスしないの?」
控えめに言われて、もう我慢する理由はなくなった。
イツキくんのそばに寄って、唇を合わせる。
途端にイツキくんの身体が強張った。
ベッドに仰向けで倒れるイツキくんに覆い被さる。やめてと言われたらやめようと考えて、イツキくんに触れる。
次第に息が荒くなるイツキくんは可愛い。
今日は珍しくやめてと言う気配がないので、僕のほうも徐々に止まらなくなってくる。
イツキくんの下半身に触れると、イツキくんがきゅっと眉間に力を入れた。
「ラーシュさん、明日仕事じゃないの」
「今更そんなこと言われてもね」
誘ってきたのはイツキくんだ。
僕なら一晩くらい寝なくても支障はないから本当に気にしないでほしい。
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