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第4話 あやかしだって喧嘩したい!
13 迷子
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猫は気まぐれだ。話し疲れたから帰ると言い放ったマリさんと別れて、僕と山瀬さんは再び捜索を開始した。今度のターゲットは八太さんだ。
「八太は黒猫だ。マリと並ぶと白黒で面白いぞ」
「はぁ、そうですか」
適当に相槌を打ちながら山瀬さんの後を追う。
「八太はねずみが嫌いなんだ。この間、土産にねずみを持って行ってやったら飛び上がって逃げ出すものだから面白くてなぁ」
「へー、猫なのにねずみが嫌いなんですね」
「あと犬も苦手なんだ。あいつが世話になっている老夫婦宅の近所に小さな犬がいるんだが、鳴き声が聞こえただけで怯えているんだ」
「大丈夫なんですか、その八太さんって猫」
ますます八太さんのことが心配になってきた。そして同時にそんな臆病な彼が盗みなんてやるのかと改めて疑問に思う。マリさんは八太さんが犯人だと思い込んでいるのだ。もし冤罪ならばきっちりと晴らしてやらねば。使命感に燃える僕。それにしてもだ。
「あの、山瀬さん。この道さっきも通りませんでした?」
ぐるぐるぐるぐる。同じ道をまわっているような気がするのだが。
「ん? そうだったか?」
「そうですよ。だってあのバス停さっきも見ましたよ」
ついでに言うと先に見える自動販売機も見覚えがある。ぴたり。山瀬さんが足を止めた。
「八太の奴。一体どこにいるんだ?」
「もしかして、あてもなく歩いていたわけじゃないですよね……?」
山瀬さんを信じて首を傾げれば、彼はきりっと眉を吊り上げた。
「優斗! 二手にわかれて探すぞ」
「え?」
「では、さらばだ!」
「え?」
猛ダッシュ。わき目も振らずに駆け出した山瀬さんはあっという間に見えなくなった。
「え?」
見知らぬ住宅街に取り残された僕は呆然とする。
「嘘でしょ? ちょっと! 山瀬さん!」
なんなんだ、あの猫。沸々と怒りがわいてきた僕は、そっと拳を握り締めた。
「八太は黒猫だ。マリと並ぶと白黒で面白いぞ」
「はぁ、そうですか」
適当に相槌を打ちながら山瀬さんの後を追う。
「八太はねずみが嫌いなんだ。この間、土産にねずみを持って行ってやったら飛び上がって逃げ出すものだから面白くてなぁ」
「へー、猫なのにねずみが嫌いなんですね」
「あと犬も苦手なんだ。あいつが世話になっている老夫婦宅の近所に小さな犬がいるんだが、鳴き声が聞こえただけで怯えているんだ」
「大丈夫なんですか、その八太さんって猫」
ますます八太さんのことが心配になってきた。そして同時にそんな臆病な彼が盗みなんてやるのかと改めて疑問に思う。マリさんは八太さんが犯人だと思い込んでいるのだ。もし冤罪ならばきっちりと晴らしてやらねば。使命感に燃える僕。それにしてもだ。
「あの、山瀬さん。この道さっきも通りませんでした?」
ぐるぐるぐるぐる。同じ道をまわっているような気がするのだが。
「ん? そうだったか?」
「そうですよ。だってあのバス停さっきも見ましたよ」
ついでに言うと先に見える自動販売機も見覚えがある。ぴたり。山瀬さんが足を止めた。
「八太の奴。一体どこにいるんだ?」
「もしかして、あてもなく歩いていたわけじゃないですよね……?」
山瀬さんを信じて首を傾げれば、彼はきりっと眉を吊り上げた。
「優斗! 二手にわかれて探すぞ」
「え?」
「では、さらばだ!」
「え?」
猛ダッシュ。わき目も振らずに駆け出した山瀬さんはあっという間に見えなくなった。
「え?」
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「嘘でしょ? ちょっと! 山瀬さん!」
なんなんだ、あの猫。沸々と怒りがわいてきた僕は、そっと拳を握り締めた。
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