59 / 105
59 片付け
しおりを挟む
「散らかさない! なんで片付けしないんですか」
「今からやろうと思ってたもん」
部屋に入るなり顔をしかめて文句を言ってくるオリビアは、普段通りである。
今日は朝から雨。
庭遊びができない俺は、部屋で静かに遊んでいた。いつもは窓の外からこっそり俺の様子を窺っているオリビアの使い魔であるちっこい鳥も朝から部屋に入ってきた。
心優しい俺は、ちっこい鳥ルルも拒絶しない。仲良く遊んであげるのだ。
そうして室内でちっこい鳥を追いかけて、途中でポメちゃんをなでなでして、さらに猫のユナも追いかける。俺はすごく忙しい。
その後はお絵描きして遊んだ。
こんな感じで充実した一日を送っていた俺であるが、オリビアが乱入してきた。ズカズカ入ってきた彼女は、部屋を見渡すなり眉を吊り上げて叱りつけてくる。なんて心の狭い奴。俺は七歳だぞ。一生懸命遊んでなにが悪い。
ちっこい鳥を片手で握って、オリビアを見上げる。『もう無理、疲れた』とぐったりしている鳥を確認するなり、オリビアが「こら!」と怒鳴りつけてくる。
「ルルをいじめない! 何度言ったらわかるんですか」
「鳥が俺と遊びたいって言った」
『言ってねぇよ』
俺の手から乱暴に鳥を取り上げたオリビアは、「可哀想に」とひたすらちっこい鳥を撫でている。遊んでもらえない俺のほうが可哀想だ。
むすっと頬を膨らませて、ポメちゃんに抱きついておく。「オリビアが俺をいじめる!」と告げ口してやるが、やる気のないポメラニアンは『あー、はいはい。大変だねぇ』とすごく雑にあしらってくる。おまえ、俺の子分のくせしてなんだその態度は。ご主人様がいじめられてるんだぞ。子分としてどうにかしようとは思わないのか?
「まったくもう」
ぷんぷん怒るオリビアは、「ケイリーはどこに行ったんですか」と言いながら片付けを始める。
「どっか行った。ケイリーは全然俺と遊んでくれない」
俺の侍従であるはずのケイリーは、頻繁に俺の前から姿を消す。もはや俺の側にいるほうが珍しいくらいであった。ケイリーの雑な仕事に、オリビアが頭を抱えている。「目を離すなって何度も言ってるのに」と小声でぶつぶつ言っている。
散らばっていた紙をかき集めて「これ捨てていいですか?」と尋ねてくるオリビアから慌てて紙を奪い取る。
「なんで捨てるんだ! お母様に見せるからだめ!」
「はいはい。じゃあ片付けてくださいよ」
最近、お母様は俺がお絵描きしたものをすごく褒めてくれる。「テオは絵が上手ね」とにこにこしてくれるのだ。だから描いたものは全部お母様に見せることにしている。
急いで回収する俺を横目で眺めて、オリビアが散らばった本を本棚に戻す。
「本を踏み台にするのはやめてください」
俺が本を読むはずがないと決めつけているオリビアはこちらを睨みつけてくる。だが間違ってはいない。部屋を飛び回るルルを捕まえるために本を踏み台にしたのだ。結局はあまり使わなかったけど。
ため息つきながら本を片付けていたオリビアであったが、彼女は途中でふと手を止めた。
「ん?」
首を捻る彼女は、本に挟まっていた一枚の紙を引き抜いて眉を寄せていた。
そ、それは!
俺が隠していた計画書!
オリビアに脱走計画がバレたら怒られる。慌てて彼女の手から紙を奪い取れば、オリビアが「ちょっと」と顔を顰めた。
「あの、これは」
どうにか誤魔化そうと視線を泳がせる俺。ポメちゃんに視線をやるが、目を閉じて本格的にお昼寝中のポメちゃんは気が付かない。猫のユナも部屋の隅に逃げて顔を背けている。ルルはもちろんオリビアの味方だからあてにならない。というかルルにはこの計画を教えていない。
突然のピンチにへにゃりと眉を下げる俺。
「なんでこんなところに挟んでいるんですか?」
「う、うーん?」
「変なところに隠さない」
いいですか? と注意してくるオリビアに、目を瞬く。
え? それだけ?
俺が本に紙を隠していたことを注意するオリビアは、中身についてはなにも触れない。読んでないの? いやでも。彼女は先程じっくり紙を見つめていた。あれだけの時間があれば確実に中身も理解したはずである。
「……中身読んだ?」
まさかあえて放置されている?
なんだか怖くなっておそるおそる問えば、オリビアが「ん?」と小首を傾げた。
「見ましたけど。字は綺麗に書かないとだめですよ。ちゃんと練習しないと。なにが書いてあるのかまったく読めません」
「なんだと!?」
俺の字が汚くて読めないとふざけたこと言うオリビアに蹴りをお見舞いしてやる。「やめなさい!」と眉を吊り上げる彼女は確実に俺を馬鹿にしていた。
「汚くないもん! ちゃんと読めるもん!」
「読めませんよ! もっと丁寧に書いてください」
「書いてるもん!」
許せない。
怒ったぞアピールをしてやるがオリビアは怯まない。俺が悪いと決めつけて余裕の態度を崩さない。
「猫! これ読めるよね!?」
『え? 読めないよ、汚くて』
裏切り猫を叩いておく。オリビアが「ユナをいじめない!」と大声出すけど無視だ無視。
「今からやろうと思ってたもん」
部屋に入るなり顔をしかめて文句を言ってくるオリビアは、普段通りである。
今日は朝から雨。
庭遊びができない俺は、部屋で静かに遊んでいた。いつもは窓の外からこっそり俺の様子を窺っているオリビアの使い魔であるちっこい鳥も朝から部屋に入ってきた。
心優しい俺は、ちっこい鳥ルルも拒絶しない。仲良く遊んであげるのだ。
そうして室内でちっこい鳥を追いかけて、途中でポメちゃんをなでなでして、さらに猫のユナも追いかける。俺はすごく忙しい。
その後はお絵描きして遊んだ。
こんな感じで充実した一日を送っていた俺であるが、オリビアが乱入してきた。ズカズカ入ってきた彼女は、部屋を見渡すなり眉を吊り上げて叱りつけてくる。なんて心の狭い奴。俺は七歳だぞ。一生懸命遊んでなにが悪い。
ちっこい鳥を片手で握って、オリビアを見上げる。『もう無理、疲れた』とぐったりしている鳥を確認するなり、オリビアが「こら!」と怒鳴りつけてくる。
「ルルをいじめない! 何度言ったらわかるんですか」
「鳥が俺と遊びたいって言った」
『言ってねぇよ』
俺の手から乱暴に鳥を取り上げたオリビアは、「可哀想に」とひたすらちっこい鳥を撫でている。遊んでもらえない俺のほうが可哀想だ。
むすっと頬を膨らませて、ポメちゃんに抱きついておく。「オリビアが俺をいじめる!」と告げ口してやるが、やる気のないポメラニアンは『あー、はいはい。大変だねぇ』とすごく雑にあしらってくる。おまえ、俺の子分のくせしてなんだその態度は。ご主人様がいじめられてるんだぞ。子分としてどうにかしようとは思わないのか?
「まったくもう」
ぷんぷん怒るオリビアは、「ケイリーはどこに行ったんですか」と言いながら片付けを始める。
「どっか行った。ケイリーは全然俺と遊んでくれない」
俺の侍従であるはずのケイリーは、頻繁に俺の前から姿を消す。もはや俺の側にいるほうが珍しいくらいであった。ケイリーの雑な仕事に、オリビアが頭を抱えている。「目を離すなって何度も言ってるのに」と小声でぶつぶつ言っている。
散らばっていた紙をかき集めて「これ捨てていいですか?」と尋ねてくるオリビアから慌てて紙を奪い取る。
「なんで捨てるんだ! お母様に見せるからだめ!」
「はいはい。じゃあ片付けてくださいよ」
最近、お母様は俺がお絵描きしたものをすごく褒めてくれる。「テオは絵が上手ね」とにこにこしてくれるのだ。だから描いたものは全部お母様に見せることにしている。
急いで回収する俺を横目で眺めて、オリビアが散らばった本を本棚に戻す。
「本を踏み台にするのはやめてください」
俺が本を読むはずがないと決めつけているオリビアはこちらを睨みつけてくる。だが間違ってはいない。部屋を飛び回るルルを捕まえるために本を踏み台にしたのだ。結局はあまり使わなかったけど。
ため息つきながら本を片付けていたオリビアであったが、彼女は途中でふと手を止めた。
「ん?」
首を捻る彼女は、本に挟まっていた一枚の紙を引き抜いて眉を寄せていた。
そ、それは!
俺が隠していた計画書!
オリビアに脱走計画がバレたら怒られる。慌てて彼女の手から紙を奪い取れば、オリビアが「ちょっと」と顔を顰めた。
「あの、これは」
どうにか誤魔化そうと視線を泳がせる俺。ポメちゃんに視線をやるが、目を閉じて本格的にお昼寝中のポメちゃんは気が付かない。猫のユナも部屋の隅に逃げて顔を背けている。ルルはもちろんオリビアの味方だからあてにならない。というかルルにはこの計画を教えていない。
突然のピンチにへにゃりと眉を下げる俺。
「なんでこんなところに挟んでいるんですか?」
「う、うーん?」
「変なところに隠さない」
いいですか? と注意してくるオリビアに、目を瞬く。
え? それだけ?
俺が本に紙を隠していたことを注意するオリビアは、中身についてはなにも触れない。読んでないの? いやでも。彼女は先程じっくり紙を見つめていた。あれだけの時間があれば確実に中身も理解したはずである。
「……中身読んだ?」
まさかあえて放置されている?
なんだか怖くなっておそるおそる問えば、オリビアが「ん?」と小首を傾げた。
「見ましたけど。字は綺麗に書かないとだめですよ。ちゃんと練習しないと。なにが書いてあるのかまったく読めません」
「なんだと!?」
俺の字が汚くて読めないとふざけたこと言うオリビアに蹴りをお見舞いしてやる。「やめなさい!」と眉を吊り上げる彼女は確実に俺を馬鹿にしていた。
「汚くないもん! ちゃんと読めるもん!」
「読めませんよ! もっと丁寧に書いてください」
「書いてるもん!」
許せない。
怒ったぞアピールをしてやるがオリビアは怯まない。俺が悪いと決めつけて余裕の態度を崩さない。
「猫! これ読めるよね!?」
『え? 読めないよ、汚くて』
裏切り猫を叩いておく。オリビアが「ユナをいじめない!」と大声出すけど無視だ無視。
24
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる