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「ちっこい鳥ぃ、出てこい! 俺と遊べ!」
今日は朝からオリビアの使い魔であるちっこい鳥ルルを捜索していた。ケイリーに用意してもらった虫取り網を片手に庭をうろうろする。部屋で寝ていた猫のユナも連れてきた。本当はポメちゃんも一緒に連れてきたかったのだが、面倒くさがりポメラニアンは頑なに動かなかった。一応俺が主人なのに。全然俺の言うこときかない。なんて嫌な魔獣だ。
『もう諦めなよ』
「諦めてどうする。猫も真面目に探せ」
『ボク猫じゃないもん』
ふんふんと虫取り網を素振りしておく。
ルルはオリビアに命令されて俺の行動を監視している嫌な鳥なのだ。なのでいつも俺の側にいるはずなのだが、まったく姿を見せない。うまいこと隠れているのだ。
「出てこい!」
ありったけの大声で呼んでみるが、ルルは出てこない。絶対に近くにいるはずなのに。
そうしてなかなか出てこない鳥に機嫌が急降下した俺はむすっとした顔で庭を彷徨う。そんな時である。
「テオ様」
「……副団長」
俺に声をかけてきたのは私営騎士団副団長のデリックだ。茶髪の爽やかお兄さん。ちょうどいいところに来た。
「鳥を捕まえてきて」
「鳥? オリビアの使い魔ですか?」
「うん。はやくしろ」
この副団長は、前にルルを呼び寄せていた。きっとあの鳥と仲良しなのだ。だから今回も捕まえてこいと指示すれば、デリックが眉を寄せた。
「意地悪したらだめですよ」
「してない」
なんだその決めつけ。俺は単に鳥とも遊んであげようと思っただけだ。鳥だけ仲間外れは可哀想だもん。そう説明すれば、デリックが「そうですか」と柔らかい笑みを浮かべる。
俺の行動を理解してくれたらしい。空を見上げてルルを探すデリックは、近くにあった大きな木に向かって右手を差し出した。
「ルル、おいで」
『……なんでオレが』
すると木から飛び出してきたルルが、デリックの手にとまった。俺が呼んでも全然出てこなかったのに。なんでデリックの言うことはきくんだ。なにか弱みでも握られているのか?
「出たな! ちっこい鳥め!」
素早く虫取り網を構える俺に、デリックが慌てて距離をとる。ちっこい鳥もビビったように羽をバタバタさせている。
「テオ様、それを置きましょうか」
「これがないと鳥を捕まえられないだろ!」
「捕まえなくていいですよ。ここにいるでしょう」
ね! と俺を宥めるデリックに、目を瞬く。足元ではユナも『まぁ、網で捕まえる必要はないよね』と生意気な口をきいている。
しかし俺は知っている。
この鳥はデリックが去った瞬間に俺の前から逃げるのだ。その前に捕まえて鳥籠に押し込んでおかなければならない。じりじりと距離を詰める俺に、デリックが頬を引きつらせる。ちっこい鳥も俺を警戒しているのが丸わかりだ。
「テオ様と遊んであげてよ」
『なんでオレが』
「逃げるから追いかけてくるんだよ」
『その逃げるものを追いかける本能は一体なんなんだよ』
俺を仲間外れにしてこそこそ話し込むデリックと鳥の様子を観察する。鳥が逃げる気配を察知したら素早く虫取り網を振り下ろす準備はできている。
ユナは退屈そうに伸びをしている。
やがて鳥が面倒くさそうに『仕方ねぇな』と吐き捨てる。なんだその偉そうな態度は。ちっこい鳥なんて俺の敵じゃないんだぞ。強気に睨みつければ、鳥がバタバタと羽を動かした。
『少しだけなら相手をしてやる。オリビアにも頼まれてたからな』
「生意気だぞ」
生意気鳥をデリックが俺の肩にのせてきた。緑と黄色が混じった変な色の鳥をじっと眺めて、大きく頷く。
「仕方ない。鳥がそこまで言うなら一緒に遊んでやる」
『遊んでほしいなんて頼んだ覚えはねぇよ』
「行くぞ、猫!」
『聞けよ』
デリックにばいばいと手を振って、急いで部屋に戻る。部屋にはケイリーが用意した鳥籠がある。部屋に戻ればポメちゃんが中央でぐっすり寝ていた。
テーブルに置かれた鳥籠を目にするなり、ルルが素早く棚の上に飛び移った。
「逃げるな!」
『いや逃げるに決まってるだろ。なんだよその鳥籠』
「インテリア」
『嘘つけ!』
ぴよぴようるさい鳥であるが、窓とドアを閉め切ってしまえばこちらの勝ちだ。これで鳥も逃げられないので安心して遊べる。
ポメちゃんの上によじ登って、頭をペシペシ叩く。
「起きろ!」
『……やめて』
小さく呻くポメちゃんは苦しそうな声を出す。いつもこうだ。体だけが大きくて中身は全然強そうじゃない。
「ポメちゃん! あの鳥食べるか?」
『おいこら! ガキ! なに言ってんの!?』
ぴよぴようるさい鳥は、棚の上で暴れている。一方のポメちゃんは『まずそうだから食べない』とあっさりお断りした。これに再び鳥が大暴れする。
『誰がまずそうだって!?』
「うるさいぞ、鳥」
どう転んでも文句しか言わない我儘な鳥を見上げて注意しておく。あんまりうるさいとオリビアに言っちゃうぞ。
でもポメちゃんの気持ちは俺もわかる。黄色と緑の鳥だもん。なんか色からして美味しくなさそうだもんね。以前焼き鳥にしてと頼みに行った時、料理長も魔獣は美味しくないって言ってたし。
今日は朝からオリビアの使い魔であるちっこい鳥ルルを捜索していた。ケイリーに用意してもらった虫取り網を片手に庭をうろうろする。部屋で寝ていた猫のユナも連れてきた。本当はポメちゃんも一緒に連れてきたかったのだが、面倒くさがりポメラニアンは頑なに動かなかった。一応俺が主人なのに。全然俺の言うこときかない。なんて嫌な魔獣だ。
『もう諦めなよ』
「諦めてどうする。猫も真面目に探せ」
『ボク猫じゃないもん』
ふんふんと虫取り網を素振りしておく。
ルルはオリビアに命令されて俺の行動を監視している嫌な鳥なのだ。なのでいつも俺の側にいるはずなのだが、まったく姿を見せない。うまいこと隠れているのだ。
「出てこい!」
ありったけの大声で呼んでみるが、ルルは出てこない。絶対に近くにいるはずなのに。
そうしてなかなか出てこない鳥に機嫌が急降下した俺はむすっとした顔で庭を彷徨う。そんな時である。
「テオ様」
「……副団長」
俺に声をかけてきたのは私営騎士団副団長のデリックだ。茶髪の爽やかお兄さん。ちょうどいいところに来た。
「鳥を捕まえてきて」
「鳥? オリビアの使い魔ですか?」
「うん。はやくしろ」
この副団長は、前にルルを呼び寄せていた。きっとあの鳥と仲良しなのだ。だから今回も捕まえてこいと指示すれば、デリックが眉を寄せた。
「意地悪したらだめですよ」
「してない」
なんだその決めつけ。俺は単に鳥とも遊んであげようと思っただけだ。鳥だけ仲間外れは可哀想だもん。そう説明すれば、デリックが「そうですか」と柔らかい笑みを浮かべる。
俺の行動を理解してくれたらしい。空を見上げてルルを探すデリックは、近くにあった大きな木に向かって右手を差し出した。
「ルル、おいで」
『……なんでオレが』
すると木から飛び出してきたルルが、デリックの手にとまった。俺が呼んでも全然出てこなかったのに。なんでデリックの言うことはきくんだ。なにか弱みでも握られているのか?
「出たな! ちっこい鳥め!」
素早く虫取り網を構える俺に、デリックが慌てて距離をとる。ちっこい鳥もビビったように羽をバタバタさせている。
「テオ様、それを置きましょうか」
「これがないと鳥を捕まえられないだろ!」
「捕まえなくていいですよ。ここにいるでしょう」
ね! と俺を宥めるデリックに、目を瞬く。足元ではユナも『まぁ、網で捕まえる必要はないよね』と生意気な口をきいている。
しかし俺は知っている。
この鳥はデリックが去った瞬間に俺の前から逃げるのだ。その前に捕まえて鳥籠に押し込んでおかなければならない。じりじりと距離を詰める俺に、デリックが頬を引きつらせる。ちっこい鳥も俺を警戒しているのが丸わかりだ。
「テオ様と遊んであげてよ」
『なんでオレが』
「逃げるから追いかけてくるんだよ」
『その逃げるものを追いかける本能は一体なんなんだよ』
俺を仲間外れにしてこそこそ話し込むデリックと鳥の様子を観察する。鳥が逃げる気配を察知したら素早く虫取り網を振り下ろす準備はできている。
ユナは退屈そうに伸びをしている。
やがて鳥が面倒くさそうに『仕方ねぇな』と吐き捨てる。なんだその偉そうな態度は。ちっこい鳥なんて俺の敵じゃないんだぞ。強気に睨みつければ、鳥がバタバタと羽を動かした。
『少しだけなら相手をしてやる。オリビアにも頼まれてたからな』
「生意気だぞ」
生意気鳥をデリックが俺の肩にのせてきた。緑と黄色が混じった変な色の鳥をじっと眺めて、大きく頷く。
「仕方ない。鳥がそこまで言うなら一緒に遊んでやる」
『遊んでほしいなんて頼んだ覚えはねぇよ』
「行くぞ、猫!」
『聞けよ』
デリックにばいばいと手を振って、急いで部屋に戻る。部屋にはケイリーが用意した鳥籠がある。部屋に戻ればポメちゃんが中央でぐっすり寝ていた。
テーブルに置かれた鳥籠を目にするなり、ルルが素早く棚の上に飛び移った。
「逃げるな!」
『いや逃げるに決まってるだろ。なんだよその鳥籠』
「インテリア」
『嘘つけ!』
ぴよぴようるさい鳥であるが、窓とドアを閉め切ってしまえばこちらの勝ちだ。これで鳥も逃げられないので安心して遊べる。
ポメちゃんの上によじ登って、頭をペシペシ叩く。
「起きろ!」
『……やめて』
小さく呻くポメちゃんは苦しそうな声を出す。いつもこうだ。体だけが大きくて中身は全然強そうじゃない。
「ポメちゃん! あの鳥食べるか?」
『おいこら! ガキ! なに言ってんの!?』
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