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27 まだ言われてない
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邪魔者は退散しようかね、とふざけた口調で肩をすくめたドミニク隊長は重い腰をあげた。
「もう二度とレオには頼まねぇから」
「なんかすみません」
去り際に俺を睨みつけてきたドミニク隊長は、俺が任務を放り出した件を根に持っているらしい。そんなこと言われても、途中で中身が入れかわるという異常事態が発生したのだ。今回の件は仕方がないと思う。
けれども悪いことをしたという気持ちはあるので、軽く謝っておく。正直、俺に極秘任務とか無理だ。お互いのためにも、もう俺に頼むのはやめた方がいいと思う。
ドミニク隊長が去った後。
静かになった室内にて俺はウォルトを見上げた。ドアをじっと見つめていたウォルトは、肩の力を抜いてから俺を振り返った。
「隊長の言うことは気にするな」
「う、うん」
ドミニク隊長も改めて話してみれば、そんなに悪い人でもないと思う。俺を追いかけ回していたのだって任務の件があったからだし、俺に手を出そうとしたのも本物レオがいいと言ったからだ。
「大丈夫か? 立てるか?」
「……うん」
ウォルトの心配そうな視線が飛んできて、ちょっぴり居心地の悪さを覚えてしまう。俺の体調を気にかけてくれるのはいいんだけど、なんかくすぐったい。控えめに頬をかいていると、ウォルトが「本当に大丈夫なのか?」と疑いの目を向けてきた。
「腰が痛いのか? まだ寝ていてもいいぞ」
「ウォルト、仕事は?」
普段であれば既に仕事へ行っている時間である。
ドミニク隊長について行かなくていいのかと首を傾げると、ウォルトが「今日は休みをもらった」と微笑む。
トミーを捕まえることができたので、ドミニク隊長は上機嫌なのだとか。あまり機嫌がいいようには見えなかったけどな。
「何か食べるか? 食べたいものはあるか?」
「……」
なんか、なんだろうな。これは。
先程から忙しなく俺の世話を焼こうとしてくるウォルトを凝視する。
以前から面倒見のよい男ではあったが、ここまでではなかった。ウォルトの変化に戸惑っていると、ウォルトが「どうした?」と顔を覗き込んできたので驚いてしまう。
「熱でもあるのか?」
俺の額に手をあてたウォルトの距離の近さにまた驚く。固まっていると、ウォルトが「熱はないな」と不思議そうに言う。
「ウォルト。どうしたの?」
「どうとは?」
真顔で聞き返してくるウォルトに、俺は半眼となる。
「え、なんでそんなに俺の世話を焼くわけ?」
「は? これまでだってずっと俺がおまえの面倒を見ていただろ」
「そうだけど、そうじゃない」
たしかにずっとウォルトに養ってもらっていたようなものだけど、こんなに距離近くなかったよね?
今のウォルトは、単なる居候を相手にしている感じではない。これはまるで。
「おまえは俺の彼氏か!」
「……は?」
勢いよく言った俺に、ウォルトがすっごく低い声で応じてきた。その迫力に首をすくめる。
「どういう意味だ」
冷たい声で問い詰めてくるウォルトから視線を外す。
ベッドの上で膝を抱えて背中を丸める。
「……だって。別に付き合ってはない、よね?」
「は?」
頭上から降ってくる冷たい声に負けじと目元に力を込めた。ベッドの傍に立ったウォルトが、険しい顔で腕を組んでいる。
「俺は付き合っていると思っていたんだが?」
「そうなの? でも付き合ってほしいなんて言われてない……」
膝に顔を伏せて告げると、ウォルトが面食らったように「好きだと言っただろ」と言い返してきた。
「……言われたけど。ちゃんと付き合ってほしいって言ってくれないとやだ」
「……」
すごく小さい声で付け足したところ、ウォルトが黙り込んでしまった。
調子に乗って変なことを言ってしまったかもしれない。途端に後悔したけど、今更発した言葉をなかったことにはできない。でも曖昧なままで付き合うのは嫌。俺、こういうのはちゃんとしたい。
唇を噛んでいると、頭にウォルトの手が乗せられた。膝に顔を埋めると、ウォルトの小さな笑いが聞こえてきた。
「ユウヤ」
「……その名前で呼ぶなって言っただろ」
弱々しく応じた俺の頭を、ウォルトがガシガシと撫でてくる。
「ユウヤ。おまえは本当に可愛いな」
「……可愛いって言うな」
「ほら、顔あげてくれ」
ウォルトに優しく促されて、渋々顔をあげた。
幸せいっぱいみたいな表情のウォルトが視界に入って、カッと顔に熱が集まるのを感じた。
俺の前に片膝をついたウォルトが、まるで王子様みたいに綺麗な笑みを浮かべた。そのまま呆然とする俺の片手をとって、甲にキスをひとつ。
「ユウヤ。ユウヤは我儘で可愛い。そういうところ全部含めて好きだよ」
ウォルトのことが、きらきら光って見えてしまう。
「ユウヤ、俺と付き合ってくれないか?」
「……っ」
まっすぐに言われて、涙が滲んできた。こくこくと何度も頷く俺のことを、立ち上がったウォルトが抱きしめる。
「どうしてそうすぐ泣くんだ」
困ったような、それでいてどこか嬉しそうなウォルトの声。指で俺の目元を優しく拭ってくれたウォルトを見つめて、俺は彼の手を握った。
「ウォルトのこと、俺も好き。だから付き合ってください」
「ユウヤ」
再びぎゅっと抱きしめられて、俺は幸せに包まれた。
「もう二度とレオには頼まねぇから」
「なんかすみません」
去り際に俺を睨みつけてきたドミニク隊長は、俺が任務を放り出した件を根に持っているらしい。そんなこと言われても、途中で中身が入れかわるという異常事態が発生したのだ。今回の件は仕方がないと思う。
けれども悪いことをしたという気持ちはあるので、軽く謝っておく。正直、俺に極秘任務とか無理だ。お互いのためにも、もう俺に頼むのはやめた方がいいと思う。
ドミニク隊長が去った後。
静かになった室内にて俺はウォルトを見上げた。ドアをじっと見つめていたウォルトは、肩の力を抜いてから俺を振り返った。
「隊長の言うことは気にするな」
「う、うん」
ドミニク隊長も改めて話してみれば、そんなに悪い人でもないと思う。俺を追いかけ回していたのだって任務の件があったからだし、俺に手を出そうとしたのも本物レオがいいと言ったからだ。
「大丈夫か? 立てるか?」
「……うん」
ウォルトの心配そうな視線が飛んできて、ちょっぴり居心地の悪さを覚えてしまう。俺の体調を気にかけてくれるのはいいんだけど、なんかくすぐったい。控えめに頬をかいていると、ウォルトが「本当に大丈夫なのか?」と疑いの目を向けてきた。
「腰が痛いのか? まだ寝ていてもいいぞ」
「ウォルト、仕事は?」
普段であれば既に仕事へ行っている時間である。
ドミニク隊長について行かなくていいのかと首を傾げると、ウォルトが「今日は休みをもらった」と微笑む。
トミーを捕まえることができたので、ドミニク隊長は上機嫌なのだとか。あまり機嫌がいいようには見えなかったけどな。
「何か食べるか? 食べたいものはあるか?」
「……」
なんか、なんだろうな。これは。
先程から忙しなく俺の世話を焼こうとしてくるウォルトを凝視する。
以前から面倒見のよい男ではあったが、ここまでではなかった。ウォルトの変化に戸惑っていると、ウォルトが「どうした?」と顔を覗き込んできたので驚いてしまう。
「熱でもあるのか?」
俺の額に手をあてたウォルトの距離の近さにまた驚く。固まっていると、ウォルトが「熱はないな」と不思議そうに言う。
「ウォルト。どうしたの?」
「どうとは?」
真顔で聞き返してくるウォルトに、俺は半眼となる。
「え、なんでそんなに俺の世話を焼くわけ?」
「は? これまでだってずっと俺がおまえの面倒を見ていただろ」
「そうだけど、そうじゃない」
たしかにずっとウォルトに養ってもらっていたようなものだけど、こんなに距離近くなかったよね?
今のウォルトは、単なる居候を相手にしている感じではない。これはまるで。
「おまえは俺の彼氏か!」
「……は?」
勢いよく言った俺に、ウォルトがすっごく低い声で応じてきた。その迫力に首をすくめる。
「どういう意味だ」
冷たい声で問い詰めてくるウォルトから視線を外す。
ベッドの上で膝を抱えて背中を丸める。
「……だって。別に付き合ってはない、よね?」
「は?」
頭上から降ってくる冷たい声に負けじと目元に力を込めた。ベッドの傍に立ったウォルトが、険しい顔で腕を組んでいる。
「俺は付き合っていると思っていたんだが?」
「そうなの? でも付き合ってほしいなんて言われてない……」
膝に顔を伏せて告げると、ウォルトが面食らったように「好きだと言っただろ」と言い返してきた。
「……言われたけど。ちゃんと付き合ってほしいって言ってくれないとやだ」
「……」
すごく小さい声で付け足したところ、ウォルトが黙り込んでしまった。
調子に乗って変なことを言ってしまったかもしれない。途端に後悔したけど、今更発した言葉をなかったことにはできない。でも曖昧なままで付き合うのは嫌。俺、こういうのはちゃんとしたい。
唇を噛んでいると、頭にウォルトの手が乗せられた。膝に顔を埋めると、ウォルトの小さな笑いが聞こえてきた。
「ユウヤ」
「……その名前で呼ぶなって言っただろ」
弱々しく応じた俺の頭を、ウォルトがガシガシと撫でてくる。
「ユウヤ。おまえは本当に可愛いな」
「……可愛いって言うな」
「ほら、顔あげてくれ」
ウォルトに優しく促されて、渋々顔をあげた。
幸せいっぱいみたいな表情のウォルトが視界に入って、カッと顔に熱が集まるのを感じた。
俺の前に片膝をついたウォルトが、まるで王子様みたいに綺麗な笑みを浮かべた。そのまま呆然とする俺の片手をとって、甲にキスをひとつ。
「ユウヤ。ユウヤは我儘で可愛い。そういうところ全部含めて好きだよ」
ウォルトのことが、きらきら光って見えてしまう。
「ユウヤ、俺と付き合ってくれないか?」
「……っ」
まっすぐに言われて、涙が滲んできた。こくこくと何度も頷く俺のことを、立ち上がったウォルトが抱きしめる。
「どうしてそうすぐ泣くんだ」
困ったような、それでいてどこか嬉しそうなウォルトの声。指で俺の目元を優しく拭ってくれたウォルトを見つめて、俺は彼の手を握った。
「ウォルトのこと、俺も好き。だから付き合ってください」
「ユウヤ」
再びぎゅっと抱きしめられて、俺は幸せに包まれた。
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