29 / 51
第二章 人形の怪
【壱】ー3
しおりを挟む
「あの……何か拙かったのでしょうか?」
「これは“お菊人形”ですね。いつ撮られた物ですか?」
中路の不安そうな声には答えず違う質問を投げる。
写っている着物の柄は菊の花。写真自体も少し古いようだ。
「いつ頃かは私にも分かりません。中路に婿入りした時にはもうありましたから。なので二十年は前の物かと」
「今もこの姿ですか?」
「えっ」
既にどうなっているのか知っているかのような晴明の視線に、中路の喉がコクリと鳴る。
「そ、それが……歪んでしまっているのですっ。まるで溶けたかのように……。信じられませんよね」
「いえ、信じますよ」
「え……?」
青ざめた中路の顔に驚きの色が重なる。
「先ほどの答えですが、着物を切る行為はこの人形を傷つけるも同義。非常に危険です。その上もし今の状態を写真に収めていたらあなたは無事では済まなかったでしょう」
「そんな……っ」
「脅かすようなことを言ってすみません。ですが安全の為にあなたには知っておいて頂きたいんです」
霊の力にも寄るが、もし写真を撮っていたらお菊人形に憑いた霊が彼に不幸をもたらしていたかも知れない。
その写真を媒体にしてここに持ち込まれた場合、祓えたとしてもお菊人形本体でない限り禍は再び起こるだろう。
意気消沈してしまった中路には悪いが、まだ重要な話が残っている。
少し間を置いてから晴明は訊ねた。
「状況が変わったというのは“人形に異変が起きたため実物を持ち出すのが困難になってしまった”ということで合っていますか?」
「……はい」
「この人形は今何処に?」
「いつもお世話になっている寺院に預けてあります」
「着物を切り取るよう助言されたのはそのお寺でですか?」
「は、はい……そこの住職に……。まさか危険なこととは知らず……」
「これは“お菊人形”ですね。いつ撮られた物ですか?」
中路の不安そうな声には答えず違う質問を投げる。
写っている着物の柄は菊の花。写真自体も少し古いようだ。
「いつ頃かは私にも分かりません。中路に婿入りした時にはもうありましたから。なので二十年は前の物かと」
「今もこの姿ですか?」
「えっ」
既にどうなっているのか知っているかのような晴明の視線に、中路の喉がコクリと鳴る。
「そ、それが……歪んでしまっているのですっ。まるで溶けたかのように……。信じられませんよね」
「いえ、信じますよ」
「え……?」
青ざめた中路の顔に驚きの色が重なる。
「先ほどの答えですが、着物を切る行為はこの人形を傷つけるも同義。非常に危険です。その上もし今の状態を写真に収めていたらあなたは無事では済まなかったでしょう」
「そんな……っ」
「脅かすようなことを言ってすみません。ですが安全の為にあなたには知っておいて頂きたいんです」
霊の力にも寄るが、もし写真を撮っていたらお菊人形に憑いた霊が彼に不幸をもたらしていたかも知れない。
その写真を媒体にしてここに持ち込まれた場合、祓えたとしてもお菊人形本体でない限り禍は再び起こるだろう。
意気消沈してしまった中路には悪いが、まだ重要な話が残っている。
少し間を置いてから晴明は訊ねた。
「状況が変わったというのは“人形に異変が起きたため実物を持ち出すのが困難になってしまった”ということで合っていますか?」
「……はい」
「この人形は今何処に?」
「いつもお世話になっている寺院に預けてあります」
「着物を切り取るよう助言されたのはそのお寺でですか?」
「は、はい……そこの住職に……。まさか危険なこととは知らず……」
0
あなたにおすすめの小説
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
俺の婚約者は小さな王子さま?!
大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」
そう言い放ったのはこの国の王子さま?!
同性婚の認められるパミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。
今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。
「年の差12歳なんてありえない!」
初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。
頑張り屋のアルミス王子と、諦め系自由人のカイルアが織り成す救済BL
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
オレンジの奇跡~夕と凪、僕らが交わる世界~
けいこ
BL
両親が営む小さな旅館『久我屋』を手伝いながら、BL小説を書いている僕。
穏やかにゆっくりと過ごす日常に満足していたある日、僕の前にとんでもなく魅力的な男性が現れた。
今まで1度も誰かを好きになったことがない僕にとっては、この感情が何なのか理解できない。
複雑に揺れ動く心に逆らえず、今までとは明らかに違う現実に戸惑いながら、僕の心はゆっくり溶かされていく……
『定時後の偶然が多すぎる』
こさ
BL
定時後に残業をするたび、
なぜか必ず同じ上司が、同じフロアに残っている。
仕事ができて、無口で、社内でも一目置かれている存在。
必要以上に踏み込まず、距離を保つ人――
それが、彼の上司だった。
ただの偶然。
そう思っていたはずなのに、
声をかけられる回数が増え、
視線が重なる時間が長くなっていく。
「無理はするな」
それだけの言葉に、胸がざわつく理由を、
彼自身はまだ知らない。
これは、
気づかないふりをする上司と、
勘違いだと思い込もうとする部下が、
少しずつ“偶然”を積み重ねていく話。
静かで、逃げ場のない溺愛が、
定時後から始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる