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君恋7
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彼等とは反対側へ視線を送れば、真剣な面持ちで何かを見つめている日野が目に留まった。
「日野」
「あ、英店長」
少し気になり、近付いて声を掛けると、日野はハッと驚いたように顔を上げた。
「何かいい物でもあったか?」
「ええっと、その……前川くんにお土産を……」
「前川に?」
思ってもみなかった人物の名前が上がって、今度はこっちが驚いた。
(……いや、意外でもないか。なんだかんだ、アイツの面倒は日野が見てくれているからな)
「前川くんも来られれば良かったんですけど……。だから、お土産でも買って行ってあげれば少しは旅行の雰囲気味わえるかなって」
俯く日野の手元には、信州限定と書かれたお菓子の箱が二つ。
「どっちにするかで、迷ってるのか?」
「はい。甘いモノは苦手じゃないって前に聞いたので」
「なら二つ買って行けばいいんじゃねえか?」
「二つ、ですか?」
「ああ、今度店長会があるから、土産をいくつか買い込まないといけないんだ。どうせなら、前川に好きなの選ばせてやればいい」
「なるほど。それいいですね! そうしようかな……」
大きな瞳をキラキラさせて喜ぶ日野に、ホッと息を吐く。
(なんか、前川より日野が一番嬉しそうだな。まあ、相手が喜ぶ顔を想像すると嬉しくならないわけがない、か……)
俺も同じ店でいくつかお菓子の詰め合わせを買い込んだ。
「日野、土産持ちながらは大変だろうからバスに持ってく」
「え、それなら僕も行きますよ」
「いいから、お前はみんなと楽しんで来い。二人で行く程の量じゃないだろ」
半ば強引に荷物を受け取って、バスへと引き返す。
それほどまだ歩いてはいないから直ぐに着くだろう。
「あとで、知人の分も買うかな……。取引先とか……って、つい仕事の事考えちまうな」
苦笑混じりに前方を見ると、集合場所でもある駐車場が見えて来た。
接近すると、マイクロバスの扉が開きっ放しで、すぐ近くに運転手が缶コーヒーを飲みながら休憩している姿があった。
「お疲れ様です」
「ん? ……ああ、1号店の店長さん」
俺の呼び掛けに視線を寄こした運転手、坂部さんがにこやかに返事をしてくれた。
が、呼び方に思わず笑ってしまう。
「英で大丈夫ですよ。それだと少し長いでしょう?」
「そうですね。じゃあ、そう呼ばせてもらいます。――あ、でも、」
「はい?」
「店長さん、は付けさせて下さい」
「え……」
「あ、ダメでしたか?」
思いも寄らない申し出に一瞬呆気にとられたが、不安そうにする坂部さんに慌てて首を振る。
「いえいえ、もちろん良いですよ」
そう返すと、坂部さんはホッとしたように相貌を崩した。
(面白い人だな。そんなことわざわざ許可取る必要ないのに)
優しい雰囲気に加え、お茶目さが感じられて少し空気が和む。
「でもその場合、英店長さんになっちゃうんで、さんは付けないで下さいね」
「…あ! 本当ですね。気付きませんでした」
(加えて天然か……)
はにかんだように笑う様子に、俺も笑みを零した。
「ところで、英店長は観光もういいんですか?」
「あ、荷物を一度置きに来たんですが、いいですか?」
手に提げていた土産袋を軽く持ち上げる。
「もちろんです! 生ものですか? 出来るだけ涼しい場所に置いておきますね」
「いえ、生ものではないので……でもそれでお願いします」
俺から荷物を受け取った坂部さんは、バスの中へと入って行った。
そこへ、背後から俺を呼ぶ声がして思い切り心臓が跳ねた。
聞きたくないって思っているはずなのに、顔に熱が溜まるのはなぜなのか……。
「こんなところで何をしてるんだ?」
「……」
平静を装いながら振り向くと、坂部さんと同じ缶コーヒーを持った榊さんと目が合った。
「日野」
「あ、英店長」
少し気になり、近付いて声を掛けると、日野はハッと驚いたように顔を上げた。
「何かいい物でもあったか?」
「ええっと、その……前川くんにお土産を……」
「前川に?」
思ってもみなかった人物の名前が上がって、今度はこっちが驚いた。
(……いや、意外でもないか。なんだかんだ、アイツの面倒は日野が見てくれているからな)
「前川くんも来られれば良かったんですけど……。だから、お土産でも買って行ってあげれば少しは旅行の雰囲気味わえるかなって」
俯く日野の手元には、信州限定と書かれたお菓子の箱が二つ。
「どっちにするかで、迷ってるのか?」
「はい。甘いモノは苦手じゃないって前に聞いたので」
「なら二つ買って行けばいいんじゃねえか?」
「二つ、ですか?」
「ああ、今度店長会があるから、土産をいくつか買い込まないといけないんだ。どうせなら、前川に好きなの選ばせてやればいい」
「なるほど。それいいですね! そうしようかな……」
大きな瞳をキラキラさせて喜ぶ日野に、ホッと息を吐く。
(なんか、前川より日野が一番嬉しそうだな。まあ、相手が喜ぶ顔を想像すると嬉しくならないわけがない、か……)
俺も同じ店でいくつかお菓子の詰め合わせを買い込んだ。
「日野、土産持ちながらは大変だろうからバスに持ってく」
「え、それなら僕も行きますよ」
「いいから、お前はみんなと楽しんで来い。二人で行く程の量じゃないだろ」
半ば強引に荷物を受け取って、バスへと引き返す。
それほどまだ歩いてはいないから直ぐに着くだろう。
「あとで、知人の分も買うかな……。取引先とか……って、つい仕事の事考えちまうな」
苦笑混じりに前方を見ると、集合場所でもある駐車場が見えて来た。
接近すると、マイクロバスの扉が開きっ放しで、すぐ近くに運転手が缶コーヒーを飲みながら休憩している姿があった。
「お疲れ様です」
「ん? ……ああ、1号店の店長さん」
俺の呼び掛けに視線を寄こした運転手、坂部さんがにこやかに返事をしてくれた。
が、呼び方に思わず笑ってしまう。
「英で大丈夫ですよ。それだと少し長いでしょう?」
「そうですね。じゃあ、そう呼ばせてもらいます。――あ、でも、」
「はい?」
「店長さん、は付けさせて下さい」
「え……」
「あ、ダメでしたか?」
思いも寄らない申し出に一瞬呆気にとられたが、不安そうにする坂部さんに慌てて首を振る。
「いえいえ、もちろん良いですよ」
そう返すと、坂部さんはホッとしたように相貌を崩した。
(面白い人だな。そんなことわざわざ許可取る必要ないのに)
優しい雰囲気に加え、お茶目さが感じられて少し空気が和む。
「でもその場合、英店長さんになっちゃうんで、さんは付けないで下さいね」
「…あ! 本当ですね。気付きませんでした」
(加えて天然か……)
はにかんだように笑う様子に、俺も笑みを零した。
「ところで、英店長は観光もういいんですか?」
「あ、荷物を一度置きに来たんですが、いいですか?」
手に提げていた土産袋を軽く持ち上げる。
「もちろんです! 生ものですか? 出来るだけ涼しい場所に置いておきますね」
「いえ、生ものではないので……でもそれでお願いします」
俺から荷物を受け取った坂部さんは、バスの中へと入って行った。
そこへ、背後から俺を呼ぶ声がして思い切り心臓が跳ねた。
聞きたくないって思っているはずなのに、顔に熱が溜まるのはなぜなのか……。
「こんなところで何をしてるんだ?」
「……」
平静を装いながら振り向くと、坂部さんと同じ缶コーヒーを持った榊さんと目が合った。
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