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 またしばらく平穏な日々が続くと思っていたのだが……
「ローズの部屋に手紙?」
 どうやらわたしの部屋に手紙があったらしい。しかもその部屋というのが、生家ではなく娼館の部屋だったのだとか。
「まずいな。この屋敷も知られてるし、娼館にいることもバレている。それにこの手紙……読めない」
「そもそもあの部屋、シークレットだろ?どうやって入ったんだ?」
「またメイドにでも化けたか?」
 ウィルとマクルトが話し合っている。
 どうやらまずい状況らしい。敵? にこちらの情報が筒抜けなんだとか。
「マクルト、お前誰かと会ったか?」
「いや、屋敷でずっと過ごしてたし一人だ」
 二人で考えこんていて手持ち無沙汰なわたしはふと手紙に手を伸ばす。

 あれ、見たことある文字だ。


『ローズさんへ
 早くウィル様から離れなさいよ。こんなに邪魔したのにちっともこっち向いてくれないし。このルートに行くためにわざわざ王太子ルート攻略してループしたのよ?その人はアタシのもの。邪魔者はとっとと消えて。そっちがその気ならこっちだって手段を選ばないから。隠し攻略キャラはアタシが絶対もらうから!』

 眩暈がする。頭がガンガンして、ある言葉が蘇る。
 ループ……確かにあれはゲームだから、どのルートも何度もやり直せる。ということは、この世界は二度目の世界?
 わたしが思い込んでいたのは一度目の……
 今わたしの中にあるのはいつの記憶?
 小さい頃の記憶は今のもの……?
 でも、今二人とも違和感なく一緒にいるから、小さい頃の記憶は多分今のもの。
 いつの記憶が変わってる……?
 キャパオーバーしてわたしは意識を失った。





 目を覚ますとベッドの上だった。わたしの手は誰かに握られていて驚く。
「ローズ?目が覚めた?」
 目が少し腫れている。泣いてたのかな。
「ごめんなさい」
「君が無事ならなんでもいい。それより話せるか?」
 わたしは手紙の内容を彼に話した。

「なるほど。やつは異世界からの転生者?ってやつなのか。ここは同じ時間軸をやり直した世界ってことか」
 ゲームのことを一応説明してみたけど、あまり理解されなかった。それもそうね。この世界ゲームなんてものないもの。
 だから物語に例えて説明したらすっかり理解してくれていた。
「記憶の混乱ももしかしたらそれが原因かもしれないな。前の記憶に引っ張られて今の記憶と混ざってしまっている可能性が高い。問題はいつからいつまでの記憶が塗り替えられているかだが……」
 おそらく物語のスタートは学園入学からだ。終わりは……
 王太子ルートは確か学園卒業で終わってたような
「オレたちの記憶と擦り合わせたらいいんじゃないか?」
「そうだな」
 そこから三人で小さい頃の記憶を話し合った。
 幼馴染なので一緒に過ごした時間が長い。思い出話に花を咲かせながらわいわい語り合っていた。

「そういや学園入る前までお前騎士の訓練でしばらくいなかったろ?」
 マクルトがいう。彼が言おうとしている内容を思い出し、立ち上がって思わず彼の口を塞ぐ。
「それは言わなくていいの!」
 そんなわたしをマクルトから引き剥がし、抱き込む彼。
「是非教えてもらいたいな」
 楽しそうな様子の彼をみて、抵抗を諦めた。
「そしたらこいつ泣きながら寂しいって泣いててよ。あの時は困ったな」
 ゲラゲラ笑いながら話すマクルトを睨みつけるわたし。そんなわたしを見つめる彼。
 もう嫌だ。恥ずかしい。
「後で詳しく聞かせてもらおう」
 ああ、終わった。


 それから学園に入ってからの話をする。
 どうやら彼とマクルトは特におかしなことはなかったらしい。多分一回目の時はあまりストーリーに関与していなかったのかな。
 わたしの記憶だけが曖昧で、幼馴染と過ごした記憶も途切れ途切れだった。

「そうだな……あいつら呼ぶか」
「その方が早いな」
 彼とマクルトの会話に首を傾げるも、もう夜も更けていたので、大人しく寝ることになった。



 次の日なぜか綺麗なドレスを彼に着せられた。コルセットもしっかり締められ困惑する。
 え、なんでドレス着せれるの……?
 そう思ったけど、すごく楽しそうに着せるもんだから大人しくしていることにした。
 三人で馬車に揺られる。
 あちこち曲がったりくねくね動くものだから馬車酔いしてしまいぐったりだ。
 そんなわたしの頭をウィルは自分の膝に乗せて休ませてくれた。
 それに甘えて大人しく彼の膝を借りて、とある場所にたどり着いた。
 
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