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もうわたしも彼との行為が好きなのだろうか。
昨日なんて自分から求めてしまった……
いやでも、もう動けない。このままじゃ、廃人になっちゃう。
「ゴホっ、こほっ」
彼に言おうと思っていたのに喉が渇いて声が出ない。
「ごめん……」
そんなわたしに水を飲ませてくれる。流石に反省しているようでしょんぼりしている。
「……あのっ、抑えていただかないと、わたし動けなくなりますっ。あと、あそこがヒリヒリしますっ。外で運動でもして発散して来てくださいっ」
あまりにも切実すぎて敬語になってしまったけど、本当にだめだ。あの場所に行くと雰囲気に飲まれて拒めない。だって好きだし……
なら今この時に頼むしかない。
「わかった。ごめん。君と一つになれたのが本当に嬉しくて、止まらなくなった。ごめん」
彼も悪気がないのだ。ただ好きなだけで。好きだから触れたいし、一つになりたいと思うのも当然で。
ただ人より元気なだけだ。ならばその体力をどこかで削ってもらうしかない。
「ただ君のそばを離れるのは今は危険だし、一緒に連れて行って危険な目に合わせたくもない。だから夜は一人ですることにする」
一人?
首を傾げるわたしにニヤリと笑う。
「そう。ローズとつながる前はいつもやっていたことだから。ただ、場所は移したほうがいいか。娼館にでも行ってくるよ」
「え、あの」
「夜はマクルトがくるから」
そういって彼は歩き屋敷を出て行った。
一人になって考える。なんだか一気に寂しくなった。いつの間にこんなにも依存してしまったんだろうか。
そばにいてくれないと寂しい。けれど、この感情はきっといずれ自分を苦しめるだろう。
強すぎる束縛は嫌われると前世でよく言われていたことだ。
彼だって仕事をしているだろう。領主の仕事だって。
その中でわたしが束縛してしまったらそれすらできなくなる。きっと彼はわたしが頼んだらきっと望み通りにしてくれるのだろう。でもそれではダメだ。
彼にだって好きなことややりたいことをしてほしい。楽しく生きてほしい。
わたしに縛られていてはその可能性を狭めてしまう。
なら一体、どうしたらいいのか。考え込んでいるとマクルトがやってきた。
「どうした?小難しい顔して」
困った時のマクルトだ! なんだかんだ言って役に立つ。
さっそく彼に相談してみることにした。
「……お前らの場合、拗らせすぎて執着しあってんだよ。一人の時間持って、好きなこと見つけりゃそのうち落ち着く」
「好きなこと……」
「それから、言葉でちゃんと伝えてやれ。お前素直じゃねぇから聞かれねぇと答えないだろ?不安なんだよあいつも。だから確かめたくなるんだろ?その方法がお前たちは一緒に寝ることなんだろうが」
マクルトの言葉にぼっと頬が染まる。バレている……
わたし達がいたしまくっていることに。
それに図星だった。体をつなげることが唯一の気持ちを確かめ合う時間になっていて。
それ以外なんて甘い雰囲気になることはなくて。
ウィルが不安なようにわたしも不安だったのかもしれない。
彼に付き合わなきゃ嫌われるかもしれないって。もう好きじゃないのかもしれないって。
「よし、頑張る」
「おう。それよりあいつ大丈夫か?」
その言葉に首を傾げる。何が大丈夫なのか。
「あいつ一人だと女が接触しに来るんじゃね?」
あ……すっかり忘れてた。自分のことでいっぱいいっぱいで忘れてた。
「そうだね。大丈夫かな……」
なんて呑気に考えながらいつの間にか眠ってしまった。
次の日ウィルはお昼前に帰ってきていた。
「おかえり」
声をかけるも彼にしては珍しくむすっとしていて。いきなり抱きしめられた。
「ど、どうしたの」
驚いているわたしをされにきつく抱きしめる。苦しくなって息ができなくて。
苦しそうな表情で声色で彼は話し始める。
「前は、何回でも一人でできた」
一人って何かしら。あ、男の人の性欲処理の話?
「でも、全然イけなくて。無理だった」
うん。どういう心理かはわかんないけど彼にとっては一大事なようだ。
「そしたらあの女が現れて」
あの女……ヒロインちゃんかしら。
「ローズのことメチャクチャに言ってくるから、黙らせたけど……不安になって」
何を言われたのかはわからないけど、なんだか小さな子供みたいだ。
わたしの肩に顔を埋めている彼の頭を撫でてあげる。
ピクリと反応して彼は涙をぽたりとこぼした。
「何を言われたのかわからないけど、わたしはウィルが好き。一緒にいたいと思うよ。あなたが幸せならわたしはそれで十分だよ」
思い切って本音を伝えた。いつもは恥ずかしくて言えないけど、それで彼に不安な思いをさせるのは嫌。
全く反応のない彼に次第におろおろする。あれ、なんか間違えた……? 言われたこと違う……?
「あー、もう。お前可愛すぎだろ。一瞬で吹っ飛んだ」
そのまま彼は話してくれた。
一人で抜こうとしたけどできなくてショックで落ち込んでいたところ、ピンク髪の女が現れたのだという。
急に入ってきたことに驚いたがどうやら彼女はこの部屋の見張りをたぶらかしていたらしい。まんまと誑かされた見張りは少しの間席を外し、その隙に入り込んだのだとか。
昨日なんて自分から求めてしまった……
いやでも、もう動けない。このままじゃ、廃人になっちゃう。
「ゴホっ、こほっ」
彼に言おうと思っていたのに喉が渇いて声が出ない。
「ごめん……」
そんなわたしに水を飲ませてくれる。流石に反省しているようでしょんぼりしている。
「……あのっ、抑えていただかないと、わたし動けなくなりますっ。あと、あそこがヒリヒリしますっ。外で運動でもして発散して来てくださいっ」
あまりにも切実すぎて敬語になってしまったけど、本当にだめだ。あの場所に行くと雰囲気に飲まれて拒めない。だって好きだし……
なら今この時に頼むしかない。
「わかった。ごめん。君と一つになれたのが本当に嬉しくて、止まらなくなった。ごめん」
彼も悪気がないのだ。ただ好きなだけで。好きだから触れたいし、一つになりたいと思うのも当然で。
ただ人より元気なだけだ。ならばその体力をどこかで削ってもらうしかない。
「ただ君のそばを離れるのは今は危険だし、一緒に連れて行って危険な目に合わせたくもない。だから夜は一人ですることにする」
一人?
首を傾げるわたしにニヤリと笑う。
「そう。ローズとつながる前はいつもやっていたことだから。ただ、場所は移したほうがいいか。娼館にでも行ってくるよ」
「え、あの」
「夜はマクルトがくるから」
そういって彼は歩き屋敷を出て行った。
一人になって考える。なんだか一気に寂しくなった。いつの間にこんなにも依存してしまったんだろうか。
そばにいてくれないと寂しい。けれど、この感情はきっといずれ自分を苦しめるだろう。
強すぎる束縛は嫌われると前世でよく言われていたことだ。
彼だって仕事をしているだろう。領主の仕事だって。
その中でわたしが束縛してしまったらそれすらできなくなる。きっと彼はわたしが頼んだらきっと望み通りにしてくれるのだろう。でもそれではダメだ。
彼にだって好きなことややりたいことをしてほしい。楽しく生きてほしい。
わたしに縛られていてはその可能性を狭めてしまう。
なら一体、どうしたらいいのか。考え込んでいるとマクルトがやってきた。
「どうした?小難しい顔して」
困った時のマクルトだ! なんだかんだ言って役に立つ。
さっそく彼に相談してみることにした。
「……お前らの場合、拗らせすぎて執着しあってんだよ。一人の時間持って、好きなこと見つけりゃそのうち落ち着く」
「好きなこと……」
「それから、言葉でちゃんと伝えてやれ。お前素直じゃねぇから聞かれねぇと答えないだろ?不安なんだよあいつも。だから確かめたくなるんだろ?その方法がお前たちは一緒に寝ることなんだろうが」
マクルトの言葉にぼっと頬が染まる。バレている……
わたし達がいたしまくっていることに。
それに図星だった。体をつなげることが唯一の気持ちを確かめ合う時間になっていて。
それ以外なんて甘い雰囲気になることはなくて。
ウィルが不安なようにわたしも不安だったのかもしれない。
彼に付き合わなきゃ嫌われるかもしれないって。もう好きじゃないのかもしれないって。
「よし、頑張る」
「おう。それよりあいつ大丈夫か?」
その言葉に首を傾げる。何が大丈夫なのか。
「あいつ一人だと女が接触しに来るんじゃね?」
あ……すっかり忘れてた。自分のことでいっぱいいっぱいで忘れてた。
「そうだね。大丈夫かな……」
なんて呑気に考えながらいつの間にか眠ってしまった。
次の日ウィルはお昼前に帰ってきていた。
「おかえり」
声をかけるも彼にしては珍しくむすっとしていて。いきなり抱きしめられた。
「ど、どうしたの」
驚いているわたしをされにきつく抱きしめる。苦しくなって息ができなくて。
苦しそうな表情で声色で彼は話し始める。
「前は、何回でも一人でできた」
一人って何かしら。あ、男の人の性欲処理の話?
「でも、全然イけなくて。無理だった」
うん。どういう心理かはわかんないけど彼にとっては一大事なようだ。
「そしたらあの女が現れて」
あの女……ヒロインちゃんかしら。
「ローズのことメチャクチャに言ってくるから、黙らせたけど……不安になって」
何を言われたのかはわからないけど、なんだか小さな子供みたいだ。
わたしの肩に顔を埋めている彼の頭を撫でてあげる。
ピクリと反応して彼は涙をぽたりとこぼした。
「何を言われたのかわからないけど、わたしはウィルが好き。一緒にいたいと思うよ。あなたが幸せならわたしはそれで十分だよ」
思い切って本音を伝えた。いつもは恥ずかしくて言えないけど、それで彼に不安な思いをさせるのは嫌。
全く反応のない彼に次第におろおろする。あれ、なんか間違えた……? 言われたこと違う……?
「あー、もう。お前可愛すぎだろ。一瞬で吹っ飛んだ」
そのまま彼は話してくれた。
一人で抜こうとしたけどできなくてショックで落ち込んでいたところ、ピンク髪の女が現れたのだという。
急に入ってきたことに驚いたがどうやら彼女はこの部屋の見張りをたぶらかしていたらしい。まんまと誑かされた見張りは少しの間席を外し、その隙に入り込んだのだとか。
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