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本編
5.早速行事ってなんですかっ
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昨日と同じように教室に入る。相変わらず視線は痛いが致し方ない。お、これを理由にどうにかならないかしら。
そう思ったわたしはあえて怯えているふりをする。びくびくと。
そんなわたしを見てなにかを察したのか、彼はクラスメイトに向けて信じられない言葉を発する。
「君たち。僕は入学式でもいったはずだよ。彼女は僕のつがいだと。あまり不躾に見てると……」
あの悪魔の微笑みを携えた彼に勝てるものはいない。
一気に静まりかえる教室。そしてわたし。
いや、これを期待していたわけじゃない、断じて違うっ。
変な空気の教室で腰を下ろすわたし達。その隣にノーラ様が座った。こっそり小さな声で「あなたも大変ね……」なんて言われてしまった。
どうやらノーラ様はわたしの味方でいてくれるみたい。
その事実に嬉しくなり、どうにか仲良くなれないものかと考えながら授業を受けていた。
まちに待ったお弁当タイムだ。この学園には食堂がある。学費と一緒に家に請求されるので、貴族であればあまり気にせずみんな食堂で食べるのだ。
でもわたしは、周りとの接触を避けるためわざわざお弁当を持ってきていた。ルンルンでどこで食べようかとお弁当を持って考えていると彼に手を引かれてしまった。
「え、ちょっと」
声をかけるも彼の足は止まらない。お弁当を片手で抱えながら連れられたのは、大きな部屋だった。
そこには何人か既に来ていて、食事をしている。そんな彼らはわたしと彼が入ってきたのに気づいて視線を向ける。
「お、シエル。連れてきたのか?」
軽い口調で声をかけてきたのは黒髪がツンツンしているガタイのしっかりした人。この人……
「ルドルフ。馴れ馴れしい」
ルドルフ・フォード。伯爵家の次男で幼い頃から騎士を目指しているのだ。確か一つ上だったような。なんでこんなに知っているかというと、彼はゲームでヒロインと最初に出会ううちの一人なのだ。
ちなみにもう一人は昨日連れ込まれた執務室のような部屋でいつの間にかお茶を出してくれた彼、キース様だ。
「ルシアちゃんだっけ。よろしくね」
このほわほわ癒し系な人はマルド・フォード。彼は公爵家嫡男でこの人ももちろん攻略対象である。
「ルシア様、いらしゃい」
あっ、ノーラ様だっ。見知った人を見つけて駆け寄ろうとするも彼の手によって制されてしまう。
「ルシアはこっち」
どうやら座る場所まで指定されているようだ。仕方ない、逆らわないと決めたのだから、おとなしくしていよう。
席に座ると彼の目の前にはキース様が持ってきた料理が置かれていた。いつの間に彼は持ってきていたのだろう。
恐ろしく気配のない人だ……
どうやらわたしはここでご飯を食べないといけないらしい。
家から持ってきたお弁当を広げて食べる。お弁当を持って行きたいと料理長に相談したら、涙を流して喜ばれた。どうやら、わたしがたくさん食べてくれることが嬉しいみたいで、学園に行くことでその機会が失われてしまうことを嘆いていたらしい。ちょっと大袈裟だと思う。けれどとてもいい人だ。
とても張り切ってくれたみたいで、色々詰まっている。これ、食べ切れるかしら……
いやでも、頑張って食べないと。
張り切ったはいいが、食べきれない。うう、残すの勿体無い……
どうしようかと肩を落としているわたしに気づいたシエル王子殿下がひょいとおかずにフォークを刺す。
え? と思って見上げると何も言わずに食べてくれた。
あ、ありがたい。これで料理長を悲しませなくて済むわ。ただ、家に帰ったら少し量を減らしてもらわないと……
「あ、あの、ありがとうございます」
「君があまりにも美味しそうに食べるから食べてみたくなっただけだ」
どうやら彼はわたしの心情を察してくれたらしい。なんという才能の無駄遣いだ。
でも助かった。お弁当箱の中身は綺麗に無くなっていてわたしは満足だっ。
そんなこんなでわたしのお昼休みは終わったのだった。
ところであれは一体なんの集まりなのだろうか……
午後の授業が始まった。午後は親睦会の説明と班決めだということだ。学園生活が始まってすぐだというのにこれをやらなければならない理由は何か、それはきっとここが日本人が作ったゲームの世界だからだっ。イベントがないと攻略が進まないし、そのイベントとして一番簡単なのが学園行事よねっ。
この親睦会、なぜか四人一組男女混合で班を決めなければならないらしい。それから一人上級生から指導員がつくらしい。なるほど、学年の違う攻略対象とお近づきになる機会を与えるためねっ。
四人か……誰と組んだらいいんだろう。
みんなざわざわと騒いでいて既に決まった人もちらほら出ている。どうしよう。
席を立とうにも左にシエル王子殿下、右にノーラ様がいて、二人とも座っているから動けない……
「ルシア、僕と一緒にやろう?」
左耳から聞こえてくる。ああ、やっぱり逃げられない……
「はい……後の二人は……?」
「わたくしもいいかしら?」
「はい、ぜひっ」
「僕とずいぶん態度が違うんだね」
なんだか地を這うような恐ろしい声色が聞こえてきたけど無視をした。
最後の一人はマルド様になった。同じクラスだったの気づかなかった……というかあまり周りを見る余裕がなくて全く気づけなかったのもあるんだけど。
こうして、わたしは無事? 班決めを終えることができた。
そう思ったわたしはあえて怯えているふりをする。びくびくと。
そんなわたしを見てなにかを察したのか、彼はクラスメイトに向けて信じられない言葉を発する。
「君たち。僕は入学式でもいったはずだよ。彼女は僕のつがいだと。あまり不躾に見てると……」
あの悪魔の微笑みを携えた彼に勝てるものはいない。
一気に静まりかえる教室。そしてわたし。
いや、これを期待していたわけじゃない、断じて違うっ。
変な空気の教室で腰を下ろすわたし達。その隣にノーラ様が座った。こっそり小さな声で「あなたも大変ね……」なんて言われてしまった。
どうやらノーラ様はわたしの味方でいてくれるみたい。
その事実に嬉しくなり、どうにか仲良くなれないものかと考えながら授業を受けていた。
まちに待ったお弁当タイムだ。この学園には食堂がある。学費と一緒に家に請求されるので、貴族であればあまり気にせずみんな食堂で食べるのだ。
でもわたしは、周りとの接触を避けるためわざわざお弁当を持ってきていた。ルンルンでどこで食べようかとお弁当を持って考えていると彼に手を引かれてしまった。
「え、ちょっと」
声をかけるも彼の足は止まらない。お弁当を片手で抱えながら連れられたのは、大きな部屋だった。
そこには何人か既に来ていて、食事をしている。そんな彼らはわたしと彼が入ってきたのに気づいて視線を向ける。
「お、シエル。連れてきたのか?」
軽い口調で声をかけてきたのは黒髪がツンツンしているガタイのしっかりした人。この人……
「ルドルフ。馴れ馴れしい」
ルドルフ・フォード。伯爵家の次男で幼い頃から騎士を目指しているのだ。確か一つ上だったような。なんでこんなに知っているかというと、彼はゲームでヒロインと最初に出会ううちの一人なのだ。
ちなみにもう一人は昨日連れ込まれた執務室のような部屋でいつの間にかお茶を出してくれた彼、キース様だ。
「ルシアちゃんだっけ。よろしくね」
このほわほわ癒し系な人はマルド・フォード。彼は公爵家嫡男でこの人ももちろん攻略対象である。
「ルシア様、いらしゃい」
あっ、ノーラ様だっ。見知った人を見つけて駆け寄ろうとするも彼の手によって制されてしまう。
「ルシアはこっち」
どうやら座る場所まで指定されているようだ。仕方ない、逆らわないと決めたのだから、おとなしくしていよう。
席に座ると彼の目の前にはキース様が持ってきた料理が置かれていた。いつの間に彼は持ってきていたのだろう。
恐ろしく気配のない人だ……
どうやらわたしはここでご飯を食べないといけないらしい。
家から持ってきたお弁当を広げて食べる。お弁当を持って行きたいと料理長に相談したら、涙を流して喜ばれた。どうやら、わたしがたくさん食べてくれることが嬉しいみたいで、学園に行くことでその機会が失われてしまうことを嘆いていたらしい。ちょっと大袈裟だと思う。けれどとてもいい人だ。
とても張り切ってくれたみたいで、色々詰まっている。これ、食べ切れるかしら……
いやでも、頑張って食べないと。
張り切ったはいいが、食べきれない。うう、残すの勿体無い……
どうしようかと肩を落としているわたしに気づいたシエル王子殿下がひょいとおかずにフォークを刺す。
え? と思って見上げると何も言わずに食べてくれた。
あ、ありがたい。これで料理長を悲しませなくて済むわ。ただ、家に帰ったら少し量を減らしてもらわないと……
「あ、あの、ありがとうございます」
「君があまりにも美味しそうに食べるから食べてみたくなっただけだ」
どうやら彼はわたしの心情を察してくれたらしい。なんという才能の無駄遣いだ。
でも助かった。お弁当箱の中身は綺麗に無くなっていてわたしは満足だっ。
そんなこんなでわたしのお昼休みは終わったのだった。
ところであれは一体なんの集まりなのだろうか……
午後の授業が始まった。午後は親睦会の説明と班決めだということだ。学園生活が始まってすぐだというのにこれをやらなければならない理由は何か、それはきっとここが日本人が作ったゲームの世界だからだっ。イベントがないと攻略が進まないし、そのイベントとして一番簡単なのが学園行事よねっ。
この親睦会、なぜか四人一組男女混合で班を決めなければならないらしい。それから一人上級生から指導員がつくらしい。なるほど、学年の違う攻略対象とお近づきになる機会を与えるためねっ。
四人か……誰と組んだらいいんだろう。
みんなざわざわと騒いでいて既に決まった人もちらほら出ている。どうしよう。
席を立とうにも左にシエル王子殿下、右にノーラ様がいて、二人とも座っているから動けない……
「ルシア、僕と一緒にやろう?」
左耳から聞こえてくる。ああ、やっぱり逃げられない……
「はい……後の二人は……?」
「わたくしもいいかしら?」
「はい、ぜひっ」
「僕とずいぶん態度が違うんだね」
なんだか地を這うような恐ろしい声色が聞こえてきたけど無視をした。
最後の一人はマルド様になった。同じクラスだったの気づかなかった……というかあまり周りを見る余裕がなくて全く気づけなかったのもあるんだけど。
こうして、わたしは無事? 班決めを終えることができた。
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