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番外編
sideアーティ1
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sideアーティ1
僕の名前はアーサー・オルビス。オルビス国の王子である。ある日、父上に連れられて隣国へとやってきた。その時に同じくらいの年頃の子供達とのお茶会があると聞いていて、遊びに行っておいでと父に促されていた。
隣国の王宮では、同じく第一王子のレオンと第二王子のソルト、そして第三王子のイアンがいて、顔合わせをしていた。レオンは賢くてそれでいてこっそりとだが、自国の内政について何か思うところがあるらしく、我が国のことをよく聞いてきていた。と言っても僕もまだ十歳。わかるところしか教えることはできなかったけど。それから第二王子のソルトも興味を持ったらしく、よく三人で話をしていた。
問題はイアンだ。彼は全く僕達の話には興味がないらしく、挙げ句の果てには外へ遊びに出てしまう始末。とても同い年とは思えない行動に少し驚いてしまっていた。
それは二人の兄も同様だったようで深くため息をつき、謝罪の言葉を貰ってしまった。どうやら一番手を焼いているらしい。けれど、三人の両親、つまりは隣国の陛下と王妃はそのままにしているらしい。まあ、第三王子でもあるし未子には甘くなるってよく聞く話だからな、なんてその時は思っていた。
それからお茶会が始まった。本当に同じ年齢の子供達が王宮に招かれているらしい。両親達は別の場所で仕事の話や社交に勤しんでいる。
そこで僕は、元気な男女二人組と出会った。彼らは幼馴染のようでとても仲がよさそうだ。王子ということもあってそこまで長野いい友人というものがいない僕は少し羨ましく感じていた。彼らはとても気さくに話しかけてくれる。元気いっぱいのオリーブとそれに付き合っているブライアン。
二人の会話を聞いているだけで楽しくて、ついつい長居してしまっていた。そんな時、オリーブがある女の子を呼び止める。
綺麗なピンク色の髪を伸ばしていて青色の瞳。とても可愛らしい容姿をした女の子。一目見た時からずっと彼女に釘付けだった。好きになってしまったかもしれない。
その女の子はアリアというらしい。とても親しみやすく、僕の話も嫌がらず聞いてくれた。それに笑顔がとても可愛くて、目が離せないでいた。
話をしている最中は可愛いと、早く帰ってお父様に婚約を申し込んでもらおうとしか考えられなくなっていて、彼女に夢中だった。
そんな僕たちの元にあのイアンがやってきた。アリアもあからさまにため息をついていて、嫌そうにしている。
そしてイアンがアリアに話しかけた直後、彼女が倒れてしまって、アリアの介抱をしながらオリーブとブライアンに大人達を呼んで来てもらった。イアンはというとバツが悪そうにその場を去っていったが。この国の第三王子は倒れた人間の介抱もしないのかなんて心の中で悪態をついてしまった。
すぐに彼女の父親が駆けつけて屋敷へと連れ帰ってしまった。残された僕とオリーブとブライアンはお茶会を楽しむどころではなくなってしまい、各々お茶会を後にする。
どうやらちょうど父上の用事も済んだみたいで、自国へと帰ることとなる。帰りの馬車の中で父上に気になる女性がいたこと、彼女の名前、それから婚約したいと伝えた。
父上はニコニコと笑いながら頭をひと撫でし、了承してくれた。オルビス国は以前までは政略結婚が主流であったが近年では恋愛結婚が推奨されていて、それは王家も例外ではない。というより、ここ数代の王家ではほぼ恋愛結婚で仲睦まじく平和が続いていることから風潮が変わっていて、今となってはとてもありがたく感じていた。
自国についてしばらくするとレオンから手紙が届いた。イアンがアリア嬢と婚約したと。それを聞いた途端頭が真っ白になってしまった。隣国では政略結婚が当たり前で、一度結ばれた婚約は解消することはほとんどないと聞く。それに相手はイアンだ。レオンやソルトならばまだ認められるが、そうではない。
彼女はイアンと結婚して幸せになれるのだろうか。いや、政略結婚である以上、好き嫌いの問題でもないのか……
頭を抱えていた僕の元にやってきたのはネルトだった。ネルトはマーリス伯爵家の長男で、マーリス伯爵夫人は僕の母上の友人でもある。だからこうしてついてきた時は僕の話し相手になってくれていた。
「そういえば、従兄妹が隣国の第三王子と婚約したらしいんだが、どうも様子がおかしくて」
「……従兄妹? 隣国の第三王子ってイアンか?」
「そうだけど、よく知ってるな」
「もしかして従兄妹って、アリアっていう名前だったりしないか……?」
「そうだけど……なんで知ってるんだ?」
こんなにも都合のいい繋がりがあるんだろうか。ネルトに頼めば彼女のことが詳しく知れるかもしれない。
「僕、この間隣国に行っただろう? その時子供達だけのお茶会に招待されて、その時に会ったんだ」
「へぇ。でも、君がそこまで気にするなんてね。もしかして、気に入った? アリア可愛いからな」
「んなっ。だ、だめだぞ!」
「何がだよ。もしかして本当に気に入ってたのか」
「……陛下に婚約を結ぶようお願いしたんだけど、先に第三王子が婚約したんだ」
「あぁ、なるほどね。君と僕との仲だから色々教えてやってもいいよ」
「本当か? 助かるよ」
こうして、僕は彼女の様子をネルトに教えてもらえるようになった。ちなみに母上からマーリス伯爵夫人にも伝わっていて、そちらからも情報をもらえることになった。
僕の名前はアーサー・オルビス。オルビス国の王子である。ある日、父上に連れられて隣国へとやってきた。その時に同じくらいの年頃の子供達とのお茶会があると聞いていて、遊びに行っておいでと父に促されていた。
隣国の王宮では、同じく第一王子のレオンと第二王子のソルト、そして第三王子のイアンがいて、顔合わせをしていた。レオンは賢くてそれでいてこっそりとだが、自国の内政について何か思うところがあるらしく、我が国のことをよく聞いてきていた。と言っても僕もまだ十歳。わかるところしか教えることはできなかったけど。それから第二王子のソルトも興味を持ったらしく、よく三人で話をしていた。
問題はイアンだ。彼は全く僕達の話には興味がないらしく、挙げ句の果てには外へ遊びに出てしまう始末。とても同い年とは思えない行動に少し驚いてしまっていた。
それは二人の兄も同様だったようで深くため息をつき、謝罪の言葉を貰ってしまった。どうやら一番手を焼いているらしい。けれど、三人の両親、つまりは隣国の陛下と王妃はそのままにしているらしい。まあ、第三王子でもあるし未子には甘くなるってよく聞く話だからな、なんてその時は思っていた。
それからお茶会が始まった。本当に同じ年齢の子供達が王宮に招かれているらしい。両親達は別の場所で仕事の話や社交に勤しんでいる。
そこで僕は、元気な男女二人組と出会った。彼らは幼馴染のようでとても仲がよさそうだ。王子ということもあってそこまで長野いい友人というものがいない僕は少し羨ましく感じていた。彼らはとても気さくに話しかけてくれる。元気いっぱいのオリーブとそれに付き合っているブライアン。
二人の会話を聞いているだけで楽しくて、ついつい長居してしまっていた。そんな時、オリーブがある女の子を呼び止める。
綺麗なピンク色の髪を伸ばしていて青色の瞳。とても可愛らしい容姿をした女の子。一目見た時からずっと彼女に釘付けだった。好きになってしまったかもしれない。
その女の子はアリアというらしい。とても親しみやすく、僕の話も嫌がらず聞いてくれた。それに笑顔がとても可愛くて、目が離せないでいた。
話をしている最中は可愛いと、早く帰ってお父様に婚約を申し込んでもらおうとしか考えられなくなっていて、彼女に夢中だった。
そんな僕たちの元にあのイアンがやってきた。アリアもあからさまにため息をついていて、嫌そうにしている。
そしてイアンがアリアに話しかけた直後、彼女が倒れてしまって、アリアの介抱をしながらオリーブとブライアンに大人達を呼んで来てもらった。イアンはというとバツが悪そうにその場を去っていったが。この国の第三王子は倒れた人間の介抱もしないのかなんて心の中で悪態をついてしまった。
すぐに彼女の父親が駆けつけて屋敷へと連れ帰ってしまった。残された僕とオリーブとブライアンはお茶会を楽しむどころではなくなってしまい、各々お茶会を後にする。
どうやらちょうど父上の用事も済んだみたいで、自国へと帰ることとなる。帰りの馬車の中で父上に気になる女性がいたこと、彼女の名前、それから婚約したいと伝えた。
父上はニコニコと笑いながら頭をひと撫でし、了承してくれた。オルビス国は以前までは政略結婚が主流であったが近年では恋愛結婚が推奨されていて、それは王家も例外ではない。というより、ここ数代の王家ではほぼ恋愛結婚で仲睦まじく平和が続いていることから風潮が変わっていて、今となってはとてもありがたく感じていた。
自国についてしばらくするとレオンから手紙が届いた。イアンがアリア嬢と婚約したと。それを聞いた途端頭が真っ白になってしまった。隣国では政略結婚が当たり前で、一度結ばれた婚約は解消することはほとんどないと聞く。それに相手はイアンだ。レオンやソルトならばまだ認められるが、そうではない。
彼女はイアンと結婚して幸せになれるのだろうか。いや、政略結婚である以上、好き嫌いの問題でもないのか……
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「……従兄妹? 隣国の第三王子ってイアンか?」
「そうだけど、よく知ってるな」
「もしかして従兄妹って、アリアっていう名前だったりしないか……?」
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こんなにも都合のいい繋がりがあるんだろうか。ネルトに頼めば彼女のことが詳しく知れるかもしれない。
「僕、この間隣国に行っただろう? その時子供達だけのお茶会に招待されて、その時に会ったんだ」
「へぇ。でも、君がそこまで気にするなんてね。もしかして、気に入った? アリア可愛いからな」
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「あぁ、なるほどね。君と僕との仲だから色々教えてやってもいいよ」
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