21 / 36
婚約編
21 カラメリアのわがまま①
しおりを挟む
アルハイザー家への訪問も十回を超え、レティシアの学ぶ言語も2つめに入った。季節は秋に変わり道端の木も赤や黄色に色付き始めている。
そんなある日、アルハイザー家へ行こうとするレティシアにめかしこんだカラメリアが声をかけた。
「レティシア、私もアルハイザー家に連れて行って。」
突然そんなことを言われても、とレティシアが返答に困っている隙にカラメリアは馬車に乗り込んでしまう。
「ちょっと、カラメリア。勝手なことはできないわ。」
「なによ、レティシアばっかりイサイアス様と会っていてずるいわ。一回くらいいいじゃない。」
「そういう問題ではなくて。」
「あんたが何言おうが私は付いていくんだから!」
何を言っても引かないカラメリアにこれ以上ここでもめていては間に合わなくなると思ったレティシアは玄関で待機していた従者の一人にアルハイザー家へ早馬を走らせるようにお願いした。
馬車の中でつらつらとカラメリアが口にするレティシアに対する不満を聞き流しながらも、いつもなら楽しみで仕方がないアルハイザー家への訪問が少しずつ憂鬱になっていくレティシアであった。
早馬で知らされたカラメリアの訪問にアンネマリーとイサイアスはそろってため息を吐いた。
「あの子は苦労するわね、可哀そうに。」
アンネマリーの言葉に深く同意しつつ、馬車の中で沈んだ顔をしているだろう婚約者を思い、イサイアスは表情を厳しいものに変えた。
いつもより気持ち遅れて到着した馬車から飛び出してきたカラメリアを見てアルハイザー家の従者たちは眉をひそめた。何度訪れても変わらず礼儀正しく挨拶するレティシアと対照的に許しも得ていないのにイサイアスになれなれしく縋り付くカラメリアへ周囲から厳しい視線がとんだ。
「シア、一週間ぶり。元気そうでよかった。」
イサイアスはそんなカラメリアをまるっと無視してレティシアへ話しかけた。レティシアの輝く髪を軽く梳くように撫でながら、その髪を一束すくいあげるとその髪に口づけを落とす。レティシアはイサイアスのそんな仕草に、強張っていた表情緩めて甘えるような微笑みに変えるとイサイアスの名前を呼んだ。イサイアスは嬉しそうに目を細めるとレティシアの手を取って、反対の手をレティシアの腰にまわし彼女をエスコートして屋敷に入る。
仲睦まじい婚約者同士の様子を見せつけられたカラメリアは悔しげな表情で2人の後ろに続いた。
屋敷の中で待っていたアンネマリーは仲良く一緒に入ってきたイサイアスとレティシアをみて「よくやった」とイサイアスにアイコンタクトを送った。イサイアスも心得たもので、ニヤッとアンネマリーに向って笑って見せる。
イサイアスはレティシアを母親のもとまでエスコートすると名残惜しそうにその手を離してその場を去ろうとする。そこでカラメリアが去ろうとするイサイアスに慌てて声をかける。
「イサイアス様、どこに行かれるんですか?」
「魔術の稽古へ。ここへはレティシアに会いに来ただけだから。」
「え、そんな。一緒に居られないんですか?」
カラメリアはてっきりイサイアスも一緒に過ごすものだと思っており、彼があっさりとその場を去ろうとするから慌てていた。カラメリアがこの屋敷に強引についてきたのはイサイアスにレティシアよりも気に入られるためであった。そして、あわよくばその婚約者の地位を奪ってやろうとまで思っていたのだ。カラメリアにとってレティシアは魔力なしの無能な姉。兄も常々レティシアは役立たずだと言っていたではないか。それなのに急にイサイアスと仲良くなって、挙句の果てに婚約者の地位にまで上り詰めている。カラメリアはレティシアばかり良い思いをしていることが許せなかった。
幼い頃から甘やかされて育ったカラメリアは自分が正しいことを信じて疑わない。レティシアよりも自分の方が魅力的なはずで、レティシアからイサイアスに紹介してさえもらえれば自分が選ばれると思っていたのだ。選ばれるどころかむしろ冷たく突き放されたカラメリアは、それでもあきらめることなくその地位を狙っていた。
「一緒に?居られないよ。俺もシアもそれぞれ学ばなければいけないことは違うし、お互い邪魔しちゃいけないからね。」
「学ぶ?」
「君は何も聞いていないの? シアはここに勉強しに来てるんだよ。」
「あら、そうなのね。じゃあ私はイサイアス様のお稽古の見学をしていますわ!」
カラメリアは名案という風にイサイアスの後についていこうとする。
「申し訳ないけど、見学はできないんだ。ごめんね、カラメリア嬢。」
「どうしてですか!」
「君も知ってると思うけど、俺の魔力は人より多くてね、君がいれば君に危害を加えかねない。だから、遠慮して貰えるかな?」
危害を加えるかも知れないといわれ、カラメリアは顔を青くしてしぶしぶ下がった。「普通やっぱりそういう反応だよねえ。」と面白そうにつぶやくイサイアスはレティシアと出会ったときを思い出している。どれだけ離れろと言っても傍にいてくれたレティシアはやはり貴重な存在であることをしみじみとかみしめるイサイアスであった。
結局カラメリアはその場でイサイアスを見送り、仕方なくレティシアと一緒にアンネマリーの授業を受けることとなった。
そんなある日、アルハイザー家へ行こうとするレティシアにめかしこんだカラメリアが声をかけた。
「レティシア、私もアルハイザー家に連れて行って。」
突然そんなことを言われても、とレティシアが返答に困っている隙にカラメリアは馬車に乗り込んでしまう。
「ちょっと、カラメリア。勝手なことはできないわ。」
「なによ、レティシアばっかりイサイアス様と会っていてずるいわ。一回くらいいいじゃない。」
「そういう問題ではなくて。」
「あんたが何言おうが私は付いていくんだから!」
何を言っても引かないカラメリアにこれ以上ここでもめていては間に合わなくなると思ったレティシアは玄関で待機していた従者の一人にアルハイザー家へ早馬を走らせるようにお願いした。
馬車の中でつらつらとカラメリアが口にするレティシアに対する不満を聞き流しながらも、いつもなら楽しみで仕方がないアルハイザー家への訪問が少しずつ憂鬱になっていくレティシアであった。
早馬で知らされたカラメリアの訪問にアンネマリーとイサイアスはそろってため息を吐いた。
「あの子は苦労するわね、可哀そうに。」
アンネマリーの言葉に深く同意しつつ、馬車の中で沈んだ顔をしているだろう婚約者を思い、イサイアスは表情を厳しいものに変えた。
いつもより気持ち遅れて到着した馬車から飛び出してきたカラメリアを見てアルハイザー家の従者たちは眉をひそめた。何度訪れても変わらず礼儀正しく挨拶するレティシアと対照的に許しも得ていないのにイサイアスになれなれしく縋り付くカラメリアへ周囲から厳しい視線がとんだ。
「シア、一週間ぶり。元気そうでよかった。」
イサイアスはそんなカラメリアをまるっと無視してレティシアへ話しかけた。レティシアの輝く髪を軽く梳くように撫でながら、その髪を一束すくいあげるとその髪に口づけを落とす。レティシアはイサイアスのそんな仕草に、強張っていた表情緩めて甘えるような微笑みに変えるとイサイアスの名前を呼んだ。イサイアスは嬉しそうに目を細めるとレティシアの手を取って、反対の手をレティシアの腰にまわし彼女をエスコートして屋敷に入る。
仲睦まじい婚約者同士の様子を見せつけられたカラメリアは悔しげな表情で2人の後ろに続いた。
屋敷の中で待っていたアンネマリーは仲良く一緒に入ってきたイサイアスとレティシアをみて「よくやった」とイサイアスにアイコンタクトを送った。イサイアスも心得たもので、ニヤッとアンネマリーに向って笑って見せる。
イサイアスはレティシアを母親のもとまでエスコートすると名残惜しそうにその手を離してその場を去ろうとする。そこでカラメリアが去ろうとするイサイアスに慌てて声をかける。
「イサイアス様、どこに行かれるんですか?」
「魔術の稽古へ。ここへはレティシアに会いに来ただけだから。」
「え、そんな。一緒に居られないんですか?」
カラメリアはてっきりイサイアスも一緒に過ごすものだと思っており、彼があっさりとその場を去ろうとするから慌てていた。カラメリアがこの屋敷に強引についてきたのはイサイアスにレティシアよりも気に入られるためであった。そして、あわよくばその婚約者の地位を奪ってやろうとまで思っていたのだ。カラメリアにとってレティシアは魔力なしの無能な姉。兄も常々レティシアは役立たずだと言っていたではないか。それなのに急にイサイアスと仲良くなって、挙句の果てに婚約者の地位にまで上り詰めている。カラメリアはレティシアばかり良い思いをしていることが許せなかった。
幼い頃から甘やかされて育ったカラメリアは自分が正しいことを信じて疑わない。レティシアよりも自分の方が魅力的なはずで、レティシアからイサイアスに紹介してさえもらえれば自分が選ばれると思っていたのだ。選ばれるどころかむしろ冷たく突き放されたカラメリアは、それでもあきらめることなくその地位を狙っていた。
「一緒に?居られないよ。俺もシアもそれぞれ学ばなければいけないことは違うし、お互い邪魔しちゃいけないからね。」
「学ぶ?」
「君は何も聞いていないの? シアはここに勉強しに来てるんだよ。」
「あら、そうなのね。じゃあ私はイサイアス様のお稽古の見学をしていますわ!」
カラメリアは名案という風にイサイアスの後についていこうとする。
「申し訳ないけど、見学はできないんだ。ごめんね、カラメリア嬢。」
「どうしてですか!」
「君も知ってると思うけど、俺の魔力は人より多くてね、君がいれば君に危害を加えかねない。だから、遠慮して貰えるかな?」
危害を加えるかも知れないといわれ、カラメリアは顔を青くしてしぶしぶ下がった。「普通やっぱりそういう反応だよねえ。」と面白そうにつぶやくイサイアスはレティシアと出会ったときを思い出している。どれだけ離れろと言っても傍にいてくれたレティシアはやはり貴重な存在であることをしみじみとかみしめるイサイアスであった。
結局カラメリアはその場でイサイアスを見送り、仕方なくレティシアと一緒にアンネマリーの授業を受けることとなった。
57
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────
私、この子と生きていきますっ!!
シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。
幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。
時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。
やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。
それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。
けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────
生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。
※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる