魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました

ふうか

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婚約編

26 領地で②

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 院長に増税の件について話を聞くと、増税は3ヶ月ほど前かららしい。突然告知され、突然税率が5%も上がったようだった。突然過ぎて予め貯えがある者も少なく、厳しい生活を強いられている人も多いと院長は重いため息を吐いた。

 レティシアは父から増税の話など聞いたこともなかったし、アルハイザー家でも国からの指示が出たという話はなかった。つまり、父が勝手に増税したということ。祖父がそれを許す筈もないから恐らく独断で祖父にも知らせていないのだろう。祖父はここ数年は寝たきりで政務からも遠ざかって久しい。祖父に内緒にすることなど簡単だったはずだ。

「今はまだ大丈夫でしょうが、これからの冬厳しいでしょうね。教会の方にもよく相談があります。」

「そんな……」

「あの、レティシア様。この薬を教会のほうで少し領民に分けてもよろしいでしょうか?薬が買えないと相談に来る人が多くて。」

「勿論です。うちにまだありますから教会の方にも寄付させてください。」

「よろしいのですか? ありがとうございます!」

 孤児院でそんなやり取りをしてから屋敷に戻ったレティシアは、税金の引き上げについて考えていた。

 増税が始まった3ヶ月前。それはちょうどレティシアの婚約が決まった直後ぐらいだ。

 まさか

 レティシアはふと父から様々な贈り物をされるようになった頃を思い出した。あと時自分は疑問に思わなかったか? こんなに贅沢品を買うお金がどこから出ているのかと。

 まさか、増税はそのために行われたのか。レティシアは血の気が引く思いだった。

「お父様!」

 レティシアが父であるマルクスの執務室を訪れるのは初めてだった。ノックをする余裕もなく扉を開ける。

 マルクスは飛び込んできたレティシアに眉を顰め、マナーがなっていないなどと口を開く。執務室にいた彼の補佐役である従者は私自ら執務室に来たことに目を丸くしていた。

「お父様、増税とはどういうことですか!」

「なんだ、それをどこで知った?」

「今日孤児院へ訪問した時です。」

「孤児院に訪問? そんな所に行くなんて何をしているんだ。庶民の汚れが移ってしまうぞ。公爵夫人となるお前がそんな所に行くんじゃない。」

「お父様? 何を……」

 レティシアはマルクスの暴言に言葉を無くす。

「そんな所に行く暇があったらきちんとオシャレをして刺繍や楽器の練習をしていなさい。ちょっとは淑女らしくしたらどうだ。魔力無しの癖にせっかく役に立ったんだ。アルハイザー家に嫁ぐまで気を抜くんじゃないぞ。」

 レティシアはあまりの言い様に頭に血が上る。しかし、ここで怒鳴り返しても何も変わらないとなんとか怒りを飲み込むと改めてマルクスに尋ねた。

「お父様、そんなことより増税のことです。このままでは領民たちが暮らしていけません。なぜ増税なんてしたんですか。」

「なぜだって? そんなもの金が足りないからだよ。」

「お金が足りない? うちは十分贅沢しているではありませんか。これ以上は不要な贅沢です。」

「不要? 何を言っているんだ? なぜ俺達が領民のために我慢しなければならない。お前のためのドレスやら宝石やら買ってやったのもそのおかげなのだぞ。」

「やはり、そうだったのですね。これ以降はもう贈り物は結構です。その代わり減税を!」

「うるさい! 女のお前が口出しするな!さっさと出ていけ!」

「お父様!」

 こうしてレティシアは執務室から追い出された。レティシアは自身の不甲斐なさと自身の父親の情けなさに涙が滲む。

 しかし、こうして泣いている場合でもない。領民たちの苦労は自分のせいでもあるのだ。

「マリーいる?」

「お嬢様、どうかしましたか?」

 部屋に戻ってマリーを呼ぶと、レティシアは自分の送られたドレスと宝石を全て出してくるように言った。

「この中から最近送られたものをいくつか除けてまとめてもらえる?」

「なにをするのですか?」

「これを売るわ。」

「「え?」」

 部屋にいたメイドたちが一斉に驚きの声をあげた。

「売ったお金で薬と食料を買ってちょうだい。教会へ寄付します。」

「とつぜんどうしたのですか? それに売るなんて、バレたらどうなるか。」

「どうせ何を贈ったかなんて覚えてないわ。」

 
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