魔力を持たずに生まれてきた私が帝国一の魔法使いと婚約することになりました

ふうか

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婚約編

27 領地で③

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 レティシアはそれから2日に一回ほど教会や孤児院を訪ねた。解熱の薬草以外にも腹痛に効く薬や頭痛に効く薬など様々な薬を持って行った。教会にはレティシアの予想を上回る人数の人が訪れていた。人々はみな質素で薄汚れた格好だった。中にはほつれたままの服を直すこともせずに来ている者や、ひどく痩せている者、疲れて座り込んでしまっている者がいる。皆一様に暗い表情で疲れ切った顔をしていた。食料や薬を受け取った者たちはみな重い足取りで教会を後にする。教会に集まった者同士話し込んでいる者たちもいいく、その会話がレティシアのもとまで聞こえてきた。

「食料もそこをついたよ。この冬は教会頼みだ。」

「うちは息子が風邪をひいたのに......薬を買うお金もなくて。」

「領主さまもなんだってこんな急に増税なんて。俺たちを殺す気かってんだ。」

「領主さまは相変わらず裕福な暮らしをしてるんだろ? 俺らのことなんだと思ってんだ。」

「そうだそうだ、いい加減にして欲しいぜ。」

 レティシアは聞こえてきた会話に肩身の狭い思いをしていた。領民たちが言ってることは何も間違っていない。領民たちに不満が溜まっていることを肌で感じた。

 隣にいたシスターが何とも言えない表情でレティシアを見ていた。シスターにも領民たちの声が聞こえていたのだろう。それに、今までもっとひどい言葉も聞いたはずだ。

 教会を出て町を歩いた。町の様子はいつものように活気があふれているように見えるがどこか表面的で、影が落ちたような雰囲気が微かに漂っていた。声を張り上げる店主の声にも張りがなくレティシアはそんな町の様子に哀しさがあふれる。

 目立たないように使用人たちが使う古くなった馬車を使って町へ出ていたレティシアは行きと同じようにひっそりと屋敷へ帰ってきた。古い馬車は椅子が固く振動がダイレクトに伝わるためレティシアにとって短時間でも乗っているだけで大きく体力を消費する。移動と町で見た現実にすっかり意気消沈したレティシアは心身ともに疲れ切っていた。

 それでも、もう一度父に直談判してみようと一旦部屋に帰って綺麗な服に着替えてから執務室へ足を向けた。執務室の近くには人気がなく静かだった。執務室の扉をノックするも中から返事はない。そして、扉がきちんと閉まっていなかったのかノックした拍子に扉が5センチほど開いた。

 開いた扉から片目で中をうかがうもやはり誰火がいる気配はなかった。部屋は灯りが灯ったままで暖炉に火が入っていて暖かかった。日の暮れた後の屋敷の廊下は冷える。父が戻ってくるまで中で待たせてもらおうと執務室へ体を滑り込ませた。

 執務室に入ったレティシアは入り口近くの客人用のソファーに座って部屋を見渡した。高級家具ばかり並ぶ執務室はレティシアはあまり好きにはなれなかった。父の高級志向を体現したかのような部屋である。

 ふとレティシアが目を止めたのは部屋の壁備え付けられた鏡だった。レティシアの背よりも高い鏡と壁の間に隙間があった。

「隠し扉?」

 立ち上がって鏡に近づく。隙間から先ほどのように中をうかがうが人の気配らしきものは感じなかった。部屋には誰もいないし父が戻ってくる様子もない。レティシアは好奇心に駆られて隠し扉をくぐった。中はかなり広く執務室の半分ぐらいの大きさがあった。ほとんど使われていないのか埃っぽい。

 中は暗く執務室から漏れている灯りが扉の向こうから漏れているのが頼りだった。中には所せましと並んでいた。どれも古い書物で一冊手に取って開いてみるとそれは数十年前に作られた領地に関する資料だった。おそらく先々代の頃に作られたものだろう。更に億へ進むと執務室に置かれているような大きな木製の机が置かれている。その机の上にまだ新しそうな埃のかぶっていない紙の束があった。

 レティシアはその紙の束を手に取りひらいた。

「なに…これ......」

 資料を読みながらレティシアは信じられない気持ちになった。そこに書かれていたのは父が繰り返してきた領地を持つ貴族全員が国へ治めなければならない国税の不正の記録だった。

 父が祖父からこの領地を引き継いだのは大体3年前からだ。この記録は2年前から始まってるからおそらく引き継いでしばらくしてから不正を始めたのだろう。レティシアは父がそんなことをしているとは信じたくなかったが丁寧に作られたこの資料が何よりの証拠だった。

 そしてこの秘密を知ってしまったレティシアは急に怖くなった。父は勝手に部屋へ入って秘密を暴いたことを知ったらおそらく黙っていない。外部にバレないように何をされるかわからなかった。

 レティシアは急いで隠し部屋を出ると鏡の位置をそっと戻した。そして執務室を恐る恐る後にする。幸いまだ父は戻ってこず部屋に戻るまで数人のメイドとすれ違っただけだった。

 部屋に戻ったレティシアは心ここにあらずといた様子でマリーに着替えさせられながらマリーの話に相槌を打ちだけだった。マリーが下がり部屋に一人になったレティシアはベッドへ横になると布団に深くもぐりこんだ。
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