転生したらバニーガールだけど?まあいいか

MMM

文字の大きさ
5 / 20

第5話:古城探索は楽じゃない? でも色気でサクッと攻略

しおりを挟む
次の街へ向かうべく、ユナはゆるりと歩を進めていた。
途中、雑木林を抜けた先で不意に視界が開け、草むらの向こうに怪しげな建物が見える。

「……あれ、あんなところに古城?」

遠目にもわかるほど壁が崩れ、蔦が絡みついている朽ちかけの城。  
見るからに「ここには何か出そう」という雰囲気だが、ユナはそれほど興味を惹かれない。  
しかし、城の手前には何やら集団の人影があり、がやがやと騒いでいるのがわかった。

「ん……?」

近づいてみると、冒険者らしき面々が地図を広げて相談している。全員合わせて四人ほど。  
長い槍を持ったリーダー格の青年、弓を背負った少女、ローブを着た魔法使い風の男性、そして補助役らしき女性。  
彼らはユナに気づくと、最初は警戒の眼差しを向けたが、すぐに彼女の姿を見て目を丸くする。

「おい、バニーガールだぞ……何でこんなとこに?」
「す、すごい格好……」

一同が戸惑っていると、ユナはぺこりと軽く頭を下げる。

「通りすがりだけど。ここ、入るの?」

「そうなんだ。俺たち、朽ちかけたこの城を探索する予定でさ。噂じゃ宝物庫が残ってるとか、アンデッドがうじゃうじゃ出るとか……」

リーダー格の青年が説明する。どうやらギルドで受けた依頼の一環らしい。  
しかしメンバーはあともう一人欲しいようで、ちょうど通りかかったユナを“これは運命かも”と思ったようだ。

「ねえ、一緒に行かない? バニー……いや、あなた、冒険者なんでしょ?」

ユナは微妙な顔で答える。

「一応登録はしてるけど……あんまり興味ないかも。ソロのほうが楽だし」

「そんなこと言わずに! 頼むよ。もしモンスターが多すぎたら、俺たちだけじゃ厳しいかもしれないし……」

青年たちは必死でユナを勧誘してくる。  
弓の少女も「戦力は多いほうが安全だし、あなた……結構強そうに見える」と期待の眼差し。  
ユナは少し迷った末、「まぁ……ちょっとだけなら手伝ってもいいけど」と渋々首を縦に振った。

「本当!? 助かるよ。よし、早速行こう!」

---

古城の中はやはり暗く、カビ臭い空気が漂う。石造りの廊下はひび割れ、至る所に蜘蛛の巣が張っている。  
魔法使いの男性が淡い光の魔法を使い、先頭の青年が槍を構えて慎重に進む。ユナは一番後ろをマイペースに歩いていた。

「うわ……本当にアンデッドが出そうだね」

弓の少女が不安そうに言ったその瞬間、奥のほうからゴトゴトという足音が聞こえてきた。  
ガイコツの戦士やゾンビのような姿が、ぞろぞろとこちらへ向かってくる。

「やっぱり出やがった……! 気を引き締めて!」

リーダー格が構えをとり、パーティーは一斉に身構える。  
しかし、それより早くアンデッドたちの視線がユナに集中した。

「……?」

アンデッドと言えば、生気のない眼で襲ってくるイメージだが、なぜか彼らの動きが止まり、ガタガタと武器を落としはじめる。  
そのままユナを見るたびに痙攣して、溶けるように地面へ崩れ去っていった。

「え、なにこれ……?」

ユナは首をかしげるが、どうやら例の“色気”や“バニー姿”の謎オーラに当てられてしまったらしい。  
いくら相手が亡者でも、なぜか惑わされて本来の力を出せなくなるようだ。

「そ、そんな……アンデッドがあっさり……」

あまりにも拍子抜けする展開。パーティーの面々は目を丸くしている。  
この調子で進んでいくと、立ち塞がるアンデッドはみなユナを見た瞬間に動揺し、ぼろぼろと倒れていく。  
リーダー格はおろか、誰も戦闘らしい戦闘をする必要がなく、あっという間に城の奥へ到達してしまった。

「もうボス部屋みたいなとこまで来ちゃった……」

魔法使いの男性が驚きの声を上げ、弓の少女も「あたし、矢を一本も使ってない……」とあっけにとられる。  
ボスらしき甲冑をまとったアンデッドも、ユナを見るやいなやガタガタ震え、勝手に倒れて終了。  
こんな形で探索終了するとは、誰も予想していなかった。

---

「うわあ……何というか、すごいね。宝箱もそのまま残ってる……」

古城の最奥で見つけた宝箱を開けると、古びた銀製の装飾品や古文書が出てきた。依頼報酬としては十分すぎるらしい。  
リーダー格の青年は大喜びで、ユナにお礼を言う。

「ありがとう、本当に助かったよ。きみのおかげで死傷者ゼロどころか、モンスターとほとんど戦わずに済んだ。是非、このままうちのパーティーに入ってくれないか?」

周囲のメンバーも「お願い!」と目を輝かせている。  
しかしユナはバニー耳をひょこっと動かしながら、「うーん……」と考える素振りを見せる。

「ごめんね、わたし、ソロが気楽だし……妹を探す旅してるから」

「妹……? そうか、探し人がいるんだな……」

青年は惜しそうに視線を落とすが、ユナの意志は固そうだ。  
みんなが「残念だ……」とうなだれる中、ユナは申し訳なさげに苦笑する。

「でもこれでアンデッド退治は楽々終わったし、宝箱も手に入ったから良かったよね。わたしはここで失礼するね」

「ああ……本当にありがとう。良かったら報酬の一部でも受け取ってくれないか?」

「ううん、いいや。荷物増えるし」

ユナはそっけなく断り、身軽に踵を返す。  
「それじゃあ、またどこかで」というリーダー格の呼びかけに振り返ることなく、古城の出口へ向かっていった。

---

外に出ると、先ほどの雑木林からほんの少し日差しが射し込み、城の崩れかけた外壁が淡く照らされている。  
アンデッドたちを瞬殺(?)してしまった探索は、予想外にあっけなく終了したけれど、ユナにとってはどこか他人事のような感覚だった。

「妹、いないし……興味もないし……」

バニー姿で森を抜ける。気が向けば宝物だって手に入るかもしれないが、ユナは面倒ならそれもいらない。  
肩の力を抜いて次の目的地へ向かう足取りは軽い。

「さて、そろそろ街に着いたら宿を探すか。お腹すいちゃったし」

アンデッドにまるで恐怖心を抱かないまま、のんきに古城を後にするユナ。彼女の異常な幸運と色気は、これからも色々な騒動を巻き起こすのだろう。  
そうとも知らず、森の小道で鼻歌まじりに旅を続けるバニーガール――妹の行方を確かめるのは、もう少し先の話になりそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

金髪女騎士の♥♥♥な舞台裏

AIに♥♥♥な質問
ファンタジー
高貴な金髪女騎士、身体強化魔法、ふたなり化。何も起きないはずがなく…。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...