転生したらバニーガールだけど?まあいいか

MMM

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「占い師さんが言ってた東って、こっちの方角で合ってるのかな」

相変わらず地図も曖昧なまま、ユナはバニー姿のまま東の道をずんずん進んでいた。  
さほど切迫感はないが、なんとなく“東へ向かうと妹に縁がある”と言われた手前、そちらの方面に足を向けている。

「ん……なんか不思議な雰囲気」

しばらく山道や草原を経て、視界に広がったのは古びた石柱と半壊した建築物。どうやら古代文明の遺跡らしい。  
崩れかけた門をくぐると、陰鬱な空気が漂い、足元には苔むした石畳が続いている。

「こういうとこ、冒険者がよく探検したりするんだろうなぁ。宝物とか出てくるのかな」

ユナは特にお宝に興味はないものの、“妹がここにいる可能性”はほぼゼロでも、一応探してみるかという軽い気分で遺跡の奥へ進む。  
すると、床や壁のあちこちに明らかに怪しげな仕掛けが見受けられた。

「わー、これってトラップってやつじゃない? 罠の穴とか矢が飛んでくるとか……」

冒険者なら即座に身構えるような雰囲気だが、ユナは無防備に歩いていく。  
だが、奇妙なことに、彼女が通る場所のトラップは何一つ発動しない。  
足元にあるはずの踏み板も作動せず、壁の隙間から飛び出すはずの槍も全く出てこない。

「あれれ、拍子抜け……。動かないのかな」

ユナ本人も不思議に思いつつ、悠々と奥へ。たまたま運がいいのか、彼女の強運がここでも発揮されているのか――まるで神殿側が怯んでいるかのように感じられるほど、無傷でスルスルと通り抜けてしまう。

---

さらに進むと、巨大な扉があり、そこを開くと神殿の最深部へと通じる大きな空間に出た。  
中央には石造りの台座があり、その上に奇妙な像が鎮座している。  
そして、その前に立ちふさがるように待ち構えていたのは、鎧を身にまとった守護者のような存在だった。

「む、むむむ……外界よりの闖入者よ……ここを通すわけにはいかぬ……!」

低く重厚な声が響き、鎧の守護者は大剣を構えてユナの方を睨む。  
ただ、その姿勢もどこか尻込みしている感じが否めない。

「こんにちはー。なんか貴重な宝物でもあるんですか?」

ユナが無邪気に問いかけると、守護者は「ぬぅっ……!」と声を詰まらせる。  
どうやら侵入者を撃退するのが役目らしいが、ユナのバニー姿を正面から見てしまったせいで、まともに戦意を保てないようだ。視線が落ち着かず、鎧の頬当たり(?)が赤く熱を帯びるかのように震える。

「くっ……な、なんなんだ、その格好は……ここは神聖なる神殿……ふしだらな姿の者は……」

「ふしだら? うーん、確かに露出度高いかも。でも脱げないから仕方ないんです」

「むむ、むむむ……目が、目がくらむ……!」

鎧の守護者はガクガクと剣を握る腕を震わせながら、まるで眩暈を起こしたかのように膝をつきはじめる。  
せめて一撃でも振るおうとした様子だが、結局剣先は虚空を切り、守護者はそのまま地面に倒れ込んでしまった。

「えっ、大丈夫?」

慌てて駆け寄るユナ。しかし、守護者はもう立ち上がれないらしく、「ぬぅう……降参するしかない……」と唸る。

「ええと、倒されてしまったって感じかな?」

「む、無念……我が使命は……だが、バニー姿……あまりにも想定外……」

どうやらこれで戦闘は終了らしい。  
ユナは拍子抜けしつつも、守護者を軽く介抱して「これ、冷たい水でも飲む?」などと声をかけるが、守護者は「せめて宝を持ち去るのだけは……」と苦しげに言う。

「宝……あ、あれか」

ユナが視線を移すと、台座の奥に大きな宝箱やら金銀の類が山積みされている。  
古代文明の秘宝なのか、眩い光を放つ宝石や珍しい書物が所狭しと並んでいた。

「うわあ……すごく重そう。やっぱり持ち帰るの大変そうだな」

「なに……?」

「そういうの、興味ないからいいよ。ほら、めちゃ重そうだし。持ち歩いたら邪魔になるし」

ユナはあっさり肩をすくめる。まさか宝を欲しがらない侵入者がいるとは、守護者も夢にも思わなかったのだろう。  
彼は愕然としながら、「じゃ、じゃあ何のために来たのだ……?」と小さく呟く。

「うーん……通りかかったからかな。妹探ししてるんだけど、ここにはいなさそうだし、帰るね」

そう言い残し、ユナは神殿の奥へちらっと目をやりながら、「用ないし出よっかな」とすたすた戻り始める。  
床に伏せたままの守護者は、その後ろ姿を見送るしかない。

「うぐ……俺の役目とは……何だったのか……」

虚ろな視線でつぶやきながら、彼は深い敗北感と恥ずかしさで動けない。  
そんな哀れな守護者を後目に、ユナはトラップも何も起動しないまま来た道を戻り、あっという間に神殿を脱出するのだった。

---

外の陽光を浴び、「あー、暗いところは疲れるわ」と伸びをするユナ。  
背後には古代文明の遺跡が不気味にそびえているが、何の成果もなく、あるいは無駄足だったかもしれない。

「でもトラップとか発動しなかったから全然ダメージ受けてないし、時間もそんなにかかってないし。いっか」

結果オーライ。宝物が山ほどあったところで、重くて持てないし興味もない。  
いつもどおりマイペースなユナは、そのまま軽い足取りで再び東の方向へ向かって歩き出す。

「妹、どこにいるんだろうねー」

ひとりごとのように呟いて、バニー耳をひょこっと動かす。  
今日も特に焦らず、いつか会えるだろうと信じながら、行き先だけはゆるやかに東へ。  
こうして不可思議な古代神殿の冒険は、まるで観光のような軽い出来事として終わったのだった。
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