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「ん? “ナナ”って……妹と同じ名前だな」
ユナはバニー姿のまま、街の居酒屋のような場所で耳をそばだてていた。
隣のテーブルで話していた冒険者風の男たちが、「ナナって娘がすごい強い」「近く開かれる武闘大会に出るらしい」と盛り上がっているのが聞こえたのだ。
ナナ――まさに妹と同じ名。
もちろん別人の可能性も高いが、同じ時期にこの世界に来ているのなら、何らかの繋がりがあるかもしれない。
「ねえ、そのナナって人、どんな特徴があるの?」
思わず声をかけると、冒険者たちはいきなりバニーガールが話しかけてきたので驚いた様子だが、すぐに「聞きたいなら教えてやる」と乗り気になる。
「特徴? さあ、俺も直接見たわけじゃないんだけど、噂じゃ年齢は若いって話だな。見た目よりずっと強いとか、単独で魔物の群れを倒したとか……」
「ほうほう……」
年齢が若いというだけで、もしや本当に妹のナナでは――と、ユナは少し考え込む。とはいえ、具体的な外見の特徴や性格などは誰もはっきり知らないらしく、情報は曖昧だ。
「でも、近々この街の隣にある大都市で武闘大会が開かれるだろ? どうやらナナって子もそこに参加するらしいんだ」
「武闘大会かあ……興味ないけど、ちょっと覗いてみよっかな」
ユナはさほど格闘技に興味はない。ただ、妹の手がかりになりそうなチャンスがあるのなら、確かめておいてもいいだろうと思う程度だ。
「ありがとう、教えてくれて」
礼を言って席を立つと、冒険者たちはバニー姿のユナを名残惜しそうに見送る。
店を出て通りを歩きながら、ユナは「武闘大会っていつだろ?」と考える。どうやら一週間後くらいに開催されるらしい。隣の大きな都市まで少し距離はあるが、のんびり行けば十分間に合うだろう。
「よし、じゃあ行ってみようかな。妹じゃなかったらがっかりだけど……まあいっか」
特に予定もないので、行き先ができただけでもいい。ユナは軽い気持ちで街の外へ向かう準備を始める。
そのとき、どこか路地裏の暗がりで、こちらを伺うような視線を感じた――しかし、ユナがそちらへ振り返っても、人影はさっと消えてしまう。
「……誰かいたかな?」
振り向いた路地の先には、すでに人っ子ひとり見当たらない。
妙に胸騒ぎがしたが、ユナはあまり深く気にすることなく、荷物をまとめて宿をチェックアウトする。気のせいかもしれないし、ストーカーじみた人に絡まれても厄介なので、放っておくのが得策だ。
---
翌朝、バニー姿のユナは荷物を背負うこともなく、相変わらず身軽な格好で街道に出る。
東へ向かう道を辿りつつ、「武闘大会の都市」へ行くルートを教えてもらったので、その通りに進めば数日のうちに到着するらしい。
「ふう、ナナって名前の子、本当に妹かな……同じ名前の人っているかもだし……」
半信半疑のまま、ユナはバニーしっぽをふりふりさせながら歩く。
その背後を遠くから見つめる視線があったことには、まるで気づかない――暗がりに潜む謎の人物が「ユナ……」と低く呟き、こっそりその足跡を追いかけているようだが、その存在はユナの意識にはまだ届かない。
こうして、妹の行方を確かめるために少しだけ本腰を入れたユナ。次の目的地は大都市で開かれる武闘大会。そこで本当にナナが見つかるのか、それとも別人なのか……。
何もわからないまま、バニーガールは次の冒険へと足を進めていくのだった。
ユナはバニー姿のまま、街の居酒屋のような場所で耳をそばだてていた。
隣のテーブルで話していた冒険者風の男たちが、「ナナって娘がすごい強い」「近く開かれる武闘大会に出るらしい」と盛り上がっているのが聞こえたのだ。
ナナ――まさに妹と同じ名。
もちろん別人の可能性も高いが、同じ時期にこの世界に来ているのなら、何らかの繋がりがあるかもしれない。
「ねえ、そのナナって人、どんな特徴があるの?」
思わず声をかけると、冒険者たちはいきなりバニーガールが話しかけてきたので驚いた様子だが、すぐに「聞きたいなら教えてやる」と乗り気になる。
「特徴? さあ、俺も直接見たわけじゃないんだけど、噂じゃ年齢は若いって話だな。見た目よりずっと強いとか、単独で魔物の群れを倒したとか……」
「ほうほう……」
年齢が若いというだけで、もしや本当に妹のナナでは――と、ユナは少し考え込む。とはいえ、具体的な外見の特徴や性格などは誰もはっきり知らないらしく、情報は曖昧だ。
「でも、近々この街の隣にある大都市で武闘大会が開かれるだろ? どうやらナナって子もそこに参加するらしいんだ」
「武闘大会かあ……興味ないけど、ちょっと覗いてみよっかな」
ユナはさほど格闘技に興味はない。ただ、妹の手がかりになりそうなチャンスがあるのなら、確かめておいてもいいだろうと思う程度だ。
「ありがとう、教えてくれて」
礼を言って席を立つと、冒険者たちはバニー姿のユナを名残惜しそうに見送る。
店を出て通りを歩きながら、ユナは「武闘大会っていつだろ?」と考える。どうやら一週間後くらいに開催されるらしい。隣の大きな都市まで少し距離はあるが、のんびり行けば十分間に合うだろう。
「よし、じゃあ行ってみようかな。妹じゃなかったらがっかりだけど……まあいっか」
特に予定もないので、行き先ができただけでもいい。ユナは軽い気持ちで街の外へ向かう準備を始める。
そのとき、どこか路地裏の暗がりで、こちらを伺うような視線を感じた――しかし、ユナがそちらへ振り返っても、人影はさっと消えてしまう。
「……誰かいたかな?」
振り向いた路地の先には、すでに人っ子ひとり見当たらない。
妙に胸騒ぎがしたが、ユナはあまり深く気にすることなく、荷物をまとめて宿をチェックアウトする。気のせいかもしれないし、ストーカーじみた人に絡まれても厄介なので、放っておくのが得策だ。
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翌朝、バニー姿のユナは荷物を背負うこともなく、相変わらず身軽な格好で街道に出る。
東へ向かう道を辿りつつ、「武闘大会の都市」へ行くルートを教えてもらったので、その通りに進めば数日のうちに到着するらしい。
「ふう、ナナって名前の子、本当に妹かな……同じ名前の人っているかもだし……」
半信半疑のまま、ユナはバニーしっぽをふりふりさせながら歩く。
その背後を遠くから見つめる視線があったことには、まるで気づかない――暗がりに潜む謎の人物が「ユナ……」と低く呟き、こっそりその足跡を追いかけているようだが、その存在はユナの意識にはまだ届かない。
こうして、妹の行方を確かめるために少しだけ本腰を入れたユナ。次の目的地は大都市で開かれる武闘大会。そこで本当にナナが見つかるのか、それとも別人なのか……。
何もわからないまま、バニーガールは次の冒険へと足を進めていくのだった。
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