ベッドの隣は、昨日と違う人

月村 未来(つきむら みらい)

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第三章 見つめて、手放して

19話 今日はこれでよかった

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大地は勘定を済ませると、何でもない顔で財布をしまった。

「なんか誘ったのに……しかも2次会も来てくれるのに、ご馳走になっちゃってごめんね」

みいなが言うと、大地は一瞬だけ目を伏せて、それから軽く笑った。

「いやいや、いいって。みいなの分くらいさ……」

その言い方が、変に気負ってなくて。
だから余計に胸の奥が、ちょっとだけ温かくなる。

「……ありがとう」

店を出ると、夜風がほどよく酔いを冷ましてくれた。
賑やかな通りを抜けて、駅へ向かって並んで歩く。

「また、送るよ。改札まで」

「うん」

少し歩いてから、大地が思い出したように聞いた。

「あ、そういや2次会って、どんな服で行けばいいんだろ」

みいなは「ん?」と足を緩める。

「わたしはさ、結婚式の服のままだから……ドレスっていうか、ワンピースだけど。男の人って、2次会でもスーツの人多いかな?」

「そっか……そうだよな」

顎に手を当てて考えてから、大地はぽつりと言った。

「せっかくだから、いいやつ新調しよっかな」

「え?わざわざ?」

思わず目を見開くと、大地は照れたように視線を逸らす。

「いいやつ欲しいって思ってたし。それに……みいなの同伴なら、恥かかすわけにいかねぇだろ」

その言葉が、冗談みたいで。
でも、どこか本気に聞こえて。

(……大地)

胸の奥で、何かが静かに揺れた。

「じ、じゃあ、それ!」

みいなは少し勢いで続ける。

「その新しいスーツ、わたしも買いに行くの付き合う」

「え?」

大地が目を丸くする。

「いいのか?」

「うん。もちろん」

自然に出た返事だった。
考えるより先に、そう言っていた。

改札前で足を止める。

「じゃ、また連絡するな」

「うん。今日はありがと」

手を振って別れて、改札を抜けてから、みいなはスマホを取り出した。

画面には、拓也からの通知が溜まっていた。


📱
「えーー!
そんなの切り上げてこっちおいでよ」

「みいなちゃーん?」

「未読スルー?あー、俺かわいそー」

連打されたメッセージ。

しばらく眺めてから、みいなはふっと息を吐いた。

(……なんか、滑稽かも)

自分の都合ばかりで、相手の時間や気持ちは後回し。
それを「甘い言葉」で包んでくるところも、もう少し前なら嬉しかったはずなのに。

画面を暗くして、みいなはバッグにスマホをしまった。

胸の奥に残るのは、さっき大地と歩いた夜道の静けさ。
派手じゃないのに、ちゃんと“隣にいる”感じ。

(……今日は、これでよかった)

そう思えたこと自体が、みいなにとっては小さな変化だった。




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