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情報屋さん
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◇
神殿に戻ればそこで食事は用意されるけれど、なんとなくお店に入ったわ。好き嫌いは特にないから目に入ったメニューでオーダーして、座って待ってると近くのテーブルの会話が耳に入ったの。
「オプファーの話聞いたか?」
「あれだよな、何でも凄い聖女が居て、国の大結界ってのを維持してるから魔物が少ないんだよな。ゲベートはそういうの居ないもんな」
「凄いかどうかは別として、その大結界が最近緩んできてるらしいぜ。それでも、うちよりは間違いなく安全なんだろうけど」
私が出てきてからまあまあ経ったわね、聖域に穴が開いて来てるんじゃないかしら。範囲を維持するだけなら出来るでしょうけど、空いた穴を塞ぐのは一苦労よ。警備隊が魔物を駆除してはくれるけど、結界維持しながら新規の構築を重ねるのって結構難しいから。
普通の人ならどっちかしか出来ないわ、正面も後ろも同時に見られるならべつだけどね。精霊使いは自我を分割できる、そういう特殊なことが見込めないならせめて二人か三人で体制を維持すべきよ。波長が近いのが居るかどうかは知らないけど、姉妹とかなら何とかなるんじゃ?
出て来た料理をもぐもぐしながらリンダ王女の事を考えてみたわ。もし精霊同士が同調できるなら、私達は二人で一つの結界を保持できることになるわ。それって拡大も維持も何でも同時に出来るから、物凄く使いやすくなる。
「水の精霊と氷の精霊、相性も悪くはないわよね。いつになるかわからないけど、一度試してみる価値はあるわね」
それにしても将軍と司令、私の事快く思えないわよねあれじゃ。仲良くしなきゃいけないわけじゃないけど、同じ町に居るつもりなら険悪になるのは避けないと。とはいえ神殿に籠もっていたら別にどっちでもいいかもだけど。
「そういえば、侯爵が戻って来たじゃねぇか、あの日の郊外で将軍と市長が凹まされてたらしいな」
「説教されてたって話だぞ、部下の手前面白くないだろうなありゃ。市長は子飼いだからいいとしても、将軍は恨むんじゃないかと俺は睨んでる」
「こんなところで反乱とか起こしてくれるなよ。俺達まで巻き込まれたんじゃかなわんぞ」
やっぱりそうなるわよね。でも将軍はダメでも市長はイイんだ、態度の変化を思えばそうかなって思えたりはするけど。だからって即反乱とは短慮が過ぎるわ、そんなことをしても得るものは微小で、失う時には全てよ。
「にしてもだ、俺達が外に行ってる間においしい仕事があったってのが悔しいぜ」
「調査隊の話だな、日帰りで純金貨一枚なんて全くだ」
「子供が主催者だったって話だけど、またやってくんねぇかな」
「お前に何が出来るんだよ。情報屋だろ」
「だからこその知恵袋役だな」
「情報が正確かどうかはどうやって確かめるんだ?」
「そんなのは時間が証明してくれるもんだろ」
情報屋かぁ、オプファーの聖女のことも、将軍と市長のこともしっかりと見てるわよね。私はこういうの活用できるかしら? 不都合が起きないように情報を逆流させるとかに使えそうとか?
下手なことをして藪蛇になるよりも、黙ってる方がいいことはあるわよね。慎重にすべきか、新たな選択肢を増やすべきか。いままでは王女が何かと教えてくれたりしてくれたけど、ここではそうは行かないわ。それに将軍の件、やるなら侯爵に隠れてするわけよね。そんな時にこちらでちょっとでも先取り出来れば。
この話自体が私を引っ掛ける為のもの……なんてことはないわよね、ここに来たのは私の気まぐれ、その上こっちが後に座ったんだもの。となると将軍側の人じゃないかどうかだけが大切ね。宿屋でちょっと話を聞いてみてからにしましょう。
お代を小銭で支払ってお店を出たわ。十五分位歩いたら宿屋に到着、まだボーっとしてる魔法使いがホールに居るわね。丸ごと借り上げて休息中ですもの。受付の前に行ったら店主が「これはアルヴィン様、今日はどのような御用でしょうか」にこやかに接してくれる。
「少し内密な確認がしたいのですけど、個室を用意して貰えますか?」
「こちらへどうぞ」
受付嬢に仕事を任せてしまうと、店主と共に隣の部屋に入ったわ。事務所みたいなところね、質素だとか思うけど何かしら重大な仕掛けもありそう。
「そちらへどうぞ。して、内密な確認とは?」
前回きっと大もうけをしたせいで妙に機嫌が良いわね。こちらも助かったわけだから、お互い様なんだけどね。まあいいわ。乗り気な姿勢を醸し出すのはお仕事ですよね。
「この前の調査に参加出来ていなかった、情報屋のような男の人って言ったら誰か想像つきますか?」
出来るだけのヒントで、正しい人物を選定してくれるように慎重によ。だってぜんぜん知らないのに、簡単にこの人っていえないもの。
「コンラットのことでしょうか?」
名前は知らないのよ、どうやって絞り込みましょう? 見た目……の話があったわ。
「身体的な特徴を聞かせて貰えるかしら」
「もじゃもじゃの黒い髪の中年で、線は細い。隙っ歯の少し汚い感じのコートを好んで着てるようなやつですが」
えーと、さっきの人と一致するわね、多分同一人物よ。数十人居て似てるのがたくさんはいないわよね。じゃあ人物調査をしてみましょう!
「その人について知っていることを教えてください。どの側面から雇用出来るかを知りたいので。成約すれば店主にも手数料を支払うことになります」
これは契約の一つ、色眼鏡なしでどういった存在かを知るための、本人不在の面接よ。
「そういうことなら可能な限り正確にお答えいたしましょう」
「コンラットさんはここに登録している冒険者ですか?」
まずは大前提、報酬の話をしていたからそうだと思うけど、間違いだったら色々問題が出てくるもの。行商人とか、外注の人とか、思いがけない返事だったら即終了。
「そうです。フリーランスの冒険者、腕っぷしが強いわけでも、魔法が使えるわけでもないですが」
「今まで受任した依頼についての評価はどうでしょうか」
これに関しては店主からの評価ね、詳しい内容は省いてくるはずよ。
「可もなく不可もなく。途中で投げ出したことはないですが、及第点ギリギリでしょう」
「特に親しい人物はいますか」
将軍って名指したら余計なのが混ざりそうだから、ぼやっとしちゃったわね。でもこちらが特に知りたいことを絞るのはきっと良くないわ。
「冒険者に限って言えば、酒をたまに飲む程度の者が数人いる位で、親しいとはまた別でしょうな」
その前置きに意味がある感じよね。もしかしたら私も面接されてるかもって思いましょ。
「冒険者以外だとというのは?」
神殿に戻ればそこで食事は用意されるけれど、なんとなくお店に入ったわ。好き嫌いは特にないから目に入ったメニューでオーダーして、座って待ってると近くのテーブルの会話が耳に入ったの。
「オプファーの話聞いたか?」
「あれだよな、何でも凄い聖女が居て、国の大結界ってのを維持してるから魔物が少ないんだよな。ゲベートはそういうの居ないもんな」
「凄いかどうかは別として、その大結界が最近緩んできてるらしいぜ。それでも、うちよりは間違いなく安全なんだろうけど」
私が出てきてからまあまあ経ったわね、聖域に穴が開いて来てるんじゃないかしら。範囲を維持するだけなら出来るでしょうけど、空いた穴を塞ぐのは一苦労よ。警備隊が魔物を駆除してはくれるけど、結界維持しながら新規の構築を重ねるのって結構難しいから。
普通の人ならどっちかしか出来ないわ、正面も後ろも同時に見られるならべつだけどね。精霊使いは自我を分割できる、そういう特殊なことが見込めないならせめて二人か三人で体制を維持すべきよ。波長が近いのが居るかどうかは知らないけど、姉妹とかなら何とかなるんじゃ?
出て来た料理をもぐもぐしながらリンダ王女の事を考えてみたわ。もし精霊同士が同調できるなら、私達は二人で一つの結界を保持できることになるわ。それって拡大も維持も何でも同時に出来るから、物凄く使いやすくなる。
「水の精霊と氷の精霊、相性も悪くはないわよね。いつになるかわからないけど、一度試してみる価値はあるわね」
それにしても将軍と司令、私の事快く思えないわよねあれじゃ。仲良くしなきゃいけないわけじゃないけど、同じ町に居るつもりなら険悪になるのは避けないと。とはいえ神殿に籠もっていたら別にどっちでもいいかもだけど。
「そういえば、侯爵が戻って来たじゃねぇか、あの日の郊外で将軍と市長が凹まされてたらしいな」
「説教されてたって話だぞ、部下の手前面白くないだろうなありゃ。市長は子飼いだからいいとしても、将軍は恨むんじゃないかと俺は睨んでる」
「こんなところで反乱とか起こしてくれるなよ。俺達まで巻き込まれたんじゃかなわんぞ」
やっぱりそうなるわよね。でも将軍はダメでも市長はイイんだ、態度の変化を思えばそうかなって思えたりはするけど。だからって即反乱とは短慮が過ぎるわ、そんなことをしても得るものは微小で、失う時には全てよ。
「にしてもだ、俺達が外に行ってる間においしい仕事があったってのが悔しいぜ」
「調査隊の話だな、日帰りで純金貨一枚なんて全くだ」
「子供が主催者だったって話だけど、またやってくんねぇかな」
「お前に何が出来るんだよ。情報屋だろ」
「だからこその知恵袋役だな」
「情報が正確かどうかはどうやって確かめるんだ?」
「そんなのは時間が証明してくれるもんだろ」
情報屋かぁ、オプファーの聖女のことも、将軍と市長のこともしっかりと見てるわよね。私はこういうの活用できるかしら? 不都合が起きないように情報を逆流させるとかに使えそうとか?
下手なことをして藪蛇になるよりも、黙ってる方がいいことはあるわよね。慎重にすべきか、新たな選択肢を増やすべきか。いままでは王女が何かと教えてくれたりしてくれたけど、ここではそうは行かないわ。それに将軍の件、やるなら侯爵に隠れてするわけよね。そんな時にこちらでちょっとでも先取り出来れば。
この話自体が私を引っ掛ける為のもの……なんてことはないわよね、ここに来たのは私の気まぐれ、その上こっちが後に座ったんだもの。となると将軍側の人じゃないかどうかだけが大切ね。宿屋でちょっと話を聞いてみてからにしましょう。
お代を小銭で支払ってお店を出たわ。十五分位歩いたら宿屋に到着、まだボーっとしてる魔法使いがホールに居るわね。丸ごと借り上げて休息中ですもの。受付の前に行ったら店主が「これはアルヴィン様、今日はどのような御用でしょうか」にこやかに接してくれる。
「少し内密な確認がしたいのですけど、個室を用意して貰えますか?」
「こちらへどうぞ」
受付嬢に仕事を任せてしまうと、店主と共に隣の部屋に入ったわ。事務所みたいなところね、質素だとか思うけど何かしら重大な仕掛けもありそう。
「そちらへどうぞ。して、内密な確認とは?」
前回きっと大もうけをしたせいで妙に機嫌が良いわね。こちらも助かったわけだから、お互い様なんだけどね。まあいいわ。乗り気な姿勢を醸し出すのはお仕事ですよね。
「この前の調査に参加出来ていなかった、情報屋のような男の人って言ったら誰か想像つきますか?」
出来るだけのヒントで、正しい人物を選定してくれるように慎重によ。だってぜんぜん知らないのに、簡単にこの人っていえないもの。
「コンラットのことでしょうか?」
名前は知らないのよ、どうやって絞り込みましょう? 見た目……の話があったわ。
「身体的な特徴を聞かせて貰えるかしら」
「もじゃもじゃの黒い髪の中年で、線は細い。隙っ歯の少し汚い感じのコートを好んで着てるようなやつですが」
えーと、さっきの人と一致するわね、多分同一人物よ。数十人居て似てるのがたくさんはいないわよね。じゃあ人物調査をしてみましょう!
「その人について知っていることを教えてください。どの側面から雇用出来るかを知りたいので。成約すれば店主にも手数料を支払うことになります」
これは契約の一つ、色眼鏡なしでどういった存在かを知るための、本人不在の面接よ。
「そういうことなら可能な限り正確にお答えいたしましょう」
「コンラットさんはここに登録している冒険者ですか?」
まずは大前提、報酬の話をしていたからそうだと思うけど、間違いだったら色々問題が出てくるもの。行商人とか、外注の人とか、思いがけない返事だったら即終了。
「そうです。フリーランスの冒険者、腕っぷしが強いわけでも、魔法が使えるわけでもないですが」
「今まで受任した依頼についての評価はどうでしょうか」
これに関しては店主からの評価ね、詳しい内容は省いてくるはずよ。
「可もなく不可もなく。途中で投げ出したことはないですが、及第点ギリギリでしょう」
「特に親しい人物はいますか」
将軍って名指したら余計なのが混ざりそうだから、ぼやっとしちゃったわね。でもこちらが特に知りたいことを絞るのはきっと良くないわ。
「冒険者に限って言えば、酒をたまに飲む程度の者が数人いる位で、親しいとはまた別でしょうな」
その前置きに意味がある感じよね。もしかしたら私も面接されてるかもって思いましょ。
「冒険者以外だとというのは?」
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