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第一章
第1話 ぬぉーーーーーー!
しおりを挟む(ぬぉーーーーーー! ま、まぶしいっ!)
我の目を輝く光が覆う。
目を開けていられない。
思わず手で遮ろうとして、はたと気づく。
顔の前に手が来ない。
余談であるが、竜族の下っ端どもを見て、前足、後ろ足などと表現する者共もいるが、失礼な話である。我のような高貴な者になると、両手両足であり、二足歩行が基本であり、戦闘でも四つん這いで『噛みつき』『尾での打撃』『ブレス』程度しかない下等なものどもと違い、多彩な技を披露できるというもの。
・・・我が何者か?
聞いて驚くがよい! 我こそは様々な種族の頂点に立つ、竜族の中でも最上位に位置する皇帝竜、その名もハーデスである!!
『竜王』ハーデスとの二つ名で呼ばれることもあるわ。
そういえば、百年ほど前までは『勇者』なる者どもが、ひっきりなしにわが居城へ押しかけてきては腕試しなのか、我につっかかってきおったわ。
まあフルボッコにして居城の外へ放り出してやるのだがな。
・・・それにしても腕試しの割には、「邪悪な魔竜めが!」とか「邪竜め! お前の所業もここまでだ!」とか、えらい剣幕で皆まくし立てておったな・・・。
腕試しの割には、ひどい言われようだな。
我ほどキュートでお茶目な竜族などいないというに。
だいたい『自称勇者』なる者どもの片腹痛いことと言ったら!
『戦士』や『魔法使い』などといった職業的なものなら意味も分かる。
・・・『勇者』ってなんだよ!? それ職業か?
勇気ある者を勇者と呼ぶなら、子供でも勇者を名乗ることが出来ようというものだ。
・・・まあなんだ、人族の職業に竜族の頂点たる我がツッコミを入れるのも
どうかと思うしな。まあそれはよい。
もっとも、百年以上前に『死神の騎士』アルフレッド・トーラスが「部下を組織化して
居城の警備にあたる」と説明に来てからは、ぱったりと『自称勇者の腕試し』は無くなったな。
まあそのおかげで暇を持て余してここしばらくは昼寝三昧のゴロゴロ生活を送っておったが。
「アル」ことアルフレッド・トーラスは我が部下の中でも最も古くからの付き合いだ。
六大軍団長の中でも筆頭の位置にいる。実力・名実ともにナンバーワンの男だ。
そのうえ気が利いて、いろいろ世話を焼いてくれるので助かっている。
この居城もアルが準備したものだ。
この居城に移り住んでからは自称勇者とやらを蹴散らす以外はずっと昼寝をしている状況だ。その自称勇者お仕置きもここ百年はほとんどないし。・・・今考えてみれば、ずいぶん怠惰だな。少し反省せねばならぬか。
そういえばアルはずいぶんとまじめな奴だ。
獣や魔獣はともかく、知恵ある魔族が分別なく暴れてはハーデス様の威光に傷がつきます!とか言って、いろいろとやっておったな。魔族が暴れてなぜ我の威光が傷つくのかイマイチ理解出来ぬところではあるが。
・・・まあ、報告を受けるたびに、「良きにはからえ」で済ましてしまうので、詳しい内容は実際わかっていない。
・・・駄目じゃないかって? まあ細かいことはアルの奴に任せておけばよいのだ。
ともかく、今の現状を整理しよう。
・・・やたらとまぶしい。これを何とかしようと手で遮ろうとすれば、何と手がないことに気づいた。
いや、手がないというと語弊があるな。何かしらピコピコ動いているような感触はある。
ただ、目の部分まで届かない。劇的に短くなっている気がする。
我の肉厚な竜の手が、鉄をも引き裂く竜の爪が無くなっている。
そちらに目を向けようとも、顔も動かない。
・・・だんだんムカッ腹が立ってきた。
(すべてを焼き尽くす我が獄炎のブレスを食らうがいいわ!)
まぶしい光に向け、必殺の【竜息吹】をお見舞いするべく、思いっきり息を吸い込み、吐いた。
「・・・カハッ」
(まさかのスカ!? 我がブレスをしくじるなどありえぬ!)
いったいどうなっているというのか。
(ブレスがダメなら、すべての生物を威圧する我が咆哮を受けるがよい!)
今度はブレスではなく、【竜咆哮】を放つ。
「おぎゃーーーーーー!!」
・・・はい?
まさしく竜の咆哮にふさわしく、大気を震わしながら「グオー!」という大音量が響き渡るはずが、なんだかやたら甲高い迫力の無い音が。
いったいどうなっている?
もう一度試してみるが、やはり「おぎゃーーーー!」としか聞こえない。
周りに何の影響も及ぼしていない。
竜の爪も息吹も、咆哮も無くなった?
そういえば、背中がやたら冷たい。炎にも氷にも強い耐性を持つ、竜鱗を持つ我が『熱い』『冷たい』を感じることなど、まず無い。
だが、今は背中がかなりひんやりして、寒いどころか冷たいと認識するレベルだ。
もしかして、あまり考えたくはないが、我は別の生物になってしまったのか・・・?
その時、バタバタと誰かがこちらへやってくる足音が聞こえた。
「なんだ、赤子の泣き声が聞こえた気がしたが」
ギィーッと木で出来た大き目な扉が開かれる。
「こっこれはっ!? マリア像の前に屋根から光が一筋差し込んでおる・・・」
比較的年老いた人族の男の声が聞こえる。
我の『竜の叡智』を持ってすればそれくらいの判断は容易いことよ。
「マリア像の前に赤子が・・・!?」
赤子・・・? ああ、どのような種族でも、生まれたての状態を「赤子、赤ん坊、赤ちゃん」などと呼ぶな。
それぞれ呼び名は違えども、まあ、要は生まれたばかりの生命体なわけだ。
急に視界が遮られ、まぶしくなくなる。その代わり巨大な初老の人族の男の顔があった。
(ばかなっ!? 人族の大きさなど、我からすればちっぽけなもののはずだ!)
その初老の男は肩掛けを外すと、なんと我を持ち上げて肩掛けでくるんだではないか!
・・・ちょっとあったかい。
「・・・赤子は無事のようだな。・・・ふむ、男の子であるな。」
(んんっ!? 我を持ち上げて赤子・・・? 男の子・・・?)
というか、我のどこを見て男の子と言っておるか!
・・・ちょっとまて、我がか!? この竜族最強、頂点に君臨する皇帝竜であるこのハーデスが!
まさか・・・人族の赤子に転生したとでも言うのか!?
「おおっ!この紺碧の瞳! 深紅の髪! まさか勇者様が降臨なされたのか!!」
はい? 勇者!? 赤子になってしまった我が、勇者!?
どっちかって言うと、その勇者をフルボッコにしてた側なのだが。
イカン、せっかく落ち着こうとしてたのに、また訳が分からなくなってきた・・・
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