ドラゴンリバース 竜・王・転・生

西園寺卓也

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第一章

第5話 記憶の邂逅② 勇者パーティ現る

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竜王の居城を四人の男女が歩いていた。

居城前では帝国軍と、居城を守っていたであろう魔物の軍が正面から激突した。

魔物の軍はそれほど数が多くないように見えたが、竜王の居城を守る精鋭なのか、帝国軍と一進一退の攻防を見せている。

だが、ぶつかり合いは居城前から打って出た魔物の軍が移動したことにより、居城に難なく入ることが出来た者たちがいた。

それが先ほどの四人だった。



「しっかし、暗いしジメジメしてるし、いい感じじゃねーな、ここはよ」

青髪の大男は担いだ大金槌を揺らしながら愚痴をこぼした。

「悪の竜王の住処なんだ。悪党らしく陰気で気分が悪くなるのも仕方ないんじゃないか?」

金髪のイケメン剣士は髪をかき上げながら呟く。

「それも竜王を倒すまでの事です。世界に平和が戻れば、こんなダンジョンを攻略する必要も無くなるでしょう」

聖女と呼ばれたローブを纏う女が溜息をつきながら言葉を返す。

赤い髪の男は先頭を歩きながらこの間、一言も発することはなかった。



「それにしても、お前、子供が出来たんだろ? 竜王討伐なんて言う勇者の仕事請け負って大丈夫なわけ?」

金髪イケメンは聖女と呼ばれた女に声をかけた。

「もちろん、これが最後の戦いになるわ。使もあるしね。竜王を討伐したらゆっくり休ませてもらうわよ。生まれて来る子供のためにもね」

シャンッ! と手に持つセイクリッドロッドを揺らす。

女はきりっとした目を少し細め、虚空に視線を這わせた。


金髪イケメンの剣士

青髪大男の戦士

聖女と呼ばれる神官

そして無口な赤髪の魔法戦士


この勇者パーティ四人は、誰一人として、竜王ハーデスが町を襲ったり人間を攫ったりしているところを見たことはない。

を受けているに過ぎなかった。

(それにしても、今回の依頼、何から何まで気に入らない・・・。どうしてここまでお膳立てが出来ているの・・・?)

聖女は不思議で仕方がなかった。

魔王軍の六団長がそれぞれの軍を率いて竜王の住む居城を完全に留守にしている、という情報を元に、帝国軍は竜王の居城に進軍、城を守る手薄な魔王軍を引き付ける間に勇者パーティを城の中へ送り込み竜王を討伐させるというシナリオだ。

話だけ聞けばまさしく絶好のチャンス。


(だけど、どうしてほぼ全軍が居城を空にしているの・・・?)


あまりにおかしな状況。人間側からすれば千載一遇のチャンスとも言えるが。


(それに、居城に突入するのもなぜ私たちだけなの・・・?)


大半の帝国軍軍勢が居城に残っている魔王軍と対峙するのはわかる。だが、帝国軍から一人も協力者がいないというのはなぜなのか? 特に将軍クラスの人間が一人か二人同行してもおかしくない。特に居城内の状況把握や、竜王の実態、もっと踏み込んで言えば竜王の討伐手柄の確保という観点からも、誰も軍属の人間を同行させない意図が不明すぎる。


(何か、私たちの知らないところで、別の何かが動いている・・・?)


大体、この竜王の居城とやらもおかしい。

通常、城というものは入り口が大きくても奥に行けば侵入者対策が施されていることがほとんどだ。

通路が複雑だったり、狭くなって行ったりする。

だが、この居城はどうだ。

入り口の大扉からまっすぐ進んで大階段を上がって二階、大きな通路がまっすぐあるだけで特に迷わせるような構造ではない。

一体何のための居城なのか?

もはや雨露を凌ぐだけでしかないような造りだった。


「ねえ、おかしくない? この城。まるでただの箱だわ」

「あん? 迷わなくていーじゃねーか。楽だしよ」

聖女の疑問に青髪の戦士は能天気な回答を返す。

「あんたバカ? 魔族の大ボスのお城がこんなわかりやすい構造なのがおかしいっていってるのよ」

聖女は苛立っていた。自分以外に危機感を持っている者がいない。
大体にしてこの帝国国王直々の依頼からしておかしいのだ。





自分たちが勇者、聖女だと呼ばれ出したのは、つい半年前くらいからの事なのだ。

赤毛の勇者に至っては、帝国国王の依頼を受けるため、国王の前に拝謁した際に初めて会っている。

聖女は各国や町や村へけが人や病人の回復のために出かける活動をしていた。

だが、どこへ行っても魔物の脅威にさらされている、と町や村の人々が暗い雰囲気を出している場面に出会ったことがない。


(たまたま、私が回った町や村が被害にあっていないだけかもしれないけど・・・)


あまりに釈然としない。

この城の中にも、魔物が出てもよさそうだが今まで一匹も出会っていない。

勇者、聖女の急な指定、魔物の被害があまり聞かれないのに帝国国王からの竜王討伐依頼、なぜか竜王の居城に魔物がほとんどいない状況、居城自体がまるで主を守ることを放棄しているかのような構造・・・





聖女は見えない何かに身震いした。
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