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第一章
第7話 記憶の邂逅④ 決着!
しおりを挟む「クァ―――――ッハッハッハ! どうしたどうした勇者ども! まさかその程度ではあるまいな?」
高笑いしながら宣う竜王ハーデス。
両手を腰に当てて胸を反らし高笑いするその様は如何にも偉そうだ。
「くっ・・・! 強ぇ! 傷ひとつ付けられねぇ! いったいどうなってんだ!」
自慢の大金槌も拉ひしゃげて使えなくなってしまい、金髪剣士コーディアスの持つ高位異空間収納バックから予備のバトルアックスを取り出してもらった青髪カイロン。カイロンの戦闘方法が自分の魔力による身体強化と、力技が多い戦闘スキルによるもののため、基本的に竜王ハーデスの物理防御力を上回らないとダメージが与えられない。魔力を媒介しても衝撃波など、純粋な物理攻撃力では竜種と戦うにはあまりに役者不足であると言えるだろう。
そんな前衛戦士を強化バフするべく後衛に魔法戦士の赤髪と聖女がいる構成なのだが、聖女は神聖力による神聖魔術しか使えないため、アンデット系への攻撃力増加を強化バフすることは出来るが、その他への対応力はない。
現在基本強化を担当しているのは赤髪の魔法戦士になるのだが、彼が得意とするのは精霊術を基本とした魔術らしく、地水火風の攻撃力増加と防御耐性の強化バフがあり、非常にバランスは取れているのだが、竜種相手には火力が足りていない。竜種相手にはより特殊な強化バフが必須なのだが、現在の四人はその能力を持ち合わせてはいない。
この一点だけとってみても実際竜王ハーデスをこの四人の勇者たちで打倒するということが如何に無謀なことなのかがわかる。
だが、勇者たち四人は竜種の頂点に立つ竜王ハーデスの実力をまったく持って把握しきれずにいた。事前の情報でも大したものはなく、カイロンの「突撃して倒しゃいいだろ」的な意見に引きずられて来ているところがある。
現在、勇者たち四人に打倒竜王の打開策は全くと言っていいほど立っていなかった。
「聖女ネルシア! 何か打開策はあるか?」
金髪剣士コーディアスが叫ぶ。
「ないわよ! 竜王がこれほどの化け物だとは想像してなかったわよ! 大体、会話で様子が探れそうだったのに、いきなりケンカ売ったのは馬鹿カイロンでしょ!」
「馬鹿とはなんだよ! 馬鹿とは」
聖女ネルシアの聖女とは思えないような毒舌に文句を返すカイロン。
「事実でしょ! もしかしたら戦わなくてよかったかもしれないのに!」
ネルシアはハーデスと会話出来そうだったのにカイロンに戦端を開かれたことをまだ怒っていた。
「戦わずして世界最強になんてなれねーだろ!」
「誰も世界最強何て目標にしてないでしょ! あなただけよ!!」
「はあっ? 男なら誰しも世界最強を目指すモンだろーがよ!」
「男だからって誰しもが世界最強を目指す何てことはないでしょうし、何より私は男でもないわよ!」
馬鹿との会話は疲れる、なぜこんなどうしようもない脳筋とパーティを組まなければならないのか? 神のお告げとかなんとか言っていた大神官に問い詰めたくなってくる。
だいたい本当に神のお告げなのか? 疑ってはならない事まで疑いたくなり、慌てて頭を振る。
ハーデスは目の前で仲間割れを起こして騒ぎだす自称勇者たちを眺めていた。
過去ハーデスに挑んで来た者たちは、少なくとももっと目的をはっきり持っていたし、実力もあったように思う。この四人はなぜ我に挑んで来たのだろう? ハーデスは疑問を持った。ハーデスは自分の力を多少開放し、実力の一端を見せつけた上で四人の反応を見てみることにした。この判断が結果として致命的だったことは否めないのだが、今のハーデスには知る由もない。
「貴様ら、一体何の目的で我に剣を向ける・・・? 許す、申して見よ! 返答によっては許さぬがな!」
ドズゥゥゥゥゥン!
力強く一歩踏み出し、地を鳴らす。そして急激に魔力を高める。
「こっ・・・、この魔力・・・」
「噂に聞く『竜気』ってヤツか・・・?」
竜種は高めた魔力を昇華させることにより、『竜気』としてより効率よくエネルギーとして使用できるようになる。この『竜気』でしか扱えない魔法は『竜魔法』として分類されていた。
「こいつぁ、トンでもねーな・・・」
コーディアスが呟く。勇ましく脳筋だったカイロンは一言も発せない。
そして、聖女はまさに二人とは逆の意味で追い詰められた。
(ダメ・・・、いくら何でも竜王ハーデスの力は強大すぎる。今はこの程度の反応で済んでいるけれど、この竜王の気が変わって世界を滅ぼそうとしたら誰も止められなくなる・・・。生まれて来るこの子のためにも、未来への不安要素は取り除く!)
聖女ネルシアは自分の心の中で、世界の安寧のため、正義のため、竜王ハーデスを封じると決断した。
「みんな、よく聞いて。目くらまし程度でもいい。竜王ハーデスの意識を引き付けておいて。とっておきの呪文を使って竜王ハーデスを封じるわ」
「何とかなるのか!?」
聖女ネルシアの言葉に打開策があるのかと希望を感じるコーディアス。
「何とかする、いや、何とかしなくてはならないの!」
そういって魔力を高めて行く聖女ネルシア。やがて彼女の魔力は神聖力となり白く輝きだす。
「みんな、彼女の言う通り俺たちで竜王ハーデスを引き付けるぞ!」
「むっ! 次はどんな手品を見せてくれるのだ?」
余裕綽々で受け答えるハーデス。
「は! それはお前が自分自身の身を持って知るがいい!」
「<光の矢>!」
「<衝撃の槌>!」
二人の同時攻撃がハーデスを襲う。
「クァ―――――ッハッハ! 温い温い」
ハーデスは自分の正面に魔法障壁を展開して防御する。魔法、物理の同時攻撃を苦も無く防御してしまうハーデスの魔力は強大である。
「<斬撃波>!!」
タイミングを遅らせた斬撃波でハーデスを襲うコーディアス。
だがしかし、竜王ハーデスは左手を広げ、その斬撃を握りつぶす。
バキィイイイン!!
「ま、まさか魔法障壁が薄くなるタイミングを狙った斬撃を手で受け止めるとは!」
驚愕するコーディアス。
「まさか、この程度の斬撃で我が鱗に傷を負わせることが出来ると考えてるわけではあるまいな?」
意地悪く、存外に「この程度の攻撃、屁でもありませんけど?」的な雰囲気を醸し出すハーデス。
普段であれば相手が「ま、参りました!」と頭を下げれば穏便に帰らせるし、そうでなくても風魔法などで城からたたき出してしまうところだが、今回の勇者四名はハーデスにとってあまりに久々の来客でもあった。今一つ話のかみ合わない相手であってもずっと一人で引きこもっていたハーディスにとってはよいヒマつぶしの相手であり、この事がより一層対応を長引かせ意地悪くさせていた。
だが、そんな余裕も三人の後ろに控えて魔術の準備をしていた聖女に気づいたときに消えて無くなる事となる。
「ビジター・アバター・ビジアバター。親愛なる御手に抱かれて我は願い給う。我が敵を御霊の癒しを持って封印し、浄化給う」
聖女ネルシアの体から強大な光が溢れ、魔法陣を形成する。
魔法陣から放たれた光の帯は竜王ハーデスを取り囲むように展開されていく。
「これは・・・?」
光の帯がハーデスに直接触れることはないが、何かの意図を持って形成されていくことは認識できた。竜王ハーデスはすぐに自分の知識で全容が理解できないことを悟り、『竜の叡智』にて検索を行う。
(<犠牲の輪廻> 圧倒的な生命力を媒介に強力な敵を封印、もしくは浄化消滅、転生させる強力な封印術。対象の状態により効果が変動する。具体的な術者としては体内に赤子を宿し、複数の生命力を制御できるものが該当する)
「ええ――――――――――!!」
素の勢いで驚いてしまう竜王ハーデス。この術を受けてしまえば、封印されるか消滅するか、はたまた転生させられてしまうか、どちらにしてもとんでもないことになる。
「た、対処方法は・・・!!」
慌てた竜王ハーデスが再度『竜の叡智』で検索を行い対策を探るが、それよりも早く聖女の放つ決死の呪文が完成する。
「<犠牲の輪廻>!!」
光の帯は立体的な五芒星を象ったかと思うと、その中央に竜王ハーデスが捕らわれる。
「ぐああ! こ、これは・・・!?」
光の帯は巨大な渦を巻き、竜王を飲み込んでいった。
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