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第1話 遭遇
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あの日の光景を僕は今も、そしてこれからも忘れることはないのだろう。あの小さな出来事が人生を変えることになるなど誰が予想できただろう。
「幽斗!人生ってつまんなくね!?」
そう問いかけてきたのは僕の友人の佐竹俊だ。僕が教室に入った瞬間に席を立ったのでそんな予感がしていた。せめてカバンを置かせて欲しい。
この様子だとまたよくわからない本でも読んできたのだろう。だが僕は知っている。こいつは僕がその発言の意図を問いかけるまでトイレだろうが職員室だろうがついてくるだろう。仕方ない。
「どうした急に。なんか読んだ?」
待ってましたと言わんばかりに佐竹はお得意のマシンガントークを始めた。
「実はさ!これ!これがめっちゃ面白くて!こんなの知っちゃったらもう学校なんて退屈のバーゲンセールだ!」
バザーについてのツッコミは置いておくとして、佐竹が突き出してきた本に目線を移す。
「地方別 激ヤバ心霊スポット100選」
テレビでももう少しまともな企画を用意するだろう。そう感じるほどに胡散臭いタイトルだ。手にとって適当に開いてみると僕らの住んでいる近所も何件かピックアップされていた。
「なんだよこれ…まさかこんなの本気にしてないよな」
「いやいやいや分かってないな幽斗クン。この本さ、作者も出版社も記載されてないんだよ!」
確かに記載がない。少し変だとは思うがどうせどこかのグループの自作か何かだろう。それより先ほどの言葉が嫌な予感を掻き立ててくる。
「んで、この本と人生つまらないことが関係あるのか?」
そう言い終わる前に待ってましたと言葉が返ってくる。本日2度目の待ってましただな。
「この中で信憑性が最も高いスポットを決めた。今夜20時にいつもの公園に迎えにいくから準備しとけよな」
…は?今夜?20時?なんで?意味不明通り越して理解不能なんだが。ていうかそもそも
「僕今夜バイトだから行けないんだけど。」
「代わり見つけといたから大丈夫だ!懐中電灯は必須で頼むぞ!」
そう言い終えると佐竹は自分の席へ戻って行ってしまった。あいつと同じバイト先を選んだことがここで裏目に出るなんて。そんなことを思いつつも日常に退屈していたのは同じなので少しワクワクしている自分もいた。
20時。から少し遅れて佐竹は来た。遅刻を咎めてやろうと待っていたが、そんなものが吹き飛ぶような事件が発生していた。なんという格好だ。今は夏だぞ?暑くないのか?
上下迷彩服。ヘッドランプ。首からはビデオカメラをぶら下げてポケットには刀を鞘に納めるように懐中電灯が3本刺さっている。これでは行き先が警察署になってしまう。
「なんて格好してんだ佐竹。お前警察に捕まるぞ」
そんな言葉を気にするような男ではない。むしろ自慢するかのように装備を見せびらかしてくる。こいつを金持ちの家に生まれさせたのはどこの阿呆だ。
「さて、夜は長いが僕らの時間は有限だ。早速向かうとしようか幽斗くん」
行き先を知らない僕は佐竹について行くしかなかったためチャリについていく。その場所は公園から5分ほどで着いた。そこを見て僕は言葉を失う。
「お前、ここ…」
そこは普段僕や佐竹が立ち寄ることもあるお馴染みの場所。
「図書館じゃねーか。心霊スポットじゃないだろ…」
廃墟や寺ならまだしも、普段から運営されている図書館。もしや佐竹はアホなのか?
「違う違う。この裏だよ」
先にチャリから降りていた佐竹が図書館の裏手に向かって進んでいく。何が何だか分からないがとりあえずついていこう。図書館入り口の真裏あたりまで来た時に佐竹が足を止める。
「さぁ!心霊スポットの入り口に到着しました!心せよ幽斗!」
変なスイッチが入っている。
「ドキドキ!心霊スポット調査開始だ!」
佐竹の向かう先には確かに切り開かれたような草木道がある。図書館の裏は軽い林になっているのは知っていたがあまりに整備され過ぎているように感じた。本能が告げる。
「おかしい」
林と言っても建物どころか小屋を建てるほどの広さでもない。そんな場所をここまで整備するか?普通。庭師の遊び心にしてもここまではしないだろう。そんな違和感が拭えない道を阿呆こと佐竹は気にしないかのようにズンズン進む。
「おい!待てって。なんか変だぞ」
「そりゃ心霊スポットだからな!変であればあるほど良い!」
訳の分からないことを口走りながら突き進んで行ってしまった。とりあえずほうっておくわけにもいかないので追いかけるしかない。
狭い林であったことが幸いし、佐竹にはすぐに追いついた。佐竹は呑気に動画を撮っている。
「おい、もう帰るぞ」
特に何も起きなかったためもう帰りたいだろう。そう思っていたが、
「何を言ってる!心スポ凸を動画投稿すれば俺たちは一気に有名人だ!」
訳のわからない言葉は止まらない。流石に気味が悪いので帰るように促す。佐竹も撮るものが少なかったのかあっさり承諾したため、来た道を戻ることとなった。
待てよ。
来た道ってどれだ?
僕らはどの道から来た?
こんなに道なんてあったか?
嫌な焦りで吐きそうになる。半信半疑どころか全くもって心霊スポットなど信じてなかったのにいざおかしな事が起きたことで根源的な恐怖が一気に湧いて出た。
佐竹を見る。全く道など気にしていない。ビデオカメラを確認している。それを見て一つの案が浮かんだ。
「おい!撮ってきた動画見せてくれ。どの道から来たかわかるだろ」
すると佐竹は困ったような顔を向けてきた。嫌な予感がする。
「それなんだけどさ、カメラが点かないんだ。」
バッテリーの故障かな…新品なのに…
そんなことをぼやいている佐竹を横目に頭の中が真っ白になる。
ガサガサッ
急に後方から物音が聞こえた。よくある漫画の展開で怖くて振り向けないなんて表現がある。ずっと、いやいやそんなことないだろ(笑)
なんて思っていたのだが。いざ直面すると本当に振り向く事ができないのだ。確認しなければという焦りと見たくないという拒否反応が同時に出ているのだろうか。
だが能天気アホにはそんな事関係ないようだ。
「たぬきか?」
そう言いながら勢いよく振り向いてしまった。たぬきなわけないだろ!本来ならそう言いたくなるのだが口だけが先に死んでしまったかのように動かない。
直後。
「ああ」
気の抜けたような佐竹の声が聞こえると同時に、ドシャっという音が聞こえた。
佐竹が倒れたようだ。これで1つ後ろの何かの情報を得ることができた。
後ろにいるのは僕らに危害を加える存在である。
佐竹を確認したいが声が出ない。
結局僕に採れる行動は一つなのだろう。
頼む。せめて姿形だけはたぬきであってくれ。怖い姿をしていないでくれ。そんなことを祈りながらゆっくりと後ろを向く。
願いは聞き届けられなかったようだ。
後ろにいた“それ”は人型でこそあったが…
体育でやったブリッジのような体勢なのに下半身がない。そのため2本の腕で立っている。だけど最初に目に映ったのはそこじゃない。
腹から突き出した3本目の腕がこの世の生態系から外れた存在だと物語っていた。
その化け物は僕を無表情で見つめ返してくる。
この日を僕は永遠に忘れることはないだろう。
この人生最悪の1ページ目を。
「幽斗!人生ってつまんなくね!?」
そう問いかけてきたのは僕の友人の佐竹俊だ。僕が教室に入った瞬間に席を立ったのでそんな予感がしていた。せめてカバンを置かせて欲しい。
この様子だとまたよくわからない本でも読んできたのだろう。だが僕は知っている。こいつは僕がその発言の意図を問いかけるまでトイレだろうが職員室だろうがついてくるだろう。仕方ない。
「どうした急に。なんか読んだ?」
待ってましたと言わんばかりに佐竹はお得意のマシンガントークを始めた。
「実はさ!これ!これがめっちゃ面白くて!こんなの知っちゃったらもう学校なんて退屈のバーゲンセールだ!」
バザーについてのツッコミは置いておくとして、佐竹が突き出してきた本に目線を移す。
「地方別 激ヤバ心霊スポット100選」
テレビでももう少しまともな企画を用意するだろう。そう感じるほどに胡散臭いタイトルだ。手にとって適当に開いてみると僕らの住んでいる近所も何件かピックアップされていた。
「なんだよこれ…まさかこんなの本気にしてないよな」
「いやいやいや分かってないな幽斗クン。この本さ、作者も出版社も記載されてないんだよ!」
確かに記載がない。少し変だとは思うがどうせどこかのグループの自作か何かだろう。それより先ほどの言葉が嫌な予感を掻き立ててくる。
「んで、この本と人生つまらないことが関係あるのか?」
そう言い終わる前に待ってましたと言葉が返ってくる。本日2度目の待ってましただな。
「この中で信憑性が最も高いスポットを決めた。今夜20時にいつもの公園に迎えにいくから準備しとけよな」
…は?今夜?20時?なんで?意味不明通り越して理解不能なんだが。ていうかそもそも
「僕今夜バイトだから行けないんだけど。」
「代わり見つけといたから大丈夫だ!懐中電灯は必須で頼むぞ!」
そう言い終えると佐竹は自分の席へ戻って行ってしまった。あいつと同じバイト先を選んだことがここで裏目に出るなんて。そんなことを思いつつも日常に退屈していたのは同じなので少しワクワクしている自分もいた。
20時。から少し遅れて佐竹は来た。遅刻を咎めてやろうと待っていたが、そんなものが吹き飛ぶような事件が発生していた。なんという格好だ。今は夏だぞ?暑くないのか?
上下迷彩服。ヘッドランプ。首からはビデオカメラをぶら下げてポケットには刀を鞘に納めるように懐中電灯が3本刺さっている。これでは行き先が警察署になってしまう。
「なんて格好してんだ佐竹。お前警察に捕まるぞ」
そんな言葉を気にするような男ではない。むしろ自慢するかのように装備を見せびらかしてくる。こいつを金持ちの家に生まれさせたのはどこの阿呆だ。
「さて、夜は長いが僕らの時間は有限だ。早速向かうとしようか幽斗くん」
行き先を知らない僕は佐竹について行くしかなかったためチャリについていく。その場所は公園から5分ほどで着いた。そこを見て僕は言葉を失う。
「お前、ここ…」
そこは普段僕や佐竹が立ち寄ることもあるお馴染みの場所。
「図書館じゃねーか。心霊スポットじゃないだろ…」
廃墟や寺ならまだしも、普段から運営されている図書館。もしや佐竹はアホなのか?
「違う違う。この裏だよ」
先にチャリから降りていた佐竹が図書館の裏手に向かって進んでいく。何が何だか分からないがとりあえずついていこう。図書館入り口の真裏あたりまで来た時に佐竹が足を止める。
「さぁ!心霊スポットの入り口に到着しました!心せよ幽斗!」
変なスイッチが入っている。
「ドキドキ!心霊スポット調査開始だ!」
佐竹の向かう先には確かに切り開かれたような草木道がある。図書館の裏は軽い林になっているのは知っていたがあまりに整備され過ぎているように感じた。本能が告げる。
「おかしい」
林と言っても建物どころか小屋を建てるほどの広さでもない。そんな場所をここまで整備するか?普通。庭師の遊び心にしてもここまではしないだろう。そんな違和感が拭えない道を阿呆こと佐竹は気にしないかのようにズンズン進む。
「おい!待てって。なんか変だぞ」
「そりゃ心霊スポットだからな!変であればあるほど良い!」
訳の分からないことを口走りながら突き進んで行ってしまった。とりあえずほうっておくわけにもいかないので追いかけるしかない。
狭い林であったことが幸いし、佐竹にはすぐに追いついた。佐竹は呑気に動画を撮っている。
「おい、もう帰るぞ」
特に何も起きなかったためもう帰りたいだろう。そう思っていたが、
「何を言ってる!心スポ凸を動画投稿すれば俺たちは一気に有名人だ!」
訳のわからない言葉は止まらない。流石に気味が悪いので帰るように促す。佐竹も撮るものが少なかったのかあっさり承諾したため、来た道を戻ることとなった。
待てよ。
来た道ってどれだ?
僕らはどの道から来た?
こんなに道なんてあったか?
嫌な焦りで吐きそうになる。半信半疑どころか全くもって心霊スポットなど信じてなかったのにいざおかしな事が起きたことで根源的な恐怖が一気に湧いて出た。
佐竹を見る。全く道など気にしていない。ビデオカメラを確認している。それを見て一つの案が浮かんだ。
「おい!撮ってきた動画見せてくれ。どの道から来たかわかるだろ」
すると佐竹は困ったような顔を向けてきた。嫌な予感がする。
「それなんだけどさ、カメラが点かないんだ。」
バッテリーの故障かな…新品なのに…
そんなことをぼやいている佐竹を横目に頭の中が真っ白になる。
ガサガサッ
急に後方から物音が聞こえた。よくある漫画の展開で怖くて振り向けないなんて表現がある。ずっと、いやいやそんなことないだろ(笑)
なんて思っていたのだが。いざ直面すると本当に振り向く事ができないのだ。確認しなければという焦りと見たくないという拒否反応が同時に出ているのだろうか。
だが能天気アホにはそんな事関係ないようだ。
「たぬきか?」
そう言いながら勢いよく振り向いてしまった。たぬきなわけないだろ!本来ならそう言いたくなるのだが口だけが先に死んでしまったかのように動かない。
直後。
「ああ」
気の抜けたような佐竹の声が聞こえると同時に、ドシャっという音が聞こえた。
佐竹が倒れたようだ。これで1つ後ろの何かの情報を得ることができた。
後ろにいるのは僕らに危害を加える存在である。
佐竹を確認したいが声が出ない。
結局僕に採れる行動は一つなのだろう。
頼む。せめて姿形だけはたぬきであってくれ。怖い姿をしていないでくれ。そんなことを祈りながらゆっくりと後ろを向く。
願いは聞き届けられなかったようだ。
後ろにいた“それ”は人型でこそあったが…
体育でやったブリッジのような体勢なのに下半身がない。そのため2本の腕で立っている。だけど最初に目に映ったのはそこじゃない。
腹から突き出した3本目の腕がこの世の生態系から外れた存在だと物語っていた。
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