壊獄の浄祓師

はといるか

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第2話 穢者と浄祓師

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 あいつはなんだ?
 まさか本当に心霊スポットだった!?
 佐竹は無事か?
 僕は死ぬのか?

 そんな考えが頭をぐるぐると回る。冷静でいようとしても心臓がうるさい。震えが止まらない。それでもアイツから目を逸らすことができない。膠着したこの状況が延命に繋がっているように感じる。
 だがそれは狩られる側の思考だ。この場において強者であるアイツはゆっくりとこちらに向かってくる。
 嫌だ死にたくない。逃げなきゃ。

 ところが、逃げようとした足を1つの考えが止めてしまう。

 佐竹がまだ生きてるかもしれない。

 もし僕が逃げたら間違いなく佐竹は死ぬ。それはダメだ。

 覚悟を決めてアイツに向き直る。相変わらず足が震える。今にも迫る死の予感に絶望しそうになる。それでも、

 「ああああああああ!」
 
 どうして良いか分からない。分からないからとりあえず手に取った懐中電灯をぶん投げる。当然効くはずもない。それどころか怒らせたのかもしれない。

 「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 耳が壊れたんじゃないかと思うほどの奇声を発しながら勢いよくこちらに向かってくる。決死の行動は大失敗だったようだ。

 もう間違いない。殺される。

 あんな変なやつに殺されるだなんて。

 どうせ死ぬなら1発くらい入れてやる。

 「うわぁぁぁぁぁあ!」

 アイツの奇声に負けないような大声を出して自分の恐怖を誤魔化す。あの世がもしあったなら次は佐竹を1発殴ってやるか。

 






 …光?僕は死んだのか?

 ここが天国?だとしたら期待外れだ。
 砂利っぽい地面。木の枝が散乱した地面。それに光がどんどん消えていく。

 おかしいな。天国ってこんなに暗いのか…


 


 違う。僕はまだ生きてる。ここは天国でもあの世でもない。先ほどアイツと遭遇した地獄だ。
 そうだ佐竹は?あの化け物は?

 先ほど佐竹が倒れてた場所に目をやる。相変わらずぶっ倒れている。
 その奥に目をやるとアイツがいた。倒れてる。背中、いや腹から突き出た腕はありえない方向に捩じ曲がってる。

 「きゃああああああああ!!」

 あの奇声はまだ止まらない。いや、少しおとなしくなったか?

 「がぁぁぁ!」

 よく分からないが苦しんでる。神様が助けてくれたのか?だとしたら完全に倒しておいてくれよ。アイツまだやる気じゃんか…

 起き上がったアイツはまた真っ直ぐにこちらに突っ込んで…こない。少し怯えてる?

 「きゃ」

 と小さく悲鳴を上げ、逃げようとこちらに背を向ける。その時だった。

 ずざざざざざざざ、とアイツの背中に何本もの光の槍のようなものが突き刺さった。アイツは悲鳴を上げる暇もなく消失した。
 
 突然のことで何が何だか分からない。分からないが、助かったということだけは理解できる。安堵からか体の力が抜け、崩れ落ちた。

 「君、浄の力扱えるの?どこの者?」

 後ろから声が聞こえて、急に体に力が戻る。
 ふと振り向くと人が立っていた。
 髪を一つ結びにし、上下黒い服を着ている女性だ。僕らよりも歳上かな。きっとこの人が助けてくれたのだろう。

 「聞いてる?それとも喉を潰された?」
 
 こっちは色々あって混乱してんだよ。そんなふうに思ったが命の恩人だ。

 「助けてくれてありがとうございます。浄の力ってのはよく分かりませんが、D高校の2年生です。」

 質問の意図を理解しきれていないが言える範囲で答えようと思った。僕の答えを聞いて一瞬フリーズした後、

 「あはははははは!今目覚めたのか。そっかそっか。それじゃあさっきの質問は気にしなくていいよ」

 と笑い出した。まるで緊張がほぐれたような。こちらも緊張していましたよとでも言わんばかりの変わりようだ。

 開いた?なんのことだか分からないが空気が急激に暖かくなっていくのを感じた。

 「ごめんごめん。なんのことだか分かんないよね。ちゃんと説明するからとりあえずここから出ようか」

 そういうとお姉さんは歩き出した。慌てて佐竹を担いで付いていく。やはり小さい林だったためすぐに出ることができた。さっきは出られなかったのに?
 その不信感はすぐに解消されることとなる。
 
 「後ろみてごらん」

 言われるがままに見てみるとそこにはありえない光景が広がっていた。

 林には道どころか入り口なんてなかった。本来なら動揺してしまうところだが、先ほどからの体験で耐性がついたらしい。

 「あの空間は現実じゃなかったんですね」
 「まぁそんなとこ。現実の中に生成された異次元空間って認識でいいよ」
 
 理解が出来たわけではないが納得はいった。

 そこからは質問タイムが始まった。分かったことは

 ・先ほどの化け物は穢者あいじゃと呼ばれ、人々の恐れ、悪感情、この世の不純から生まれる穢れが形を持った存在であること。
 ・お姉さんは浄祓師といい、穢者を祓う人達の1人であること。
 ・佐竹の発言が終始おかしかったのはこの件とは何も関係ないこと。(素でおかしいのだろう)

 また、

 「アイツが怪我をしたのは私の力じゃないよ。君が浄力っていう、まあ、超能力的な力に目覚めたってことさ」

 「まだまだ赤ちゃんだけどね」

 そう言って笑っていた。

 「さて、それじゃあ少し真剣に考える時間に入ろうか」

 そう言ってお姉さんは真面目な顔になった。

 「君は浄力に目覚めた。この力を扱える人間は限られているから君は貴重な人材になるかもしれない。
 そして君にはこれから一つの選択をしてもらう」


 「浄祓師として私らの仲間になるか。それとも、浄力を持つ要注意人物として生涯私たちに監視されるか。」

 …は?
 この人は何を言っているんだ?仲間?監視?急すぎて決められるわけない。
 ただ一つわかる。これは全部マジだ。

 「悪いけれど、答えるまで君を帰すわけにはいかない。ここで決めてくれ」


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