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3 高峰が連なる山脈では、高原すらも低地に見える
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「鷹野瀬君はどんな部活に入りたいの?」
唐突に天坂が聞いてきた。
「そうだな…特に希望もないが、面白いと感じられる活動内容、人間関係が面倒くさくない、もしもの時に幽霊部員として逃げやすい部活ならなんでも良い」
「結構難しいね…でもこの学園ならそんな部活もありそう」
「逆に天坂はどんな部活に入りたいんだ?」
「うーーん…」
と言いながら天坂は考え込んでしまった。そこを絞らないことには見つかるものも見つからないんじゃないか。
「楽しくて、初心者でも迷惑をかけないで済むところかなー…あ、あと中学の頃の経験が生きる所があったら嬉しいかも」
安心しろ天坂。芝刈りの経験が活きる部活なんてない。グラウンドの手入れ部なんてものがあれば別だがな。
その後色々な部活を見て回ったが、俺たちの細かい希望に沿う部活なんてものが見つかるはずもなく、40件目の見学が終了した。
「今の文芸部、鷹野瀬君の希望に結構近かったんじゃない?活動もなんか緩そうだったし、部長さんは仲のいい部活って言ってたしそんな風に見えたよ?」
「あそこはダメだ。多分部長と副部長が付き合ってる」
「え、そうなの?でも別に鷹野瀬君とはあまり関係がないんじゃない?」
「部室にいた他の3人は部長を狙ってるっぽかった。でもってお互いを認識しあってるっぽかった。部長以外の視点で見たらかなり面倒くさいだろうな」
言語化することすら面倒臭いような関係が出来上がっていた。部員はお互いに嘘の笑顔を見せ合っている。あんな戦いに巻き込まれたら面倒臭いどころじゃない。そもそも部長以外嘘まみれのあの空間にいたら…いや、考えるのはやめよう。あそことは関わっていない。以上。
「全然分からなかったなー。鷹野瀬君なんでそんなこと分かったの?」
…少し喋りすぎたかもな。本来なら一瞬でそこまで見抜く人なんてそうそういないだろう。そこに疑問を持つのは当然だ。
「…何となくだよ」
嘘が分かるなど言えるわけがない。そんな人間と関わりたい奴なんているわけがないだろう。俺は中学での失敗をもう繰り返さないと決めたのだ。
雑な返答をしてしまったかと思ったが天坂は納得した様子だった。
「でもどうしようかな。なかなか良い部活が見つからないね」
思っていた通りだ。エリート志向、上昇志向の天才が多いこの学園では部活動もキャリアの一つ。中途半端に加入できそうな部活などあるわけがなかった。
「そうだな…まぁ適当な研究会か愛好会でも見つけて参加すればいいだろう。別に俺たちはキャリアを求めているわけじゃない。それならすぐ見つかるはずだ」
何かしらに参加をしていればお咎めもないだろう。俺は俺で何か時間を過ごすための趣味でも探すか。
「うーん、そうだね。一度教室に戻って考えよっか」
天坂には悪いが面倒ごとに巻き込まれなければそれでいい。そう思っていた俺にバチが当たるのは案外早かった。
教室に戻ると先ほど声を上げて飛び出して行った中村が声をかけてきた。
「なぁ、お前らもう部活決めちゃったか?」
隣の席で多少面識がある程度の天坂と全くの初対面である俺に随分グイグイくるな。距離感がバグってるタイプか。
「う、ううん…どこも入りづらくてそれで…」
ほらみろ中村。内気タイプの天坂が対人アレルギーを発症して言葉を締め括れなくなってしまっているぞ。
「だよな。えーーと…田中!お前はどうだ?」
「鷹野瀬だ。俺もまだ決めていない」
「鷹野瀬か。お前もまだなんだな」
もしかして名前を一か八かで当てようとしたのか?この世界に苗字がいくつあると思ってるんだこいつは。
「ちょうどいい!俺は気付いたんだ。俺みたいな凡人には部活に入るってのは敷居が高い」
凡人か。中村はおそらく一般入試の合格者だ。もちろん入試もレベルは非常に高い。が、推薦で入学した天才には劣る。通常の高校ならば成績優秀でコミュ力のある人気者になっていただろう。そんな人間が迷いもせず自分を凡人と呼んでしまうほど特殊な学園なのだ。
「そこでだ。俺たちで新しく部活を作ろうと思うんだがどうだ?」
部の新設。擬似的な起業とみなして学校側が認めている行為だ。顧問不要、部員数3名以上、部長1名及び副部長1名以上が条件だ。はっきり言って新設は難しいものじゃない。ただ、
「設立費の一万SCはどうするつもりだ?」
そう。設立には一万SCが必要になる。これは都市内の施設と違い、日本円では代替ができない。そのため、部の新設とは結果を出した者にのみ許される行為である。
「そこなんだよなぁ」
考えてなかったのかよ。そこが一番重要なポイントだろ。
この学園では部活動によっては依頼をこなし、報酬としてSCを受け取ることが認められている。そのリターンがないと部活の新設にはデメリットしかないということになる。
「なぁ、どうする?」
そう言いながら中村が声をかけたのは一人の女子だ。名前は…
「なぁ、あいつだれだ?」
仕方ないのでこっそり天坂に尋ねる。
「月城綾さんだよ」
中村に呼ばれた女子、月城はこちらを精査するかのような目を向けてくる。部を設立する仲間として充分かどうか判断しているのだろう。どうやら俺たちは彼女の求める基準を満たしたようで、こちらに体を向けた。
第一印象は冷静。中村と組んでいそうなのが正直信じられない。
「SCについては学校側から融資を受ければいい。そういう制度が使われた事例はあるそうよ」
なるほど。確かに月城の言う通り、起業に見立てているのならば当然そのようなシステムを、使うこともできるだろう。ただ、
「融資ってのは厳しい審査を通過する必要があるだろ。何部を作るつもりなんだ?半端な部活を作って結果が出せないまま、借りた一万SCを返済するだけの生活はごめんだ」
「そうね。ここの学園は突出した天才たちが多いわ。そして、そんな天才達は皆等しく万能ではない。苦手や困り事を持つパターンがほとんど。そんな天才達をターゲットに、あらゆる依頼を引き受ける部活」
「技能戦略部よ」
唐突に天坂が聞いてきた。
「そうだな…特に希望もないが、面白いと感じられる活動内容、人間関係が面倒くさくない、もしもの時に幽霊部員として逃げやすい部活ならなんでも良い」
「結構難しいね…でもこの学園ならそんな部活もありそう」
「逆に天坂はどんな部活に入りたいんだ?」
「うーーん…」
と言いながら天坂は考え込んでしまった。そこを絞らないことには見つかるものも見つからないんじゃないか。
「楽しくて、初心者でも迷惑をかけないで済むところかなー…あ、あと中学の頃の経験が生きる所があったら嬉しいかも」
安心しろ天坂。芝刈りの経験が活きる部活なんてない。グラウンドの手入れ部なんてものがあれば別だがな。
その後色々な部活を見て回ったが、俺たちの細かい希望に沿う部活なんてものが見つかるはずもなく、40件目の見学が終了した。
「今の文芸部、鷹野瀬君の希望に結構近かったんじゃない?活動もなんか緩そうだったし、部長さんは仲のいい部活って言ってたしそんな風に見えたよ?」
「あそこはダメだ。多分部長と副部長が付き合ってる」
「え、そうなの?でも別に鷹野瀬君とはあまり関係がないんじゃない?」
「部室にいた他の3人は部長を狙ってるっぽかった。でもってお互いを認識しあってるっぽかった。部長以外の視点で見たらかなり面倒くさいだろうな」
言語化することすら面倒臭いような関係が出来上がっていた。部員はお互いに嘘の笑顔を見せ合っている。あんな戦いに巻き込まれたら面倒臭いどころじゃない。そもそも部長以外嘘まみれのあの空間にいたら…いや、考えるのはやめよう。あそことは関わっていない。以上。
「全然分からなかったなー。鷹野瀬君なんでそんなこと分かったの?」
…少し喋りすぎたかもな。本来なら一瞬でそこまで見抜く人なんてそうそういないだろう。そこに疑問を持つのは当然だ。
「…何となくだよ」
嘘が分かるなど言えるわけがない。そんな人間と関わりたい奴なんているわけがないだろう。俺は中学での失敗をもう繰り返さないと決めたのだ。
雑な返答をしてしまったかと思ったが天坂は納得した様子だった。
「でもどうしようかな。なかなか良い部活が見つからないね」
思っていた通りだ。エリート志向、上昇志向の天才が多いこの学園では部活動もキャリアの一つ。中途半端に加入できそうな部活などあるわけがなかった。
「そうだな…まぁ適当な研究会か愛好会でも見つけて参加すればいいだろう。別に俺たちはキャリアを求めているわけじゃない。それならすぐ見つかるはずだ」
何かしらに参加をしていればお咎めもないだろう。俺は俺で何か時間を過ごすための趣味でも探すか。
「うーん、そうだね。一度教室に戻って考えよっか」
天坂には悪いが面倒ごとに巻き込まれなければそれでいい。そう思っていた俺にバチが当たるのは案外早かった。
教室に戻ると先ほど声を上げて飛び出して行った中村が声をかけてきた。
「なぁ、お前らもう部活決めちゃったか?」
隣の席で多少面識がある程度の天坂と全くの初対面である俺に随分グイグイくるな。距離感がバグってるタイプか。
「う、ううん…どこも入りづらくてそれで…」
ほらみろ中村。内気タイプの天坂が対人アレルギーを発症して言葉を締め括れなくなってしまっているぞ。
「だよな。えーーと…田中!お前はどうだ?」
「鷹野瀬だ。俺もまだ決めていない」
「鷹野瀬か。お前もまだなんだな」
もしかして名前を一か八かで当てようとしたのか?この世界に苗字がいくつあると思ってるんだこいつは。
「ちょうどいい!俺は気付いたんだ。俺みたいな凡人には部活に入るってのは敷居が高い」
凡人か。中村はおそらく一般入試の合格者だ。もちろん入試もレベルは非常に高い。が、推薦で入学した天才には劣る。通常の高校ならば成績優秀でコミュ力のある人気者になっていただろう。そんな人間が迷いもせず自分を凡人と呼んでしまうほど特殊な学園なのだ。
「そこでだ。俺たちで新しく部活を作ろうと思うんだがどうだ?」
部の新設。擬似的な起業とみなして学校側が認めている行為だ。顧問不要、部員数3名以上、部長1名及び副部長1名以上が条件だ。はっきり言って新設は難しいものじゃない。ただ、
「設立費の一万SCはどうするつもりだ?」
そう。設立には一万SCが必要になる。これは都市内の施設と違い、日本円では代替ができない。そのため、部の新設とは結果を出した者にのみ許される行為である。
「そこなんだよなぁ」
考えてなかったのかよ。そこが一番重要なポイントだろ。
この学園では部活動によっては依頼をこなし、報酬としてSCを受け取ることが認められている。そのリターンがないと部活の新設にはデメリットしかないということになる。
「なぁ、どうする?」
そう言いながら中村が声をかけたのは一人の女子だ。名前は…
「なぁ、あいつだれだ?」
仕方ないのでこっそり天坂に尋ねる。
「月城綾さんだよ」
中村に呼ばれた女子、月城はこちらを精査するかのような目を向けてくる。部を設立する仲間として充分かどうか判断しているのだろう。どうやら俺たちは彼女の求める基準を満たしたようで、こちらに体を向けた。
第一印象は冷静。中村と組んでいそうなのが正直信じられない。
「SCについては学校側から融資を受ければいい。そういう制度が使われた事例はあるそうよ」
なるほど。確かに月城の言う通り、起業に見立てているのならば当然そのようなシステムを、使うこともできるだろう。ただ、
「融資ってのは厳しい審査を通過する必要があるだろ。何部を作るつもりなんだ?半端な部活を作って結果が出せないまま、借りた一万SCを返済するだけの生活はごめんだ」
「そうね。ここの学園は突出した天才たちが多いわ。そして、そんな天才達は皆等しく万能ではない。苦手や困り事を持つパターンがほとんど。そんな天才達をターゲットに、あらゆる依頼を引き受ける部活」
「技能戦略部よ」
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